アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの近くには常に専用のラップトップを配置しておき、4時間毎に充電するようにしてください。
説明: SCP-XXX-JPは19██年から200█年まで財団のサイト-8181に所属していた片桐山良一清掃員の遺体です。困惑し、呆然としている自分が心底滑稽だ。目の前の、友であり、仲間であり、敵であった人間が血にまみれ、真っ赤に染まっているにもかわらず、悲しみや哀れみの感情を抱く事もなくただただ口をあんぐりと開けている自分がだ。
SCP-XXX-JPはサイト-8181の庭園に2.4m×1.0m×0.5mの大きさの棺に入れられ、埋葬されていました。むしろ、こいつはいつも周りに威張り散らしていたよな、とか、俺との勝負がまだついてねぇのにクソみてぇな病で死んでるんじゃねぇよ、とか、あとからそんなふうに周りの人間と感傷に浸る自分の姿が容易に想像できてさえいる。SCP-XXX-JPの異常性の発見後、サイト-8181内の収容室に棺ごと収容されました。血裁会のクソ野郎共との死闘の抗争をなんとか勝ち抜いて隠れ家に戻って銃の手入れでもしながら2人でバック・トゥー・ザ・フューチャー2を見ていた時に、いきなりだ。
SCP-XXX-JPの異常性は片桐山良一清掃員の死後に発見されました。現状、財団に直接的であり甚大な被害を及ぼす様な異常性は発見されておらず、その異常性を止める手段も、止める必要性も今の所ありません。いきなりすぎたんだ。
SCP-XXX-JPは死後に自分の本名が書かれた媒体の前に姿を現し、SCP-XXX-JPが生前に執筆していた小説「デスペラードズ・デス・パレード」の内容の続きを書き綴っていく性質を持っています。意思の疎通が可能かは不明瞭であり、小説を綴る動作以外はほぼ確認されていません。凉太は細壊病の二型を患っていた。もうすぐお別れの時が来るなんてことはわかってた。
現在,「片桐山良一」と書かれた媒体はサイト-8181で管理されているこの記事のみに留めており、「片桐山良一」と、財団員がこの記事以外の媒体に記す事は処罰の対象となっています。
実験記録██ - 日付200█/11/7
対象: SCP-XXX-JP
実施方法: ██博士の指導の元、Dクラス職員に白紙とペンを渡し、「片桐山良一」と紙に書き記す様に指示。凉太は苦しそうなうなり声を上げ、俺はやっと状況が掴めて来たと同時に凉太を抱きかかえた。大丈夫か、という言葉が喉から出ない。凉太は赤い泥を吐きながらこの世の全てを憎んでいるかの様な眼差しで辺りをギョロギョロと見渡し、その後うって変わって優しい目で俺を見つめた。
結果: Dクラス職員の前に突如SCP-XXX-JPが現れ、紙に文章を書き始めた。その時SCP-XXX-JPが入っていた棺は空になっていた事を確認。その後ペンのインクが切れると、SCP-XXX-JPは実験室から姿を消し、棺に戻っていた。
実験記録██ - 日付200█/11/25
対象: SCP-XXX-JP
実施方法: ██博士の指導の元、Dクラス職員2名に1つずつ████社製のラップトップを渡し、メモ帳を開かせ、同時に「片桐山良一」とタイピングする様に指示。「なぁクソ野郎、俺は死ぬのか・・・?ここまで・・・ここまで成り上がって来たってのに・・・死んじまうのか?」。壊れかけのラジオのように途切れ途切れで、霞んだ声で凉太は言った。
結果: Dクラス職員2名の前にSCP-XXX-JPが1人ずつ現れた。SCP-XXX-JPは自己複製能力を有するとみなされた。驚き尻もちをついたDクラス職員の1人が、SCP-XXX-JPの1人に殴りかかった。Dクラス職員の腕はSCP-XXX-JPの身体をすり抜け、空を切った。2人のSCP-XXX-JPはPCのメモ帳に小説の内容を書き記した。それぞれのPCのバッテリーが完全に消耗されると、2人のSCP-XXX-JPは姿を消し、1人のSCP-XXX-JPが棺に戻っていた。2つのPCに記されていた小説のストーリー展開には差異があった。
「死にたくねぇ・・・ハハッ、こんな時に弱音吐いちまってかっこわりぃったらありゃしねぇな。俺って奴は」。俺はやっと口を開いた。開いたというよりはこじ開けたようなものだが。「俺なんてかっこわりぃなんてもんじゃないぜ・・・ダチ公が今にも死にそうって時に、ただ呆然としてるだけなんだぜ・・・」
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: ██博士
付記: ██博士はSCP-XXX-JPとの意思疎通を試みた。██博士自身が白紙にペンで「片桐山良一」と書き記し、SCP-XXX-JPが現れた後の内容である。以下はその時のインタビュー記録。
<録音開始>
██博士: ・・・こんにちは、SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP: (紙に小説を書いている)
██博士: ・・・話せるかな?
SCP-XXX-JP: (紙に小説を書いている)
██博士: 「片桐山良一」君。
SCP-XXX-JP: (手が止まる)
██博士: 君を知っているよ。このサイトの清掃員だった、「片桐山良一」君だ。
SCP-XXX-JP: (手が止まったまま微動だにせず)
██博士: とても勤勉で、よく働いてくれていたね。研究者や職員からも好かれていた。
██博士: だから、君が亡くなったと聞いた時は私を含めて大勢の人が悲しんださ。
██博士: わざわざ棺に入れて葬儀を行い、施設の庭園に大々的に埋めた事が何よりの証拠さ。
SCP-XXX-JP: (完全に静止する)
██博士: 私は君が仕事一筋で、言い方を悪くすればそれ以外の事なんて頭にない。
██博士: そんな人間だと思ってたけど、まさか1人で小説を書いていたなんてね。
██博士: いやぁ、なんとなく嬉しい気持ちになったよ。
██博士: 君にも密かな楽しみがあったんだね。
██博士: ただ、君に小説を書くセンスはないね。
SCP-XXX-JP: (再び紙に書き始める)
██博士: 展開が早すぎるし、古臭いB級映画か不良映画みたいなセリフ回しはすこし笑えたよ。
SCP-XXX-JP: (██秒間うつむいた後に、姿を消す)
<録音終了>
補遺1: 「俺たちお互いかっこわりぃな・・・ハハハ・・・ハァ・・・あばよ・・・なぁ。」。俺に抱きかかえられた腕の中で凉太は眠った。涙m
補遺2: 日付200█/1/28 SCP-1042-JPの本名「片桐山良一」を財団とは無関係の一般市民が媒体に書き記した模様。
補遺3: 日付200█/2/3 エージェント█の捜査により、岡山県██市██町にて媒体を発見。媒体は追完届との事。