砂箱

▼現実批評受け付け中の記事▼

ある小さなアパートの一室にて


「便を踏ん張る時というか、理由の分からない怒りで体が満ちた時というか、慈悲でも偽善でも憎しみでもない悲しみに心が侵された時というか……ともかく、そういうイメージだ」


拘束されている--いや、何もされていないのに、微塵も動けない。
本来なら針を大きく揺さぶって財団に通知が行くはずのヒューム値測定器も、時間が止まったみたいに硬直している。


「そういう感覚の中で何かを思うんだよ。“目の前にお茶が出てくる”とか“お前は動けなくなる”とかな。それが現実になる…これがあんたらが言うところの“現実改変”だな」


目の前の小さな机に、コトッとお茶が現れた気がした。それはいきなり出現した様にも見えたし、ずっと前から--俺が悠長にこいつと会話している時からあったような気もする。


「身構えなくてもいいぜ。別に、現実改変者の疑いがあるっていうんで調査しに来たのはお前が初めてじゃないんだ。前のヤツらから欲しい情報は貰ったし、お前に痛い思いをしてもらう必要は無いよ」


そんなはずは無い、こいつの調査に向かうのは、俺が初めてのはずじゃ……そう思った瞬間、こいつの能力のチート加減を思い出した。


「優秀なお前ならわかると思うけど、僕は今までに何回か“アンタら”に能力を使わせて貰った。それ以外の他人とか私益に能力を使ったことは無いし、これから使うつもりもない。普通に、俺は普通に生きていたいわけさ。ただそう言っても、財団とやらは俺を収容しようとしてくる。だから仕方なくさ、許してくれよ」


俺はここで死んでしまうのだろうか……いや、存在ごと無かったことにされるのかもしれない。そしたら俺はどこへ行くんだろうか、財団に何も結果を持ち帰ることができなかった、家族は……。思考がゆっくりと、そして着実に回っていく。脳は、ここから生きて帰るという選択肢を放棄していた。


「だけどな、俺だって人は殺したかあ無い。初めのヤツには申し訳なかったけど、拘束したまま何日も考えたのよ。んで、結論はこれ」


空間が回って、回って、回って、“それ”が現れた。
“それ”の見かけは、何年も昔のまだこの星が球形だと信じられていた時代に広まっていた、いわゆる地球儀ってやつに似ている。
何が違うのかと言われると、“それ”はあまりに精密で、緯線やら経線やら国名やらは無く…その半球部分が、黒く、“夜”になっていた。


「もうわかるだろ?これは何世紀も前の人間達の思い描いてた“地球そのもの”だ。殺したくないかつこの世界で生活させたくないのなら、別の世界で生活させるしかないだろう?正しい地球は作ることができなかった……まあ俺のいじれる段階を超えていたんだろうな。じゃあ昔の記憶に存在していた“地球”なら?見事完成したさ。よく見りゃ、今はもう滅多にない飛行機だって飛んでるぜ。そんで、人だって生活してる」


“それ”はなぜか、海は光を混ぜたように透き通った青で、森はどこまでも深く鮮やかな緑で、夜は黒に黒を重ねた黒のような、今まで見たことの無いような色で溢れている気がした。


「この地球には、あんたらが世話してる様な異常で溢れた物体もないし俺みたいな奴もいない。こんなバカげた現実が、ただのマイナーな物語集ってことで完結してる。俺がやったんだ、苦労したぜ?この世界よりもよっぽど幸せに暮らせると思うね--できたら俺も移住したいくらいだ」


そんな世界はあまりに退屈で、あまりに満ち足りているのだろうと思う。
俺は運命を投げ出した。


「せめてさ、お前の望む姿で転生させてやるよ。学生になんのかな、社会人かもしれないし、主婦かもしれない、ひょっとしたらいい歳の老人なのかもしれない。記憶も、それに見合ったものに上書きしておいてやるからさ」


最後に脳裏を掠めたのは家族だった。


「後処理は任せとけよ…じゃあな」


一瞬の瞬きの後----


「せめて幸せに暮らしてくれや」









は目を開けた


▼SCP▼

評価: 0+x

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、サイト81██の低危険物収容ロッカーに収容されます。財団職員によるSCP-XXX-JPの使用は認められることはありません。実験を行う場合は、クリアランスレベル3以上の職員2名の許可を得てください。

説明: SCP-XXX-JPは、株式会社███が発売している██-████型の黒縁眼鏡に酷似しています。本来、製造番号や製造場所が刻印されている右アームの内側には、“a beautiful game”という文字が代わりに白く刻印されています。

SCP-XXX-JPの特異性はヒトにしか影響せず、SCP-XXX-JPを本来の眼鏡のように両耳、鼻に掛け、SCP-XXX-JPのレンズを通した状態で外界を認識した際から生じます。この時点で、SCP-XXX-JPを外すことは出来ず、また記憶処理は効果を発揮しないことが確認されています。

SCP-XXX-JPを着用したヒト(以下“被験者”)は、着用した直後から数秒、視界に“NEW GAME”という文字が表示されます。その後、特異性が現れる規則的な時間帯(以下“特異時間帯”)に訪れるまで異常は報告されていません。

被験者は、SCP-XXX-JPを着用してから初めて訪れる午前7:00から、特異時間帯1時間と通常世界1時間の周期的な体験をします。特異時間帯になると、被験者は通常世界から消え、現代の日本に非常に似通っているパラレルワールドと推測される世界(以下“SCP-XXX-JP-1”)に出現します。被験者に与えた無線の映像機や位置情報探査機も、被験者同様SCP-XXX-JP-1に転移されることが確認されており、これらの機能は通常通りに働きます。位置情報探査機の示す場所に被験者は存在しませんが、被験者の存在しているSCP-XXX-JP-1の座標と同じ通常世界の座標であると思われます。SCP-XXX-JP-1内の時刻は通常世界と一致していますが、天候は通常世界に関わらず常に晴れです。被験者がSCP-XXX-JP-1内に位置している間、被験者が一定以上の恐怖心を抱くと被験者は消失します。1度消失した被験者が再び確認された例はありません。また、被験者の衣服や所持品は消失した際のSCP-XXX-JP-1地点の通常世界に対応する場所に出現します。SCP-XXX-JP-1内で被験者が与えた影響は次の特異時間帯には消滅し、通常世界に影響を及ぼすこともありません。

SCP-XXX-JP-1内には通常世界と同じように生活している人物(以下“SCP-XXX-JP-2”)が存在します。SCP-XXX-JP-2は通常世界にいる該当しているであろう人物と非常に似通った容姿、同じ記憶を持っていて、過去に体験したと言及している出来事は通常世界との一致が確認されています。SCP-XXX-JP-2の行動には、SCP-XXX-JP-1内の時間が進み日が暮れるにつれてだんだんと変化が見られます。詳しくは後述する“特異時間帯ごとのの詳細”を確認してください。

日が完全に沈んでいる特異時間帯には、SCP-XXX-JP-1内にSCP-XXX-JP-3が出現します。SCP-XXX-JP-3は、被験者が見聞したことのある妖怪、幽霊、都市伝説などが具現化したものです。SCP-XXX-JP-3はいかなる性能の映像機でも存在を確認できませんでした。またSCP-XXX-JP-3は特異時間帯によって被験者に与えることのできる影響が変化していきますが、いかなる特異時間帯でも被験者を“恐怖させようと”する行動を取っています。詳しくは実験記録を参照してください。


特異時間帯ごとの詳細
また、以下の実験記録は20██/█/██にD-XXX-JP-9を被験者として行われた物である。D-XXX-JP-9は財団精神力判別テストで80点(非常に強靭)を記録している。

①7:00-8:00
7:00になると、目の前に“Day 1”という文字が現れ、被験者はSCP-XXX-JP-1に出現する。外は明るく、朝日が登っている。SCP-XXX-JP-2は通常世界と同じように生活をしている。

②9:00-10:00
9:00になると、目の前に“Day 2”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。外は明るく、日は通常通り登っている。SCP-XXX-JP-2は被験者に対して興味があるような行動が確認できる。

③11:00-12:00
11:00になると、目の前に“Day 3”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。外は非常に明るく、日は通常通り登っている。SCP-XXX-JP-2は非常に被験者に対し非常に興味を持っている様子で、接触を試みる。

④13:00-14:00
13:00になると、目の前に“Day 4”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。外は明るく、日は通常通り登っている。SCP-XXX-JP-2は被験者に対して興味があるような行動が確認できる。

⑤15:00-16:00
15:00になると、目の前に“Day 5”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。日が暮れ始め、夕焼けが見られる。SCP-XXX-JP-2は通常通りの生活をしている。

⑥17:00-18:00
17:00になると、目の前に“Day 6”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。日はほとんど暮れ、かろうじて夕焼けが見られる。SCP-XXX-JP-2は被験者に明らかな悪意・敵意を持っているように確認できる。また、SCP-XXX-JP-2は18:00に近づくにつれてほとんどの個体が屋内に入る。

⑦19:00-20:00
19:00になると、目の前に“Day 7”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。日は暮れ、月が登り始める。以後、SCP-XXX-JP-2個体はいかなる場所でも確認できなかった。またこの特異時間帯からSCP-XXX-JP-3が出現する。この特異時間帯のSCP-XXX-JP-3は被験者に触れることはできず、また被験者が聞き取れる音を発することもできない。さらに20:00-21:00の通常世界にいる間、被験者は通常より多めの幸福感を報告する。脳内麻薬などの快楽物質の分泌量は通常の3倍程である。これは被験者が1時間恐怖の体験をしたことを考慮しても異常な数値である。

⑧21:00-22:00
21:00になると、目の前に“Day 8”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。日は見えず、月が通常通り登っている。この特異時間帯のSCP-XXX-JP-3は被験者に聞こえる音を発することができる。さらに22:00-23:00の通常世界にいる間、被験者は通常よりかなり多めの幸福感を報告する。脳内麻薬などの快楽物質の分泌量は通常の██倍程である。これは被験者が1時間未知の体験をしたことを考慮しても非常に異常な数値である。またこのため被験者は眠気を感じない。

⑨23:00-0:00
23:00になると、目の前に“Day 9”という文字が現れ、被験者は7:00に出現した地点と同じ座標のSCP-XXX-JP-1に出現。特異時間帯の間、感じる幸福感は通常通りのため、被験者が眠気を訴える事がある。日は見えず、月が通常通り登っている。この特異時間帯のSCP-XXX-JP-3は被験者に聞こえる音を発することができ、また被験者や物体に触れることができる。しかし、被験者自体に怪我をさせるなどの物理的な攻撃はしてこない。またこの特異時間帯から帰還した被験者は今までいないため、この先何が起こるかは調査できていない。

▼Tale▼

上に

▼その他▼

[[>]]
[[module Rate]]
[[/>]]

**太字** -> 太字
//斜体// -> 斜体
__下線__ -> 下線
--打ち消し線-- -> 打ち消し線
[[[SCP-173|サイト内リンク]]] -> サイト内リンク
[http://ja.wikipedia.org/wiki/メインページ 外部サイトへのリンク] -> 外部サイトへのリンク

[[collapsible show="+ テキストを表示" hide="- テキストを隠す"]]
[テキスト]
[[/collapsible]]
||~ 列1 ||~ 列2 ||~ 列3 ||
||内容 ||内容 ||内容 ||
||内容 ||内容 ||内容 ||
[[>]]
[[module Rate]]
[[/>]]
**アイテム番号:** SCP-XXX-JP

**オブジェクトクラス:** Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)

**特別収容プロトコル:** [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]

**説明:** [SCPオブジェクトの性質に関する記述]

**補遺:** [SCPオブジェクトに関する補足情報]
[[footnote]]ここに脚注や解説など[[/footnote]]