実験記録1 - 日付20██/12/27
対象: SCP-XXXX-JP
実施方法: Dクラス職員1名(以下Aと記載)をSCP-XXXX-JPと5分間対話させる。
話の内容は問わない。
結果: 2分ごろからSCP-XXXX-JP-1が発現、対話というよりAが一方的に話し続ける形になった。話し始めはお互いの好物や趣味を話していたが、途中からAの不幸な身の上話に変わった。
退室時、AはSCP-XXXX-JPと離れることをためらったが、素直に部屋を出た。
対話終了後、Aのメンタルチェックが行われ、ストレス値の低下が確認された。
Aは対話について、「楽しかった、なんだかスッキリした」と回答した。
イヴァン博士のコメント: 条件を変えながら地道にやっていく。
実験記録2 - 日付20██/12/28
対象: SCP-XXXX-JP
実施方法: Dクラス職員1名(以下Bと記載)をSCP-XXXX-JPと20分間対話させる。
あらかじめ小学生から大学入試レベルの数学の問題30問が書かれたプリントを渡しておき、話の内容はそれに関することのみに限定。それ以外の会話は禁止する。
結果: 6分30秒ごろまでは問題の解法についての相談をしていたが、それ以降はSCP-XXXX-JP-1が発現、Bが一方的に自身の過去の罪状について早口でまくし立てた。3度に渡る警告を行ったがBはそれを無視。かなり渋っていたが、なんとか11分48秒の時点で退室させた。
SCP-XXXX-JPはBを引き留めるような素振りを見せたが、それ以上の行動は起こさなかった。
Bにはメンタルチェックが行われ、ストレス値、不安感の低下が確認された。
Bは対話について、「居心地がよかった」と回答した。
イヴァン博士のコメント: SCP-XXXX-JPの特異性は、人間の「話したい」という欲求に深く作用するようだ。
ちなみに今回の実験はSCP-XXXX-JPの知能検査も兼ねていたのだが、SCP-XXXX-JPは中学2年生レベルの問題でつまづいていた。
実験記録3 - 日付20██/12/29
対象: SCP-XXXX-JP
実施方法: 会話が得意ではないDクラス職員1名(以下Cと記載)をSCP-XXXX-JPと対話させる。時間は無制限、話の内容については指定せず。
結果: 58秒からSCP-XXXX-JP-1が発現。Cの自分語りが始まり、以降1度話されたことを何回か繰り返しながら、6時間52分に渡って対話が続いた。
SCP-XXXX-JPは退室するCをにこやかに見送った後、疲弊を理由に翌日の実験の延期を希望したため、これを了承。
Cにはメンタルチェックが行われ、ストレス値、暴力性の大幅な低下、同時に自己肯定感、記憶力、集中力、共感性の上昇が確認された。元々うつの傾向があったがそれも回復した。
Cは対話について、「少し遅いけど、素敵なクリスマスプレゼントを貰った」と回答した。
イヴァン博士のコメント: 何度もSCP-XXXX-JP-1を発現させてきたが、今のところ該当者がSCP-XXXX-JPに僅かな執着を見せること以外に危険さは感じられない。
これからの実験結果にもよるが、SCP-XXXX-JPの特別収容プロトコルについて、見直しの余地がありそうだ。
実験記録4 - 日付20██/12/31
対象: SCP-XXXX-JP
実施方法: 発声能力、視力、聴力を失っているDクラス職員それぞれ1名(以下D、E、Fと記載)を、SCP-XXXX-JPと個別に5分間ずつ対面させる。
Dの結果: 始めSCP-XXXX-JPはDの様子に戸惑う様子を見せたものの、十字を切り、Dの発声能力の回復を祈ったのち、イエス・ノーで答えられる質問をDクラス職員に投げかけた。
Dはその質問に首を縦や横に振って答えていたが、2分経ったころからSCP-XXXX-JP-1を発現。ジェスチャーや手話でSCP-XXXX-JPに何かを伝えようとし始めた。そしてその内容がSCP-XXXX-JPに伝わっていないことが分かると、待機していた警備担当が所持していたボールペンを奪い、筆談を始めた。内容は自身が遭遇した事故についてだった。
Eの結果: SCP-XXXX-JPはDの場合と同じようにEの回復を祈った。Eは1分18秒ごろからSCP-XXXX-JP-1を発現、盲目ゆえの苦痛を語った。
Fの結果: SCP-XXXX-JPはD、Eの場合と同じようにFの回復を祈った。FとSCP-XXXX-JPは筆談でやり取りしていたが、2分5秒ごろにSCP-XXXX-JP-1が発現。Fは自身の聴力について語った。
対話終了後、D、E、Fのメンタルチェックが行われ、全員のストレス値の低下が確認された。
また、Dの発声障害は心因性のものだが、対話後からゆっくりと回復の兆しを見せている。
D、E、Fは対話について、「今日ほど声が出せないことを嘆いた日はない」、「また話したい」、「素晴らしい時間だった」と回答した。
イヴァン博士のコメント: SCP-XXXX-JP-1は、SCP-XXXX-JPの姿もしくは声のみでも発現する。
実験記録5 - 日付20██/1/2
対象: SCP-XXXX-JP
実施方法: Dクラス職員1名(以下Gと記載)をSCP-XXXX-JPと5分間、お互いの姿が見えない状態で筆談で対話させる。
対話中は聞き役に徹し、こちらから話題を投げかけてはならない。
結果: 始めSCP-XXXX-JPは聖書の文について伝えていたが、2分40秒ごろからSCP-XXXX-JP-1が発現、Gが両親に受けた虐待について一方的にSCP-XXXX-JPに語りだした。
退室時、GはSCP-XXXX-JPの書いた文章に対して執着を見せたが、素直に部屋を出た。
対話終了後、Gのメンタルチェックが行われ、ストレス値の低下が確認された。加えて、Gは幼少期の虐待を原因とする入眠困難やフラッシュバックなどのPTSDに悩まされていたが、それらの症状が大きく軽減されたとのこと。
Gは対話について、「こちらから話すなという命令はきちんと頭の中にあった。でも、どうしても我慢できなかった。この苦しみから解放されたかった」と回答した。
イヴァン博士のコメント: SCP-XXXX-JP-1は、SCP-XXXX-JPとコミュニケーションがとれさえすれば誰にでも発現するようだ。
そして、SCP-XXXX-JPの特異性は職員のメンタルケアにとても有効だということも確認できた。
その旨を書いた報告書を、近々上に提出するつもりでいる。
実験記録6 - 日付20██/1/3
対象: SCP-XXXX-JP
実施方法: Dクラス職員3名(以下H、I、Jと記載)をSCP-XXXX-JPと同時に5分間対話させる。
話の内容は問わない。
結果: 52秒の時点でH、1分32秒の時点でJ、2分44秒の時点でIにそれぞれSCP-XXXX-JP-1が発現。全員が競うように不幸自慢をした。
退室時、H、I、Jは誰が最後まで部屋に残るか牽制しあっていたが、同時に部屋を出た。
対話終了後、H、I、Jにはメンタルチェックが行われ、全員のストレス値の低下が確認された。
H、I、Jは対話について、「5分間は短すぎる」、「楽しかった」、「今度はマンツーマンで話したい」と回答した。
イヴァン博士のコメント: SCP-XXXX-JP-1の発現には、会話量が密接に関係しているらしい。口下手で聞く側に周りがちなHには早く発現し、他人の話を遮るくせのあるJには最後に発現したのがその証拠だ。
20██/1/5追記
SCP-XXXX-JPの収容プロトコルについて改定が行われた。