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水晶球の中を泳ぐSCP-XXX-JP-1

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8169の低危険度物品収容室に静電気を貯めぬ種類の布類で個々に被覆して保管されます。実験などで使用される際に、特別なクリアランス権限を持つ職員の許可は必要ありません。 事案報告-1を受けて、レベル2クリアランス以上の権限を持つ職員の許可を得ずしての利用は禁止されることになりました。また同時に、複数個体を用いての利用に限り、更に上位の権限を持つ職員の許可が必要です。
 新規に発見されたSCP-XXX-JPを追加保管する際には、なるべく真球に近い形に磨き上げた鉱石を使用してください。その際に利用する鉱石の種類は、観測・監視の観点から水晶などの透明度が高いものを選択してください。そのうえで個体ごとに一つずつの鉱石を割り当て、またそれらは最低でも五メートル以上の間隔を空けて保管してください。

説明: SCP-XXX-JPは“鉱石内を移動する生物”であると推測されているオブジェクトです。主に一般に広く知られるような魚類やウミヘビ科などの爬虫類と非常に酷似した形態を保持しています。20██年現在、財団は総158種・計203体を収容しています。
 また財団での保管は以前までは各国支部にて各々に行っておりましたが、20██年に日本支部にて史上初の(判明している)全種類を用いた実験を行うに当たり、各国支部から日本支部へとオブジェクトの移譲とナンバリングの統一再分類がなされました。

 捕獲されたSCP-XXX-JPは鉱石内を運動する活動のみを常に示しており1、食物摂取や繁殖行為などについての詳しい生態は未だ判明しておりません。また自然環境における観測も同様に成功しておりません。
 一方でSCP-XXX-JPは古くから確認されてきたオブジェクトのひとつであるとされており、現存する最も古い記録としては11██年に蜀2で著された伝奇集『███』が挙げられています。財団やその各支部前身機関におきましても長期間の収容物となっており、いずれの記録においてもSCP-XXX-JPがこれまでになんらかの凶暴性や直接的な危険性を示した事例はありません。

 しかしながら同時に、現在はその性質上から一般の人々の目に触れる可能性が高いことが懸念されています。SCP-XXX-JPはごく一部の(そうした不可思議なものを好む)好事家たちの間では、透明度の高い鉱石を利用すれば非常に風雅な観賞品になることで知られており3、そのような一般市民を対象にした密流通が古くから盛んとなっています。
 財団では以前より、オブジェクトを保有するそうした人々に対して財団への譲渡を迫り、またそれが[編集済み]などの理由によって難しい場合には「むやみに多くの人目に触れさせない」ことを徹底して誓約させるなどを行ってきました。ところが近年に入り、そのようなオブジェクトの一般市民へ向けた密流通が、特にSCP-XXX-JPは増加の傾向にあります。4
 この事実による情報暴露の危険性が再評価され、20██年に日本支部における統合管理に移行する際、SCP-XXX-JPは担当職員らの申請によりそれまでのSafeクラスからEuclidクラスへと変更されました。

 過去には「ただ泳いでいるのみ」としか捉えられない活動を見せるSCP-XXX-JPに対し、「生物の姿に見えるだけの“現象”や、それに類する“無生物”なのではないか」とのような仮説も多数述べられてきましたが、20██年に行われたいくつかの実験において、明らかな生物的対応が見られたとされることから主流ではありません。
 現在ではそれら実験の結果を受け、SCP-XXX-JPは鉱石内部においてのみ存在することのできる、主に霊子によって構成された幽体生物であることが推測されています。

実験記録XXX-1 - 日付20██年06月30日

対象: SCP-XXX-JPの158個体(以降、SCP-XXX-JP-1~158、もしくは対象と表記)
目的: SCP-XXX-JPの生態の調査
実施方法: 対象を現在する石英中からそれぞれ別個に用意した水晶中へと移入させ、重量等の遷移を記録。その後、移動させた水晶を削ることで対象をそれぞれ様々な気体や液体中に追い出し様子を観察。
結果: 対象を移動させた水晶はすべての物に前後で重量等の変化は見られなかった。また大気や液水に限らず、鉱石以外に露出させた対象はすべてその接触部分が気化によって消失した。その後、欠損した部位は鉱石内で時間が経過すると、個体差はあるが、きわめて短時間で修復した。
分析: どうやら重量を持たず、鉱石内でしか存在を維持できぬらしい。やはり根本的な部分で特殊な霊体に由来するオブジェクトであると推測される。治癒能力もしくは修復能力は高いようだ。また、鉱石外に露出することを極端に忌避する様子からは、死を恐れる生物的対応が垣間見える。――████博士

実験記録XXX-2 - 日付20██年07月03日

対象: SCP-XXX-JPの158個体(以降、SCP-XXX-JP-1~158、もしくは対象と表記)
目的: SCP-XXX-JPの生態の調査
実施方法: 対象を現在する水晶中から、様々な種類の鉱石及び様々な形状に加工された鉱石へとそれぞれ移動させて様子を観察。
結果: 鉱石の種類については、対象の各個体が象る種によって若干の好みが分かれているらしき様子が確認された。また、対象の象る種には限らず、一貫して球体形状の鉱石内に存在する場合において最も大人しい活動を見せた。
分析: 象る種によって鉱石の種類に若干の好悪があるようだが、どうやら水晶はあまり意見が割れないようだ。また同様に例外なく球形を好むが、これは真球に近ければ近いほど良いらしい。――████博士

実験記録XXX-3 - 日付20██年07月05日

対象: SCP-XXX-JPの158個体(以降、SCP-XXX-JP-1~158、もしくは対象と表記)
目的: SCP-XXX-JPの生態の調査
実施方法: 対象を個別収容の状態から複数個体の収容へと変更し、様子を観察する。
結果: 特別な反応は得られなかった。
分析: SCP-XXX-JPは同オブジェクトの別個体に対して基本的に無関心であるようだ。ただ、自然海洋においては互いに捕食者と被捕食者にあたるであろう種別の組み合わせであっても反応は揺るがなかったことから、やはり姿は似ていても魚類とは全く違う生態を持つようである。――████博士

実験記録XXX-4 - 日付20██年09月07日

対象: SCP-XXX-JPの158個体(以降、SCP-XXX-JP-1~158、もしくは対象と表記)
目的: SCP-XXX-JPの生態の調査
実施方法: 複数個体での収容を実施した対象の経過を観察する。これは実験記録XXX-3以降、24時間ごとに確認が繰り返された。
結果: 個体同士の反応に関しては依然として変化はみられなかったが、一部の個体に体積の微小な増加が現れていることが確認された。
分析: ここ二ヶ月ほど特別な変化は確認されていなかったが、本日にあたり一部の個体が実験記録XXX-1当時と比較して明らかに数cmほど肥大化している様子が発見された。どの時期から増加が開始されたのか不明であるため、当変化と複数収容実験との関係性もまた不明である。ただ同オブジェクトが生物であると仮定するのならば、これは“成長”と呼べるものなのかもしれない。――████博士

付記-1: 長期に渡ってSCP-XXX-JPの調査・実験を担当していた████博士が、20██年03月08日、サイト-8169内の自研究室にて老衰死している現場を発見されました。以後、担当希望者不在のためSCP-XXX-JPの研究は一時凍結されます。

付記-2: 現在、████博士の死に不審な点があるとして、SCP-XXX-JPの再調査が一部職員によって提言されています。

事案報告-1: 付記-2の申請が受理され、付記-1の事案についての再調査が20██年04月10日より開始されました。そして改めた視点による調査の結果、SCP-XXX-JPに関して新たな性質が確認されました。なお、この報告をもちましてSCP-XXX-JPの利用に際し新たな条件が付加されます。
 再調査によって新規に確認された性質は、以下の2点です。

1. SCP-XXX-JPは周囲に存在する(同SCP-XXX-JPの別個体を除いた)生物より、魂魄の霊子を搾取している。吸収率はきわめて微量から始まり、被搾取個体と共有する時間の経過、および同区間に存在するSCP-XXX-JP個体数と共に比例して増大する。確実な搾取効果範囲は未詳だが、後述する性質2の効果を考慮するにそこまで広域ではないと推測される。

2. 前述の性質1を有するにあたり、SCP-XXX-JPは自身の周囲に他生命を誘引する必要が存在すると考えられる。魂魄搾取により衰弱死したと思われる財団職員や一般市民に関する記録から、SCP-XXX-JPは共有する時間の経過と共に、搾取対象へと自身に対する強い執着を抱かせるに至っている事実が確認された。このことから、同オブジェクトにはなんらかの精神作用に関する能力も有されていると推測される。

付記-3: 事案報告-1において新たに確認されたいくつかの性質に際して、SCP-XXX-JPのオブジェクトクラスは特に変動いたしません。根拠としては、魂魄搾取にて衰弱死に至るには(現保有物全数を用いたとして)最低でも8ヵ月ほどの時間を同オブジェクトと共有する必要があると推測されること、および同オブジェクトより齎される精神作用に関してはクラスAの記憶処理で十分に対応が可能であることが挙げられます。
 ただし以後、同オブジェクトを保有する一般市民が確認された場合にはたとえ[削除済み]であった場合においても危険性を説明したうえで回収の対応をしてください。そのうえで応じない場合につきましては、クラスAまでの記憶処理を施すことが許可されています。