勇海研究員の思考断片
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アイテム番号: SCP-105-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-105-JPはサイト-8104内の一般的な収容ロッカーに保管されています。SCP-105-JPを実験に使用する際は、使用する実験室について必ずサイト管理者の許可を得てください。現在、Dクラス職員以外を被験者とする実験は許可されません。

新たなSCP-105-JPの出現に備え、日本の大手コンビニチェーンから常に情報提供される状態を保つ必要があります。警察などの機関よりSCP-105-JPの被害報告があった場合、速やかに当該事案におけるSCP-105-JP-1を保護し、インタビューの後、Aクラス記憶処理をおこなった上でカバーストーリー「脳梗塞による入院」を適用してください。関連する記憶を全て抹消できるようCクラス以上の記憶処理をおこなってください。

説明: SCP-105-JPは飲用した際に特異性を発揮する酒です。これまでにワイン・ウイスキー・ブランデー・日本酒など█点が確認されています。発見されたSCP-105-JPの共通点は、容器の外装にあります。食品表示ラベルや栄養成分表示は存在せず、青い地に横書きされた「SWEET VACATION」という商品名と、その脇に縦書きで添えられた「働き過ぎたあなたへ」というキャッチコピーのみが共に白い文字で印刷されています。容器の他の部分及び内容物について、外見や成分などに市販のものと特筆すべき差異は確認できません。

SCP-105-JPの特異性は、人間が内容物を容器から直接経口摂取した場合に発現します。SCP-105-JPを"飲んだ"人物(以下、SCP-105-JP-1と呼称)は、その後30分程度で昏睡状態となります。この現象は摂取量やSCP-105-JP-1のアルコールへの耐性に関わらず起こります。このとき、SCP-105-JP-1が"自宅"(平常寝起きしていると認識している部屋)にいた場合、必ず自分の寝具で就寝します。SCP-105-JP-1が"自宅"にいなかった場合は、酩酊しながらも合理的な交通手段による帰宅を試みます。この帰宅行為を妨害すると、SCP-105-JP-1は激しく抵抗するものの、身体を拘束するなど強制的に妨害することは可能であり、自宅の寝具で就寝しなければそれ以降の特異性が顕在化しない結果となります。

昏睡状態は平均して7.5時間で、その間にSCP-105-JP-1の"自宅"にある多くの物品が消失あるいは変質します。詳細は以下の表を確認してください。

表105-1: SCP-105-JPによる物品への影響
物品 影響
衣服・食品・生ごみ・紙くず・ぬいぐるみ・クッション・プラスチック・ゴム類・ビニール類・革製品(靴・カバン・ベルト)木及び木製のもの 消失
陶器類(茶わん・皿・植木鉢など)・ガラス類(割れ瓶・板ガラス・コップ・花瓶・鏡など)・傘・玩具(金属を含むもの)・体温計・刃物類・針・画びょう・安全カミソリ・オイル缶・乾電池・蛍光管・家電製品 固定(未知の作用により固着し使用不可、破壊成功例なし)
空缶・空瓶・空ペットボトル・金属を主とする物品(なべ・やかん・フライパンなど)・ホーロー製品・新聞紙(折込みチラシを含む)・雑がみ(ワイシャツの台紙・ハガキ・ボール紙・コピー用紙・紙箱など)・ダンボール・紙パック(アルミコーティングしていないもの) 菓子化(チョコレート・飴細工やマジパンなどの砂糖細工となり、外見は元の物品に酷似)
上記に該当しない備え付けの家具(机・椅子・棚・ベッドフレーム・浴槽・便器など)・部屋の壁 影響なし

SCP-105-JP-1は覚醒後、全裸のまま室内で生活するようになります。電気やガスの使用、外部との通信は一切できないため、SCP-105-JP-1はほとんどの場合、食料として菓子化した物品を摂取し、長時間の睡眠をとるか、体操などで暇を潰します。SCP-105-JP-1が自力で部屋を脱出することは一切なく、室内での生活を続ける中で、栄養失調による体調不全あるいは臓器不全により死亡、または餓死します。季節によっては凍死や重度の熱中症により死亡することもあります。

外部からSCP-105-JP-1への接触については数週間~数か月程度遮断されます。これはSCP-105-JP-1と関係する人物の記憶と認識に対し軽度の改変がおこなわれるためです。多くの場合「SCP-105-JP-1は休暇中である」という誤った情報にすり替わります。休暇の長さに疑念を持った人物が"自宅"を訪ねることで、SCP-105-JP-1は外部へ脱出できるようになります。

SCP-105-JP-1が生還した場合、後のインタビューでは、室内生活中の心境について「せっかくの休暇だし家でゴロゴロしたかった」「外に出る服がないから仕方がないと思った」「今考えると、どうしてそう思い込んでしまったのかわからない」等の回答が一様に得られており、この著しく非合理的な認識や判断もまたSCP-105-JPによる影響であると考えられています。
実験を終えた被験体は以前より内向的で悲観的な性格となりますが、日常生活を送る上で回復していきます。稀に強い孤独感に苛まれ自殺をする場合がありますので、実験後はプロトコルを厳守し記憶処理を徹底してください。

SCP-105-JPは20██年以降、都内のコンビニエンスストアチェーン店で販売されていたことがわかっています。そのほとんどが見切り品のワゴンの中に陳列されてあったもので、販売店に入荷の記録がなく、混入した経緯は不明です。過去に出現した場合と同条件の店舗をエージェントが巡回するなど、未収容のSCP-105-JPの捜索が定期的におこなわれています。