Illionuiのサンドボックス

1942年、彼女は夏を愛していた。窓から差し込む強い日差しは彼女が受け取れる唯一の刺激であり感動だった。まだカーテンが閉め切られていた日には彼女は真夏の病室に一人冬の装いでいた。たびたび彼女を訪ねる男はそんな女を見つけるたび空調を付け服を脱がした。シーツに垂れた血液を眺めながら夏は人を殺すのか、彼女はそんなことばかり考えていた。

「君が絵について言ったことを考えた。
眠らずに考えて、ある結論がでてー そのあとは君のことを忘れてゆっくり眠ることができた。君は自分のことをわかっていない子供だ。美術の話をすると君は美術本の知識を。ミケランジェロのことも詳しいだろう。彼の作品。政治論。法王との確執。セックスの好みも。だがシスティナ礼拝堂の匂いを?あの美しい天井画を見上げたことが?ないだろうな。女の話をすれば君は好きなタイプを挙げられる。女と寝たこともあるだろう。でも女の隣で目覚め真の幸せを感じたことが?君は難しい子だ。戦争の話ならシェイクスピアを引用。’’もう一度突撃を 友よ’’ だが本当の戦争を?撃たれた友を抱いて息を引き取るのを見守る気持ちを?愛の話をすれば愛の詩の引用をするだろう。自分をさらけ出した女を見たことは?目ですべてを語っている女。君のために空から舞い降りた天使を。君を地獄から救い出す。君も彼女の天使となって -彼女に永遠の愛を注ぐ。どんな時も。癌に倒れたときも。二か月の間病院で彼女の手を握り続ける。医者も面会規則のことなど口に出せない。自分への愛より、強い愛で愛した人を失う。その悲しみと愛を君は知らない。今の君が知性と自信にあふれた男?今の君は生意気なおびえた子供だ。だが天才だ。それは認める。でも絵一枚で、君は傲慢にも僕って人間を切り裂いた。」

(中略)

「君から学ぶことは一つもない。すべて本に書いてあるから。君自身の話なら喜んできこう。君って人間に興味があるから」

「でもそれはいやなんだろう?あとは君次第だ。」                          
                                           「旅立ち」1997.

詩はいつもなぜ嘘を言うカーテンを開ければ一人末路を思う