Illionuiのサンドボックス

1942年、彼女は夏を愛していた。窓から差し込む強い日差しは彼女が受け取れる唯一の刺激であり感動だった。まだカーテンが閉め切られていた日には彼女は真夏の病室に一人冬の装いでいた。たびたび彼女を訪ねる男はそんな女を見つけるたび空調を付け服を脱がした。シーツに垂れた血液を眺めながら夏は人を殺すのか、彼女はそんなことばかり考えていた。

「なぁ、だから戦場ってのは恐ろしくサイレントなんだ。俺は肥溜めの中で待ち伏せをして本当にクソみてぇな思いもしたさ。でもな、ここは本当に静かなんだ。俺はそこで二人撃ったんだよ。それでも俺はフラットなんだよ。」
もう先月になる。半年ばかりの長い任務から帰ってきて、彼はどこかおかしくなってしまっていた。
「馬鹿を言うなよ。お前は誰も撃っちゃいない。お前の銃はハリボテだ。」
その長い指で煙草を出そうとする男を来前は制止する。
「お前煙草なんて吸ってなかっただろ。」
互いの苛立ちが共鳴し始めている。良い事ではないとわかりながらも二者の貧乏ゆすりは机を震わせた。
「飯を食えよ。」
すっかり冷めきった盆を前に来前はまた違った苛立ちも覚えている。
「俺の話を聞いてくれるのはもうお前だけだよ。来前。あのな、俺は何度も人を殺している。当たり前だここに所属している奴で処女なんているわけがない。でもな、でも、俺はあの時人を撃ったんだ。」
「お前のその話は何度も聞いたさ。だから俺は何度もお前に返してるぞ。お前の銃は一度も発砲されていない。壊れてたから、だからお前は動けずにそこに伏せていたんだろう。」
軽く笑うその顔は出会った頃と何も変わりなく、それが来前には酷く不快であった。
「俺の銃は死んだんだ。死んでしまった。」
男は惨めに、憐れに見られた。
「銃は常に死んでるよ。お前が持つ前から最初から死んでるもんなんだよ。」
「でも生き返るだろ?銃は。」
「うん。」
男は箸を持ち、冷たくなったそれを黙々と食べ始めた。来前は望んでたそれが与えられなかったことに少し不満を感じたが男の日常的動作に安心もしていた。
「お前、いつもそうしていろよ。」
来前はこの男のことを好いていたしそれは今でも変わらなかった。会話ができる相手がお互い、互いの他いなかったからでもある。だから今のまま、いつか顔すら合わすことができなることを来前は今の時点で危惧していた。

詩はいつもなぜ嘘を言うカーテンを開ければ一人末路を思う