鶻丸の煮付けの下書きページ
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暑すぎて何もかもが気怠くなり、人々はゾンビ病にでもかかってしまったのではないか、なんてくだらないことを考えてしまうような夏。そんな夏でもまだ日が昇りきる前ともなれば、それなりに快適なのではなかろうか。まあ俺にとっては、暑かろうが寒かろうが関係ないのだが。
部屋の電気をつけ、まずはコーヒーを淹れる準備から始める。コーヒーを一杯。ここから俺の一日が始まる。玄関扉のポストを確認し、今朝の新聞を取り出す。どうやら俺は今朝から運勢最悪のようだ。新聞の星座占いを見なくてもわかる。

「はぁ…」

思わずため息が漏れてしまう。2通の封筒。差出人欄に記入は無し、表面には嫌というほど見覚えのあるマーク。今日は仕事をしなきゃいけないらしい。朝から玄関前で憂鬱感に沈み込みそうになる俺を、甲高い薬缶の声が引きずり上げる。急いでキッチンに戻り、棚からコーヒー豆を取り出す。
コーヒーを淹れる時間というのは、俺の人生の中で3番目に大事な時間だ。いくら仕事が憂鬱であろうとこの時間を阻害する理由には足りえない。意識のほとんどがコーヒー豆の香りと溶け合っていく。と言っても、そうでもしない限りこの深みのある独特な香りを存分に楽しめないから、というのが大きな理由なのだが。エスプレッソを口に含み、その苦みをよく確かめるように味わう。明日からはもう少し濃く淹れることにしよう。2通の封筒が気になるところではあるが、まずは新聞を確認する。アイドルの話だったり、スポーツの話だったり、はたまた政治の話だったり、そういったニュースが多く確認できた瞬間、俺はこの仕事にやりがいを感じられる。まあやりがいを感じたところで、憂鬱感は拭えないが。コーヒーを飲み終えたなら次はシャワーだ。封筒はシャワーの後に確認するとしよう。


さていよいよ封筒の中身だ。慎重に封を開け、中に入った紙っぺらを広げる。

「どれどれ…」


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その知らせに驚かぬ者は居なかった。ある者は存在しない者の死などありえないと。またある者は”それ”が死ぬことはあり得ないと。しかし彼らだけの秘密通信に届いたそのメッセージは、それが事実であるということを確かなものにしていた。そして次に太陽が見えたころ、12人による話し合いが始まった。

「まずは率直に聞く。奴と最後に会った者は誰だ」

最初に口を開いたのは1だった。その場にいた全員が、死んだのが彼ではなくてよかったとそう思っただろう。彼は1312人の中でも最高の権力を持つ、統べる者であるからだ。手綱の切れた競走馬のような財団が存在しないのは、これもすべて彼の存在によるものが大きい。

「いやいや、待ってくれ。そもそも奴と会ったことのある人間がいるのか?」

「まず間違いなく居ないでしょうね」

37が言う。それに続き8も口を開いた。

「そうですよ、逆に聞きますがあなたはあるのですか?」

投げかけられた問いに1は口を噤む。

「だけど奴の居場所を知っていたのは私たちだけ、要するにこれは犯人探しでしょう?」

11の発言は確かに的を射ていた。しかしそれ故に、彼女の発言はこの場の雰囲気を、より険悪なものにしてしまった。

「…情報が漏れた可能性は?」

「いいや、それは確実にない」

12の疑念を4は真っ向から否定した。

「話し合いが始まる前に全員のデータサーバへのアクセス履歴は調べた。そして怪しいところは何一つなかった。」

「困ったのう、手掛かりの一つもないとは…」

2の言うことは確かだった。死因すらも不明なまま始まった犯人捜しは、その着地点を見失っていた。