アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Keter
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPは人為的に合成されたレンチウイルスの1種です。SCP-XXX-JPはヒト(Homo sapiens)にのみ感染する宿主特異性を有しており、他の生物への感染は確認されていません。SCP-XXX-JPの感染経路は血液感染のみであり、現時点でSCP-XXX-JPが広域での大規模感染を起こす確率は低いと推測されています。SCP-XXX-JPに感染した人物はSCP-XXX-JP-Aに指定されています。
臨床像:
SCP-XXX-JP感染の症状はその進行状態によって大きく2段階に分類されます。
感染前期: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-Aの大脳神経細胞に侵入し、逆転写によって宿主細胞の遺伝子に自身の遺伝子を潜伏させます。寄生された神経細胞はSCP-XXX-JPの生産を行いますが、これにより細胞が破壊されることはありません。増殖したSCP-XXX-JPは体液を介して全身の細胞に感染します。これら一連のプロセスにおいて宿主の免疫系は応答せず、結果として侵入から数日程度で全身の細胞がSCP-XXX-JPに感染します。また、この過程において宿主の生殖機能は著しく後退しますが、これはSCP-XXX-JPが生殖細胞を積極的に破壊することに起因しています。
感染後期: SCP-XXX-JPに感染した大脳神経細胞は盛んに分裂を開始し1、大脳基底核に直径30 mmほどの腫瘍を形成します。この腫瘍は脳の各部位と神経細胞を通じて連絡されており、SCP-XXX-JP-1に指定されています。また、全身の各細胞は未知の受容体を細胞膜表面上に形成します。これらはSCP-XXX-JP-1からの伝達物質を受容し、各種の応答を起こす役割を担っていると推測されています。
SCP-XXX-JP-Aが具体的な生物、あるいはそれに準ずる存在の詳細な生理的機構を想起した際、SCP-XXX-JP-1はその異常性を発現します。SCP-XXX-JP-1は宿主が想起した情報を受け未知の物質を生産し、血液を介して全身の細胞に指示を送ります。この物質を受容した各細胞は宿主が想起した生物の特徴を反映する変異を起こし、結果としてSCP-XXX-JP-Aの身体はその性質を大きく変化させます。現時点で身体の質量の増減、分裂・再集合および実体の消失などが確認されており、変化における制限は特定されていません。また、この変身プロセスは想起する存在の非常に詳細な理論・学問的知識が要求されます。そのため専門的な知識を持たない人物がSCP-XXX-JP-1の異常性を発現しようとした場合、高い確率で不完全な変異が発生し、これらの多くは生命維持のために必要な機能の不全によって死亡します。
個体 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
SCP-XXX-JP-A-1 | 後述 | 対象は現在もサイト-81██の人型収容セルで経過観察中 |
SCP-XXX-JP-A-52 | 対象の体高は3 m程度に伸長し、その上半身はイヌ属(Canis)に似た外見的特徴を有するものへと変化した。対象の咬合力は一般的なイエイヌのそれを大きく上回ったが、これは体高が大きくなった分、筋肉量が増加したためと思われる。身体機能の調査中、対象は財団管理下からの逃走を謀り激しく抵抗したが、激しい痙攣を起こしたのちに死亡した。現在この原因は体温調節機能の不足によるものであると断定された。 | 財団の管理下で24時間以上SCP-XXX-JPの異常性を保持したまま生存した初めての実例。対象の死体は解剖・分析された後サイト-8102で保管。 |
SCP-XXX-JP-A-123 | 対象は複数の木本植物に変化した。対象がハンノキに変化した際の萌芽は対象から切り離された後も成長を続けていることは特筆に値する。 | 対象は現在もサイト-81██の人型収容セルで経過観察中。 |
SCP-XXX-JP-17 | 対象はレベルⅠからレベルⅣまでの霊的実体に変化した。対象がスラント霊素固着波を無力化するアノマリーに関する知識を有していたため小規模な収容違反が発生。20分後に再確保された。 | 以降、アノマリーに関する専門的知識を持つ人物のSCP-XXX-JP感染実験は禁止された。対象は現在もサイト-81██の非物質変位無効装置(nPDN)が取り付けられた収容セルで経過観察中。 |
補遺: SCP-XXX-JPは20██年█月、サイト-8102の東門前に転移したアンプルの中から検出されました。また、付近にはSCP-XXX-JPに罹患した男子幼児およびSCP-XXX-JPの取り扱いと異常性発現プロセスの概要が記された文書(文書-αに指定)が発見され、その内容はこれらの物品が財団宛に意図的に届けられたものであることを示しています。
SCP-XXX-JP-A-1は6歳未満と推測される男子児童です。発見当初よりSCP-XXX-JPの影響意外に健康的な異常はありませんが、一般社会における同年代の幼児に比べ認知能力・言語能力共に発達の遅れが確認されています。その他知識の不足にも関わらず、SCP-XXX-JP-A-1は完全なハツカネズミ(Mus musculus)の飼養変種に変身することが可能です。これは人為的に当該動物に関する知識を教育されたことに由来すると推測されています。
SCP案置き場
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは実験中を除き、適切な記録媒体に保存されサイト-81██の低脅威物品収容ロッカーに保管されます。発生したSCP-XXX-JP-1は個体数を10体程度に調整し、それ以外は終了してください。また、1個体のSCP-XXX-JP-1を長期間延命する必要がある際は、点滴等を用いて活動に必要な栄養素の供給を行ってください。インターネット上のSCP-XXX-JP及びそれに関連する情報は財団のWebクローラによって即時削除され、発信者の特定が行われます。その他メディアにおけるSCP-XXX-JPは、継続的な監視によって一般社会での拡散を防止してください。
説明: SCP-XXX-JPは約2分の映像です。SCP-XXX-JPは各20秒程度からなる一見意味希薄な断片映像がつなぎ合わされたものであり、任意のメディアでの再生や複製が可能です。しかし編集によって内容が改変された場合、その異常性は喪失します。
SCP-XXX-JPの異常性は、それを再生した人物が映像終了まで視聴を継続した際に発現します。再生者が視聴を継続した場合、断片映像群の最後に17秒の映像が挿入されます。挿入された映像は定点から撮影されており、光量の乏しい森林に設営された石積み井戸を映しています。また、動画の再生者が既にSCP-XXX-JPの異常性を発現させた経験がある場合、この映像の挿入およびそれに続く異常性は発現しません。
映像が進行すると、井戸の中から後述する人型実体(SCP-XXX-JP-1に指定)が出現し、撮影地点に接近します。撮影地点に十分接近したSCP-XXX-JP-1は画面手前側に向け腕を伸ばし、SCP-XXX-JPを再生していたメディアの画面から這い出すように実体化して出現します。
SCP-XXX-JP-1は生殖器を欠いた人型実体です。その体長はSCP-XXX-JPが再生されたメディアの画面サイズに依存し、現在まで最大4 mから最小40 mmのものが確認されています。全てのSCP-XXX-JP-1個体は腰まで届く長髪を有しており、眼に該当する器官は強く充血しています。解剖の結果、SCP-XXX-JP-1は大脳や声帯の構造など多少の差異はあるものの、その身体的構造は人間に準拠しており呼吸や代謝を行っていることが判明しています。しかし、SCP-XXX-JP-1は自発的な食物の摂取を行わず、結果として外部からの干渉がない限り衰弱死します。
出現後のSCP-XXX-JP-1は多くの場合動画再生者に接近し、掴みかかる等の行動を示しますが、再生者の身体に危害を加えることはありません。この際、SCP-XXX-JP-1は再生者を睨みながら不明慮な声を発し続けますがその解読は困難です。この干渉の結果、再生者は軽度の心的ストレスを負いますが、その他に生じる精神影響はありません4。
補遺1: SCP-XXX-JPは動画投稿サイトである██████に投稿されたSCP-XXX-JPが、その異常性を通じて話題になったことで発見されました。この騒動は財団の介入によって鎮圧され、発生したSCP-XXX-JP-1の回収・処分と各カバーストーリーの流布、元動画の隔離が行われました。該当動画は██県在中の██ █氏によって投稿されたものであり、その後行われた自宅調査の結果、██氏は動画投稿以降行方不明になっていることが判明しました。また、██氏が動画のアップロードを行ったノートパソコンの付近からは割れたコンパクトディスクが発見されており、解析の結果SCP-XXX-JPの動画データが発見されました。ディスク表面には油性ペンで"リング5"と書かれていますが、破片の一部が未だに発見されておらず、その意味は判明していません。
補遺2: SCP-XXX-JP-1が音声を発生する際の口唇や舌の動き、および呼気量の変化からその内容を解読する試みが行われました。多くのSCP-XXX-JP-1個体に共通してみられる単語は以下の通りです。
- カラダ
- カエシテ/カエセ
- ワタシノ/オレノ6
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを保有する人物は一時的に拘束され、通常手順の記憶処理とセルアセンブリ孤立式記憶処理を行った後解放されます。インターネット上に存在する「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」に関する情報は財団のWebクローラによって即時削除され、発信者の特定が行われます。SCP-XXX-JPに関する研究や情報の閲覧は必ずSCP-XXX-JP対抗ミームを摂取して行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは中学校在学中の体験として認識される擬似記憶です。SCP-XXX-JPは「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」の存在を認知することによって伝播し、曝露者はSCP-XXX-JPを自身の記憶であると確信します。この異常性は満18歳以上で中学校に在学した経験を持つ全ての人物に発現します。また、SCP-XXX-JPは通常手順の記憶処理、および事前のSCP-XXX-JP対抗ミーム摂取で無効化が可能です。
「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」はSCP-XXX-JP内に登場する人物です。全ての曝露者は当該人物を中学校在学中の同級生で、良好な関係にあった友人であると証言します。しかし、全ての曝露者は2名の具体的な外見やエピソードに関する記憶を有しておらず、これらついて質問されると非常に困惑した様子を見せます。現在まで「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」に該当する人物の存在は確認されていません。
SCP-XXX-JPの内容は「部活が終了した後の帰り道で不明な存在に追いかけられる」というものです。所属していた部活動やそれ以前の学校生活についての記憶は存在せず「部活が終了した後の帰り道で不明な存在に追いかけられる」という記憶のみが漠然と存在します。暴露者が辿った帰路から、SCP-XXX-JPの舞台は██市立███中学校周辺であることが判明しています。しかし、SCP-XXX-JP内の街の景観は実在する███校周辺のものと多少の逸脱があることに留意してください。
時系列SCP-XXX-JP:
付記: タイムラインはSCP-XXX-JPの開始地点を00:00:00として表記されています。また、この時間経過は曝露者の主観に元づく感覚的なものであることに留意してください。
[00:00:00]: SCP-XXX-JP開始。夕方、河川敷沿いの土手を「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」と共に下校している。話の内容はある程度鮮明だが重要度の低いものとして略記。
[00:05:00]: 雑談の一環として「スギヤマセイヤ」が「えんえんさん」と呼ばれる存在について話す。この存在についての知識は「イノウエカズタカ」も持ち合わせていた。「スギヤマセイヤ」の話によると「えんえんさん」はその存在を知った上で特定条件を満たすと現れ、当該人物を捕らえて連れ去る不明な実体であり、都市伝説の1つとして校内で流行しているという。「えんえんさん」は肌色をした2足歩行を行う実体であり、頭部が著しく肥大していることが「イノウエカズタカ」によって語られる。この存在について曝露者は否定する。これは2人も同様であり、ただの都市伝説という結論に至る。その後は話題も変わり雑談が続く。
[00:10:00]: 自動車の接近を確認するために振り返ると、頭部が肥大した人間型の実体が200 mほど後方に認められる。この存在の外見的特徴は説明された「えんえんさん」のものに合致する。曝露者はこれを「えんえんさん」であると確信し、「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」にその接近を知らせるが2人はこれを認めない。特筆すべき点として彼らは「えんえんさん」出現後一切振り返ることはなかった。
[00:10:20]: 後方から「えんえんさん」が接近する。その接近速度は成人男性が全力で走るよりも少し遅い程度である。その間も2人を説得し続けるが、依然として2人は振り返えらない。「えんえんさん」に由来すると推測される声あるいは鳴き声が聞こえた時点で2人の説得は諦めその場から逃走する。後方から「スズキセイヤ」及び「イノウエカズタカ」の笑い声が聞こえる。
[00:15:00]: 土手から外れ、多くの空き地が存在する住宅地に至る7。逃走の最中、スーツ姿の男性や立ち話を行う女性、体操を行う老人会の集団および自転車の傍らで談笑する高校生のグループなど複数の人物が視界に入るが、いずれの人物も顔に影が落ちており鼻梁や眼球等、顔面を構成する要素は確認できない。これらの人物は「えんえんさん」に関して無関心あるいは認識していないように振舞う。
[00:20:00]: 橋を渡り██川西側の住宅地に至る。この時点でいずれの曝露者も体力的な限界を感じる。後方からは「えんえんさん」が接近しており、距離は数十m程度まで狭まっている。
[00:23:00]: 曝露者は自宅と認識される住宅に到着する。玄関の鍵は掛かっておらず、玄関を閉める際、磨りガラス越しに「えんえんさん」の姿を認識する。「住宅に入ると「えんえんさん」はそれ以上の追跡を行わず、玄関前で動きを停止する。鍵を閉め終えた直後に母親として認識される人物の「おかえりなさい」という声が聞こえる。
[00:23:20]: 声のした方へ向かい、リビングとして認識される部屋に入る。8畳ほどの部屋は、中央に朽ちたローテーブル、窓際に人工革が破けてスプリングが飛び出したソファー、化粧板の捲れて傾いたテレビ台がある。部屋全体は電球が点灯していないため暗く、埃が堆積しており人が生活している様子はない。しかし、曝露者はそれが自分の家のリビングであると確信する。
[00:23:40]: リビングに入って左手にある引き戸から母親として認識される実体が出てくる。この実体は曝露者の姿を確認すると曝露者の息が上がっている理由を尋ねながら接近する。母親として認識される実体の外見的特徴は「えんえんさん」のものと酷似していた。
<SCP-XXX-JP終了>
曝露者はSCP-XXX-JPに加えSCP-XXX-JP-1に指定されるもう1つの擬似記憶を保有します。SCP-XXX-JP-1には視覚や嗅覚に基づくイメージが存在せず、それ以外の感覚器官に由来する記憶や、当時の心境並びに自分が置かれていた状況が想起されます。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの断片的な情報との相似が認められますが、これらの関係性はSCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-1が共に記憶という客観性の乏しい情報であることから断定されていません。以下は現在までに確認されているSCP-XXX-JP-1の例です。
- 自分は体操の教師であり、老人会でストレッチを教えているという認識
- 断続的な「いち、に、さん、し」という掛け声と屈伸をしている感覚
- 国道█号線8を歩いているという認識と足音(4件の類似例)
- 近所の人物と談笑しているという感覚と話し声
- 河川敷沿いの土手で散歩していた犬の糞の始末しなければならないという意識
多くの曝露者はSCP-XXX-JP-1と共に、何者かが走って自分の近くを通り過ぎる足音と息づかいを想起します。この足音を想起することで一部の曝露者は軽度の不安神経症に陥ることが確認されています。また、SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPと異なり通常手順の記憶処理の効果が薄く、不定期に再発します。しかし記憶の消去ではなく、記憶の想起を阻害する処理の効果は十分認められるため、現在ではセルアセンブリ孤立式記憶処理9が曝露者に施されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Keter
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPは人為的に合成されたレンチウイルスの1種です。SCP-XXX-JPはヒト(Homo sapiens)にのみ感染する宿主特異性を有しており、他の生物への感染は確認されていません。SCP-XXX-JPの感染経路は血液感染のみであり、現時点でSCP-XXX-JPが広域での大規模感染を起こす確率は低いと推測されています。
臨床像:
SCP-XXX-JP感染の症状はその進行状態によって大きく2段階に分類されます。
感染前期: SCP-XXX-JPは宿主の大脳を構成する神経細胞に侵入し、一般的なレンチウイルス同様に遺伝子の逆転写を行い、宿主細胞に潜伏します。SCP-XXX-JPプロウイルスは宿主細胞が活性化した際に転写され、新たなSCP-XXX-JPを生産します。増殖したSCP-XXX-JPは体液を通じて全身の細胞に感染します。これらのプロセスにおいて免疫系は応答せず、結果として感染から数日程度で全身の細胞がSCP-XXX-JPに感染します。また、この過程において宿主の生殖機能は著しく後退しますが、これはSCP-XXX-JPが生殖細胞積極的に破壊することに起因しています。
感染後期: SCP-XXX-JPに感染した大脳神経細胞は盛んに分裂を開始し10、側頭葉深部に直径30 mmほどの腫瘍を形成します。この腫瘍はSCP-XXX-JP-1に指定されています。SCP-XXX-JP-1は脳の各部位と神経細胞を通じて連絡され、宿主が想起する意識によってその働きを変化させます。また、全身の各細胞は未知の受容体を細胞膜表面上に形成します。これらはSCP-XXX-JP-1からの伝達物質を受容し、各種の応答を起こす役割を担っていると推測されています。
宿主が具体的な生物あるいはそれに準ずる性質を有する存在の詳細な生態的機構を想起した際、SCP-XXX-JP-1はその異常性を発現させます。SCP-XXX-JP-1は宿主が想起した情報を受け、未知のウイロイド状物質を生産します。この物質は血液を介して全身の細胞に送配され、各細胞上の受容体によって識別され細胞内に取り込まれます。この物質を受容した細胞は宿主が想起した生物の特徴を反映する変異を起こします。この変異プロセスは想起される存在が霊素生物、あるいはImagimalなどの情報生物であっても問題なく発生します。現在このプロセスの究明が行われていますが、SK-BIO生物に似た改変プロセスが行われていることが判明しています。
上述したプロセスを経て宿主はその身体を大きく変化させます。現時点で身体の質量の増減、分裂・再集合および実体の消失などが確認されており、現時点でその制限は特定されていません。また、この変身プロセスは想起する存在の非常に詳細な理論・学問的知識が要求されます。結果として専門的な知識を持たない人物がSCP-XXX-JPの異常性を発現しようとした場合、高い確率で不完全な変異が発生し、これらの多くは生命維持のために必要な機能の不全によって死に至ります。

エージェント・大野によって確保された当時の文書-A。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 文書-A、および文書-Bはサイト-81██の小型物品収容ロッカーでそれぞれ別個に保管されます。文書-Bは不透明なビニール袋に入れ、その内容を実験時以外に確認できないようにしてください。また、文書-Bを用いた実験を行う際は、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可が必要です。実験には必ずDクラス職員を使用し、それ以外の職員が文書Bの内容を閲覧する際は、SCP-XXX-JP情報災害対抗ミーム"コルヌ"の接種を行ってください。
SCP-XXX-JP-2の確保はSCP-XXX-JP研究における最重要任務です。機動部隊て-3(郵便屋)はSCP-XXX-JP-1を用いて日本国内の徹底的な調査を行い、SCP-XXX-JP-2の発見に努めてください。発見されたSCP-XXX-JP-2はサイト-81██の標準人型収容室に収容されます。SCP-XXX-JP-1とSCP-XXX-JP-2の面会実験を行う際は、必ずSCP-XXX-JP-1に文書-Aを持たせてください。
説明: SCP-XXX-JPは文書-Aと文書-Bの2つで構成されています。
文書-Aは花柄をあしらったデザインの封筒と、中に入っている紙媒体です。封筒のデザインは199█年に██社から発売されたものと同一で、一般的な糊によって閉じられていますが、あらゆる破壊行為に耐性を持っており、傷がつかず折り目も残りません。またX線などを用いて封筒の内部を調査しようとした場合、機器が原因不明の故障を起こします。これら異常性により、封筒内の紙媒体は直接的な接触調査によってその存在が確認されており、その内容は現在まで確認できていません。
文書-Bは認識災害を引き起こす文章が書かれた書類群です。現在文書-Bは██枚確認されており、その種類は手帳の切れ端からルーズリーフまで様々です。文書-Bに書かれた文章は多少の差異があるものの、その内容は一貫して「文書-Aをある人物に届けてほしい」というものです。文書-Bの文章中には「ある人物」に関して「色素の薄い目」や「黒い短髪」などの外見的特徴に加え、「やさしい」といった主観的な情報が記されています。しかし「ある人物」の氏名や住所など、個人の特定に至るような情報は記載されてないため、文書-Bの情報から「ある人物」を特定するのは不可能であると考えられています。
文書-Bに書かれた文章を人間が認識すると、文書-Bに書かれた「ある人物」に文書-Aを届けなくてはならない、という強い強迫観念に囚われるようになります(以下、この状態の人間をSCP-XXX-JP-1と表記)。この認識災害はクラスA記憶処理によって一時的に払拭することが可能ですが、記憶処理後1週間程度で再び文書-Bの影響が表れるようになります。また文書-B閲覧前にSCP-XXX-JP情報災害対抗ミーム"コルヌ"の接種を行うことで、この認識災害を無効化することが可能です。SCP-XXX-JP情報災害対抗ミーム"コルヌ"の効果は、文書-Bを閲覧する前に接種した場合のみ有効です。文書-B閲覧後の接種は、その効果がないことに注意してください。
SCP-XXX-JP-1は文書-B読了後、24時間以内に「ある人物」を探すための行動をとります。この行動は極めて突発的かつ無計画なもので、効率的とは言えません11。また、SCP-XXX-JP-1は「とある人物」の捜索中、他者からの干渉がない場合をのぞいて食事や睡眠などを一切行いません。そのためSCP-XXX-JP-1の行動は自身の衰弱によって短期間で終了、失敗します。
SCP-XXX-JP-1は自身の衰弱によって「ある人物」の捜索が行えなくなると、身の回りにあるものを使用して文書を作成したのち死亡します。このとき作成される文書の内容は、文書-Bに書かれているものとほぼ同一で、文書-Bと同様の認識災害を引き起こします。この行動は、現在までどのような妨害措置を用いても防ぐことが出来ておらず、実験では外部からの攻撃で手首だけになったSCP-XXX-JP-1が、自身の血液で文書を作成した例があります。
文章-Aおよび文書-Bは██県██駅前で衰弱死していた女性の自宅から発見されました。女性が直前にとっていた行動や、死亡現場で文書-Bと同様の認識災害をもたらすレシートが発見されたことから、女性は文書-Bを閲覧しSCP-XXX-JP-1となっていたと考えられています。また、この事案に対処中、警察官2名および一般人3名が文書-Bとなったレシートを閲覧し、SCP-XXX-JP-1となりました。これらの人物がとった不審な行動が、当時警察組織に潜入中だったエージェント・大野の目に留まりSCP-XXX-JPの調査、発見がなされましたが、SCP-XXX-JP確保の際、エージェント・大野は女性宅にあった文書-Bを閲覧しSCP-XXX-JP-1になりました。文書-Bによって自身に異常なことが起こっていることを察知したエージェント・大野は、すぐに他の職員に連絡しSCP-XXX-JPを確保させました。エージェント・大野は現在サイト-81██の標準人型収容室で拘束されています。
補遺1: 次のインタビュー記録はSCP-XXX-JPと共に確保されたエージェント・大野へのインタビュー記録です。インタビューはSCP-XXX-JP確保の12時間後に行われたため、エージェント・大野は文書-Bの効果がまだ薄く、正常な会話の受け答えが可能でした。しかしこれ以降に行われたインタビューでは、自身の開放と「ある人物」の捜索許可を求めるばかりで有益な情報は得られませんでした。
インタビュー記録SCP-XXX-JP-1:
対象: エージェント・大野(SCP-XXX-JP-1)
インタビュアー: ██研究員
<録音開始>
██研究員: こんにちはエージェント・大野。調子はいかがですか?
エージェント・大野: ああ、調子はそこそこいいんだが、なんか妙な気分だよ。
██研究員: 妙な気分とは?
エージェント・大野: んー、なんというか、やらなきゃいけないことが出来ていないような、そわそわした感じだ。
██研究員: なるほど。では、あなたが文書-Bに暴露した時のことを教えていただけますか?
エージェント・大野: ああ、あれを読んだときだな。……そうだな、始めあれを読んだときは、特に変なことはなかったんだ。あれはただ文章ので、その内容はあの封筒に入った手紙を誰かさんに届けてほしいってだけだったからな。でも、しばらく██さん12の家を捜査していたら……なんというか、あの手紙を届けてやらなきゃならないって思うようになったんだ。名前も住所もわかりゃしないけど、それでも届けなくちゃなって。
██研究員: それで自身の異常に気付いたあなたは他の職員に応援を要請したのですね。
エージェント・大野: ああ、そうだ。あの手紙……文書-Aだったか。おれがあれを持ったら、やばいと思ったんだ。任務も何も捨てて、あれを持って誰かさんのところに届けに行っちまうかもってな。
██研究員: なるほど。ほかには変わったことは?
エージェント・大野: そうだな……。あの文書を読んでから、変な声が聞こえるようになったんだ。
██研究員: 声?誰の声ですか?
エージェント・大野: いや、具体的に誰の声かはわからん。聞いたことない、若い女の声だ。そいつが言ってることはあの文書と同じなんだが……ただ、なんというか、今にも泣きそうな声で、すがるように言ってくるだよ。「どうかお願い。あの手紙をあの人に届けて。」って。それを聞いたらさ、なんかますます使命感みたいなのを感じちまってな。今でもあの手紙を届けなくちゃと思ってるんだ。
██研究員: そうですか。他には?
エージェント・大野: いや、もう特にねえな。とにかく、あの手紙を遠くにいる誰かさんに届けなきゃならないって考えが、ずっと頭の中にあって妙に落ち着かねえよ。
██研究員: エージェント・大野、あなたは今「遠くにいる誰かさん」と言いましたか?
エージェント・大野: ん、ああ、言ったね。それがどうかしたか?
██研究員: では、あなたは手紙のあて先の人物が、具体的にどこにいるのかわかるのですか?
エージェント・大野: いや、ただ「今は近くにいるな」とか「遠くにいるな」とか、その程度。方角も距離も具体的にはわからん。でも何となくならわかる……ような気がするんだよ。
██研究員: そうですか。ありがとうございました。これでインタビューを終了します。
エージェント・大野: ああ、ちょっと待ってくれ。聞きたいことがあるんだ。
██研究員: 何でしょうか?
エージェント・大野: あの手紙……文書-Aだったか、あれは今どこにあるんだ?
██研究員: ああ、それでしたら現在別室で鑑定中です。なんでも封筒が全く傷つかないらしくて、中身の確認はできていないらしいですが。
エージェント・大野: ああ、そうか。まあ……中身を見るのは無理だろうな。
██研究員: 何か知っているのですか?
エージェント・大野: いや、詳しいことは何も。でも、たぶんあの封筒は開かねえと思うよ。
██研究員: それは何故でしょうか?
エージェント・大野: そりゃあ、お前。あれがラブレターだからだよ。どこの誰ともわかんねえ奴らに、自分のラブレターなんて見せたくないだろ?
<録音終了>
終了報告書: この後、エージェント・大野はなぜ文書-Aの内容を「ラブレターである」と断定したのかについて質問されましたが、それに答えようとしませんでした。また、インタビュー終了3時間後、エージェント・大野は鑑定中だった文書-Aを強奪しようと試みました。エージェント・大野は近くにいた警備員らによって鎮圧、拘束されサイト-81██の標準人型収容室に収容されました。
補遺2: エージェント・大野へのインタビューより、文書-Aのあて先とされる人物をSCP-XXX-JP-1の持つ性質を用いて捜索できることが判明しました。これを受けSCP-XXX-JP研究チームは、SCP-XXX-JP-1によって捜索される人物をSCP-XXX-JP-2に指定しました。また、同研究チームが機動部隊て-3(郵便屋)を発足させ、SCP-XXX-JP-2捜索を行った結果██県██市在中の田中 ███氏が確保されました。
財団による収容が行われる以前、田中氏はSCP-XXX-JPに関して一切の知識を持ち合わせておらず、文書-Bの内容についても「覚えがない」と回答しています。それにも関わらず財団が確保中のすべてのSCP-XXX-JP-1が、田中氏こそ文書-Aのあて先である人物だと主張しました。
以下の実験記録はSCP-XXX-JP-2である田中氏と、SCP-XXX-JP-1であるエージェント・大野の面会実験を行った際の音声記録、および双方がとった行動を文字に起こしたものです。
面会実験SCP-XXX-JP-1:
対象: エージェント・大野(SCP-XXX-JP-1)、田中 ██氏(SCP-XXX-JP-2)
実施方法: エージェント・大野と田中氏は強化ガラスによって隔てられた面会室で面会を行った。強化ガラスには30cm*15cmの穴が開いており、そこで物品のやり取りが可能になっている。面会室外には██研究員と万が一に備え、武装した機動部隊が待機している。またエージェント・大野は面会前、文書-Aを田中氏に直接渡したいという申し出をしておりSCP-XXX-JP研究チームはこれを許可。エージェント・大野は面会時、文書-Aを所持していた。
<実験開始>
(エージェント・大野が待機している面会室に田中氏が入室する)
エージェント・大野: おお、あんたがあの文書にあった「あの人」だな!会いたかったよ。あんたに渡さなきゃならないものがあってな。
田中氏: え、あ、はい。話には聞いています。ですが、私は貴方のこともその文書のことも、まったく存じ上げないんです……。
エージェント・大野: まあまあ、百聞は意見にしかず。この手紙をあんたに渡したかったんだ。(エージェント・大野は強化ガラスの穴から文書-Aを田中氏に差し出す)
田中氏: ああ、どうも。これは?
エージェント・大野: 見ての通り手紙だよ。あて先はあんただ。まあ読んでみてくれよ。
田中氏: はあ……。(田中氏は文書-Aが入った封筒を、それがもつ破壊耐性にも関わらず問題なく開封した。このとき文書-Aを確認できる位置にあった監視カメラが、原因不明の故障を起こしたため文書-Aの内容は確認できなかった。)
田中氏: ……。
エージェント・大野: どうだ?なんか思い出したりしたか?
田中氏: ……おそらくですが、この手紙。渡す相手を間違えているのではないでしょうか?
エージェント・大野: は?
田中氏: 私はこの手紙に書かれているように[原因不明な約20秒間のノイズ]てませんでしたから。
エージェント・大野: そんな……。
田中氏: ですから、この手紙はおそらく私あてのものではないと思います。手紙はお返しします。(田中氏は文書-Aを封筒に入れ、エージェント・大野に返却した)
エージェント・大野: 違う……あんたは確かにあの人なんだ!間違えるはずない!
田中氏: いや、ですから本当に何も知らないんです。お力になれないことは申し訳ないと思うんですが……。
エージェント・大野: ……。(30秒の沈黙)
エージェント・大野: ……違う。あなたはあの人だ。あの人があなたで、わたしがわたしわたしわたしわたし。
田中氏: え?
エージェント・大野: あなたが本当のあの人なら、そんな冷たい態度をとったりしない。あの人がわたしを忘れるはずがない。あの人のことを、わたしが間違えるはずがない。ない。ない。ない。ない!(このときからエージェント・大野の声に正体不明の女の声が混じるようになっていた。)
田中氏: だ、大丈夫ですか?
エージェント・大野: あの人はあなたであなたじゃなくて、わたしはわたしじゃなくてわたしはわたし。なんで覚えてないのわたしはずっとあなたを探して探して探してずっと探してそれなのにあなたは何も何も何も何も何も何も……
田中氏: だ、誰か来てください!この人が……
エージェント・大野: そうか。
田中氏: え?
エージェント・大野: あなたも違うあの人なんだ。
(エージェント・大野は強化ガラスに向かって激しく頭を打ち付け始める。エージェント・大野は額から出血しているが、それを気にする様子は見られない。)
エージェント・大野: あなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたがあなたが
田中氏: う、うわ、誰か!
(強化ガラスが破壊され、エージェント・大野が田中氏のいる部屋に侵入する)
エージェント・大野: あなたは私を覚えていなかった。わたしはずっとあなたを想っていたのに!ああ、でもきっと大丈夫!次のあなたはわたしのことを覚えているはず![原因不明のノイズ]の春のあの日を覚えているはず!だってわたしたちはずっとあの手紙でつながっていられるんだから!
(エージェント・大野が田中氏を引き倒し、首を絞める)
田中氏: うっ、が、はっ。
(██研究員の指示で機動部隊が突入。エージェント・大野を取り押さえようと試みるが、強力な力で振りほどかれ失敗。██研究員によって発砲許可が出され、隊員1名がエージェント・大野に発砲。銃弾は右肩を貫通したがエージェント・大野は依然として田中氏の首を絞め続けている。)
エージェント・大野: 次は次こそは絶対大丈夫!次もきっとこうして巡り合って今度こそあなたはわたしを思い出してくれる!だからだからだからだからだからだからだからだからだからだから
(██研究員によってエージェント・大野の終了命令が出される。数名の隊員がエージェント・大野の頭部、胴体、肩部を打ち抜くがエージェント・大野の手は田中氏の首を絞め続けた。)
エージェント・大野: 次はきっと大丈夫。また会いにいきますから。待っててください。絶対会いに行きますから。どんな犠牲を払ってでも! (この時点でエージェント・大野の頭部は銃弾によって完全に破壊されており、どのような方法で発声を行っていたのかは判明していない。)
田中氏: ご、が……もう……
田中氏: もう嫌だ
<実験終了>
田中氏の発言からおよそ20秒後にエージェント・大野の手が田中氏の首から離れる。機動部隊員が駆け寄ったが、田中氏は頸椎の損傷が激しくすでに死亡していた。エージェント・大野は田中氏の首から手を話すと同時にその場に倒れこみ、死亡した。エージェント・大野の衣服のポケットからは、封を切られる前の状態の文書-Aが発見された。現在までどのようにして開封された文書-Aが元の状態に再生したのかは判明していない。
██研究員のメモ: あまりにも予想外の結果だった。エージェント・大野は一般人と比べれば力は強いほうだろう。しかし、いくらなんでもあの強化ガラスを生身で叩き割るなんて不可能だし、銃弾で頭を吹っ飛ばされても首を絞め続けるなんてもっての他だ。それにあの音声記録に交じっていた声。あれは誰の声なんだ?まるで別の誰かが、エージェント・大野に乗り移ったみたいだった。なんにせよ、この実験で我々はSCP-XXX-JP-2を失ったことになる。ただ、あの音声記録に残された不気味な女の声を信じるなら、別のSCP-XXX-JP-2がどこかに現れるかもしれない。とにかく調査を続けなければ。そう、あの人を探し続けなくちゃならないわ。
面会実験SCP-XXX-JP-1の結果SCP-XXX-JP-2である田中氏が死亡したにもかかわらず、SCP-XXX-JP-1は依然として文書-Aのあて先となる人物を探す行動をとりました。このことから既存のSCP-XXX-JP-2が死亡した場合、別のSCP-XXX-JP-2がどこかで出現されるのではないかという予想が立てられ、機動部隊て-3(郵便屋)による調査が行われました。これにより、現在まで1█人のSCP-XXX-JP-2が確保されています。現在SCP-XXX-JP-2の出現は日本国内に限定されており、その出現経緯は何らかの現実改変によるものではないかと予想されていますが、証拠となるような事象は確認されていません。確保されたすべてのSCP-XXX-JP-2は以下の共通した特徴を有していました。
- 男性
- 確保された当時の年齢は30歳前後
- とび色の瞳や175㎝ほどの身長など外見的特徴の酷似
- DNAの一致
- 生物学上の両親に捨てられ、乳児院および児童養護施設に入所していた経歴
- 「紳士的」と評価される穏やかな性格
しかしそれぞれのSCP-XXX-JP-2が保有している記憶や、里親となった人物の名前、進学した学校や勤め先、氏名などは同一ではありませんでした。
また、確保したすべてのSCP-XXX-JP-2にはSCP-XXX-JP-1との面会実験を行っています。しかし、その結果はどれもSCP-XXX-JP-2の死亡という形で終了しています。大丈夫、次のあの人はきっとわたしを覚えているわ。
補遺3: 文書-Bの閲覧を行う際は以下のリンクからアクセスしてください
警告
文書-Bを閲覧するにはSCP-XXX-JP情報災害対抗ミーム"コルヌ"の接種が必要です。適切な抗ミーム接種なしでの文書-Bの閲覧は、閲覧者の人格の不可逆な破綻をもたらします。
……待機中。
邪魔をしないで頂戴
……SCP-XXX-JP情報災害対抗ミーム"コルヌ"の接種プログラムに異常を検知。
わたしはただあの人にお礼を言いたいだけなの
……再起動中
そのためにはまず彼を探さなくちゃ
……待機中
ね、そうでしょう?
……SCP-XXX-JP情報災害対抗ミーム"コルヌ"の接種プログラムに異常を検知。
だから、お願いね
……プログラムが強制終了されました。
警告: SCP-XXX-JP情報災害対抗ミームの接種が正常に行われませんでした
適切な抗ミーム接種なしでの文書-Bの閲覧は禁止されています。直ちに本項を閉じてください。
error: 不正なアクセスを検知しました
error: 不正なデータベースがインポートされました
**文書-Bの本文の写し **
これを読んでいる方にお願いがあります。私の手紙をある人に届けてほしいのです。見ず知らずの方に、ぶしつけなお願いなのはわかっています。ですがどうしても一言、お礼を言いたい方がいるのです。細かい経緯は省略しますが、私は一人の男性に命を救われたのです。ですが、彼は私を助けてくれた後、私がお礼を言う間もなくどこかへ行ってしまいました。あの方の美しいとび色の瞳を、墨を塗ったような真っ黒い短髪を、私のような人間に尽くしてくれたやさしさを、私は今でも覚えています。お願いです、どうか私の手紙を、名前も知らないあの人に届けてください。確かなことは何もわかりません。でも、私と彼は運命の糸で繋がれているような気がするのです。だから、きっとあなたが私の手紙を届けてくれると信じています。どうか、お願いします。
次はあなたの番よ
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPはサイト-81██の旧人型オブジェクト研究棟B棟です。SCP-XXX-JPは地上4階、地下2階建てであり、19██年に人型オブジェクト収容棟であるA棟と共に建造されました。SCP-XXX-JPはかつてEuclidクラス人型オブジェクトの研究・実験を行う研究施設でしたが、耐震性に関する懸念から新たな収容棟が建造され、SCP-XXX-JPは取り壊しが予定されていました。しかしながらSCP-XXX-JPの取り壊し工事の際に関係者の不審な事故が相次いだため調査が行われ、オブジェクト認定がなされました。
SCP-XXX-JPの内部はその外観から想定されるよりもはるかに広く、内部構造が常に変化しているため、その総面積は現在も判明していません。また壁面に取り付けられた窓によって、外部からSCP-XXX-JP内の観察は可能であるものの、これまでSCP-XXX-JPの異常性が外部から観察された例はありません。
SCP-XXX-JPの内部では複数の異常現象が発生します。SCP-XXX-JPの内部調査は19██年に初めて行われ、探査のため内部に侵入した機動部隊員4名全員が行方不明となっています。Dクラス職員を用いた3回の追加調査の結果、SCP-XXX-JP内部で3体の非常に強力なレベルⅤ人型霊的存在(敵対的・積極攻撃)の存在(SCP-XXX-JP-1に指定)が確認されました。SCP-XXX-JP内部の異常現象はSCP-XXX-JP-1に起因すると推測されていますが、その詳しいプロセスやSCP-XXX-JP-1が財団の施設内部に存在する理由は不明です。
探査記録XXX-JP-1 日付19██/█/██
探査人員: 機動部隊員3名(アルファ、ブラボー、チャーリー)からなる探査チーム。隊長はアルファが務めた。隊員は各種サバイバル装備の他に簡易カーデック計数機13を携帯していた。
目的 旧実験棟のB棟を中心とした調査。
結果: 探査チームの全員をロスト。司令部は探査チームが所持していた通信端末を媒介した情報災害により█名が自己終了、残る█名も重度の心的外傷を負う壊滅的な被害を受けた。
[ログ開始]
探査チームはA棟正面入り口から侵入し、セキュリティゲートをくぐってB棟に到達した。A棟内では特筆する現象は発生しなかった。
アルファ こちらアルファ。3人とも通信状態は良好。これより1階から順にB棟内の探査を行う。
司令部 了解。映像確認しました。3名とも位置情報、通信状態共に正常。探査を開始してください。
アルファ、ブラボー、チャーリー 了解。
全員が探査を開始。B棟1階の収容室前の廊下を進行し30秒が通過した時点で3人の通信状態が悪化。映像、通信ともにノイズが混じるようになる。
アルファ 暗いな。窓はあるが光が全く射してない。トンネルに入った電車の窓みたいな感じだ。
ブラボー 酷く荒れています。ここの施設って遺棄されてから1年も経っていないんですよね?あっと、2時の方角、光源が動いているようです。アルファ、チャーリー、確認できますか?[不明なノイズ]了解。探査ルートは変更せず、その予定通り作戦を続行します。
チャーリー おい、ブラボー。どこへ行く。隊長に続け。ブラボー?
チャーリーから送信された映像ではブラボーが探査ルートから外れ、実験棟へ向かっている。しかしブラボーからはブラボー・およびチャーリーがアルファの後ろを追従する矛盾した映像が送信される。同時期に司令部から探査チームへの指示が不明な電波障害によって不可能になる。同様に探査チーム間の通信も切断され、互いの指示が通らなくなる。
チャーリー アルファ!ブラボーが探査ルートを外れたぞ。おい、アルファ?アルファ!おい司令部。アルファの姿が消えた。他の隊員に指示を出してくれ……司令部?ノイズしか聞こえないぞ。
ブラボー アルファ。チャーリーの姿が消えました。通信もできません。アルファ?そっちは壁ですよ。アルファ、応答してください。
アルファ こちらアルファ。了解した。計画を一部変更し先に西側の収容室の探査を行う。ブラボー、チャーリー。大丈夫か?[不明なノイズ]……了解。探査を続行する。2人ともついてこい。
アルファからは探査チーム3名全員が道を折れ、当初の作戦とは外れた行動をとっている映像が送信された。ブラボーのカメラはアルファが壁面を貫通し左折する様子を映している。チャーリーは映像が激しく乱れ内容を確認することができなかった。
チャーリー クソッ、散り散りだ。司令部、ブラボーの後を追う。合流したらいったん引き上げる。おいブラボー!どこへ行く!そっちは地下だぞ。
ブラボー アルファ![コンクリート壁をノックするような音]……ただの壁ですね。司令部。アルファとチャーリーをロストしました。指示をお願いします。[不明なノイズ]……はい、カーデック計数機に変化はありません。[不明なノイズ]……わかりました。調査を続行します。ただし計画の一部を変更し、収容棟の1階をチェックした後帰還します。よろしいですか?[不明なノイズ]了解。
アルファ 実験棟に到達。嫌な臭いだ。カーデック計数機の値は変化なし……なんだ?扉の開閉音がするな。ブラボー、チャーリー、聞こえたか?[不明なノイズ]ああ、確かに左奥の方からの音だったな。司令部、指示を[不明なノイズ]……了解。ブラボー、チャーリー、配置に着け。音のあった方向を調査する。
アルファと不明な人型実体含む3名、およびブラボーはそれぞれ異なる地点の調査を開始する。また、この際司令部は一切指示を送っていない。この後15分間、異常な現象は発生せず両調査チームは探査を続ける。
この時点で探査チームは完全に分断され、孤立状態となりました。以下の記録は混乱を防ぐためチャーリー、ブラボー、アルファそれぞれ分けてまとめられます。
> チャーリーのカメラが復帰する。映像にはブラボーに酷似した人型実体が背を向けて立っている様子が映っている
チャーリー ブラボー、ようやく追いついたぞ。なんでそんなに速足なんだ……おいアルファ、ブラボーを確保した。今そっちに戻る。おい行くぞ、いつまでそっぽ向いてんだ。ブラボー?……違う!てめえ誰だ!おい……おい、嘘だろ。お前、顔が、なんで顔がそんなに抉れてるんだ?おい、近づくな!それ以上近づいたら発砲する!……クソッ![3回の発砲音]……おい、なんでまだ動くんだ……お前の脳天はぶっ飛んだだろう!おい、司令部!どうすればいい!銃弾が効かねえ!追ってきてる!
再び映像が乱れる。一瞬映った映像では頭部が著しく破壊された人型実体が確認できる。チャーリーは当該実体を攻撃した後、対象から逃走していると推測される。
チャーリー: クソ、なんでそんなに足はええんだよ!
不明 [検閲済、情報災害キャリア]
チャーリー せめてアルファと合流できれば……おい、どういうことだ!さっきまで来た道が消えてる!引き返せねえぞ!うう、クソ。窓ガラスを割って脱出する![発砲音、およびガラス質の物体が割れた音]おい嘘だろ……なんで窓の向こうにも廊下があるんだよ!しかもここと全く同じ造りの!ああ畜生、追い付かれる……![数回の発砲音の後、通信断絶]
通信断絶の6分後、チャーリーのウェアラブルカメラが復帰した。映像では広さ10畳ほどの部屋の中央でチャーリーが首を吊っていることが確認できる。チャーリーの顔面は激しく損傷しているほか、足首から下が千切れ消失している。映像はカメラのバッテリーが切れるまで続き、その間チャーリーの縊死体は一定間隔で揺れ続けた。
ブラボー こちらブラボー。壁面いっぱいに手形が付いています。褐色に色が変わってますが、恐らく血の手形でしょう。大きさは……子供の手と同じくらいでしょうか?映像確認お願いします。
ブラボーの報告通り映像では夥しい数の子供の手形が確認される。
ブラボー: [不明なノイズ]了解。先に進みます。ここは……医務室?おかしいですね、1階収容棟にそんなものはなかったと思いますが。[不明なノイズ]ええ、確認します……あれ、司令部、さっきと間取りが全く違います。少し視線を落としたら全部変わっています。[不明なノイズ]……はい。何か確認ができるものは……ありました。備え付けの消火器に「Dクラス職員棟1階西」と書いてあります。
ブラボーから送信された映像の間取りはサイト-81██の旧Dクラス職員棟のものと一致していた。同施設はSCP-XXX-JP発見の6年前に取り壊されている。ブラボー: [不明なノイズ]了解。これ以上の探査は不可能として引き上げます。ですが司令部、どうやって脱出すれば?[不明なノイズ]なるほど、ここを進んだ先に出口が。了解です。
ブラボー: [幼児の泣き声と酷似した音声]司令部。聞こえましたか?今、赤ん坊の泣き声が……複数です。1体じゃない。後ろからも聞こえます。[不明なノイズ]いや、実体は確認できていません。ただ泣き声だけが聞こえます。[不明なノイズ]カーデック計数機は……規定値を大きく超えています。ああ、司令部、映像確認お願いします。手形が、こっちに、こっちに近づいてませんか?それに、音も、何かを引きずる音も聞こえます。自分をぐっると囲むように、全方位から!
幼児の泣き声と思われる音声は次第に大きくなっていることが確認できた。しかしブラボーに接近する手形は記録されていない
ブラボー: おい、違う!離してくれ!千切れる![悲鳴、20秒間継続]//ブラボーのウェアラブルカメラは天井を写したまま動かなくなる。また、何者かがブラボーの周囲を這いまわる音、および唱歌「蝶々」の1番が8回
tale案置き場
子供の頃から生き物が好きだった。
幼稚園のころの夢はキリンになることだったし、小学生のころの夢はスマトラヒラタクワガタになることだった。中学生なってからは常に酢酸エチルの入った毒瓶とアンモニアを注射するための注射器を持ち歩いていた。大人になった今も部屋は展翅待ちの蛾やエタノール漬けになった魚であふれている。
私の生き物に対する過剰な愛は、私の憧れに起因するのだと思う。私は空を飛べないから、大空を滑る鳥に憧れた。私には見えない色があったから、私はミツバチに憧れた。私の足はずいぶんと遅かったから、私はウマに憧れた。ミミズにもオケラにもアメンボにだって私は憧れた。でも、私は人間にしかなれなかった。大声で泣いてみても、草原に寝転んでみても、ハチに刺されても、駅前で居酒屋の客引きに声をかけられても、日本生類創研で生物の研究をしてみても、結局、私は人間にカテゴライズされてしまった。
私は、私を人間という檻に閉じ込めているこの遺伝子が憎かった。私の体は私のものなのに、その主導権は核酸の螺旋が常に握りしめて放さなかった。お前は俺の乗り物に過ぎない。俺のための生存機械なんだよ。そう言われ続けた。ふざけるな。私の体は私のものだ。お前のものじゃない。
いつか、私は私の遺伝子に反旗を翻す。そのためだけに私はここに居た。核膜の中で悠々と眠りこけている主人に革命を起こすのだ。その末端の、テロメアあたりをつかんで引きずり出して、私の意思でそいつを変えてやる。そうして私の体は、指の先から毛細血管の一本に至るまで私のものになる。私は私になるのだ。遺伝子の奴隷ではない、本当の薗田麻衣に。
[1]
酩酊とはすなわち軽度な急性アルコール中毒のことを指すのだという。エタノールが中枢神経系をマヒさせ、判断力の低下や不自然な感情の高揚、あるいは鎮静を引き起こす。この効果が人類に知られたのは遥か紀元前の事であり、大昔から酔っぱらいはいたのだろう。タイ語で「のんべえ」を表すขี้เมา (キーマオ)と英語のKey man(キーマン)は発音が似ている。つまり酔っぱらいは大事な人間なんだ、といつだったか研修先で話したタイ人の上司の話はさておき、酒は古来より重要な道具であった。なぜ、酒がそんなに魅力的なのだろうか?初めてそう思ったのは自分が15になったときだった。親戚たちが自分たち子どもをそっちのけで長机を囲み、酒を片手にだらだらと語り続けるのを見てそう思ったはずだ。その答えは大学を卒業し、社会に出た今となってもわからない。ただ、この年まで生きてきて1つ分かったことがある。酒の力は、ある人間にとってはどうしても必要なのだ。
あの街と同じように。
[2]
ハルさんと僕らが出会ったのは中2の冬だった。
僕とセイヤとカズタカは、いつものようにオンボロ公園で遊んでいた。
オンボロ公園という名前は当然正式名称ではないが、錆つき朽ちかけている遊具やところどころ穴の開いたフェンス、何も植えられず雑草が繁茂するだけの花壇などはまさに「オンボロ」だった。広さはちょっと広めの空き地程度で、誰が設置したのかわからない小さなサッカーゴールがあった。土曜日の部活が終わった午後、僕らはそこによく集まって、ボールを蹴って遊んでいた。
その日、部活が終わり、僕はいつものように近所に住むセイヤとカズタカに声を掛けた。セイヤとカズタカは同じサッカー部の同級生だった。僕らは昼食を適当に済ませた後、いつものようにオンボロ公園に集合した。寒々とした冬の空にはスヌーピーの絵が描かれた飛行船が浮いていて、雲は高く、薄く、点々と空に伸びていた。僕らは適当にボールを蹴ったり、1対2のボールの奪い合いをして遊んでいたが、やがて飽きて「無回転のシュートを打つ練習」という名のひたすらゴールにボールをけり込む遊びをすることになった。その最中、僕らは公園の周りを千鳥足で歩くハルさんを見つけた。
ハルさんは僕らの街によく出没する浮浪者だった。いや、本当に浮浪者だったのかはわからない。もしかしたら近くの家やアパートに住んでいて、生計を立てられるだけの仕事をに就き、然るべき財産を持っていたのかもしれない。だが、真っ昼間から酒の缶を片手に住宅街をふらふらと徘徊するその様子はとてもまともに働いている人間には見えなかった。ハルさんはその中身が入っているのか入っているのかわからない酒の缶を持ちながら、千鳥足で、いつもへらへら笑いながら公園近くの土手をいったり来たりしていた。彼はその様子から「頭の中があっぱらぱーで晴れ渡っている」として、近隣の子供たちからはハルさんと呼ばれてた。
僕らは最初、彼のことをさほど気にしなかった。近所の中学生の間で彼は、ちょっと頭のおかしな人として通っていて、下手に関心を向けず無視するのが安全だと思われていたからだ。しかし彼がゴールの後ろを横切ろうとしたとき、セイヤが1つ提案をした。「3人で同時にボールをゴールに向けて蹴りこみ、ハルさんを驚かせよう」驚かせた後はどうするつもりだ、もし怒らせたりしたらどうするんだと僕は尋ねたが、彼は「もし本当にアイツが怒ったら逃げればいい」と言った。
僕とカズタカは少し考えてから彼の提案に賛同にした。そこまで悪質ないたずらではないし、もしハルさんが怒って追ってきても、サッカーで鍛えた足で簡単に逃げられると思ったからだ。さらに僕は酒を飲む人が嫌いだった。ましてや昼間っから酒を飲み、街を徘徊する「悪い大人」は懲らしめなければならないと思った。
僕らはゴールから10m程の場所にボールを置き、助走のための距離をとった。ハルさんは相変わらずふらふらと歩いている。僕らは目配せをして一斉に走り出した。軸足に力を入れ、足の甲でボールの心を捕らえる───はずだった。
他の2人はしっかりとボールを蹴り出したが、僕は軸足がすべり体勢を崩したままボールを蹴ってしまった。セイヤのボールはゴールネットを揺らし、カズタカのボールはコーナーポストに当たって跳ね返った。僕のボールは下向きに回転しながら飛んでいき、フェンスの一番上の部分にガシャンと大きな音を立てぶつかって上へと高く飛んだ。
ハルさんはその音に気付いてこちらを向いた。恐らく彼は僕らのことを認識していなかったのだろう。目を丸くしたまま足を止め、こちらを見ていた。その場所はフェンスによって跳ね上げられたボールの落下地点とぴったりと重なっていた。空を舞ったナイキのサッカーボール(5号球)はハルさんの脳天を直撃し、もう一度空を舞った。衝撃でハルさんは持っていた酒の缶を落とした。カランと、軽く小気味良い音がした。
サッカー経験者、あるいは頭部にサッカーボールが直撃したことがある人なら知っているだろうが、空気の入ったサッカーはそれなりに硬く、頭に当たると結構痛い。だから僕はヘディングが嫌いだったし、味方のコーナーキックにはいつも足で行こうとした。意識してあれだけ痛いヘディングを、不意に食らったらどうなるか。ハルさんは頭を抱え、その場にうずくまった。
想定外のことが起こり、僕らはしばらくあっけにとられていた。ハルさんがそのゆっくりこちらを見たとき、先ずセイヤが逃げ出した。次いでカズタカが少し躊躇ったあとやはり同じように逃げ出してしまった。僕は少しハルさんの方に歩み寄ってから「大丈夫ですか」と声をかけた。返事はない。
「あ、あの」
「このボールはアンタのか」
しゃがれた低い声だった。
「ええ。あの、その、ごめんなさい」
「アンタ、サッカー部か」
「はい、そうです」
「そうか。ほら、返すよ」
ハルさんはゆっくり立ち上がりにこやかに笑って見せた。そしてボールを投げたが高さが足りず、ボールはフェンスに当たって跳ね返った。
「ああ、いけねえ」
もう一度繰り返したが結果は同じだった。僕はしびれを切らし、自分からフェンスの外に出てボールを受け取った。「わるいな」とハルさんは照れ臭そうに言った。
「他の坊主どもは友達か?一目散に逃げちまったが」
「ええ、はい。同じ部活のやつらです」
「どうしてあんなに血相抱えて逃げちまったんだ」
「それは……」
僕は言いよどんだが上手い言葉が見つからず、結局自分たちがハルさんのことを得体のしれない頭のおかしな大人だと思っていたことを伝えた。ハルさんは少し笑ってから「なるほどな」と言った。
「あの、ケガとかは大丈夫ですか」
「ん、ああ、大丈夫だ。ぼおっと歩てたが、おかげで目が覚めたよ」
「ありがとな」と最後に加えてハルさんはまた笑った。多くの大人が僕らにする皮肉めいた笑い方とは違う、晴れやかな笑顔だった。
「なあボウズ、アンタポジションはどこなんだ」
「サイドバックです。ディフェンスの」
「そうか。まあ、あんま背は高くないようだからそんなとこだろうな」
うるせえと内心思ったがぐっとこらえた。
「実はオレもサッカーやってたんだ。ボランチでな。高校まで続けてたんだ。結構うまかったんだぜ。将来はプロになるとかいわれるくらいにさ」
「はあ」
「ほら、ちょっとボール貸してみな」
ハルさんはボール受け取るとちょっとした足技を披露しようとした。しかしハルさんの靴は安っぽい”つっかけ“だったので全く上手くいかなかった。僕は黙ってハルさんの試行錯誤を見ていたが、やがてじれったくなって「もう大丈夫ですから」と言った。ハルさんはやっぱり照れ臭そうに笑って僕にボールを返した。ハルさんとの会話にこれ以上意義を感じなくなった僕は適当な理由を作ってその場から立ち去ることにした。ハルさんは特にそれを止めなかった。
ハルさんは最後に僕のアップシューズを見て「ずいぶんボロボロだな」と言った。
「靴の裏とかずいぶんすり減ってるんじゃないか」
「ええ、はい。だからさっき蹴る時滑っちゃって。だからあんな変なボールになったんです」
「そろそろ買い替えるのか」
「たぶんそうだと思います」
「じゃあ新しいのを買ったら、古い方の、つまりその靴は捨てるのか」
質問の意味が分からなかった。新しい靴が買えたら古い方を捨てるのは当たり前じゃないか。僕がたぶんそうですと言ったら、ハルさんは寂しそうな顔をして「そうか」と言った。そうしてそのまま僕に軽い別れの挨拶をして、酒の缶を拾ってからどこかに行ってしまった。僕はしばらくその様子を見ていたが、木枯らしが強く吹いたのをきっかけに振り返って自分の家に向かうことにした。
[3]
次の日、学校でセイヤに遭うと僕を見て「生きてたか!」と叫んだ。
「いやあ、あのときケントがハルさんにボール当てたときは、マジでやべえとおもったぜ」
「いや、お前、ありえねえだろ。なんでカズと一緒に逃げてんだよ」
「お前も逃げればよかっただろ」
確かになぜ僕は逃げなかったのだろうか。
「まあ、とにかくケントが生きててよかったぜ。あの後カズとお前がハルさんに殺されたんじゃないかって心配したんだぜ」
「なら助けに来てくれても良かったんじゃないの」
「いやだよ、俺は死にたくないもん」
僕は溜息をついて昨日の一部始終を話した。セイヤはへえ、とかほう、とかなんども相槌を打ちながら話を聞いていた。一通り話し終わるとセイヤは「なんだ、ハルさん、結構いいやつじゃん」と言った。僕はあの短い会話でハルさんをいい人として認定するのはあまりに単純だと思ったけどその意見におおむね賛成する返事をした。しばらくだっべていると教室の前をカズタカが通りかかった。セイヤが声をかけるとカズタカはこっちを向いて僕の存在に気づき「あ!ケンちゃん生きてたんだ!」と言った。
2回目にハルさんと会ったのは春休みに入った直後のことだった。僕らは部活が終わって家に帰る途中ハルさんに遭遇し、セイヤが面白がって声をかけた。ハルさんはやはり片手に酒の缶を持っていた。ハルさんは目を細めてから僕を見つけ「おう、あんときのボウズ達か」と言った。
「オジさんはこんな時間に何してるんすか」
セイヤがハルさんに尋ねた。
「なんもしてんねえよ」
ハルさんはニコニコしながらそう答えた。そうして酒の缶を口に持っていった。どうやら今日は入っているらしい。僕らはしばらくハルさんと話してから彼と別れそれぞれの帰路に就いた。
こういうことが春休みの間何度かあり、僕らはハルさんと仲良くなった。ハルさんは相変わらず中身が入っていたり入っていなかったりする酒の缶を片手に街をうろうろし、僕のアップシューズは新しいものに変わっていた。僕は古くなったシューズをゴミ袋に入れるとき、何となく寂しい気持ちになったので「いままでありがとう」と言ってそれを捨てた。
春休みも終わるころ、ハルさんがサッカー経験者であるということが本当だとわかった。それは僕らがオンボロ公園でいつも通りボールを蹴って遊んでいた時だった。その日ハルさんはちゃんとした靴を履いていて、ある程度安定してボールを操ることができた。ただ、ブランクがかなりあるようでたびたびボールはハルさんの思わぬ方向へ転がっていき、そのたび彼は照れ臭そうに笑った。僕らはハルさんを交えて3対1でボールを回す“トリカゴ”をした。ハルさんはあまり走り慣れていないようですぐにへとへとになった。
「体力ないなあ」
セイヤがハルさんに言った。
「いや、しょうがないでじゃん。サッカーやってたのって結構前でしょ?」
カズタカが息の上がったハルさんに変わって言い訳をした。
「いやあ、若え衆にはかなわねえよ」
ぜえぜえしながらハルさんは言った。僕らはハルさんを近くのブランコに座らせ、適当にボールを蹴り始めた。ハルさんはそんな僕らの様子をぼおっと眺めていた。しばらくすると辺りは暗くなり5時を告げる鐘が鳴った。日は徐々に伸びていたがこの時間になると、太陽は街の西側にある山の陰に隠れてしまう。この街は他のところより早く日が沈むのだ。僕らはハルさんに別れの挨拶をしてからそれぞれの帰路に就くことにした。ハルさんは適当に返事をしてそのままブランコに座っていた。ハルさんが小さく体を揺らすとさび付いたチェーンはギイギイと鳴った。今にも朽ちて千切れそうな頼りないそれはハルさんの体をしっかりと支えていた。その様子をみてカズタカがハルさんに「大丈夫ですか」と聞いた。ハルさんは「平気さ」と答えてにっこり笑った。でもハルさんはそこから動かなかった。僕らは諦めて家へ帰ることにした。帰り道で振り返るとハルさんはまだそこにいて、ギイギイと言う錆びた音が春の空気を揺らしていた。
[4]
夏が終わった。中体連は地区予選であと一歩のところで県大会出場に届かず、僕らの夏と3年間打ち込み続けた部活動は驚くほどあっさりと終わってしまった。僕の家にはしばらく履かないであろうスパイクと脛当てとユニフォームが残った。高校生になってからサッカーを続けるか僕は迷っていたため、僕はそれら一式をきちんと手入れしてから押し入れの奥にしまった。
夏が終わると僕は近所の学習塾に入れられた。成績はまずまずだったけど、親曰く勉強する姿勢が身についておらず、それを直すためだという。僕はさして行きたくもない学習塾に行って、眠い目をこすって授業を受けるふりをし、宿題を答えを写しながら済ませた。そんな生活が夏の間続いた。僕は自分の時間をただひたすら浪費させられているような嫌な気分になった。時々セイヤやカズタカに声をかけても彼らは彼らなりに忙しいらしく、学校以外で会う時間は少なくなった。
ある日僕は塾が終わった後、ふと思い立ってオンボロ公園に向かった。特に理由があったわけではない。ただ、あのさび付いたブランコや穴の開いたフェンスがたまらなく懐かしく思えてあの場所を訪ねたくなったのだった。僕は自転車をこいでオンボロ公園へと向かった。秋の風が耳の横を通り過ぎるのを感じた。空は薄く雲がかかっていて星は見えない。ただ月明かりだけがぼんやりと夜を照らしていて、輪郭のない影を作り出していた。等間隔に並ぶ住宅はのっぺりとして人の気配が感じられない。街はただただ静かで夏に取り残された虫の声がポツリポツリと聞こえるだけだった。僕はとても寂しい気分になり、ペダルをこぐ足に力を入れた。
オンボロ公園に着いたとき、僕はとても安心した気持ちになった。公園には相変わらずさび付いた遊具と穴の開いたフェンスがあり、夏になって芽を出した雑草が枯れ始めている花壇があった。古ぼけたオンボロ公園は、その時だけは頼もしく、温かいものに感じた。
僕はふとブランコの人影に気付いた。うつ向いていて顔はわからない。しかしその手には酒の缶が握られていた。
「ハルさんですか」
僕は尋ねた。
「おお、なんだ、ボウズか。こんな時間に何してんだお前」
やはりハルさんだった。僕は彼の傍まで歩いて行って、隣のブランコに腰かけた。傍にあった古い金木犀からやさしく甘い香りが漂ってきた。僕は軽くブランコを揺らしながら答えた。
「塾帰りなんです。ハルさんかなと思ったので声をかけてみたら、やっぱりそうでしたね」
「なんで塾帰りにこんなところ寄り道してんだい。親が心配するぞ」
「なんでって……特に理由はないんです。何となく来たかったから来たんです」
「益せたことをいうじゃないか。こんな遅くに、親が心配するぞ」
「どうせこの時間になったら酒飲んでぼおっとしてますよ、親なんて」
「ははは、なんだ、じゃあオレと一緒だな」
ハルさんは笑ったが、その顔には影が落ちていてなんだか寂しそうだった。
「ハルさんはなんでこんなところにいるんですか?」
「んん、俺か。俺は……何もしないためにここに居るんだ」
「どういうことですか?」
「つまりだな、何もせずぼおっとするためにここに居るんだ。家にいると、無意識にいろんなことを考えちまうんだ。明日からの生活、役所に出す書類、冷蔵庫の中の酒の本数、それから……まあいろいろだ。俺はそういうのが嫌なんだ。だからここに来て何も考えずこうしているのさ。ここは良いところだ。静かなようで、虫の声が細々と聞こえてくる。人けがないようで、人のいた気配がある。真っ暗なようで、街灯がある。家の中みたいに、無味無臭じゃないんだ。いろいろなものの気配があって、温かい。だからそいつらの方へ意識を分散できる。家の中はだめだ。あんまりに空っぽだから、意識が自分の内側へと集中しちまう。どうせそこも空っぽなのに、何かないかって探しちまうんだ。俺はそれがたまらなく辛い。だからこうして酒を片手に、ここに来てるのさ」
僕にはよくわからなかった。ハルさんはそんな僕の顔を見て「わからなくてもいいさ」と言った。皮肉めいたいい方だった。
「いずれわかるから、ですか?」
僕は聞いた。ハルさんは酒の缶をいじりながら少し地面を見つめた。僕はそんなハルさんの態度が気に食わなかった。
「大人は、みんなそう言うんです。お前にはまだわからなないかって。いずれわかるさって。僕はそれが、たまらなく嫌なんです。子供扱いが、じゃない。どうせお前も俺みたいになるっていうその態度が嫌なんです。僕の倍近く生きておいて、たいして努力もしないくせに、疲れたような顔をしてすぐに逃げる。面倒を避けて、はたから見守るだけ。そんなダサいのは、俺は嫌なんです。僕は今、自分の時間を自分のために使いたいのに、そんな死んだ目をした大人が勝手に口出ししてくる。そいつらに反論するといつも言うんだ『いずれこの経験が大事だって気づくさ』って。まるで僕が将来、死んだ目の大人たちの仲間入りすることが決まっているみたいに。ふざけるなって思うんです。そんなダサい生き方するくらいなら、僕は死んでやろうと思ってるんです」
「ふざけるな」
ハルさんは低く、掠れた声で僕に言った。一瞬辺りの音がすべて消えたように思えた。
「ふざけるなよ、ボウズ。気安く手前えの命を終わらせられると思うなよ。残された連中のことを考えろ。社会で生きてる限り、お前の命はお前のものじゃないんだよ」
僕は適当な言葉を見つけて反論しようとした。しかしハルさんの声が嫌に悲しそうで辛そうだったから何も言えなかった。
僕らはしばらく無言のままブランコに腰かけていた。錆びたチェーンのギイギイという音だけが空気にしみわたっていった。錆び鉄の臭いが金木犀の香りに交じって鼻をくすぐった。相変わらず空には薄い雲が立ち込めていて星は見えなかった。不意にハルさんが持っていた酒の缶を口元に運んだ。水音はしなかった。中身は入っていなかったのだろう。それでもハルさんは酒を飲み下すように喉を動かした。それは何かのルーティンみたいだった。
「ボウズは」
ハルさんが口を開いた
「ボウズは、なんで大人が酒を飲むと思う?」
僕はわからないと答えた。
「忘れるためさ」
ハルさんはもう一度酒を飲むふりをした。
「忘れて、酔いつぶれて、何も考えなくするんだ。脳みその考える力ってやつを弱めてくれるんだ。それに、酒は体をじんわりと温かくしてくれる。たとえどんなに心が空っぽでも、だ。なんでそんなことをしないといけないかって?そりゃあ、辛いことだらけだからだよ。お前たちは、子供扱いして言う訳じゃないが、まだいろいろなことを経験してないんだ。本当に面倒で、誰にも頼めないようなことが、大人になるにつれ何度も出てくる。取り戻せない失敗や、二度と会えなくなる人だって同じだ。そういう辛いものから逃れるために、酒を飲むんだ。特に空っぽで寂しい一人の夜なんかにな。そうすれば、自分の内側を見つめなくて済むだろう?」
僕はしばらく無言のまま公園の街灯を眺めていた。街灯は不定期に点滅しながら僕らを照らしていた。街灯が消えると僕らの影は消え、点くと影が現れた。僕はハルさんの言うことがやっぱり理解できなかった。でもそれを否定することはしてはいけないような気もした。ハルさんが言ったことはきっと彼の独白でそれに文句を言うのは良くないと思ったからだ。だから僕は彼に対し、話の本筋からは外れた質問をした。
「じゃあなんで、ハルさんは、お昼から酒を飲んでるんですか」
ハルさんは少しびっくりしたような顔をして僕の方を見た。ハルさんの顔は
街灯に照らされてくっきりとした影が出来ていた。頬がこけ、眼の縁には深いしわがあった。街灯が明滅するたびその影は消えたり現れたりした。
「そうだなあ……何も忘れないためさ」
「忘れないため……さっきと言ってることが違うじゃないですか。大人は忘れるために酒を飲むんでしょ」
「ああ、だが、俺の場合は違うんだ」
ハルさんは酒の缶に目を向け、その後明滅する街灯へと視線を移した。
「俺は、つまり、何も覚えないために酒を飲んでるんだ。何も覚えてなければ何も忘れず済むだろう?酒を飲むといろんな物事の輪郭が曖昧になるんだ。酩酊状態のときは、眼を開けていても何も見えていなし、考えを巡らしても、それは結局堂々巡りで、何も考えていないんだ。内側にも、外側にも意識は集中しない」
「ハルさんは忘れるのが怖いんですか」
「怖いさ。すごくな」
ハルさんは立ち上がった。その拍子にブランコは揺れ、錆びた鎖がキイキイ鳴った。彼はそのまま千鳥足で歩いていき、公園の隅に置かれたゴミ箱に酒の缶を捨てた。そしてこちらを振り返ってしゃんとした目で僕を見た。
「俺はいろんなことを忘れてきた。そして、忘れられた奴らがどうなるかも、この目で見てきた。だから俺は忘れるのが怖い。なあボウズ。お前さん、忘れられた連中がどこに行くか知ってるか?俺は知ってる」
「どこに行くんですか?」
僕が聞くと彼はこちらまで歩いてきて隣のブランコに腰を下ろした。そして点々とした記憶を探し出して紡ぐように、ゆっくりと語りだした。

実体化中のSCP-XXX-JP
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXX-JPは未収容です。SCP-XXX-JPおよびそれらによって引き起こされた消失現象の目撃者には記憶処理を施したのち、適切なカバーストーリーの流布が行われます。実体化中のSCP-XXX-JPに直接接触する試みは、接触者の意図しない消失につながる可能性があるため、必ずDクラス職員が行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは自立行動を行う実体の総称です。各個体の形状や体高に一貫性は認められませんが、どの個体も体に無数の孔を有しています。孔の内部からは一切の光線や音波は観測されず、内部の構造は不明です。またSCP-XXX-JPが物理的、化学的な破壊耐性を有していることに加え、蛍光X線分析装置等を用いた非破壊の成分分析においても原因不明のエラーが表示され続けるため、SCP-XXX-JPの組成は明らかになっていません。現在、SCP-XXX-JPはおよそ500 個体確認されています。
SCP-XXX-JPは後述する実体化中を除き、その存在を認識できません。これは反ミーム等による認識の阻害や、霊的存在への変化などが原因と推測されています。しかしながら、非実体化中のSCP-XXX-JPは、現在財団が保有するあらゆる検出手段を用いても観測不能であることから、その正確な存在方法は判明していません。
SCP-XXX-JPは一個体につき、約600日周期で実体化し主に地上で活動を行います。実体化したSCP-XXX-JPは動物が持つ口器に似た構造体を伸ばし、物体に接触させた後、触れている物体を徐々に消失させます。SCP-XXX-JPの動作が比較的緩慢であるため、活動的な物体がSCP-XXX-JPによる活動の影響を受けることは稀ですが、この消失は無機物・有機物、あるいは生物・無生物関係なく発生します。SCP-XXX-JPは一個体につきおよそ500 kgの物体を消失させた後、再び観測不能になります。また、消失した物体の追跡は全て失敗に終わっています。
実体化中のSCP-XXX-JPを捕獲する試みは現在成功していません。
閲覧制限: これ以上の情報はレベル4/XXX-JP権限を持つ職員に限定されます。クリアランスを提示してください。
アーカイブ1の報告書には意図的に配置された虚偽の情報、および削除された情報が複数存在します。本項の報告書との相違点は青字でハイライトされています。

実在化中のSCP-XXX-JP
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXX-JPは未収容です。SCP-XXX-JPおよびそれらによって引き起こされた消失減少の目撃者には記憶処理を施したのち、適当なカバーストーリーの流布が行われます。実体化中のSCP-XXX-JPに直接接触する試みは、接触者の意図しない消失につながる可能性があるため、必ずDクラス職員が行ってください。SCP-XXX-JPの孔内部から発せられる信号の分析は、必ずレベル4/XXX-JP権限を有する職員が行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは自立行動を行う実体の総称です。各個体の形状や体高に一貫性は認められませんが、どの個体も体に無数の孔を有しています。孔の内部からはどの個体も共通の3132パターンの電波信号が発信されています。SCP-XXX-JPの内部構造は不明です。SCP-XXX-JPが物理的、化学的な破壊耐性を有していることに加え、蛍光X線分析装置等を用いた非破壊の成分分析においても原因不明のエラーが表示され続けるため、その組成は明らかになっていません。現在、SCP-XXX-JPは観測された限り、およそ50万個体確認されています。
SCP-XXX-JPは通常、その存在を認識できません。これはSCP-XXX-JPが因果律変動を発生させることによって、別平行宇宙へと移動していることが原因とされています。SCP-XXX-JPは現在4つの平行宇宙で観測されています。しかしながらこれらで発見されるSCP-XXX-JPは、私たちの宇宙(以降、これを基底宇宙と定義します)で発見されるものとは別個体であると推測されています。SCP-XXX-JPの因果律変動は現在財団の有するいかなる検出手段によっても観測されず、変動後のSCP-XXX-JPがどの平行宇宙に存在しているかは不明です。
ホイル博士の提言
我々は、平行宇宙に移動したSCP-XXX-JPがどこにいるのかを知らない。これはずいぶんと奇妙なことだ。因果律変動の測定方法は既に確立されているし、我々が観測している基底宇宙以外のあらゆる平行宇宙において、我々が確認済みのSCP-XXX-JPが観測されたためしはない。SCP-XXX-JPが消えるとき因果律変動観測機の値は常にエラーを吐く。SCP-XXX-JPが実体化した基底宇宙の因果律の値を基準Aとしたとき。非実体化中、つまり因果律を変動させSCP-XXX-JPが移動した先の因果律をBとする。観測機はAとBの値の変化を観測するが、SCP-XXX-JPの場合、因果律の変化自体は観測されるものの毎回Bの値が全く観測されない。非実体化中のSCP-XXX-JPは、本当に存在しているのか?
SCP-XXX-JPは一個体につき、約30日周期で実体化し地球をふくむ宇宙空間中で活動を行います。実体化したSCP-XXX-JPは動物が持つ口器に似た構造体を伸ばし、物体に接触させた後、触れている物体を徐々に消失させます。この消失は物体が浸食されるように進行し、消失が完了した物体はいかなる手段によっても観測されなくなります。SCP-XXX-JPの動作が比較的緩慢であるため、活動的な物体がSCP-XXX-JPによる活動の影響を受けることは稀ですが、この消失は無機物・有機物、あるいは生物・無生物関係なく発生します。SCP-XXX-JPは一個体につき、およそ500 kgの物体を消失させた後、再び観測不能になります。仮にこのペースでSCP-XXX-JPによる物質の消失が行われ続けた場合、███年後には現在地表に存在する構造物の約5割が消失すると考えられています。
実体化中のSCP-XXX-JPを捕獲する試みは現在成功していません。
補遺: SCP-XXX-JPの内部からは常に一定の電波信号が発せられています。これらの信号は31パターン存在していましたが、2005/6/27に行われた、無線装置を持ったDクラス職員の消失実験以降32パターンとなりました。これらの信号はSCP-XXX-JP-1から-33に分類されており、このうち4つが解読されています。以下は解読された信号を文字に起こしたものです。
SCP-XXX-JP-1
こちらは職員コード███████14、エージェント・カルピヌス。何とか生きているが現在地をロストした。ここは差し迫った脅威みたいなものは確認できないが、俺以外の植物実体が見当たらない。日光と水は確認できたが、無機栄養の方はどれほどあるのか不明。支給応援を求む。周りの風景は穴ぼこだらけで気味が悪い。ちょうど目の前にいるケイ素動物風の実体と一緒だな。
SCP-XXX-JP-12
遂にここまで来た。数々の理不尽の果てに、私はシャンバラへとたどり着いた。ここには道理の流れに反する理不尽も、歴史を綴りかえる混沌も存在しない。この世界を以て円環は閉じ、終着点は再び先へ先へと流転していく。もしも私に続こうとする者がいるならば、その方法はただ一つ。孤独であれ。
SCP-XXX-JP-28
まだ来てはいけない。
SCP-XXX-JP-32
現状を報告する。私は現在、因果律[データ破損]の次元に存在する宇宙にいる。西暦2014にここに来てから既に4年ほど経過した。ここにいる生きた人間は私以外にはエージェントと博士が一人ずつ。現在周囲には常緑針葉樹の森林が見えるが、空間に穴のように見える物体が複数浮かんでいる。この世界の調査のためカント計数機、大型の天体望遠鏡、ペンジアス因果並列検出器、これらを稼働させるための発電設備を要求する。私はO5-14、私はここに存在する。
事案記録-XXX-JP 日付2018/12/14
2018/12/14、SCP-XXX-JPが計4体サイト-██に出現し、財団の保有するいくつかの重要な設備を消失させ、結果的にSCP-███、およびSCP-████の軽微な収容違反が発生しました。このうちSCP-████の収容室に出現したSCP-XXX-JPは、物体の消失を行っている最中SCP-████が接触を試みようとした際、明らかな忌避反応を示しました。また他のSCP-XXX-JPはAnomalousアイテム保管庫、および記録保管室に出現しましたが、消失させたのは一部の書類群と情報機器のみであり、この事案によってアノマリーの損失は一切発生しませんでした。本件はSCP-XXX-JPが財団内部に侵入し損害を与えた初の事例であり、今後同様な事案の発生を防止することは難しいと考えられています。最悪の場合SCP-XXX-JPが他のオブジェクトによる大規模な収容違反を発生させる可能性があるため、SCP-XXX-JPのオブジェクトクラスはKeterクラスに格上となりました。
職員コードを参照中……
エラー
職員コードを再度検索中……
エラー
警告:あなたが入力した職員コードに該当する職員は存在しません。
君は存在しない。私たちと同様に。
君がいるこの場所は存在しない。私たちと同様に
ようこそ、SCP-XXX-JP研究チームへ

実在化中のSCP-XXX-JP-1-A
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Thaumiel(暫定)
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを認知できる存在が非常に限られていることから、その実質的収容は不要、もしくは不可能であると推測されます。SCP-XXX-JP研究チームは他の熱的死、あるいはいずれかのKクラスシナリオを迎えていない宇宙への負担を抑制するためSCP-XXX-JP-1群との交渉を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは因果律から抹消された次元、およびそこに広がる宇宙の総称です。SCP-XXX-JPを構成する物質や物理現象は私達の財団が存在した宇宙(以下、これを基底宇宙と定義)と同一です。しかしSCP-XXX-JP内の物質密度は基底宇宙のそれと比べ非常に低く、物質は一部に偏在しています。そのためSCP-XXX-JP内には物質の存在しない領域が多数存在します。これらの領域は視覚的には空間上に空いた穴として認識され、内部には空間そのものが存在しないと考えられています。SCP-XXX-JP内にいる存在がこの空間異常に干渉することは、後述するSCP-XXX-JP-1-Aを除き不可能です。
SCP-XXX-JP内には太陽系に似た天体群が存在します。本報告書ではこれらを基底宇宙の太陽系と区別するため亜太陽、それに属する地球に酷似した惑星を亜地球と表記します。本報告書制作時において、亜地球は地球の30%ほどの質量を有していると考えられています。これは亜地球の多くの部分に先述した空間異常が存在することに起因します。また亜地球はその質量にも関わらず地球と同等の重力を有しているため、大気の継続的な保持が可能です。亜地球地表の多くは荒原や海ですが、一部には森林が広がっており、森林内にはミミズやササラダニ、細菌類などによる簡易的な生態系が観察されます。また非常に稀ですが住宅などの人工物も存在します。
SCP-XXX-JPの観測・干渉はSCP-XXX-JPと同様にあらゆる因果律から抹消された存在のみ可能です。またSCP-XXX-JP内の存在が他の因果律に存在する宇宙に干渉する方法は後述するSCP-XXX-JP-1-Bを用いるほかありません。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP内に存在する、自立行動を行う実体の総称です。各個体の形状や体高に一貫性は認められませんが、どの個体も体に無数の孔を有しています。SCP-XXX-JP-1は空間の構築や環境の整備を行っており、先述した空間異常周辺で頻繁に確認されます。また、SCP-XXX-JP-1は約40時間周期で一斉に同一の方向を向き、5分程度行動を停止しますが、この行動の目的は判明していません。SCP-XXX-JP-1はその形状や特異的な行動から3種類に分類されています。以下はそれぞれのSCP-XXX-JP-1の特徴をまとめた表です。
分類 | 外見的特徴 | 特徴的な行動 |
---|---|---|
SCP-XXX-JP-1-A | 多くが体高1m以下。人間の腕に該当する器官を持たず、足のみを有する。口器を持たない。 | SCP-XXX-JP-1-Bが放出した物質を元に、SCP-XXX-JP内の整備を行う。また、SCP-XXX-JP-1-Aは先述した空間異常に干渉して、それを埋めるように空間を構築する行動も見られる。 |
SCP-XXX-JP-1-B | 明確な四肢を持つ。また、地球の動物が持つような口器を有している。 | 口器から物質の放出を行う。放出された物質は基底宇宙、あるいはそれに近い宇宙から運ばれてきたものと推測される。物質放出後のSCP-XXX-JP-1-Bはその存在が認識できなくなる。これはSCP-XXX-JP-1-Bが他の宇宙へ移動していることが原因であると考えられる。 |
SCP-XXX-JP-1-C | 四肢、口器共になく板状をしており、不明な原理で浮遊している。 | SCP-XXX-JP-1-Cは他のSCP-XXX-JP-1の指令を担っていると考えられる。また、SCP-XXX-JP-1-Cは会話が可能であり、ある程度の意思疎通を行うことが出来る。 |
SCP-XXX-JP-1-Cとの数度の交渉の結果、SCP-XXX-JP-1-Bを媒介とした基底宇宙への一方的な物品の要求が可能となりました。しかしながら基底宇宙においてO5-14を含む各職員の存在は抹消されており、財団が要求に応じることはありませんでした。これを受けたさらなる交渉の結果、強硬手段としてSCP-XXX-JP-1-Bが財団施設内に侵入し、必要な機器を奪取する計画が立てられました。計画は成功し、新たに持ち込まれた機器によって以下のことが判明しました。
- SCP-XXX-JP内に存在する物質の極めて高い静現実改変抵抗力。これは空間現実性濃度の高さに起因するものではなく、別の要因があるものと考えられる
- SCP-XXX-JPの4次元超球表面上構造。これは基底宇宙と同一であるがその大きさは基底宇宙のそれに比べ遥かに小さい。
- 地表部の物質構成。荒原に分布する土壌は融氷河堆積物に似た風成塵の堆積物からなるが、森林内では二次鉱物を多く含む土壌が検出された。これによりSCP-XXX-JP-1群は亜地球の計画的な生成を行っていることが推測される。
- SCP-XXX-JP-1群の現実改変能は極めて低い、あるいは存在しない。SCP-XXX-JP-1群の諸行動は現実改変以外の方法を用いていることが判明。エリュトリール効果流検出装置によって判定。
SCP-XXX-JP-1-Cは主に英語を用いる他、不明な言語、おそらく古代インド・アーリア語からの派生と思われる言語を用います。SCP-XXX-JP-1-CはSCP-XXX-JPについての非常に多くの情報を有しておりインタビューは幾度となく行われました。以下に記載する記録は特に重要度の高い、あるいはSCP-XXX-JPの起原に関係が深いと推測されるものの抜粋です。
会話記録SCP-XXX-JP-1-C-3
対象: SCP-XXX-JP-1-C
インタビュアー: 初代O5-14
付記: インタビュー中では対象の希望によりSCP-XXX-JP-1-Cを「ॐ(オーン)」と呼称する。
<録音開始 (2014/08/26)>
インタビューアー: こんにちはॐ。聞きたいことがあるのだが、構わないだろうか?
SCP-XXX-JP-1-C: 構わない。
インタビューアー: ありがとう。まず、単刀直入で申し訳ないがこの場所は何なんだ?この場所は、私たちが元居た場所とは明らかに違うようだが。同じ地球上なのか?
SCP-XXX-JP-1-C: 否。ここは流刑地。あるいはŚambhala。理不尽の存在しない理想郷。
インタビューアー: Śambhala……理想の仏教国、あるいはチベットの伝説にある悪徳の存在しない理想都市だったか。何故ここは理想郷なんだ?
SCP-XXX-JP-1-C: ここの全ては、正しい。
インタビューアー: どのような意味で“正しい”んだ?
SCP-XXX-JP-1-C: ここには、道理に反する悪は存在しない。全て、全てが秩序の下で動く。Ātmanは魔に喰われることなく、悪夢は夢のまま終わり、時流は消して逆転しない。万象が万象のままに在る。道理に沿わない悪しきものたちを、お前達は知っているであろう。ここはそれらを許さない。故にここは理想郷足りえる。
インタビューアー: なるほど。では次に君たちについて聞こう。君たちは何者だ?何が目的で、何をしている?
SCP-XXX-JP-1-C: 吾らは使途。王の手足にして、福音。この不毛なる流刑地に石を運び、木を植え、星を散らす。全ては王がそうせよと命じたために。
インタビューアー: 君たちが、一定周期で動かなくなるのはその王と関係があるのか?
SCP-XXX-JP-1-C: 正しく。あれは礼拝。王の声を聴き、また我々も王に進言する。
インタビューアー: なるほど。なぜ君たちの王はこんなことをしているんだ?
SCP-XXX-JP-1-C: こんなこと?それはお前達が、全てを、我々の全てを、吾らが王の全てを[SCP-XXX-JP-1-Cが小刻みな振動を始める。以下はSCP-XXX-JP-1-Cによる不明な言語を用いた一方的な発言が行われる。これ以上のインタビュー続行は不可能と判断しインタビューを終了]
<録音終了>
会話記録SCP-XXX-JP-1-C-4
対象: SCP-XXX-JP-1-C
インタビュアー: 初代O5-14
<録音開始 (2014/08/26)>
インタビューアー: 先日はすまなかった、ॐ。私達は君たちについてあまりに無知なんだ。どうか非礼を許してほしい。
SCP-XXX-JP-1-C: お前達は無知ではない。吾々を忘れたわけでもない。ただ、無視し続けているだけだ。今も。しかし、それも吾が王の行いを鑑みれば致し方無い。
インタビューアー: そうか。では、この前聞けなかったことをいくつか聞いても構わないか?
SCP-XXX-JP-1-C: いい。
インタビューアー: ありがとう。ありがとう。この場所はどうやって作られてるんだ?見たところ、小さな実体群、我々はSCP-XXX-JP-1-Aと呼称している実体群がこの場所を作っているようだが。材料はどこから持ってきてるんだ?
SCP-XXX-JP-1-C: 他の世界から。生きている世界。死んだ世界。死にかけの世界。そこから分けて貰っている。
インタビューアー: 死んだ世界というのは熱的な死を迎えた宇宙の事か?
SCP-XXX-JP-1-C: それもある。だが、大方の世界はそこにたどり着く前に悪しき理不尽によって殺されてしまう。それは完全な破滅をもたらすこともあれば、時間流の凍結が起こることもある。吾らはそんな世界から多くのものを運び出す。異常なものは排斥し、正しいものだけを。
インタビューアー: 君たちに似た存在は私達の宇宙にもいた。彼らも君たちと同じ存在なのか。
SCP-XXX-JP-1-C: 正しく。
インタビューアー: では、できれば私たちの宇宙、もっと言えば地球の物質を頻繁に持っていくのはやめてくれないか?
SCP-XXX-JP-1-C: 吾々とて好き好んでお前の世界から調達しているわけではない。ただ、この世界を、正常な(/清浄な)この世界を作るためにお前の星のものは不可欠なのだ。
インタビューアー: それはこの亜地球で地球を再現するためか?
SCP-XXX-JP-1-C: 正しく。
インタビューアー: そうか。ではどうやってこの世界は出来た、あるいは出来ている?
SCP-XXX-JP-1-C: 吾らが王が、まず礎を作った。何もなかったこの流刑地に。そして吾らが世界を作る。他の世界より運ばれたものを今一度構築し直し、正常な(/清浄)なものに作り変えていく。
インタビュアー: その目的は?
SCP-XXX-JP-1-C: お前たちのために。
インタビュアー: 私達のため?どういうことだ?
SCP-XXX-JP-1-C: お前たちの、安寧の場所を作るため。
インタビュアー: それは、何故私達なんだ?
SCP-XXX-JP-1-C: 吾らが王が、そうせよと命じたため。吾らの、慈悲深き、しかし愚かな、無二なる王。王はかつてお前達と、全ての者たちと共にあった。しかし、彼は赦されざる過ちを犯した。故にお前たちは王を、吾々をこの地に流し全てを抹消した。王は、愚直なる吾が王は、それをひどく悔やみ、そしてこの地を創った。いずれの時か、行き場を無くした者たちが安らぐことの出来る世界を創るため。この理想郷は新世の卵。救い難き吾らが王の、赦さざる万象への贖罪。
<録音終了>
日付なし
アガルタ・プロトコル
プロトコル概要:
アガルタ・プロトコルは基底宇宙において回避不能なK-クラスシナリオが発生した場合、SCP-XXX-JPを一時的、あるいは恒久的な人類文明の避難地として利用することを目的としています。SCP-XXX-JP内には報告書作成現在、基底現実世界に存在したあらゆるオブジェクト、アノマラスアイテム、超常現象は確認されません。SCP-XXX-JPの性質上、SCP-XXX-JP内に存在する物質は現実改変に対する非常に高い抵抗性を有しており、アノマリーの自然発生は強く抑制されていると考えられます。そのためSCP-XXX-JPは財団の最終的な目標である「人類文明の健全な世界での生存」の場として非常に適しています。SCP-XXX-JP内の共住環境を整え必要な資源を基底宇宙、あるいはその他の宇宙から補充すればSCP-XXX-JPでの新たな人類史の形成すら可能です。
問題点:
- SCP-XXX-JPの物質的不足
SCP-XXX-JP内に存在する物質、あるいは亜地球の面積は地球に存在する人類の全てを移行できるほどの容量がない。アガルタ・プロトコルの実行にはまず避難人類の選別作業が必要となる。
- SCP-XXX-JPへの移動方法に関する不確定要素。
SCP-XXX-JPへの移動はSCP-███-JPを用いた方法以外は不明であり、その方法の成功率すら明らかではない。
問題の解決策と交渉:
SCP-XXX-JP-1-Cとの複数回に及ぶ交渉の結果、SCP-XXX-JP-1群が亜太陽系内の空間構築を優先することとなった。無機成分の多くは他の“死んだ”宇宙から運搬することとなり、正常な宇宙からのみ採取可能な物質は基底宇宙、あるいはその他の宇宙から運搬することとなった。これによって亜地球における空間異常の占める領域は急速に減少しており、今後200年以内に亜地球の質量は地球と同等になると推測される。また、地表部の環境整備はSCP-XXX-JP-1-AおよびSCP-XXX-JP研究チームによって進行しているが、特に食料面の問題が大きく20██当時の地球人口を支えることは現状難しいと考えられる。アガルタ・プロトコルはSCP-XXX-JPへ移動する人類、および他の動植物を事前に選別することが求められる。
またSCP-XXX-JPへの移動手段について「王」に意見を求めるもそれに関する返答は「貴君らはその術を知っている」という一辺倒の返事しか得ることができなかった。因果律の抹消に関する実験が行われたことは存在しないとされているが、地球から回収された情報端末内には1███年に「追放試験2165」としてあらゆる因果律から何かを抹消したということのみが記されていました。これより財団内に因果律を操作する技術が存在することが判明しました。
上記よりSCP-XXX-JPを利用したアガルタ・プロトコルの具体案を基底宇宙の財団に向け発信します。
アガルタ・プロトコルは発足後計18回の改良がなされ都度基底宇宙に発信されました。しかしながら財団はこれを無視。SCP-XXX-JP内の職員に対して何らかの反応はありませんでした。アガルタ・プロトコルは実行されました。