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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは標準収容室内に収容されます。花弁の枯死の兆候を常に監視し、1日おきにDクラス職員によって剪定、採取を行ってください。この時Dクラス職員は健康状態が良好であるものから選ばれます。

説明: SCP-XXX-JPは1920年代に即身仏化したと見られるモンゴロイド女性です。蒐集院による1927年5月██日の初期収容時、SCP-XXX-JPは京都府の██山中にてザクロ(Punica granatum)の樹下に造られた御堂に安置されていました。また発見当時SCP-XXX-JPの側にはザクロの樹の枝に縄をかけて縊死したモンゴロイド男性の遺体が存在し、遺体の大部分は鳥獣に摂食され白骨化していたことが記録されています。この遺体には犬歯の大幅な伸長、歯列の変化、前頭骨からの複数本の隆起及び尖鋭化などの身体的異常が見られました。

SCP-XXX-JPの体表面には未知の蔓バラが生育しており、SCP-XXX-JPを中心とした同心円状に広がっています。葉、茎については通常のラージ・フラワード・クライマー系統の蔓バラと同様ですが、ロゼット咲きの花弁はヒト骨格筋組織で構成されており、これらはSCP-XXX-JP本体と遺伝情報が一致しています。蔓バラは給水及び土壌を必要とせず、201█年現在においても成長し続けています。また花弁に枯死や腐敗は見られず、常に新鮮な状態を保ち続けます。注目すべき点として、これら花弁は通常のヒト骨格筋と比較し含まれる栄養価が非常に高く、カロリー摂取効率において獣肉を遥かに上回ることが挙げられます。

SCP-XXX-JPの蔓バラは日没以降に成長、開花することが確認されています。しかしSCP-XXX-JPの半径5メートル以内に栄養失調及び飢餓状態にある実体が存在する場合、いかなる時間帯においても蔓バラはその実体に向けて急激に成長し、伸長部位におよそ15輪が開花します。

補遺: 以下、初期収容時に蒐集院が回収したSCP-XXX-JPに関係すると見られる石榴倶楽部構成員の記した手紙です。

前略 浮田様

暫く会合に顔を出せず大変申し訳ございません。大層お気にかけてくださり何度か使いをお送りいただいたと聞きます。私なぞのためにありがとうございます。誠にご心配をおかけいたしました。

結論から申し上げれば、彼女は外法に手を出しました。

しかし即身成仏です。彼女は紛うことなき布施の菩薩と相成りました。木乃伊になっても、彼女は神々しさを湛えたままです。世界一美しい木乃伊などという触れ込みの写真を見たことは何度かございますけれども、それよりずっとずっと美しく見えます。

彼女は人肉の薔薇を咲かせます。愛を施す花に他なりません。どうかこの肉を現世の貧しく飢える人のため、そして餓鬼道の哀れな人々の供養のために、とこしえの法会をと、それが彼女の遺言でございました。

ですが私には、どうしても出来なかったのです。

彼女の献身を散々利用して裏で舌を出していた、あんな奴らのために彼女は人としての生を辞めてしまった。この聖女の祈りの真摯さをどうせ理解も出来ぬくせにと、尊い彼女の血肉を与えることがひどく惜しくなってしまったのです。それで私は彼女を手の内に隠してしまいました。

吉祥木たる石榴の下に、卑しい餓鬼は集えぬがゆえ。

しかし石榴の樹下においても、彼女は花を咲かせることを終ぞ止めることはございませんでした。思うに私の歪な心こそ真に哀れな餓鬼であると、万物へ向ける慈悲が私にも同様に注がれていたのではないでしょうか。最初から分かっていたことです。彼女は決して、私の側に降りてくることなどない。遥か彼方にいるのだから。

私は夜毎に薔薇を摘み、朝も夕も食しました。永遠に続くはずであった施餓鬼会を日々踏み躙っておりました。私だけの彼女にするために。私の肉、血潮を彼女で構成するために。叶わぬものと知りながら!彼女で出来ているかと思うと髪を、爪を切るのが恐ろしく、厭わしくなりました。背徳と、煩悶と、悔悟と、厭悪と、恋慕、憧憬、独占欲、そういったものがない交ぜになって、私を責め立ててくるのです。恨むべきは浅ましく恋に狂った私の愚かさ……しかし逃れる事の出来なかった、舌へ、鼻へと届く血潮の滴りの芳しさ……。

今や此岸は薔薇満ちる地獄です。私こそがその中心の鬼なのでございます。これは比喩ではありません、私は日々自分が人でなくなっていくことに怯えているのです。

遂に仏罰すら私には下りませんでした。

薔薇の棘がどれだけ身を苛み傷付けようとも、彼女は自らの肉を捧げ続けるでしょう。苦難の中にこそ慈愛の花は咲き誇り、地に満ち、法会は永遠に続くのでしょう。なんと荘厳な光景でありましょうか!

私はこれからあの石榴の下で首を括るつもりです。拙いものですが私なりの、彼女の献身を侮辱してしまったことに対する償いです。全て私が招いたことです。彼女に一切罪はございません。私が自らの悪によって鬼とまで化し、彼女の悲願を閉じ込めたのですから。これ以上の生は最早、耐えられないのです。

それではさようなら。次の椎名に、次の次の椎名に、どうぞよろしくお伝えください。今までお目をかけていただきましたこと、お礼を申し上げるにはどれほど言葉を尽くそうと足りません。どうか死にゆく愚かな私をお赦しくださいませ。

草々不一 椎名