人生って不思議だね。先生?

アイテム番号:scp-xxx-JP

オブジェクトクラス:Safe Euclid

特別収容プロトコル: scp-xxx-jpは厚さ5センチ縦横高さ30センチの半透明な防弾ガラスの箱の中に保管されています。scp-xxx-jpの保管されている保管室はセキュリティクリアランスレベル4以上または監視などの特別な命令を受けた職員のみがセキュリティキーを所持することが許可されています。室内には常に職員3名を配置し、目視で監視するようにしてください。その際scp-xxx-jpの中身が見えない角度から監視するようにして下さい。
scp-xxx-jp の写真や動画の撮影は禁止されています。よって保管室に入室する際はレベル3以上の権限を持つ職員2名によるボディチェックを行います。万一 scpの写真や動画を無断で撮影した場合、その職員はクラスにかかわらずただちに処分されます。
scp-xxx-jpが失踪した場合、捜索部隊を最低10名をサイト〇〇にのこし、ただちに他の職員を避難させ、サイト〇〇を隔離してください。またscp-xxx-jpもしくはscp-xxx-jpによって死亡したと思われる職員を発見した場合、ただちに捜索部隊に連絡を取るか、scp-xxx-jpを閉じ回収してください。

説明: scp-xxx-jpは厚さ1.5センチほどの手のひらサイズのメモ帳です。メモの表紙には「人生って不思議だね。先生?」と書かれており、言語は特定不可能です。しかし、どのような人間であっても表紙の文字は読むことができます。また内容を見ることはscp-xxx-jpの性質上不可能であるとされています。
scpは〇〇県〇〇市の〇〇小学校にて、19〇〇年〇〇月〇〇日に自殺した小学生の机の中にしまわれていたものです。中身を確認した担任はその場にあったハサミで喉をちぎるようにして首を切り死亡し、他にも中身を確認した警官を含む複数の人間が相次いで同じ方法で自死したことからこの特異性を危惧した財団が回収に踏み切りました。
scpの表紙の文字は油性マジックペンで粗雑に書き殴られており、表紙を見ただけではその特性は発動しないことから、当初のオブジェクトクラスはsafeに位置付けられていました。しかし後述の実験結果で得られた新たな特異性や、その後に起こった事件に基づいてオブジェクトクラスはEuclidに引き上げになりました。
scp-xxx-jpの内容を見た人間は、即座に自殺衝動にかられ、どのような方法を用いてでも自殺しようとします。また人間だけでは無く犬や猫、さらには爬虫類や昆虫に至るまで、あらゆる生命がなんらかの方法で自殺します。また内容はいかなる生物でも理解できる、死ぬ際に対象は苦悶の表情は一切示さず、むしろなにかを悟ったかのような様子で死ぬという特徴があります。
scp-xxx-jpが開いてさえいればたとえ目を閉ざしていたとしてもメモと面しているだけで対象は自殺衝動に駆られます。そのためどんな障害物がメモを阻んでいたとしてもメモが開いてさえいれば正面に面している生物は自殺します。また面していなくても内容を視認した場合も例に漏れず自殺を図ります。また、写真や動画など間接的に内容を確認した際も同じように自殺します。

実験記録1
テープレコーダー
対象:scp-xxx-jp 財団職員 死刑囚(アメリカ人Dクラス職員)
実験内容:被験者をscp-xxx-jpの前に立たせ、表紙をしばらく見せた後開かせて内容を口述させ、その内容を記録する。
〈録音開始 [1992年6月12日]
職員・それでは、入室して下さい。
(シャッターの開閉した音)
職員・メモの正面に立って下さい。
死刑囚・立ったぞ。
職員・メモにはなにが書かれていますか?
死刑囚・…人生って不思議だね。先生。って書かれてる。なぜだ?こんなに汚ねぇ文字なのにすらすら読めやがる…誰が書いたんだ?
職員・英語で書かれていますか?
死刑囚・いや…あぁ。英語だよ。汚いが、たしかに英語だ。
職員・なにか感じることはありますか?
死刑囚・…なにかって言われてもな。
職員・触らないで、ページはまだ開かないでください。
死刑囚・…注文が多いな。ま、死刑が免れるなら従うよ。
職員・質問に答えて下さい。なにかメモを見て感じることはありますか?
死刑囚・なにも感じないよ。ただ…そうだな。これを書いたやつは相当イかれてるなとは思う。
職員・続けて
死刑囚・おいおい。真に受けないでくれよ。
職員・いいから続けて。どうしてそう思いましたか?
死刑囚・…まぁ、そうだな。俺は好き勝手生きて好き勝手人を殺してきたが、それでも後悔はしてない。たしかに人生ってやつは不思議だ。いろんな人間に出会って、いろんなことが起こる。だから人生なんだと思う。俺の場合はろくなもんじゃなかったけどな。
職員・いま、あなたの中でなにか感じるものはありますか?
死刑囚・ん?いや…そうだなぁ…ちょっとだけ安心した気がする。なんでかな…
職員・安心?もう少し詳しく話してください。
死刑囚・あぁ…なんだろう。
(しばらくの沈黙)
死刑囚・俺は…俺は本当に後悔はないのか…?人を殺して…金を奪って好き勝手して…それで…でも…幸せだったのか?
職員・〇〇さん?〇〇さん返事をして下さい。
死刑囚・…もしかしたら、ここに…書いてるのか?教えてくれ…教えてくれよ!!俺の…人生は正しかったのか!?
職員・〇〇さん。ページを開けないで。〇〇さん!!
死刑囚・(呼吸が荒くなっていく。しかしだんだん呼吸は少しずつ高くなっていく)
(肉がえぐれるような音)
職員・〇〇さん。落ち着いてください。〇〇さん!やめてください!!くそっ!!またかよ!!
〈録音終了

以上の結果から、scp-xxx-jpの表紙には精神的なものに作用するなんらかの効果があると思われます。しかし一般の職員にはこの兆候は見られませんでした。おもに重犯罪を犯した人間にのみ作用するものと思われますが、どの程度の犯罪に作用するのかは不明です。
この後も同じような実験を2回繰り返しましたが似たような事が起こり、表紙を見た被験者は自身の人生の哲学的な答えを見出そうと scpの中身を積極的に見ようとする傾向がありました。下記の実験記録はその実験の結果です。

実験記録2
対象: scp-xxx-jp 被験者(イタリア人Dクラス職員)
実験方法:被験者をscp-xxx-jpの前に立たせ、表紙をしばらく見せた後開かせて内容を口述させ、その内容を記録する。
実験結果・被験者は喉を引きちぎって死亡。表紙を見た際、最初は特筆するような態度は見せなかったが、しばらくすると突然黙り込み、自身の罪と異常な性癖を暴露、懺悔をし、祈りを唱えた後職員の制止にも関わらずメモを開き、上記の方法で自殺した。自殺の際、満面の笑みを浮かべていた。

実験記録3
対象scp-xxx-jp 被験者(日本人Dクラス職員)
実験内容: 防弾ガラスでできた半透明の箱の中にあるscp-xxx-jpの表紙のみを被験者に見せ、その後の行動を観察、記録する。
実験結果・被験者は喉を引きちぎって死亡。表紙を見た際、他の被験者と同じように自身の罪を認め、後悔の念を供述している。その後、防弾ガラスの箱を開けずに表紙のみを見せ続けたところ、被験者は自らの手で〇〇〇〇〇〇〇してメモを取って開いた。その際、痛みを伴う行為であるにもかかわらずメモの内容に執着を見せた。

補足: scpの中にはなんらかの哲学的な内容が書かれていると推察されます。

事件記録A
2009年04月30日
職員がscp-xxx-jpを監視しているときに発生。当時は特にメモを監視する位置を定めておらず、職員はメモの正面に立ち、約1メートル半ほど離れたところで監視していました。職員が鼻をかむために目を離すとメモが突如失踪、その際監視役の職員が喉をペンで掻き切り死亡しました。scp-xxx-jpはサイト〇〇のスタッフ休憩室の机の上に、scp-xxx-jpが開いた状態で放置されていました。
scp-xxx-jpを目の当たりにした職員は全員死亡。scp-xxx-jpは特殊部隊によって回収されました。その際、隊員2名が自害しました。
この特性が発動する条件が不明なため、現在はオブジェクトクラスをsafeからEuclidに引き上げられています。またひとりでにページが開く可能性があるため、目視による監視の際はscp-xxx-jpの正面に立つことを禁止することになりました。

事件記録B
2015年09月12日
犯罪歴のある職員がscp-xxx-jpの監視をしている時に発生。メモを開き内容を見た後自身の目をを指で貫き、そのまま〇〇〇〇して死亡。その後scp-xxx-jpは財団施設の屋上で発見されました。その際scp-xxx-jpの周りには鳩、カラス、スズメなどのほかにゴキブリやハエの死骸が発見され、いずれの死骸もなんらかの方法で自ら頭部を破壊した形跡があることからscp-xxx-jpの特異性は他の動物にも効果を発揮するということが明らかになりました。

補遺

scp-xxx-jpの作者である小学生(以下scp-xxx-jp-1と呼称)は、身体能力的には普通の小学2年生でしたが、scp-xxx-jp-1にはふつうには見られないような思想と洞察がみられていたようです。例として、習っていないはずの算数の問題をいとも簡単に解いたり、理科の実験に使う解剖用の蛙に感傷し、にがしたりなどが挙げられます。scp-xxx-jp-1は、そんな性格からか友達が一人もおらず、学校でもよく心配されていたそうです。scp-xxx-jp-1の両親はいたって普通の平凡な人間です。
scp-xxx-jp-1は小学校に入学したころから激しいいじめを受けていたことが両親と教諭の供述で明らかにされています。いじめの内容は背中に張り紙を貼られる、靴を隠される、ランドセルの留め具を外されるなどの些細なことから、暴力を振るわれる、強引に性的な行為を受ける、脅迫的な内容の手紙を靴箱に入れられるなど、おおよそ小学生には耐えかねるようないじめまで受けていた模様です。

インタビュー記録
この記録は、scp-xxx-jpを回収した後にscp-xxx-jp-1の母親に行ったものである。
対象: 財団職員 scp-xxx-jp-1の母親
〈録音開始…
職員・それでは、記録を始めます。まず、このインタビューの説明をさせていただきます。
母親・はい。よろしくお願いします。
職員・まず、このインタビューは単なるドキュメントではありません。あのメモ帳は明らかに特異なものです。その特異な性質を紐解くヒントを得るためのプロセスに過ぎません。それは理解していますね?
母親・はい。息子のメモ帳が原因で人が死んでいると…
職員・それを知っているのは一部の限られた人間だけです。この意味を理解していますね?
母親・承知しています。夫にも話していません。
職員・万が一あなたが外に情報を漏らした場合、適切な処置を行います。よろしいですね?
母親・はい。
職員・では、本題に入りましょう。まずは息子さんについてお話ししてください。
母親・息子は…
(母親が口を抑え、しばらく沈黙)
母親・息子は、とても優しい子供でした。将来の夢は弁護士でした。息子は〇〇〇〇を見るのが好きでして…
職員・そこのマンガですね。棚に全巻並んでいますね。
母親・そのせいか、正義感も強くて…たしか…4歳くらいでしょうか…私が家に出た虫を殺虫剤で殺した時に、あの子すごく怒ったんです。可愛そう、なんでこんなことするの?虫だって命の塊なのにって。
職員・独特な考えですね。その年でその考えができるなんて…
母親・あの子は昔から変わった子でした。息子は悪いことを一回もしたことがなくて…一回も叱ったことがないんです。
職員・でも息子さんは、なぜか学校でいじめを受けていましたね。なぜだかわかりますか?
(しばらくの沈黙。母のすすり泣く声)
母親・あの子は人一倍人を助けたがる子なんです。だから…
職員・すこし…間を置きましょうか。
母親・なんで息子が…ッ!!なんでなの…!!
職員・〇〇さん。落ち着いてください。少し休みましょう。
〈録音中断…
職員・落ち着きましたか?では、引き続き質問します。どうして息子さんはいじめを受けていたかわかりますか?
母親・わかりません。ただ、周りに合わなかったのかと思います。
職員・お子さんのいじめを、看過し続けていたのはなぜですか?
母親・看過はしてません!ずっと心配で、声もかけて…転校も考えました。あの子があのままでは壊れてしまうと思っていたのは、夫も同じでした!!
職員・では、なぜ息子さんを学校に行かせ続けたのですか?
母親・…。
職員・…酷なことを言うようですが、我々はあのメモ帳は、お子さんの人間に対する怨念のようなものが宿っていると考えています。非常に非科学的な考えですが、現状息子さんやその周囲の状況を鑑みるに、そう言わざるを得ないと判断しています。しかし、そうは思えないような要素もいくつかあるのです。
母親・…。
職員・その疑問を解決できる糸口が、あなたの発言にかかっています。お答えください。もちろん無理にとは言いません。あなたが発言を拒む理由も十分理解できます。しかし、もし少しでも、息子さんのことを思うなら、答えを教えていただけませんか?
母親・息子に…あの子に、転校の話をしたら、あの子は笑って…言ったんです。「僕がいなくなったら、あの子が苦しむことになるから」って。
職員・あの子とは、誰ですか?
母親・あの子は…いません。
職員・いない?
母親・息子は、次に誰かが犠牲になるのが嫌だったんです。きっとここからいなくなったら、誰かが犠牲になるからって。
職員・じゃあ…顔もわからない、それどころか本当に犠牲になるのかすらわからない人間を守るために、いじめを受け続けたと言うことですか?
母親・私は…あの子のメモ帳には、なにか大切なことが書かれていると思うんです。あの子がまだ生きてるうちに見つけることができた答えが。あの子はとても賢い子だったんです。だから…あの子の人生が、多分あのメモ帳なんだと思います。
職員・息子さんの人生のメモ…つまり、このメモは…
〈録音終了