改稿案
・最後を皮膚科医院でなく別のものに変える
→「ハイタリ(ハッタリ)」というタイトルが気に入ってるのでこのオチは残したい
・オチが明かされた時に納得感が欲しい→伏線追加(歯医者にしてはおかしい要素)
・メインの異常性をブラッシュアップ、より不気味に
アイテム番号: SCP-1183-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1183-JPは周囲10 mを有刺鉄線のついた高さ3 mのフェンスで囲い、民間人が接近しないようにしてください。フェンスには人間が接触した際に作動するセンサーと監視カメラを配備し、また、毎日9時から15時の間警備員による巡回を行います。侵入を試みた民間人はクラスA記憶処理を行った後、開放してください。
説明: SCP-1183-JPは██県██村の山奥にある廃屋です。建設年代や所有者などは不明です。平屋建てで内部は「待合室」、「処置室」、「御手洗」の3つの部屋で構成されています。入り口は1つのみで、設置されている看板は大きく劣化しており「鯉」、「医院」、「十五時」という単語といくつかの数字しか確認できません。「待合室」はSCP-1183-JPの入り口にある部屋で、他の2部屋とも扉を通じて繋がっています。しかし「処置室」につながる扉は固く閉ざされており現在まで内部の侵入に成功していません。扉に設けられた覗き窓からは内部に机と椅子、ベッドや一般家庭に見受けられる医療品が確認されています。「御手洗」は洋式便器がある一般的な個室トイレであり、特に異常性は確認されていません。SCP-1183-JPの入り口は毎日9時から15時の間のみ解放され、その時間外ではSCP-1183-JP内部に侵入することはできません。また、15時を超えた時点でその日新しく内部に持ち込まれた、もしくは発生した物体は即座に消失し、その追跡は不可能です。
SCP-1183-JPに人間が侵入して約5分後に、断続的なドリルのような音(以後SCP-1183-JP-A)が「処置室」内部から発生します。SCP-1183-JP-Aの音源は不明ですが、SCP-1183-JP内部にいる人間のみが聞くことができます。騒音計などによりSCP-1183-JPが音として発生していることは確認されていますが、いかなる録音装置や通信機器を使用してもSCP-1183-JP-AをSCP-1183-JP外部の人間は聞くことができません。代わりに録音機器や通信機器には微弱なノイズが観測されます。SCP-1183-JP-Aを聞いた人間(以下曝露者)は約1分後、口腔内にヒトの歯の欠片が発生し始め、その量は時間とともに増加します。最初曝露者は歯の欠片の吐出を試みますが、次第に発生する量に追い付かず窒息死します。SCP-1183-JPからの退出や記憶処理では歯の欠片の発生は停止せず、曝露者の死亡のみによって停止します。回収された歯の欠片は複数人のもので、治療痕やDNAに一致する人物は発見されていません。
SCP-1183-JPは20██年██月██日、多量の歯と白骨死体があるという通報により発見されました。通報者は山中で道を間違い偶然SCP-1183-JPを発見したと証言しており、その証言に不審な点はなかったことからクラスA記憶処理の後解放されています。
以下は発見後、Dクラス職員により行われた調査ログです。
SCP-1183-JP調査ログ
探索者: D-81449(標準仕様のマイクとカメラを所持)
<記録開始>
(D-81449が「待合室」に侵入)
██博士: 内部の様子を報告してください。
D-81449: 了解。入ってすぐ左に靴箱がある。が、スリッパは置いてない。イス……7人くらい座れる長イスが置いてある。さながら病院の待合室だな、受付はないようだが。
██博士: 映像からも確認できています。続けてください。
D-81449: あと奥にドアが2つあるな。札がかかってる……「処置室」と「御手洗」か。入ってみるか?
██博士: では「処置室」に入ってください。
D-81449: わかった。(扉を開けようとする)だめだ開かない。鍵でもかかってんのか?
██博士: 中は見られませんか?
D-81449: えーと……机とベッドが見えるな。ほら。(カメラを「処置室」内部に向ける)
██博士: 確認できました。では「御手洗」に入ってください。
D-81449: こっちは普通に開いたな。見たところただのトイレだ。
██博士: 水道は通って――
D-81449: うわっ!?
██博士: D-81449、どうしましたか?
D-81449: どうしました、っていきなりでかい音なるから……。
██博士: こちらでは音は聞こえていません。どんな音ですか?
D-81449: こんなうるさい音が聞こえてないってのか?どうなってんだ。
██博士: D-81449、音について報告してください。
D-81449: なんか、ドリルみたいな音だよ。歯を削るやつ。ギュッギュイーン、ギュッ、ギュイーンギュイーンて鳴ってる。
██博士: やはり聞こえていません。ただわずかに雑音のようなものが聞こえます。ドリルがあるのですか?
D-81449: いや音はするんだが、たぶん処置室の中だ……でも見えないな。……うん?何か口の中に、砂か?
(何かを吹き出す)
D-81449: ……歯だ。
██博士: D-81449?
D-81449: 細かい歯が出てきた。気持ち悪い……ジャリジャリするぞ。
██博士: まさか歯が削られて?
D-81449: いや、俺の歯は全部ある。なんだまだ残ってんの‥‥か。
(歯を吐き出す)
D-81449: ああ、(罵倒)、なんでまだあるんだ!
(カメラを落とす)
██博士: D-81449、落ち着いてください。
D-81449: (罵倒)、とまんねぇ。ああ!ああ!
(嘔吐音)
██博士: D-81449。応答できますか。
(嘔吐音)
██博士: D-81449、帰還を許可します。
(嘔吐音)
D-81449: 助か、る。
(嘔吐音)
(嘔吐音)
<記録終了>
追記: SCP-1183-JPの前で倒れているD-81449が発見され、間もなく死亡が確認されました。周りには████個のヒトの歯の欠片が散乱していました。
補遺: SCP-1183-JP-Aの発生とともに確認されていたノイズの音声分析を行ったところ、日本語音声への変換に成功しました。その内容は以下の繰り返しでした。
コイブチヒフカイインへ ヨウコソ スワッテオマチクダサイ
現在まで「コイブチヒフカイイン」に該当する施設は確認されておりません。
クレジット
タイトル: 帰りたい、帰りたいと言っていたあのきらめく夏の故郷がもうどこにもないことを、あなたはきっと知っていたはずでしょう
著者: ©Jiraku_Mogana
作成年: 2019
タイトル: 帰りたい、帰りたいと言っていたあのきらめく夏の故郷がもうどこにもないことを、あなたはきっと知っていたはずでしょう
SCP-XXX-JPーAの1人が出現した片又小学校のプール。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの発生に備えて日本国内の全ての小学校のプールは常に監視されます。SCP-XXX-JPが発生した場合、SCP-XXX-JP-Aの確保を行い、周辺住民への記憶処理を行ってください。SCP-XXX-JP-Aが死体で発見された場合、消失地点付近の病院へ搬送し死亡確認を行わせてください。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内で発生する、人間が小学校のプールに転移するイベントです。転移には現実改変に類似した力が働いているものと考えられておりますが、明確な発生プロセスは解明されていません。
SCP-XXX-JPでは条件を満たした対象(以下、SCP-XXX-JP-A)が自殺した際に、その死体を消失させると同時に自殺以前の肉体的に健康な状態のSCP-XXX-JP-Aをその出身小学校(以下、母校)のプール内へ転移させます。SCP-XXX-JP-Aとなる条件は未確定ですが、これまで以下の条件が認められています。
- 30代以上
- 鬱病を発症している
- 日本国内の小学校で初等教育を受けている
- 母校に水が張られたプールが現存している
- 母校で教育を受けていた時期に居住していた家屋が現存していない
- 自殺時に母校から離れた土地で暮らしており、10年以上母校のある土地を訪れていない
- 自殺前に懐古や郷愁を思わせる発言をしている
SCP-XXX-JP発生後、SCP-XXX-JP-Aはプールから退出し、当時の通学路を経由してかつてのSCP-XXX-JP-Aの居住地へと向かう傾向があります。この行動には強制力がなく容易に妨害が可能であることから、異常性はなくSCP-XXX-JP-A自身の意思によるものと考えられています。SCP-XXX-JP-AがSCP-XXX-JP後24時間以内に再び自殺を試みる割合は9割以上です。この自殺によってSCP-XXX-JPが発生した例はありません。
クレジット
タイトル: SCP-XXX-JP – かえりたいと渇望していたのはのどが渇いていたからじゃない
著者: ©Jiraku_Mogana
作成年: 2019
SCP-XXX-JP-A-4が出現した川又小学校のプール。
タイトル: かえりたいと渇望していたのはのどが渇いていたからじゃない
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの発生が確認され次第、SCP-XXX-JP-Aの身元の特定および確保を行い、周辺への記憶処理を行ってください。確保に失敗した場合、SCP-XXX-JP-Aが通学していた小学校へ機動部隊を派遣しSCP-XXX-JP-Aの出現に備えてください。確保されたSCP-XXX-JP-Aは拘束し常に昏睡状態が維持されます。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内で発生する、人間の転移イベントです。転移には現実改変に類似した力が働いているものと考えられておりますが、明確な発生プロセスは解明されていません。SCP-XXX-JPでは対象(以下、SCP-XXX-JP-A)が自殺した際に、その死体を消失させると同時に自殺以前の肉体的に健康な状態のSCP-XXX-JP-Aを各地の水中へ転移させます。SCP-XXX-JP-A出現時に周囲に複数人の声が十数秒間発生します。転移先となる水中はかつてSCP-XXX-JP-Aが訪れた場所であることが判明しており、転移後に聞こえる音声は訪問当時に同行していた人物のものと一致しています。
SCP-XXX-JP-Aとなる人間の共通点として、30代以上で鬱病を発症しており、自殺前に懐古や郷愁を思わせる発言をしていることが挙げられます。SCP-XXX-JP-Aには転移後強い希死念慮と退行が発生します。これにより自殺を行ったSCP-XXX-JP-Aには再び転移が発生します。
補遺XXX-JP.1: インタビュー
以下は3回目の転移で確保に成功したSCP-XXX-JP-A-23に対して行われたインタビューの転写です。SCP-XXX-JP-A-23には自殺防止のための口枷が装着されています。
インタビュアー: それではインタビューを開始します。
SCP-XXX-JP-A-23: (呻き声)
インタビュアー: ではお名前を教えてください。
SCP-XXX-JP-A-23: とおる
インタビュアー: なぜあなたは何度も自殺を試みているのですか?
SCP-XXX-JP-A-23: かえりたいから ばいばい
インタビュアー: どこへ帰りたいのですか?
SCP-XXX-JP-A-23: あっち、あそこに
インタビュアー: もう少し詳しくお願いします。
SCP-XXX-JP-A-23: かえる、きっとかえる
インタビュアー: 質問に答えてください。
SCP-XXX-JP-A-23: さようなら かえります
インタビュアー: インタビューを終了します。
SCP-XXX-JP-A-23: かえらせて
補遺XXX-JP.2: 発生記録
SCP-XXX-JPの発生例として、SCP-XXX-JP-Aとなった████氏(SCP-XXX-JP-A-4)の転移先一覧を示します。最終転移後、SCP-XXX-JP-A-4は行方不明となっています。
発生回数 |
転移先 |
SCP-XXX-JP-A-4との関連 |
発生した声 |
1 |
フィリピン マクタン島ビーチ |
大学の卒業旅行で訪問 |
同行者の笑い声 |
2 |
静岡県 熱海サンビーチ |
沿岸警備のバイトで雇用 |
子供の泣き声と女性の叫び声 |
3 |
三重県 ナガシマスパーランド |
大学の友人との旅行で訪問 |
同行者の笑い声 |
4 |
沖縄県 北谷サンセットビーチ |
高校の修学旅行で訪問 |
同行者の笑い声 |
5 |
福島県 沼沢湖 |
高校の校外授業で訪問 |
同行者の笑い声 |
6 |
東京都 海成中学校プール |
通っていた中学校 |
クラスメイトの笑い声 |
7 |
東京都 上野公園不忍池 |
中学校のクラスメイトと訪問 |
クラスメイトの叫び声 |
8 |
埼玉県 川又小学校プール |
通っていた小学校 |
クラスメイトと先生の笑い声 |
9 |
埼玉県 川又小学校男子トイレ大便器 |
通っていた小学校 |
クラスメイトの笑い声 |
10 |
埼玉県 川又小学校掃除用具倉庫 |
通っていた小学校 |
クラスメイトの笑い声 |
11 |
埼玉県 中津川 排水路 |
小学生時代の通学路 |
クラスメイトの笑い声 |
12 |
埼玉県 川又小学校プール |
通っていた小学校 |
クラスメイトの怒声 |
13 |
埼玉県 岩井産婦人科医院新生児用浴槽 |
出生地 |
新生児の笑い声と女性の笑い声 |
14 |
████氏の子宮 |
母親 |
未確認 |
タイトル: こだわりのわんこそば
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはクッション性の壁で囲まれた小型収容ロッカーに保管されます。収容ロッカーの半径1m以内に椀状の容器は持ち込まないでください。
説明: SCP-XXX-JPは自律行動するそば椀です。側面には「風樹庵」と印字されています。SCP-XXX-JPは不明な方法で地面から約1 m程度の高さに常時浮上しており、空間内を自由に移動することが可能です。また、視覚および聴覚に類する認識を有していると見られ、なおかつイエイヌ(Canis lupus familiaris)と同程度の知能を有していることが推測されます。
SCP-XXX-JPは空の椀状の容器を持つ人間に接近した場合、自身の中にそばに類似した麺約40 gと容器の大きさに合わせた量のそばつゆを生成し、人間が持つ容器に注ぎ入れます。人間がこの麺を完食すると、SCP-XXX-JPは再び麺を生成します。麺の生成は、所持している容器に蓋をすることで停止させることができます。この麺は成分にそば粉が含まれていないことを除けば、通常のそばと形状や味などについて差異はなく摂食可能です。しかし軽度ながら即効的な中毒性を有しており摂食量の増加に伴い重篤な中毒症状を発症します。
SCP-XXX-JPは2018年██月██日、東京都あきる野市の飲食店で麺の過食による5名の急病者が通報されたことにより発見、収容されました。また、店内に設置された監視カメラの映像から先述の異常性が明らかとなりました。映像にはSCP-XXX-JPが窓から侵入する様子も観測されています。発見者には記憶処理を行い、近隣にカバーストーリー「過度な大食い勝負」および「お椀型の新型ドローン」を流布しました。
SCP-XXX-JPによって生成される麺およびつゆは、その組成や形状分析の結果、岩手県花巻市に存在した飲食店「蕎麦処 風樹庵」で提供していたそばとの類似性が見出されました。また「蕎麦処 風樹庵」で使用していた椀とSCP-XXX-JPの外見は同一です。かつて「蕎麦処 風樹庵」があった建物に放置された犬小屋からはSCP-XXX-JPとの関連が示唆される以下のメモが発見されました。
XXX-JP関連文書-01
お元気ですか? こちらは楽しくやっています。
さてそちらにわたしたちのお仲間がうかがっていると思います。
普段は常連のおじさんのそばで楽しく飲んでいるのですが、急にそちらへ旅立ってしまいました。
おじさん曰くやり忘れたことを思い出したみたいです。
歯切れ良い親しみやすい子です。せっかくの縁ですから友達になってあげてください。
補遺: 清水氏に関する調査の結果、娘である工藤涼子氏がSCP-XXX-JPの発見地点の近隣に居住していること、さらに発見以前にSCP-XXX-JPと接触していたことが判明しました。以下は工藤氏に対するSCP-XXX-JPおよび清水氏についてのインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP
日時: 2018年██月██日
場所: 信濃中央新聞社岩手支社ビル04応接室
対象: 工藤涼子氏
インタビュアー: 小柳研究員
<録音開始>
小柳研究員: ではあのそば椀が現れた時のことを教えてください。
工藤氏: 急でしたよ。昼ごはんの準備をしているときでした。息子たちが何か騒いでると思ってリビングに行ったらそこにプカプカ浮いてたんです。そしたらいきなり近づいてきて持ってたカップにいきなりそばを入れたんです。
小柳研究員: 驚いたことでしょう。
工藤氏: ええそりゃあもう。しかもすぐにわかりました。そばの太さ、つゆの色、におい……クソ親父がつくったそばにそっくりだったんです。思わずカップを落としてしまいました。けどカップを拾うとまた蕎麦を入れる。しかもうっとうしいことに私の周りをメリーゴーラウンドみたいにクルクル回るんです。気味悪くなってカップをおもいっきりそば椀に投げつけました。
小柳研究員: 随分と‥‥思い切った行動に出ましたね。
工藤氏: だってあのそば椀、なんというか親父そっくりだったんですもの。変に馴れ馴れしかったり、いやだって言っているのに無理に食べさせようとしたり。
小柳研究員: それからお椀は?
工藤氏: 窓からふらふらと逃げていきました。私が見たのはそれだけです。
小柳研究員: ところでそのお椀について、何か心当たりはありませんか?
工藤氏: 心当たり……ですか。そういえば実家で使っていたものに似ているような……。
小柳研究員: こちらに写真を用意してあります。ご確認いただけますか?
工藤氏: 風樹庵……たしかに私の実家のそば屋で使っていたものです。
小柳研究員: 間違いありませんか?
工藤氏: はい、間違いありません。小さい頃はよく店の手伝いをしていたので、記憶にあります。
小柳研究員: ありがとうございます。風樹庵についての資料があまり見つからないもので、助かりました。
工藤氏: 今はもう無いんですものね。小さい店でした。潰れて当然です。
小柳研究員: 店主……あなたの父親が亡くなったことで閉店したそうです。
工藤氏: ……そうですか。
小柳研究員: それではあなたの父親についてお聞かせねがいますか。
工藤氏: 聞かせてと言われても‥‥長らく会っていませんでしたから。特にお話しできることは。
小柳研究員: 最後に会ったのはいつでしょうか。
工藤氏: 高2の頃でしたから……20年ぐらい前に家を飛び出して以来会っていませんね。死んでいたのも最近知りました。
小柳研究員: 覚えている限りでいいのでお教えください。
工藤氏: まぁ何といえばいいか、クソな親でした。自分勝手で、そばと女しか眼中になくて、娘のことなんか見向きもしないで。そのくせ娘のことはなんでもわかっている、なんて思いこんでるんですからたまったもんじゃありませんでしたよ。しょっちゅう言い争ってました。
小柳研究員: ちなみにお母様は?
工藤氏: 私が高1の春に亡くなりました。そのころ飼い犬のユカリも亡くなって、不幸続きでした……。ユカリ、いつもピョンピョンはねて元気だったのに、母が亡くなったら急に元気を無くして。
小柳研究員: 辛いことをお聞きしてしまい申し訳ありません。
工藤氏: いえ、大丈夫です。そうだ、あのクソ親父、店が忙しいとかいって母の死に目に間に合わなかったんですよ。たしかそのころからだったと思います、口ゲンカが絶えなくなったのは。一人で店にこもり切って、そうかと思えばふとどこかへ消えて酒を飲んで帰ってくる。そばのクオリティーも下がっていたみたいで、客に味が違うとか文句言われてたのも聞きました。
小柳研究員: そこから家出につながったのですね。
工藤氏: はい。ある日の夜、上機嫌でそばを食べろとウザ絡みしてきて、そこで積もり積もった鬱憤が大爆発して大ゲンカ。ほとほと嫌になって家を出ました。
小柳研究員: そうですか……でもどうしてそばを食べることをそんなに拒否していたんですか?
工藤氏: だってそばなんて……大っ嫌いですもの。
<録音終了>
補足: 工藤氏は16歳(高校1年生)の夏にそばアレルギーを発症しています。
アイテム番号: SCP-1617-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1617-JP-Aはインシデント1617-JP以降収容されていません。 SCP-1617-JP-Bはサイト-81██の標準収容ロッカー内で保管されます。経年劣化を防ぐため湿度や温度を適切に保ってください。現在異常性の確認実験は完了したためSCP-1617-JP-Bの使用は無期限に停止されています。
SCP-1617-JP-AはGPS装置を取り付け、サイト-81██の低脅威度生物収容ユニット内に収容されます。1日に3回適量の水を与えてください。SCP-1617-JP-Aのストレスを軽減するため、1日に1回職員との交流を行い許可された物体の複製を行わせてください。また、実験時や職員との交流時以外はSCP-1617-JP-A-1を全ての目が1の六面ダイスにしてください。
空白
説明: SCP-1617-JPは本来各個別にオブジェクト指定されていた2つのオブジェクト(SCP-1617-JP-A、SCP-1617-JP-B)の総称です。インシデント1617-JP後、両者の関連性の調査を行う必要が生じたため、報告書の簡略化が行われた暫定的な統合ナンバリングです。
SCP-1617-JP-Aはチップを除いたダーツのような見た目をした生命体です。活動時には地面から30 cm程度浮遊し移動しますが、睡眠状態ともとれる非活動時には地面に横たわっています。SCP-1617-JP-Aは生存に水分の摂取を必要としますが、その他の食餌は必要としません。SCP-1617-JP-Aの性格はイヌのようと形容され人懐っこく従順です。また、知能もイエイヌ(Canis lupus familiaris)と同程度とみられ、ヒトの呼びかけや指示に応えることが確認されています。
SCP-1617JP-Aは常にダイスを未知の遠隔力によって保持しています。SCP-1617-JP-Aに接しているダイス(以後SCP-1617-JP-A-1)は、SCP-1617-JP-Aが自発的に別のダイスとの交換や回転操作を行うことができます。このSCP-1617-JP-A-1を操作することで、SCP-1617-JP-Aは感情表現を行います。SCP-1617-JP-Aが嬉しさや喜びなど好意的な感情を抱いている時はSCP-1617-JP-A-1を横方向に自転させます。退屈や怒りを感じている時はSCP-1617-A-JPを縦方向に振動させ、驚いた時はSCP-1617-JP-A-1が一瞬SCP-1617-JP-Aの制御を外れて離れます。
SCP-1617-JP-Aに、物体を投げ回収を行わせる遊び、いわゆる「とってこい」を行うと、SCP-1617-JP-Aに接しているSCP-1617-JP-A-1の目の数だけ投げた物体が複製されます。この複製は投げた物体をSCP-1617-JP-Aが回収した際に行われるため、SCP-1617-JP-Aの興味を引かない物体の複製は行われません。例として、貨幣、生物、複雑な電子回路の複製はこれまで確認されていません。また、この物体の複製動作はSCP-1617-JP-Aが自発的に行う様子はなく、物体の回収を指示された時のみ行います。しかし、「とってこい」を行い物体の複製を行うことをSCP-1617-JP-Aは好んでいるようです。
実験記録1
SCP-1617-JP-A-1: 市販の6面ダイス。目は3。
投げる物体: 手描きのサイン入りボール
結果: 3つに複製された。サインも正確に複写されていた。
空白
実験記録2
SCP-1617-JP-A-1: 市販の6面ダイス。目は3。
投げる物体: 実験用ラット(Rattus norvegicus)1匹
結果: SCP-1617-JP-Aは投げられた対象を回収しに行かなかった。SCP-1617-JP-AはSCP-1617-JP-A-1をゆっくり振動させている。
備考: これまでSCP-1617-JP-Aによる生物の複製は確認されていません。
空白
実験記録7
SCP-1617-JP-A-1: 市販の20面ダイス。目は20。
投げる物体: 野球ボール
結果: 20個に複製された。SCP-1617-JP-A-1はSCP-1617-JP-A-1を勢いよく回転させている。
空白
実験記録8
SCP-1617-JP-A-1: 画用紙で作られた手製の6面ダイスですべての面に10と書かれている。
投げる物体: 野球ボール
結果: 10個に複製された。
分析: 実験記録7および8の結果からSCP-1617-JP-Aの複製は応用可能性が広いのではないでしょうか。
SCP-1617-JP-Bは口の部分に金属製の留め具がついた化学繊維製の手提げ袋です。表面にはいくつかの切り傷が認められます。内部のタグにはエゾムラサキ(Myosotis sylvatica)を模したマークと「エビング配達」という語が記入されています。
SCP-1617-JP-Bは内部に物体を入れ留め具をすることで異常性が発現し、物体の転送が行われます。SCP-1617-JP-Bに入りきらない大きさの物体は、一部をSCP-1617-JP-Bで包み留め具をはめることで同様に転送されます。SCP-1617-JP-Bに留め具をすると、約30秒後に内部の物体は消失しGPS信号が途絶した別空間に移動します。そして物体が消失して約5分後、物体はその持ち主とされる人物の周囲10m以内に出現します。持ち主の判断は明確ではありませんが、物体が人間の場合、その保護者や雇用主が持ち主として選ばれる傾向があります。転送が行われると持ち主の財布や銀行口座からいくらかの金額が徴収されます。持ち主の所持金がない、あるいは少量であった場合、その所属組織から不足分が徴収されます。徴収される金額は物体が消失した地点から出現した地点までの距離におおよそ比例します。なお、持ち主がSCP-1617-JP-Bに物体を入れても転送は行われません。
物体が転送中に移動する別空間内は光源が存在せず、いかなる光源を持ち込もうとも最大で20cm程度しか照らすことはできません。空間内において、生物は眼球以外の身体の動作が制限されます。また、温度はおよそ3℃で、空間内にてほのかなエタノール臭が報告されています。空間内には動物型実体(以後、SCP-1617-JP-B-1)が存在しており、その呼吸音や頭部が観測されています。SCP-1617-JP-B-1は空間内で物体に対して時々爪と思われる硬い固体で接触を行うのみですが、SCP-1617-JP-B-1は再雇用されたDクラス職員記憶処理が行われた人間に対しては攻撃的になります。被害は記憶処理を受けた回数に応じて増加し、複数回記憶処理を受けた人間は多くの場合生命に関わる大怪我を負います。
実験記録5
実施方法:SCP-1617-JP-Bに対象となる物体を入れ留め具をする。隣室に器具保安担当または人材管理担当を待機させる。なお、以降特別な断りがない限り実施方法は同一である。
対象: 実験用ラット(Rattus norvegicus)1匹
結果: 消失したまま出現しなかった。
備考: 他にマタタビ(Actinidia polygama)も転送に失敗しました。
空白
実験記録8
対象: ブラジルに出張中のエージェント・██のボールペン
結果: 転送に成功し、その口座から██████円がなくなっていた。
備考: これまで確認された最高額です。
空白
実験記録12
実施方法: 持ち主であると考えられるD-80457が対象をSCP-1617-JP-Bに入れる。
対象: ████研究員からD-80457に譲与したボールペン
結果: 消失せず転送は起こらなかった。
備考: 持ち主とされる人物がSCP-1617-JP-Bを使用しても異常性が発現されないことが明らかとなりました。これにより使用した人物が対象の持ち主であるかどうかの判別ができることになります。
空白
実験記録13
実施方法: 持ち主であるD-80457が対象をSCP-1617-JP-Bに入れ留め具をつけた後、即座にD-80457を終了する。
対象: ████研究員からD-80457に譲与したボールペン
結果: ████研究員のもとへと転送が行われた。
空白
実験記録15
実施方法: 持ち主であるD-80459が対象をSCP-1617-JP-Bに入れ留め具をつけた後、即座にD-80458を終了する。
対象: D-80458が██山で拾った木材で作成した人形
結果: ██山の所有者に転送された。
備考: 持ち主となる人物は変化するようです。その特定は困難でしょう。
空白
実験記録17
実施方法:SCP-1617-JP-Bを裏返して留め具をする。
備考: 実験申請は却下されました。
発見経緯: SCP-1617-JP-AおよびSCP-1617-JP-Bは1999年██月██日、██県の急激な経営難に陥っていた児童養護施設に職員として潜入していたエージェント・モーガンにより発見されました。██████を複数人が所持していたことを不審に思ったエージェント・モーガンは、児童養護施設に暮らす赤羽██氏(当時8歳)がSCP-1617-JP-Aを利用してトレーディングカードを増殖させていたことを突き止めました。以下のインタビューは赤羽氏にSCP-1617-JP-Aについて伺ったものです。
日時: 1999/██/██
対象: 赤羽██氏
インタビュアー: エージェント・モーガン
<記録開始>
エージェント・モーガン: じゃあ君がこのダッツくんを使って████のカードを増やしてたのね。
赤羽氏: ……はい。
エージェント・モーガン: このダッツくんはどこでお友達になったのかな。
赤羽氏: ……██橋の下。
エージェント・モーガン: それはいつのこと?
赤羽氏: たぶん1週間くらい前。
エージェント・モーガン: うーんもう少し先生にその時のことを詳しくおしえてくれるかな。
赤羽氏: (沈黙)
エージェント・モーガン: お願い、赤羽くん。
赤羽氏: えっと、夕陽がしずむくらいの夕方に██橋の下にいたんだ。川の石に座ってたの。そしたら後ろから何かごそごそ音がして。あそこってダンボールとかごみがいっぱいあるじゃん。
エージェント・モーガン: ええ、そうね。
赤羽氏: おばけかと思ったから、逆にこっちからおどかしてやったんだ。そしたらダッツが飛び出してきた。黒いふくろから。サイコロ回してぎゅーんてこっち来るから追いはらおうとして持ってた石を投げつけたけど、ダッツはまた投げてほしそうに石を拾ってきた。それで何回も石を投げて遊んだんだ。
エージェント・モーガン: それでダッツくんと仲良くなったのね。ダッツくんが物を増やせるのに気づいたのはその時?
赤羽氏: ううん。ダッツをへやにこっそり連れてきてから。まだあそび足りなさそうだからおはじきを投げたんだ。その時におはじきがふえてびっくりしたよ。それでカードもふやしてもらったんだ。
エージェント・モーガン: なるほど。よくばれずに部屋にダッツくんを入れたね。
赤羽氏: それはね、ゴミすて場にあった黒いふくろにかくして持ち込んだの。今もダッツはその中に入れてる。なんかこのふくろがお気に入りみたい。本当にダッツはすごいんだ!ぼくになついてくれるし、何でもふやせるし!あ、でもお金はふやしてくれなかったや。で、でもすごいんだよ!
(重要性が低い証言のため割愛)
エージェント・モーガン: それでね、前も言ったけど先生の知り合いにダッツくんと似た子を研究してる方がいるのね。その方がダッツくんとお会いしたがっているから少しダッツくんを借りてもいいかしら?
赤羽氏: ……少しだけだよね?
エージェント・モーガン: ええ、もちろんよ。約束するわ。
赤羽氏: わかった。でも早くかえしてね!ダッツが来てからみんなぼくを見てくれるし████くんもなぐらないし、ダッツはぼくの親友なんだ!
<記録終了>
終了報告書: この後エージェント・モーガンによってSCP-1617-JP-Aおよび所持していたSCP-1617-JP-Bは確保され、赤羽氏にはクラスA記憶処理が行われました。赤羽氏の証言した██橋の橋桁付近では何らかの装置の破片とみられる基盤が発見されました。
SCP-1617-JP-Bの異常性は赤羽氏からオブジェクトを回収後、SCP-1617-JP-Aが自発的にSCP-1617-JP-Bに入り財団職員が輸送のため留め具を止めたことで発見されました。その際赤羽氏のもとにSCP-1617-JP-Aが転送されました。なおSCP-1617-JP-Aは出現後すぐ赤羽氏に駆け寄りましたが、現場に居合わせたエージェント・モーガンが捕獲を試みると逃亡を図りました。その後SCP-1617-JP-Aは回収され赤羽氏には再び記憶処理が行われました。
補遺: 2015/██/██、要注意団体である████の廃倉庫から新たにSCP-1617-JP-B'が発見されました。SCP-1617-JP-B'はSCP-1617-JP-Bに見られた傷や劣化がないことを除けば、SCP-1617-JP-Bと同等の外見と機能を有しています。また、同時にSCP-1617-JP-B-1が記したとされるメモが発見されました。メモにはSCP-1617-JP-Bの成り立ちや使用方法などが記してありますが、料金についての記載がないことは特筆すべきです。
初めまして!私はエビングと言います!
忘れられたくない。誰しもが思うことですよね。私はみなさんが忘れられることのないよう、失くした人のもとに届けるサービスを始めました!
その名も「エビング配達」。████さんに協力して頂いて実現しました。
これまでいくつものものが人々に忘れられて黄泉へと沈んでいくのを見てきました。忘れられたものが行き着くのは来し方行く末のない袋小路。失くした温もりを求めて誤魔化しのぬるま湯に浸り停滞するだけ。
忘れられるのは怖いです。きっとどんなものでもいつかは忘れられてしまうけどそれでも私は忘れてほしくないんです。かつて私の友だちも失くしたものを渡すお手伝いをしていましたが、結局彼女も忘れられてしまいました。
ですので、ぜひ「エビング配達」を使ってくださいね!
使い方は簡単!袋に入ってボタンを留めるだけ!そうすれば私があなたの愛する人間の元へとお届けします!
もしその人が忘れてしまっていても、また初めましてが言えるように。
エビング配達はそのお手伝いをするものであります。
補遺2: 2015/██/██、SCP-1617-JP-Aの収容違反が発生し、以下のインシデント1617-JPが発生しました。
2015/██/██、SCP-1617-JP-Aは担当研究者である弓削博士と交流を行っている際に収容室から脱走しました。また同時刻にサイト-81██の標準実験室にてSCP-1617-JP-B'を用いたD-91691の転送実験が行われました。D-91691は強盗致死傷罪で死刑を宣告されている経歴不明の24歳の男性で、当日の朝サイト-81██に移送されています。
14:09:42 弓削博士がSCP-1617-JP-Aの収容室に入る。SCP-1617-JP-Aはどこか落ち着かない様子を見せている。
14:10:20 D-91691がSCP-1617-JP-B'に手を入れ留め具をする。
14:10:55 D-91691が実験室から消失する。
14:13:42 弓削博士がSCP-1617-JP-Aにスポンジボールを投げて「とってこい」と呼びかける。
14:13:49 SCP-1617-JP-Aはスポンジボールではなく収容室のドアに向かう。ドアを6枚に複製して入り口を破壊し収容室から逃亡する。
14:15:20 弓削博士が機動部隊にSCP-1617-JP-Aの収容違反を通報する。
14:15:49 SCP-1617-JP-AがSCP-1617-JP-A-1を回転させながらサイト内を最高速度80 km/hで移動し、通風孔に入る。
14:15:53 D-91691が転送先の実験室に出現する。D-91691は複数の切り傷を負っており、左上肢が切断されている。切断された左上肢はD-91691から1 m離れた場所にある。
14:16:04 D-91691は錯乱状態に陥っている。右手で左腕の傷口をおさえ「腕」と何度も叫んでいる。
14:16:15 SCP-1617-JP-Aが通風孔からD-91691のいる実験室に侵入する。D-91691に近づきSCP-1617-JP-A-1を激しく回転させるが、一瞬SCP-1617-JP-A-1を振り落としそうになる。
14:16:20 SCP-1617-JP-AがD-91691の左上肢の複製を複数回行う。確認できる限り40本以上の腕が実験室に散乱する。
14:16:44 D-91691はパニックにより酸欠症状を起こしている。SCP-1617-JPは腕の複製をやめ、小刻みに動いている。
14:17:32 D-91691はSCP-1617-JP-AをつかんでSCP-1617-JP-B'に入れ、留め具をする。D-91691は何かを呟いたかのように見える。
14:17:54 SCP-1617-JP-B'が少し膨らむ。D-91691はこと切れたように姿勢を崩す。
14:17:55 機動部隊が実験室のドアを開く。瞬間、実験室内で爆発が起きる。
爆発によりD-91691が死亡、機動隊員および研究員5名が負傷し、SCP-1617-JP-B'も焼失しました。爆発の原因はSCP-1617-JP-Aが酸欠に陥ったD-91691を見て酸素分子の複製を行い実験室中の酸素濃度が高まったためと考えられています。またSCP-1617-JP-Aはインシデント1617-JP後、行方不明となっており、取り付けていたGPSの信号も消失しています。SCP-1617-JP-B'によって転送が行われたと考えられますが、転送先は依然不明です。現在SCP-1617-JP-Aと何らかの繋がりがあった可能性を考え、D-91691の身元の確認を行っています。
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From : 神楽上級研究員
To : 弓削博士
Subject : SCP-1617-JPの件
お疲れ様です。先日のインシデントは災難なことでしたね。あの爆発音は私の居室にまで響いてきましたよ。そんな訳ですから私も少し気になって、SCP-1617-JPの報告書を拝見させていただきました。そして読んでいる内にSCP-1617-JPについて私の中である仮説に辿り着いたため、こうして一筆とった次第です。
結論から述べます。SCP-1617-JP-Aは見つかることは無いでしょう。あれは恐らくもうこの世界にはいません。
インシデントがなぜ起こったか考える上で、私がまず気になったのはD-91691という存在です。経歴書によると本名不明経歴不明の、24歳男性。2010年代後期に活動を行っていた犯罪組織に属し「ブル」と呼ばれ麻薬取引を行っていた。彼自身も重篤な麻薬中毒者であり、麻薬購入資金のために強盗を行い結果殺人を起こしたことで死刑が求刑された。まぁそんな人間のクズみたいな奴のもとへSCP-1617-JP-Aは収容違反を起こして一目散に会いに行った。なぜでしょうか?SCP-1617-JP-Aは最初こそ抵抗したものの現在は職員の指示にも従い15年間穏和に収容ができていたと聞いていました。そんなSCP-1617-JP-Aが突然脱走をはかるほどですから、SCP-1617-JP-AとD-91691の間には何か関係があると考えるのが自然でしょう。そしてSCP-1617-JP-Aと深い関わりがある人物はこの報告書を読む限りは1人しかいない。そうSCP-1617-JP-Aの飼い主であった赤羽氏です。私は彼とD-91691は同一人物であると考えました。
あいにく彼が暮らしていた施設は潰れ、その後の氏の足取りは掴めていないそうです。孤児で両親はおらず、当時接触していたモーガンによると友達も少なかったそうで、彼の近況を知る人物はいないようです。そのため彼がD-91691と証明するのはなかなか困難かもしれません。しかし彼がD-91691とすると様々なことに辻褄が合うのです。
順を追って話しましょう。まずSCP-1617-JP-Aと赤羽氏は河原で出会い親睦を深めます。この時SCP-1617-JP-BにSCP-1617-JP-Aを入れていることからすでにSCP-1617-JP-Aは赤羽氏の持ち主になっています。そして両者は親友となりますが、2人が一緒に暮らせるのはそう長くはありませんでした。SCP-1617-JP-Aは財団に確保され赤羽氏は2回の記憶処理を受けます。そして施設が潰れ、行く当てのない赤羽氏はどのような経緯かは知りませんが、犯罪に手を染めるようになってしまいました。その後とうとうお縄となりDクラス雇用となりインシデント当日へと至ります。
D-91691という番号を与えられた赤羽氏は、なんという偶然か、かつての親友であるSCP-1617-JP-Aが収容されているここサイト-81██へと連行されてきました。そして本能かそれとも知っていたのか、SCP-1617-JP-Aは彼が来たことに気づき脱走をはかります。逃げてもすぐ捕まるということがわかっていたからこれまで収容違反を起こさなかっただけで、本当はずっと彼のもとへ帰りたくて仕方がなかったんでしょうなぁ。ですが彼にはSCP-1617-JP-B'実験という危機が迫っています。なぜなら彼は自身を愛してくれた親友を2度も忘れてしまっている。SCP-1617-JP-B-1が怒ることは間違いないでしょう。かくして大怪我を負ったD-91691と脱走したSCP-1617-JP-A、さようならも言えずに16年もの間別たれた2人は感動の再開を果たすわけです。もちろんD-91691はそんなことを知るよしもなく生死の瀬戸際にあるわけですが。そして増殖を行うSCP-1617-JP-Aを恐れたからか、何か思い出したからか、理由はわかりませんが、SCP-1617-JP-AをSCP-1617-JP-B'に入れ転送を行いました。そして彼は息絶えました。
さて困ったのはSCP-1617-JP-Aの持ち主となる者はおらず転送する先がない。SCP-1617-JP-Aが愛する赤羽氏もかつて過ごした施設もなく、また赤羽氏と会うのを妨げた財団に戻るのも御免。それではSCP-1617-JP-Aはどこに転送されたのか?持ち主となる人はどこにいるのか?もうおわかりでしょう。SCP-1617-JP-Aは時間を超えて過去の赤羽氏のもとへ転送されたのです。あの2人が出会った橋の下へ。赤羽氏の話によるとSCP-1617-JP-Aは最初から彼に懐いていたようです。当然でしょう、SCP-1617-JP-Aは赤羽氏とはすでに旧知の仲だったのですから。そういえばSCP-1617-JP-Bで過去へ転送するための費用はいったいどれくらいになるんでしょうね。
結論として、SCP-1617-JP-Aは赤羽氏と会うために16年の時を繰り返していることになります。何度忘れられようとも、彼のことを忘れずに。
もちろん、あくまでこれは私の仮説であり想像の域を出ません。もしかしたらなんとなくSCP-1617-JP-Aが脱走したくなって、たまたま何の関係もない死刑囚とあって、我々の知らない場所へと転送されただけかもしれない。ですが、SCP-1617-JP-Aが過去へと転送された証明なら可能だと思います。収容された当時SCP-1617-JP-Aが持っていた賽子と河原で発見された装置。これらをインシデント当時のSCP-1617-JP-A-1および取り付けていたGPS装置と比べてご覧なさい。一致すればSCP-1617-JP-Aがこのサイトからあの橋の下へと転送されたことが証明されるでしょう。
タイトル: 廃忘を紡ぐ道
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが出現する建造物は民間人の侵入を防ぐため周囲を2 m以上の柵で囲い、カバーストーリー「解体工事予定」を適用してください。調査のためSCP-XXX-JP内に侵入する人間は、直前にミニメンタルステート検査およびウェクスラー記憶検査を行い、認知機能や記憶力に異常がないか確認してください。内部調査を行う場合、懐中電灯、作成済みの地図と筆記具を装備し、自身の通行した順路を記載してください。また、SCP-XXX-JP内に存在する街灯のスイッチは一人につき4個以上押すことは禁じられています。
説明: SCP-XXX-JPはケヤキ(Zelkova serrata)やイロハモミジ(Acer palmatum)が並び、街灯下以外では0.01ルクス以下の照度となっている夜間の並木道です。道はコンクリート製の壁で囲われており、複数の分岐路が確認されています。空間内では常にケヤキやイロハモミジが落葉しており、地面にはそれらの枯葉が堆積しています。内部では録音、録画装置や通信設備は一切機能しないため、現在SCP-XXX-JP内部の情報は帰還者の証言によってのみ得られています。
SCP-XXX-JPへ侵入する唯一の方法は、各地の建造物内に出現する金属製の扉(以降SCP-XXX-JP-Aと呼称)を経由することです。SCP-XXX-JP-Aにはガラスの覗き窓が配置されていますが、内部は暗く様子を伺い見ることはできません。覗き窓には”怪奇部門”という言葉が日本語で刻まれています。SCP-XXX-JP-Aは対象となる建物内に存在する人間が1人のみの時に出現します。SCP-XXX-JP-Aを通じて人間がSCP-XXX-JP内に侵入した時、そのSCP-XXX-JP-Aは侵入者がその扉から帰還するまで出現しません。これまでSCP-XXX-JP-Aは██箇所で発見されており、その発見場所は全て廃校となった建物の廊下となっています。現在出現をさせることが可能なSCP-XXX-JP-Aは█個です。
SCP-XXX-JP内には複数の街灯が確認されており、街灯には「ここは(劣化により解読不可)街n丁目m番地」と書かれた金属製プラカードが取り付けられています。また側面にスイッチがついており、押すことで街灯をつけることができますが、消すことは不可能です。このスイッチを押した人間は海馬内の脳神経細胞が減少し、記憶の喪失が発生します。スイッチを何個も押すにつれ記憶障害の重度化やアルツハイマー型認知症の進行がみられます。そのためSCP-XXX-JPから帰還しなかった侵入者は帰還方法を忘却したことが原因と考えられています。現在街灯は34個発見されており、うち3つは電球部分が破損しています。
補遺: 「10丁目9番地」と書かれた街灯の付近で木製の屋台が発見されました。屋台では”女将”と自称するコーカソイド系女性が営業を行っており、おでんおよび日本酒の提供が確認されています。おでんの具材は大根やこんにゃく、鶏卵など一般的な食材ですが、日本酒は「月楸」「屋烏之愛」「沈下橋」「とわの雪」など存在しない銘柄が並んでいます。以下は”女将”に対する小柳研究員のインタビューを筆写した記録です。
その日サイト-81██は地獄と化した。SCP-1047-JPの大規模収容違反の発生である。SCP-1047-JPに与える食餌は機密情報のない文書のみに指定されており内容も検閲されていた。だがエージェントの日記、財団内新聞、チラシ……などの断片的な「データ」が蓄積されていった結果、SCP-1047-JP-1の一個体が偶然にも財団神拳の奥義を不完全ながら再現することに成功してしまったのだ。収容用の強化プラスチック製のケースを易々と破壊したSCP-1047-JP-1はダクトから脱走し、近くにいた職員にその毒牙を向けたのだ。……そしてSCP-1047-JP-1のパンデミックが始まった。
「あれは財団神拳秘伝「剛力・羅漢の構え」……!?」
監視カメラ越しに増殖するSCP-1047-JP-1を見た林田研究員は驚嘆の声を上げる。
「秘伝ですと?いったいそれはどのような……?」
「特殊な構えにより筋繊維を刺激しきわめて強力な力を得る技です。まさかSCP-1047-JP-1が習得できるはずが……」
林田研究員は目の前の現象をなんとか否定しようと画面を見入っている。
「いや、これは「剛力・羅漢の構え」ではない……構えにぶれが大きすぎる。これでは本来上昇する力の5分の1も増強されないはず……。それに動きに迷いが多すぎる。人間ならば脳内物質による制御を用いることで――」
「今は問いを解く時間ではない」
サイト-81██の管理官である多田羅がぴしゃりと言い放つ。
「問題なのはSCP-1047-JP-Aが異常といえる速度で増加していることだろう」
「はい。おそらく財団神拳の真似事のような技によるSCP-1047-JP-Aを増やすことで、SCP-1047-JP-1の運動能力および増殖能力が飛躍的に向上したと考えられます」
いまやSCP-1047-JP-1は1体であっても驚異的な存在となっていた。増強された筋肉による突進は砲弾に匹敵しうる破壊力を有し、力づくで人体への侵入を自発的に行う。またSCP-1047-JP-Aの供給量を増やせることになったため、人間を用いた増殖がものの10分程度で行えるようになってしまった。そんなSCP-1047-JP-1が増殖の末、現在サイト-81██には1000体はゆうに超える量がいると推測される。
「SCP-1047-JPはどうすれば処分できる」
「打撃や銃撃など物理的な破壊は不可能でしょう。火炎放射や爆撃などによる焼却が有効であると考えられます」
多田羅の問いに担当職員である吉野が答える。
「しかし現在有効な装備である火炎放射器やグレネードなどが保管されている武器庫はすでにSCP-1047-JP-1により占拠されています」
「ほかに有効打となる装備は」
「現在発見されておりません」
溜息をこぼす多々羅。
「残存している機動部隊はどうしている」
「Keterクラスオブジェクトの収容庫に配備しております。何名かグレネードランチャーを装備していたので足止め程度なら可能でしょう」
「うむ、それでいい。あそこは破られるわけにはならんからな」
「ちょっと待ってください!ここの守りはどうなっているんですか!?」
「小柳研究員、落ち着きたまえ。各エリアは隔壁で遮断されている。だが――」
モニタリングを行っていた海外支部からの出向職員であるムーアが声を上げる。
「エリアE、F間の隔壁、破られましタ!」
「やはりか、こちらへ来るのも時間の問題だな……」
小柳研究員の顔がみるみるうちに青ざめる。
「君の技ではあいつらを殲滅できないのか!?」
「……我が師ならいざ知らず、いまだ修行中の身である私には難しいでしょう。あの強度です。おそらく並大抵の拳や共振パンチは効果がないでしょう。摩擦熱切断手刀ならやれるかもしれませんが量が量なだけに……」
「寺岡くん、8番の映像を1分前に巻き戻してくれ」
「はい!こちらですね!」
メインモニターに映るのはある実験室の様子。2匹のSCP-1047-JPと、逃げ遅れたのだろうか、女性が一人座り込んでいる。今にもSCP-1047-JPの犠牲となるところだろう。しかし、犠牲となったのはSCP-1047-JPの方だった。突如砲弾のようなものが飛びだして爆発、SCP-1047-JPは焼失した。
「いったいなにが……」
「今のは双葉くんだな。通話を繋ぐんだ」
その日双葉研究助手はエリアEの第7実験室でSCP-389-JPの追加実験を行っていた。複数の具材を使用したSCP-389-JP-2の特性調査だ。今回双葉が握った軍艦はイクラとシラウオの軍艦。このSCP-389-JP-2は両者の特性を備えており、イクラによる砲撃やシラウオの自立行動が可能であった。しかし実際の戦闘実験では両者の有効な対艦距離に差異があったため両者をイクラとトビウオを同時に消費することはされなかった。加えてイクラ、トビウオそれぞれ軍艦に積載している量は単独のそれより劣るため、無力化する時間が早まってしまっていた。結果、イクラトビウオ軍艦を有する同盟軍は敗北を喫した。
今や残り1体となりネタの消費量もはげしいトビコ軍艦は敵対するイクラ、ネギトロ軍艦に追い詰められ風前の灯火だ。双葉はその様子を横目に見ながら今回の実験結果をまとめている。次は月見軍艦を試してみようかな。そんなことを考えていた矢先だった。
『収容違反発生。収容違反発生』サイト内に警報音が鳴り響く。
『エリアDにてSCP-1047-JP-1の収容違反が発生。サイト内の職員は安全な場所に待機してください』
エリアDは現在いる実験室の隣のエリアである。
ドン。
張り詰めた実験室に絶望の音が鳴り響く。思わず双葉はすくみ上る。
ドン。
鋼鉄の扉が悲鳴を上げる。あれほど信頼していた扉がもはや頼りなく見えた。
ドン。
双葉は声をひそめ、「大丈夫、大丈夫」と心の中で繰り返す。もはや怪物との邂逅は逃れられない。
ドン。
明らかに扉に歪みが見える。双葉にできるのは神に祈ることしかない。
……だが神はそんな少女を助けるほど暇ではない。
ドォン!
実験室に赤い流線が駆ける。SCP-1047-JP-1が室内にエントリーした。その赤黒い姿は否が応にも双葉に「死」を連想させた。
「あ……」
身動きをとることができない。頭が真っ白になり、時間が無限に止まったかのように思えた。時間が動き始めたのは、耳のわずか10cm横に大穴が開いた時だった。
双葉は走り出して出口へと向かうもSCP-1047-JP-1に回り込まれる。なんと俊敏な動きなのだろうか。恐怖に震える足で逃げ回るもとうとう部屋の隅に追い込まれてしまった。もうだめなのか。双葉の脳裏でこれまでの人生が巻き戻されていく。SCiPを初めて知った時の衝撃、都会での慣れないくらし、家業を継ぐのを拒んで家出した夜、厳しかった父、優しかった母……。ああ、最後に両親にもう一度会いたかったな。そう思い目を瞑った瞬間、まぶたの合間に確かに動く軍艦を見た。
刹那、SCP-1047-JP-1はイクラ軍艦の砲撃を受け爆ぜ散った。トビコ軍艦はSCP-1047-JP-1に向かい合いながらネギトロ軍艦の補給を受けている。これまで敵対していた二つの軍が協力して双葉を助けたのだ。
「やむを得ませんね」
吉野は鞄から小瓶を取り出して熟練の寿司職人に渡す。
「本来ならばこれをあなたに渡すのは禁じられています。しかし現在の状況を鑑みるにこれを渡すのが合理的でしょう」
「あんた、これは……」
小瓶の中にはわさびが入っている。しかしそれはただのわさびではなくトラフグの肝、カシワの根の煮汁、三酸化二ヒ素が練り込まれたものだ。
「よろしくお願いいたします。西行さん」
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1内に設置したGPS装置からの信号を観測してください。位置の変更が認められた場合、転移先に複数名のフィールドエージェントを派遣し、SCP-XXX-JPの周囲に工事用目隠しシートに偽装した隔壁の設置とSCP-XXX-JP内部への500円硬貨複数枚の投入を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内で一般的な外見をした自動販売機です。電力の供給源が無いにも関わらず、SCP-XXX-JPは通常の自動販売機と同様に稼働します。その内部構造や販売している商品などに異常は見られません。SCP-XXX-JPは不定期に消失し、埼玉県内のランダムな場所に再出現します。また、外見は出現場所付近の景観や近隣の自動販売機設置業者の取り扱っている自動販売機に合わせたデザインへと変化します。転移が起こる以前に受けた損傷は移動後に回復し、取り付けた物体は転移しません。この転移以外にSCP-XXX-JPを移動させる方法は発見されていません。
SCP-XXX-JPを視認した対象(以下曝露者)は硬貨を取得したいという強い欲求を抱きます。この欲求は周囲の人間の制止を振り切りますが、時間経過や記憶処理によって除去されます。多くの曝露者はSCP-XXX-JPのコイン返却口内部の確認やSCP-XXX-JP下部への侵入を試みます。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの下部に存在する異空間異常です。初期の高さは50 cm程度の空間で無限の面積を持つと推測されています。外部との空間的な断絶はなく、SCP-XXX-JP内で通信機器の使用や物品の授受は問題なく可能です。GPS装置は内部での移動に依らず、常にSCP-XXX-JPの設置場所を示します。SCP-XXX-JP-1内部に人間が侵入すると空間の天井が降下を始めます。この降下速度は人間の知覚ではわずかなもので、内部にいる人間が圧死しない程度の高さまで降下します。SCP-XXX-JP-1内に生存している人間の存在がいなくなった時点で天井の高さは初期状態に戻ります。
SCP-XXX-JP-1内に侵入した曝露者は硬貨を求めて直線的に前進を行います。進行方向に硬貨があることを曝露者は主張しますが、高解像度赤外線カメラや複数の探知機では硬貨は確認できません。曝露者は最終的にSCP-XXX-JP-1内から脱出できず衰弱死します。
SCP-XXX-JP-1内部探査記録XXXX-3 - 日付20██/██/██
調査員: D-9683。GPS装置、赤外線カメラ、マイク、ヘッドライトを所持。あらかじめ興奮剤を投与しており多弁になっている。
<記録開始>
0:00:00 SCP-XXX-JP-1内部に侵入。同時に硬貨の発見を報告。
0:00:10匍匐前進で移動を開始。この時点での空間の高さは40 cm。
0:05:32 人骨および衣服が確認される。気に留める様子はない。
0:12:29呼吸が荒くなる。移動速度は低下しているが前進を止める様子はない。
0:36:01頭部を天井に殴打する。この時点での空間の高さは35 cm。
0:41:08 移動を止める。硬貨を取得する必要性に疑問を抱く。
0:46:41 匍匐前進を再開する。
0:: 後ろを振り返る。
0:: 天井が降下していることを訝しむ。
0:: 移動を止める。
0:: 反転し帰還に向けて移動を始める。この時点での空間の高さは cm。
0:: 天井が降下していることを確信する。SCP-XXX-JP-1内に入ったことを後悔する発言をする。
0:: 腓腹筋痙攣を起こす。全身を複数箇所打撲する。
0:: 罵倒を繰り返しながら腕の力のみで前進する。
0:: 移動が止まる。出口の光が映る。
0:: もがくように腕を動かす。神へ祈る。
0:: 天井の降下が高さ25 cmで止まる。
0:: 失禁する。
0:: 天井が上昇する。
<記録終了>
████年██月頃、埼玉県付近のユーザーによってSNS上で「人喰い自動販売機」に関する噂が流布されました。この流布された時期と埼玉県内での行方不明者数が増加された時期が同時期であったため、財団の注目をひくことになり発見に至りました。現在の収容プロトコルが確立するまでのSCP-XXX-JPが原因と考えられる行方不明者は██名に上り、そのうち約3割の遺体がSCP-XXX-JP-1内で発見されています。
S=C=Pの配列を持つ有機分子
摂取するとヒューム値が上昇
個人差はあるが中毒性がありヒューム値を高めるようになる
現実改変能力によりSCiPを作りたくなる
財団が作った平行世界群。実験場やオブジェクト及びAnomalousアイテムの収容場として使用。
ヒューム値は完全に1に固定されており認識災害やミーム災害も起きない。
つまりは我々の世界。この世界は財団世界の劣化コピーでしかない。
たまにある都市伝説や不可思議な現象はオブジェクトの収容違反。
このサイトは認識災害があるオブジェクトの情報交換用やカバーストーリーとして作られたもの。あえて自由投稿にしているためいくつかはフェイクであるが、現実世界は財団世界をコピーして作られたものなので無意識的に類似したものがつくられることもある。
タイトル: 廃忘へ繋ぐ道
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPに通じるハッチはコンクリートで埋め立てられ、外部からの侵入や発見が出来ないよう隠匿されています。現在はSCP-XXX-JP内部の更なる調査は許可されていません。
説明: SCP-XXX-JPは██県の住宅団地の地下に存在する施設です。マンホールに偽装されたハッチのみが唯一のSCP-XXX-JPの出入り口であり、下に50mほどの螺旋階段が続いています。ハッチの裏側には”怪奇部門”という言葉が日本語で刻まれた小さな金属製プラカードが取り付けられています。
SCP-XXX-JPの入り口であるマンホールに偽装されたハッチ。
SCP-XXX-JPは長さ10m程の廊下と5つの部屋で構成されています。部屋は廊下の左右に2部屋ずつ、突き当りに1つ配置されており、突き当りの部屋(以下、大部屋)は他の部屋に比べ1.5倍ほどの面積の部屋です。廊下には白熱電灯が設置されていますが、電力の供給がないため電源はつきません。大部屋を除く各部屋には内壁を破って流れ込んだとみられる土砂が堆積しており、その大部分が埋もれています。各部屋には12~20歳の女性の白骨死体が複数体散乱しています。これらの死体の身元は明らかになっていません。
SCP-XXX-JP内には、多種の記憶処理剤や反ミームに関する論文など複数の財団製物品が放置されていました。どのようにして財団製物品が持ち込まれたか判明していません。
以下は各部屋の扉、土砂の様子、室内の説明のリストです。
左手前
扉: 金属製の外開き扉。覗き窓は縦に3つありますが内側から金網と黒い布が張られています。
土砂の状況: 部屋の6割ほどを埋めています。
内部: セピア色の内壁。格子状の木棚が埋もれています。
右手前
扉: 古びた障子戸。
土砂の状況: 部屋の8割ほどを埋めています。
内部: 黒い内壁には白い点が多数描かれています。白紙の冊子が発見されました。
左奥
扉: 確認できません。
土砂の状況: 部屋を全て埋め、廊下へと侵蝕しています。土砂の内部にはムラサキ科(Boraginaceae)の植物の根が確認できました。
内部: 土砂で確認できません。
右手前
扉: 木製の引き戸。覗き窓は1つ。
土砂の状況: 部屋の4割ほどを埋めています。
内部: オレンジ色の内壁。古びた平屋や車両が写った写真が散らばっていました。
大部屋
扉: 施錠が可能な木製の両開き戸。
土砂の状況: 壁に穴は確認できず、土砂の侵入はありません。しかし床に複数の土地の土が撒かれています。
内部: 白色の内壁に24時間表記の壁掛け時計が設置されています。時計は長針と秒針が外されており、短針は16時と17時の間を指しています。
デスクやモニターに加え、大小2つの水槽を含む何らかの研究設備が設置されていますが、電力の供給はなくどのように稼働させていたかは不明です。また水槽にはそれぞれ複数のパイプが連結されており、壁へと繋がっていますが接続先は明らかになっていません。小型の水槽は一辺50cmの立方体形をしており、すべての面は硬質で破壊不能なアクリル樹脂で構成されています。内部の9割ほどが緑色の液体で占められており、中心にはケヤキ(Zelkova serrata)の苗木とみられる植物が未知の原理で浮遊しています。大型の水槽は高さ2.5mの円柱形であり、ガラス製ですが上半分が破損し周囲にガラス片が散乱しています。内部は水とエタノールを主成分とする薄茶色の液体で満ちています。
大型の水槽からドアに向けて約50kgの人間の足跡が残っています。足跡は裸足のもので、持ち主やその行方は不明です。
補遺: 財団によるSCP-XXX-JPの潜入調査時、大部屋内のデスクの引出しから以下の文書が発見されました。この文書は他に放置されていた文書に比べ経年劣化が少ないこと以外に異常性はみられません。
お元気ですか? こちらは楽しくやっています。
そちらへすこしずつわたしたちの仲間が向かっているみたいです。
聞くところによると、もともとあなたがたの仲間だったそうです。
久しぶりですこし不思議に思うこともあるかもしれませんが、
また昔みたいに仲良くしてくれると嬉しいな。
酩酊街より 愛を込めて
追伸
そうそう、少し前に並木道から来た彼女も一緒にそちらに向かったのでした。
思いやりがあって、いつも相手の身になって行動してくれる子。
もう少し自分のことを考えてもいいのにと思っていました。
だからこちらを出ると自分から言い出したのは少しおどろきました。
自分の素直な心を見つけることができたのかな。
初めて書いたSCPだけどあまりに拙すぎたので永遠に没
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPは生物サイト-81██の低脅威度生物保管ユニット内に収容します。SCP-XXXX-JPへの接触は原則認められず、刺激を与えないよう注意をしてください。一日に二度給餌と目視による状態確認を行ってください。SCP-XXXX-JP-Aが確認できた場合はSCP-XXXX-JP-Aの回収とケース内の清掃を行ってください。回収したSCP-XXXX-JP-Aと清掃に使用した水は密栓可能な容器に移し冷暗所で保管してください。
説明: SCP-XXXX-JPは異常な性質を持つナマコ綱(Holothuroidea)に分類される赤褐色の生物です。現在収容されているSCP-XXXX-JPは1匹のみで他に発見例はありません。
SCP-XXXX-JP-A はSCP-XXXX-JPが外部からの刺激に応じて排出する、揮発性を持つ青色の液体です。ヒトの皮膚にSCP-XXXX-JP-Aが接触すると、接触した箇所にヒトの眼球が生成します。眼球は一度の接触につき1つ生成しますが、接触した面積によっては複数個生成します。これまで観測された眼球が生成した箇所は、上肢、下肢、胸部、腹部、背、臀部、頭頂部、██、██、███などです。
眼球が皮膚に眼球が生成したヒト(以下、曝露者)は、視神経が繋がっていないにもかかわらずこの眼球からの視覚情報を認識することができます。その眼球が昔からあったかのように振る舞い眼球が増えたことに疑問を抱かない認識異常を起こします。眼球は生成して22時間後に充血したかのように赤くなり、その2時間後小規模な爆発を起こして消失します。眼球は外科手術により除去することができますが、生成24時間後の爆発以外では破壊することはできません。また曝露者は自身の眼球を摘出することに強く抵抗します。
発見: XX県XX市XX町では「夜中入子湾で遊ぶとまなこさまに祟られる」という言い伝えがあり、20██/██/██、██氏がまなこさまに祟られたという騒ぎが起きました。██氏は23時泥酔状態で入子湾に侵入したと証言し、左足裏がSCP-XXXX-JP-Aに曝露し眼球が生成していました。証言に基づきエージェント・モルガナが入子湾を捜索したところ、SCP-XXXX-JPと眼球が複数精製したヒトデの複数体を発見し収容に至りました。
事案記録: XXXX-JP-01
20██/██/██に異常性確認のためにD-XXXXの膝窩にSCP-XXXX-JP-Aを曝露させました。24時間後膝窩の眼球は爆発せず右目が爆発し、D-XXXXは脳損傷により即死しました。なお、膝窩の眼球は爆発せず残存していました。曝露者本来の眼球が爆発したのはこの一例のみで、再現を試みましたがいまだ成功はしていません。今後SCP-XXXX-JP-Aを用いた実験を行う際は、曝露者の残り3つの眼球に異常がないか注意してください。
個人的な意見です。ちょっと言葉汚くなってたらすみません
全体
登場人物
・主人公
SCP財団を全く知らない一般人が財団にかかわるのって結構難しいので、いい異常性を与えたなぁと思った。SCP屈指の人気キャラであるアイリスと密接に絡めるのもよし。ウス=異本期待
・アイリス
かわいい。彼女の絵がたくさんあるだけでもう満足。個人的に不憫属性の子と認識してたんだけどあんまり出てなかった。かわいい。
・ブライト博士
予想以上にガッツリでてきた。やっぱり動かしやすいよねこのキャラ。うさん臭さが良く出てた。おもいっきりエヴァのセリフ出てきたけど彼なら言いそうだもんなぁ。
・オリジナル博士2人
後述
気になった点
・あんま怖くない
SFホラーって銘打ってるのにあんま怖くない。それぞれメインのオブジェクトが各章のタイトルになってるんだけど、8個中7個がSafe、残り1個がEuclid。Safeもガチで安全なやつばかり。あんまり主人公に危険な目にあわせるのも可哀想だけどもうちょいホラー気味なオブジェクト出してもよかったんじゃないかなぁ。まあたぶん次のことも関係しているんだけど。
・伏線が回収されていない
アイリスの写真やアベルに近づけなかった主人公、ぜんまい仕掛けで用意しようとしたもの、ビルダーベアの話などが回収されていない。あんだけ伏線ばらまいてたキチクマが「いずれ機会があれば語る日が来るだろう」で片づけられるのはちょっと‥‥というかたぶん「ぜんまい仕掛け」の前に「アベル」の章が、「パパの贈り物」の前に「ビルダーベア」の章があったんじゃないかな?本来ビルダーベアが全体の山場で、なんとか生き延びてエピローグにつながるって流れだったんじゃないか。発売日も延期されてたし、中途半端で世に出された気がしないでもない。
章ごと
・「果てしないピザBOX」
SCP世界の説明の章。でもいくら何でもいきなり現れた人型オブジェクトをDクラス扱いは非道いんじゃないか。あとSCP-458を458番目に財団が確認したオブジェクトって説明やメタタイトルをガンガン言っていくスタイルに、ふーんそういうヘッドカノンね、と思った。
・「アイリス」
アイリスとブライト博士の説明の章。タイトルは不死の首飾りでもよかった気がする。キチクマが異常性みせてないのに何で”ビルダー”ベアって呼ばれてるのか謎。あれ発覚前はただ動くだけだったよね?
・「恐怖のお祭り」
このSCPだけ未読だったので事前に予習した。しっかりホラーしてる。まぁSCP世界の日常が書かれてて良かった。でも女性機動部隊情緒不安すぎません?機動部隊だったらもうちょい仲間が死んでも冷静に判断行動するイメージ。ましてや異常性が知られてんのに。あとブライトの不死性が、数十年前にいても問題ないっていう設定に生かされてて良かった。でもDクラスじゃなくて研究員を残機にするのはちょっと‥‥言及無いだけでDクラス堕ちしてたのかもしれないけど。
・「珈琲自動販売機」
アイリスが英語を喋れるようになるべきとかいうから、なるほど「英語知識」入力して主人公に飲ませるのかーと思ったらそんなことはなかった。あとAmazingなアイリスが個人的にさいかわです。
・「ぜんまい仕掛け」
一番「ない」と思った。博士二人がふざけすぎ。名高い存在とか言われてるけど冗談じゃないわ。セキュリティクリアランスレベル剥奪されてしかるべき。それでいて二人ともすごい人だみたいななんかいい話で終わっているのが解せない。その後もお咎めなし。ゴールドマン博士は収容されてくれ。
比較的ネタ方面に使われやすいぜんまい仕掛けがホラーっぽく使われてたのは評価するけどVeryFineの効果が弱すぎません?あれぐらいの翻訳機ならFineで十分そう。人が入って内臓傷つけられるだけとか意味が分からない。
ちなみに残念ながらこの章が一番ページ数が多い。あとゴールドマン博士の名前がそのまんますぎて笑った。
・「アイポッド」「半身猫のジョージ―」
SCP本部癒し四天王が二角登場。癒し系SCP使いまくってるけど続編大丈夫?この次に癒し系詐欺のキチクマの話が来れば流れよかったのになぁ。SCiPに感情移入はするべきではないという話は大事ですよね。アイリスあざとかわいい。
・「パパの贈り物」
主人公の異常性解明とラストの持ってき方は好きです。いい感じにオブジェクトが使われていた。ちゃんと平行世界というのが前に説明されていたのでしっくりとまとまった感じ。
・クレジット
ねこですだけ日本支部から出張してきてて笑った。
まとめ
DV。けどアイリスがかわいかったのでNV。ぜんまい仕掛けの章がないか、面白いビルダーベアの章があればUV。
でもライトにまとまってはいたのでSCPを全く知らない人への導入には良いと思う。