アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPとSCP-XXX-JP-1は緩衝材で挟み、個別の不透明な箱に入れて保管してください。SCP-XXX-JP-1αの箱は開けないでください。現在SCP-XXX-JPの加工は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは直径10cm程度の光沢のない黒色のガラス玉です。不審死した占い師の家に飾られているところを発見されました。融点や硬度、密度などの物理的性質は一般的なガラスとほぼ同じですが、あらゆる波長の電磁波を完全に吸収します。
SCP-XXX-JP-1は、SCP-XXX-JPの表面を削り取った17個のガラス片と、SCP-XXX-JPのガラス片を一般的なガラスと溶かし合わせて生成した91枚のガラス板の総称です。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPが含まれる量に応じて遡った過去の景色が映されます。この性質から、SCP-XXX-JPが黒いのは宇宙誕生前の景色を映しているからであるという仮説が立てられましたが、以下の実験を踏まえた上での再検討が求められています。
実験記録XXX-1 - 日付████/6/2
実験内容: SCP-XXX-JPの光への干渉に関する観察
実施方法: SCP-XXX-JPの表面を削り取り、光の通過特性を観察する。
結果: SCP-XXX-JPを薄く削り取ると、一般的なガラス片のように透明のように見える。しかし、試料に当てる光の強さを変化させても通過する光の強さは一定である。通過した光を解析すると、弥生時代のものと推測される服装を着て走り回る青年が映っていることが分かった。
この観察の後、研究員の不注意により試料が2つに割れた。これを観察すると、片方には平安時代と思われる景色が、もう片方には鎌倉時代と思われる景色が映されていた。
分析: SCP-XXX-JPが映像情報を記録しているか、過去を映す性質があるか不明である。SCP-XXX-JPの物性について引き続き調査する。
実験記録XXX-2 - 日付████/6/9
実験内容: SCP-XXX-JPから得た試料の大きさと映す景色の関係について
実施方法: SCP-XXX-JPから1μgまでの様々な質量の試料を作り、映し出される景色を観察した。景色を観察できない微小な資料については、一般的なガラスと溶かし合わせて10cm四方のガラス板を形成し観察した。
結果: 15個の試料と90個のガラス板を作成した。試料は質量に比例した時間だけ遡った過去の景色を見せた。映している場所はガラスを通した反対側であり、遡る時間は1μgあたり約4000年である。このSCP-XXX-JPの異常性はガラスと溶かし合わせても失われることはなく、ガラス板はSCP-XXX-JPが含まれる量に応じた時間遡った過去を映した。
最も短い遅延を見せるガラス板は実際より10ミリ秒の遅れを達成している。また、1週間前の景色が映し出されるガラス板には、今回の実験中に前回の実験の様子が映し出されていた。
分析: 試料が映すのは過去の実験室のある場所の景色であるが、地球は回っており、宇宙は膨張している。過去の同じ場所を映すならば、それは地球の外である。SCP-XXX-JPがなぜ地球を基準に座標系を決定しているのか不明である。
実験記録XXX-3 - 日付████/6/16
実験内容: SCP-XXX-JPが持つ座標系について
実施方法: SCP-XXX-JPから1.13g削り出し、ガラスと溶かし合わせて10cm四方のガラス板を生成する。地球の誕生の瞬間を観察し、SCP-XXX-JPが地球座標を持つ理由を探る。
結果: ██研究員が誤った質量のSCP-XXX-JPを配合し、実験は失敗した。誰も気付かずにガラス板SCP-XXX-JP-1αが完成したが、これを覗き込んだ██研究員は記憶処理を催促し、その後[編集済]
分析: これ以降の実験を中止する。
補遺 SCP-XXX-JPを用いて実験記録XXX-3の実験を再確認したところ、██研究員が国際単位系グラム[g]で測定すべきところを帝国単位系ポンド[lb]で測定していることが分かった。よって実際のSCP-XXX-JP-1αのSCP-XXX-JP含有量は1.13lb (SI換算で約513g)である。実験記録XXX-2の結果を踏まえると、SCP-XXX-JP-1αは約2兆年前の景色を映していると考えられる。これは宇宙の誕生と考えられている138億年より前であり、██研究員が見たものを予想することは難しい。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを含む学校は廃校となっており、敷地は財団が管理しています。校舎をコンクリートの壁で囲んでいます。職員は壁の周りを見張り、壁に人を近づけないでください。敷地内に侵入しようとする人物にはカバーストーリー「水質汚染の調査」を使用しSCP-XXX-JPから遠ざけてください。
説明: SCP-XXX-JPは100人程度の生徒が通っていた静岡県██町の私立中学校の教室です。SCP-XXX-JPの外から見ると一般的な教室であり、通っている生徒や教員に異常性はありません。SCP-XXX-JPに入る人間に隠しカメラを仕掛けると、教員と生徒およびSCP-XXX-JPに入った職員が宗教儀式をしているところが撮影されます。ただし、教員や生徒に依頼して撮影した場合や職員がSCP-XXX-JPに入って撮影した場合は授業風景が録画されます。
宗教儀式の詳細は次の通りです。教員が30 cm程度の赤いカピバラの石像を教室の中央に置きます。生徒達は赤いペンキを被り、石像の周りで輪になります。全員が輪に入ると、生徒達は掛け声とともに腰を振りながら両手を交互に上げます。この間に教員はある文言を唱えながら手を合わせ石像に祈りを捧げます。祈りの文言の言語は、かつてアフリカ北部の███族が使用していた言語に類似しています。また、儀式に使われた石像は現在まで発見されていません。
███族は、かつてアフリカ北部で生活していた民族です。現在ではこの民族を名乗る人物はおらず、絶滅したと考えられています。この民族には固有の宗教があり、教義や儀式の方法まで詳細にまとめられたバイブルが存在しますが、民族以外の人間に見せることはありません。この民族は絶滅する直前までこの宗教を信仰していましたが、儀式は覚えるだけで実際に行うことはありません。そのため、外部の人間が収穫祭や葬式を含めた儀式を見た例はありません。
SCP-XXX-JPは生徒の親の通報によって発見されました。通報者の子供は担任に虐待を受けていると親に訴えており、裁判での証拠を押さえるために隠しカメラを仕掛けたと報告しています。その後の調査により、この学校の理事長の名前は自治体の資料に存在せず、国籍不明のビジネスマン███・██████の偽名であることが分かっています。これによってSCP-XXX-JPを含む学校を廃校にし、敷地の管理に成功しました。以下は校舎内の調査の記録です。
██博士のSCP-XXX-JPを使った実験ノート
日時: ████/1/20
撮影方法: D-XXX-1がSCP-XXX-JP内に入り授業風景を撮影した。
結果: カメラには授業風景が撮影された。D-XXX-1はSCP-XXX-JP内の授業は一般的な授業を聞いたことを報告している。
分析: 外部の人間が入ることでSCP-XXX-JPの異常性が現れなくなると予想。
日時: ████/2/9
撮影方法: SCP-XXX-JPの生徒であった██ ██氏に撮影を依頼した。
結果: 授業風景が撮影された。██ ██氏はその日の授業内容をまとめたノートを所持していた。
分析: 異常性は撮影者が内部の人間か外部の人間かという違いに依存しないと考えられる。
日時: ████/2/21
撮影方法: SCP-XXX-JPの生徒であった██ ██氏に隠しカメラを仕掛けた。
結果: カメラには宗教儀式が撮影された。D-XXX-1が映像に映り込んで儀式に参加していた。D-XXX-1は実験中に財団施設内にいることが確認されている。██ ██氏は授業を受けただけであることを報告した。
分析: SCP-XXX-JP内の授業を聞いたことのある人間が宗教儀式をする映像が撮影されると考えられる。異常な映像が撮影される可能性と異常な映像にすり替えることになる可能性がある。
日時: ████/3/5
撮影方法: SCP-XXX-JPの撮影をするD-XXX-2に隠しカメラを仕掛け、SCP-XXX-JPの外から固定カメラでD-XXX-2を撮影した。実験中は財団施設内でD-XXX-1を監視カメラで撮影した。
結果: D-XXX-2が持っていたカメラには授業風景が、隠しカメラには宗教儀式が撮影された。D-XXX-1およびD-XXX-2が宗教儀式に参加している様子が映っている。宗教儀式の途中で生徒の1人が隠しカメラに気づき、カメラに向かって「我々は大いなる█████に帰依している。変えられない事実だ。」と語りかけた。この生徒に聞き取りを行ったところ特に異常はなかった。D-XXX-2にも異常性がないことが報告されており、隠しカメラの映像ではD-XXX-2がカメラに細工した様子はない。SCP-XXX-JPの外のカメラはD-XXX-2が教室で授業風景を撮影している一部始終を捉えており、隠しカメラに気づいた様子はない。また、D-XXX-1は監視カメラの画角から離れることはなく、異常もなかった。
分析: 映像が人間によってすり替えられた可能性はない。また、SCP-XXX-JPに入ったことのある人間は撮影時に入っていたかに関わらず映像に映される。彼らが信仰する宗教は不明である。
日時: ████/4/2
撮影方法: SCP-XXX-JPを含む学校が廃校になった後、D-XXX-3に同じように撮影させ、隠しカメラを仕掛けた。SCP-XXX-JPの外から固定カメラでD-XXX-3を撮影した。
結果: D-XXX-3が持っていたカメラ及び固定カメラには誰もいない教室が映された。隠しカメラには生徒と教員、D-XXX-1からD-XXX-3が宗教儀式をしている様子が撮影された。儀式が終わった後、教員がカメラに向かって[編集済]と言い放った。
分析: [編集済]
これ以降、SCP-XXX-JPを使った実験は禁止する。
補遺1: SCP-XXX-JPを含む学校の理事長室から███・██████理事長が書いたものと思われる文書が発見されました。以下はその内容です。
日本の道徳教育はなっていない。道徳と総合の違いを知っている中学生がどれだけいるだろう。生徒が耳触りのいいことを言えば評価する教師どもも問題だ。他人の本質と向き合わず、目に見える問題さえなければいいと思っている。自分たちは先進国の国民だと誇りに思っているようだが、その実どうしようもない野蛮人ばかりだ。
だが、教師としての腕が鳴る。私はずっとプライドだけは一人前の野蛮人を探していたのだ。彼らには伸びしろがある。自分たちの根本的な間違いを認識さえすれば、すぐにそれを受け入れて正そうとする。幸運にも私には█████神がついている。生徒たちに過ちを認めさせることはそう難しくない。
補遺2: ███族の廃墟から発見されたバイブルを手に入れることができました。以下はSCP-XXX-JPに関するバイブルの引用の和訳です。
我々を見守るのはカピバラの姿をした █████神である。神は食料や財産のあるまやかしの世界には存在せず、自然の法則が支配する真実の世界に存在する。よって、まやかしの世界で儀式を行う必要はない。
[ー中略ー]
我々が行う儀式は一つである。酋長が祈りを捧げる間に神の化身たるカピバラの血を浴び、█████神を象った石像の周りで踊りなさい。
███族の儀式とSCP-XXX-JP内の儀式は類似しています。███族の生き残りである可能性を視野に入れ、███・██████理事長を捜索していますが、手掛かりは得られていません。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが興味を示している資材とともに収容室に保管してください。Dクラス職員2名以上が部屋にSCP-XXX-JPがいることを確認し続けてください。Dクラス職員はSCP-XXX-JPとノック1回の「yes」とノック2回の「no」のコミュニケーションのみ認められています。それ以外のコミュニケーションは認められていません。また、Dクラス職員はテレビのチャンネルを変える、本のページをめくるなどのSCP-XXX-JPの要望に応じてください。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPとは別の収容室に収容されています。SCP-XXX-JP-1を定期的に検査し、触覚に異常がないか確認してください。SCP-XXX-JPに収容違反が起こった場合、SCP-XXX-JP-1に生命活動が停止しない程度の攻撃が許可されています。
説明: SCP-XXX-JPは他の生物の触覚によってのみ知覚されます。透明かつ無味無臭であり音を立てません。また、あらゆる物理センサに反応せず、他の物体に触れるとすり抜けるため、触覚以外で存在を確認する方法はありません。触れたときの感覚はありますが、押したり握ったりしようとするとすり抜けるため、形状や大きさは不明です。SCP-XXX-JPに触れられた職員は「柔らかく摩擦のないゴムのような感触」と報告しています。機嫌を損ねると職員を叩くことがありますが、職員が怪我をした例はありません。
SCP-XXX-JPは███市内の施設にある映画館で発見されました。SCP-XXX-JPは職員の所有するスマートフォンのインターネットブラウザに興味を示したため、スマートフォンとともに財団の施設に収容しました。
日本語を理解し、発見した時点で五十音表を通してコミュニケーションを取ることが可能です。報告書を書いている現在ではモールス信号を用いてコミュニケーションを取ることもできます。
補遺: 2/13 インタビュー記録
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: ██研究員
付記: SCP-XXX-JPはモールス信号で応答している
<録音開始>
██研究員: こんにちは、SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP: こんにちは しょくいんさん
██研究員: あなたは五感はありますか?
SCP-XXX-JP: あるとおもいます わたしはひかりを とおすので みているという ひょうげんが ただしいかは わかりませんが
██研究員: あなたは自分の姿を見ることができますか?
SCP-XXX-JP: みえません どこからどこまでが じぶんなのか じぶんでも わからないんです
██研究員: ここで不自由していることはありますか?
SCP-XXX-JP: あたらしいしょうせつが ほしいです このまえもらったほんは よみおわってしまいました
██研究員: そのことについては報告します。あなたは自分の生まれについて記憶はありますか?
SCP-XXX-JP: きがついたら あのえいがかんに いました さいしょは ことばもわからず えいがをながめていました
██研究員: では言葉は誰に教わったのですか?
SCP-XXX-JP: えいがをみているうちに わかるようになりました ぶんかやしゃかいのことも おぼえました
██研究員: 映画館にいるとき、人間に触りましたか?
SCP-XXX-JP: さわったことはありますが みんな きみわるがるので やめました そういういみでは ここは いいところです さいしょはみんな おどろきますけど すぐなかよくなれるんですよ
██研究員: そうですか。
SCP-XXX-JP: でもときどき じぶんはなにものなのか というぎもんに かられるんです たぶんあなたたちも そのこたえを もとめているんですよね できることなら ちからになりたいです
██研究員: わかりました、以上で終了です。
<録音終了>
追記: ████/2/14 SCP-XXX-JPと頻繁にコンタクトを取っていた女性のDクラス職員が複数回に渡りSCP-XXX-JPと擬似性行為を行っていたことが発覚しました。以降この職員をSCP-XXX-JP-1と呼称します。SCP-XXX-JP-1は6ヶ月に渡って異変はなく腹部が膨れるなどの妊娠の前兆もありません。しかしSCP-XXX-JPの性質よりSCP-XXX-JPの子供が物質に干渉しないと考えられるため、妊娠の前兆を見せないで出産する可能性があります。そのためSCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPと別の部屋に収容しています。以降、SCP-XXX-JPを収容する部屋は同時に2名以上で入ることを義務付け、Dクラス職員は五十音表やモールス信号などでSCP-XXX-JPとコミュニケーションすることを禁止しています。以下は事件発覚直後のSCP-XXX-JP-1へのインタビュー記録です。
対象: SCP-XXX-JP-1
インタビュアー: ██研究員
<録音開始>
██研究員: 久しぶり、少しは落ち着きましたか?
SCP-XXX-JP-1: まさか。もし貴方達が許すなら、いつでも自殺できるわ。
██研究員: それを許すことはできませんが、なぜ自殺をしたいと思うのか教えてくれますか?
SCP-XXX-JP-1: 決まってるじゃない、私は貴方達の人質になってしまったのよ?私がいなければトオルは自由でいられたのに。
██研究員: トオルとは、SCP-XXX-JPのことですか?
SCP-XXX-JP-1: そうよ。トオルはそこらの人の皮を被った奴らよりよっぽど人間なの。知ってるでしょ?
██研究員: 確かに、SCP-XXX-JPは人間的です。しかし貴女が人質というのは?
SCP-XXX-JP-1: トオルと私は愛し合っていたのよ。もしトオルが私と関係を持たなければ、トオルはいつでも好きなときに施設を抜け出せたんだわ。
██研究員: なるほど、貴女に何かあっては困るから、SCP-XXX-JPは財団の意思に従うということですか。しかし、貴女を無視して脱出することもできるのでは?
SCP-XXX-JP-1: そうだったらどんなに良かったかしら。でも、それはありえないわ。
██研究員: そうですか、以上で終了です。
<録音終了>