Ikkeby-Vの図演装置

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1947/09/██、ロズウェル基地よりSCP-001-██を輸送し、サイト-██主滑走路への着陸態勢に入った米海軍輸送機。

1947年9月、アメリカ合衆国、ニューメキシコ州、ロズウェル陸軍航空軍基地——。

宵闇の中、主翼に取り付けられた4基の3千馬力級空冷エンジンから爆音を轟かせ、月光を反射する銀色の機影が重々しく滑走路を走っていく。現時点では米軍随一の巨人輸送機である、R6Vコンスティテューションだ。

付随する収容設備ごと2階建ての胴体に“積荷”を飲み込んだ、場末の飛行場には不釣り合いな巨体は、滑走路を終端ぎりぎりまで使ってもまだ離陸速度に達さず、主翼に後付けされたロケットブースターR  A  T  Oから焔をほとばしらせて強引に大地から離れ、翼端灯をまたたかせながら夜空へと舵を切った。

「スパークス少将、あなたがたのご協力に感謝します」

上昇していくコンスティテューションを滑走路の脇で眺めながら、黒いスーツ姿の若い男が、傍らに立つ米陸軍の制服姿の壮年男性に話しかける。

「ボウ委員会だか“財団”だか知らないが、すべては君たちが為した仕事だ。我々は場所を間貸ししただけだよ。たった今運び出されたものについても、“宇宙に関連する何か”ということしか知らん」

スパークス少将は手で軍帽のつばを押さえる。影に入ったその顔には苛立ちが浮かんでいた。「何もわからない」という状況が生み出す苛立ちが。

「……あれは一体何なのだね。我が陸軍の基地に海軍の輸送機、それも2機しかない試作止まりのデカブツを呼び寄せねば運び切れんような大掛かりな措置——君たち流に言えば“特別収容プロトコル”を必要とする代物だ。公式発表のような単なる調査気球とも思えんが」

スーツの男は、まるでマネキン人形のように表情を変えなかった。わずかな時をおいて、その表情のまま語り出す。

「あれは気球かもしれませんし、そうでないかもしれません。今から30年ほど経ったころに、怪しげな噂という形で新たなカバーストーリーを世間へ流布する予定になっています。ロズウェルで回収されたのは墜落した異星人の乗り物エイリアンクラフトであると。それは真実を隠すための、ある程度真実に近い嘘です」

スーツの男の顔には何も浮かんでいなかったが、男自身、彼らが回収したものについて何か語りたかったのかもしれない、とスパークス少将はふと思う。その思いも、ことの始まりである7月7日の夜から「何か」についてスパークス少将が考え続けたことと同じ、単なる想像に過ぎないのであるが。



ロズウェル基地近くの牧場に「宇宙に関連する極めて重要なもの」が存在するとの一報がもたらされた。あの夜、スパークス少将が実際に体験したのは、せいぜいその報告を受けたことくらいだ。情報の出所、すなわち国家軍政省ペンタゴン中央情報局C I A、あるいはジェット推進研究所J  P  Lあたりのどこかに属するか繋がっているかしているのであろう“財団”なる組織は、即座に自前の人員を基地に送り込むとともに、サポートにあたった陸軍側に対しても「何か」についての一切の情報を遮断したのである。

それ以来、彼らは何も知らされていない。“財団”が占拠した基地の一角は完全に封鎖され、一夜にして築かれた大小様々な目隠しの覆いの中はおろか、そこに出入りするトラックの荷台の中すら窺い知ることはできなかった。

再三の視察要求が認められ、一度だけ覆いの1つの中に入ることができたが、そこにあったのはバンパーロケット——ナチスから接収したV2を改良した代物——の残骸を収めた仮設倉庫だけで、陸軍に対しても秘密にするほどのものだとは到底思えなかった。あの覆いはダミーとして設けられたもので、他の覆いも少なくともいくつかはダミーに違いない。そうスパークス少将は確信している。結局、“財団”は何も知らせる気はないのだ。

軍内部のつてを頼り、“ブルーブック計画”だの“ボウ委員会”だのから漏れ出てきたと囁かれるごく断片的な噂を耳にすることはできたが、それらを組み合わせてみても、結局は誰も正確なことは知らないのだろうということがわかるだけだった。あるいは、その噂自体もまた“財団”が言うところの「カバーストーリー」なのかもしれない。



ソヴィエトかナチス残党の宇宙超兵器、占星術の産物たる未来予言、これまで様々な馬鹿げた噂を聞いてきたが、まさか「一番近い」のが宇宙人エイリアンとは。合衆国は、いや地球は、いつの間にか充血した目玉とぬたくる触手をうねらせる、パルプマガジンの怪物どもの世界に呑まれてしまったということなのか?

スパークス少将のその思いを読み取ったかのように、スーツの男は言葉を紡ぎ続ける。

「と言っても、『エイリアンクラフト』あるいは『異星人』という説明が、あれそのものを指し示すのには不適当なことには留意してください。大衆向けの偽情報においては、仔細の説明よりも分かりやすいレッテルを示すことが重要であるということは、理解していただけると思います」

もはやスパークス少将には、事態が自身の想像の埒外にあるということしかわからなかった。宇宙人ですら十分に現在の世界の常識の外側にあるのに、それよりもよくわからない何かであるとは。

「君たちはこれからあれをどうするつもりなのかね。ネリス射撃場の中に新たにあれの研究施設を設けるという話も聞いたが」

呆れに近い何かを口調に混じらせながら、スパークス少将はかつて耳にした真偽不明の噂の1つを口に出す。答えが返ってくることは期待していなかった。自分もあれについて何か語りたかっただけなのだ。漠然としたとてつもないことについて、おぼろげなヒント以外何もわからないことを紛らわすために。だが予想に反して、スーツの男は口を開いた。

「ノーコメントです。ですが、1つだけ言えることがあります」

アメリカ南部の乾いた空気の中、天に瞬く星々を上を向いてきっと見据えながら、スーツの男は断固とした口調で言う。スパークス少将をたしなめるかのごとく、その目はあくまでも真剣だった。

「あれは我々に理解させたのです。我々はあそこに……宇宙に赴かねばならないということを。それが、人々が暮らす正常な世界を維持するために必要なことなのだと」



財団の中で、いわゆる「外宇宙支部」設立の準備が本格的に始まったのは、それから少し後のことである。



その名の通り。



表題の通り。



文字通りです。

自分用リンク: イァグトゥイル研究補佐の人事ファイル


C-takeさんに作っていただいた構文

注釈付きキャプション用構文と同時に使用。

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