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アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPは現在カバーストーリー「登山道の崩壊」を流布し閉鎖しています。定期的に対象を進入させ、異常性が持続している事を確認して下さい。
説明: SCP-XXXX-JPは██県███市█山山頂です。
SCP-XXXX-JPは以前「人が来ると霧が出る山」としてAnomlousアイテムに指定されていました。当該アイテムに関する研究は別途報告書を参照して下さい。
定期観察の為██研究員が山頂部に進入した際、周囲からの山頂の観察が不可能な程の濃霧及び██研究員が装着していた観測機器の機能不全が発生しました。以下は直後に行われた██研究員への聞き取り調査のログです。
質問者: 柊研究員
対象者: ██研究員
<重要性が低い為割愛>
柊研究員: 観測機器が機能不全に陥っていることには気付きませんでしたか。
██研究員: はい。何が起こっていました?
柊研究員: 映像記録は白い霧が濃過ぎて何も見えず、音声記録はノイズが大き過ぎて除去不可能です。動体探知機やGPS等も全て信号が消失。
██研究員: そんな事が。どれも、私はその原因となる様な現象を確認してませんね。
柊研究員: 成る程。次、中で見聞きした事を、性格且つ詳細に教えて下さい。
██研究員: はい。えー、踏み入れた時、周りが濃い霧に包まれました。
柊研究員: そこまではこちらでも確認しています。
██研究員: 少し、20秒程でしょうか、経った時に霧が晴れました。経っている場所は同じでしたが、一面が雲海に包まれた景色がありました。
柊研究員: 我々は霧が晴れた事を確認していませんし、その時は快晴だった筈ですね……続きをどうぞ。
██研究員: 燦燦と太陽が照り付けていました。そして後ろを向くと、雲海にブロッケンの妖怪が現れていました。
柊研究員: ブロッケン現象1が起こっていたという事ですね。
██研究員: そうです。暫く見ていると、突然影が形を変え始め、私ではない別の人間の形になりました。その時、突然母の声が聞こえて、影の形が母のシルエットにそっくりだと思い当たったんです。
柊研究員: 確か、お母様は既に他界されていましたね?
██研究員: ええ、3年前に亡くなりました。その時から、ずっと引っかかってた事がありまして、それに関して話をしました。
柊研究員: 内容を伺っても?
██研究員: 婚約相手との結婚を認めて貰えず、駆け落ちにも近い状況で結婚した事についてです。
柊研究員: どうしてその話をする事になったのですか?
██研究員: 今考えると少し理解に苦しむのですが、あの時、これは紛れも無く自分の母親であると認識していました。理由は考えても思い出せないので質問しないで欲しいです。それで、母親を思い出す時には必ずその事も思い出していたので、つい口にしてしまいました。
柊研究員: 答えは何と?
██研究員: 要約すると、貴方が幸せならそれで良い、と言ってくれました。
<重要性が低い為割愛>
上記の報告によりオブジェクトとして仮登録され、追加調査の後SCP-XXXX-JPに指定されました。
9時から15時の間にSCP-XXXX-JPに人間(以下"対象")が進入すると、対象の心理状態に応じて対象の周辺に霧が発生します。霧量は対象の自らの過去の経験への執着や後悔(以下"起点状態")の程度に比例し、一切起点状態にない対象の周辺には霧が発生しません。
極度の起点状態にある対象が進入した場合、濃密な霧が発生し外部からの目視による観測は不可能になります。霧の発生中は対象が携行する観測機器が全て機能不全を引き起こす為、SCP-XXXX-JP内の客観的な観測は不可能です。
濃霧が発生している間対象は一時霧が晴れ広大な雲海を見るという経験をします。しかし実際にはSCP-XXXX-JP外で雲海は観測されていないケースが殆どであり、観測されたケースも霧の発生前から雲海が出現していた場合に限られます。
雲海に投影された対象の影には必ずブロッケン現象が発生しており、対象が視認している間に形状を変更、対象が執着や後悔を感じている過去の出来事(以下"起点イベント")に深く関わる人物のシルエットへと変化します(以下SCP-XXXX-JP-A)。同時に対象には当該人物の声が聞こえ、SCP-XXXX-JP-Aを当該人物と同一の存在であると認識します。
その後対象はSCP-XXXX-JP-Aと起点イベントに関する対話を行い、起点イベントに抱いている感情について何らかの解答を得ます。
実験記録SCP-XXXX-JP-██
対象: エージェント██
起点イベント: 高校時代に交際が卒業によって自然消滅している。
SCP-XXXX-JP-A: 当時の交際相手である女性。
解答についての聞き取り: 女性と互いに恋人という認識を持ったまま卒業し、今でも再開を願っている。
後記: 実験後エージェント██は女性と連絡を取り、現在婚姻している。
実験記録SCP-XXXX-JP-██
対象: █上席研究員
起点イベント: 自らが実行責任者を務めた実験中の収容違反によって部下が死亡している。
SCP-XXXX-JP-A: 死亡した部下。
解答についての聞き取り: 部下は少なからず怨恨の念を抱いているものの、回避困難な事故であったとして納得している。
後記: SCP-████-JPによる調査で、部下は一切の怨恨の念を覚えていない事が明らかになっている。この事から、SCP-XXXX-JPは事実ではなく対象が希望している、或いは信じている事を解答として与える可能性が考えられる。
実験記録SCP-XXXX-JP-██
対象: D-XXXX-JP-██
起点イベント: 大量殺戮を行った際、誤って標的ではない子供を殺害している。
SCP-XXXX-JP-A: 殺害された子供。
解答についての聞き取り結果: 聞き取り調査を行う前に機器で頸動脈を切断し自殺した。
後記: 同僚からの聞き取りにより、自らの意思で死ぬ事で贖罪しようとしていた事が明らかになっている。
実験記録SCP-XXXX-JP-██
対象: 元エージェント█████
起点イベント: ██年前に元エージェント█████宅で火災が発生、その際彼女を救助した消防士██████氏が死亡している。
SCP-XXXX-JP-A: ██████氏
解答についての聞き取り: 無し。[以下詳細]
<関連性が低い為省略>
柊研究員: どう言う事ですか?
元エージェント█████: どうしてかを訊いても、「自分が死ぬと分かって、それがどうしたって言うんだい?」としか答えてくれないんです。それが仕事だから、とでも言わんばかりでした。
柊研究員: 貴方は、それで納得したんですか?
元エージェント█████: ええ[約18秒間沈黙。]私を助け出してくれたのは事実ですし、そういう人なんだ、と思う事にしました。釈然とはしなかったですが。
柊研究員: 元々は、どの様な解答であろうと予想していました?
元エージェント█████: 予想は出来ませんでした。当然、考えてはいましたが、どれも私に理解出来る考えではなくて。
<以下省略>
後記: 対象の希望する、或いは信じる解答が無い場合には、理解不能という解答が得られる可能性が高い。
実験記録SCP-XXXX-JP-██
対象: ███
起点イベント: SCP-544-JPから脱出した後、SCP-544-JPに関する一切の経験を記憶していないにも関わらず、"お兄ちゃん"と形容する何者かを心配している。D-1104を指すと思われる。
SCP-XXXX-JP-A: D-1104と思われる。
解答についての聞き取り結果: 無し。[以下詳細]
<関連性が低い為省略>
柊研究員: 現れたのは誰でしたか?
███: お兄ちゃんです。
柊研究員: 名前は分かりませんか?
███: ごめんなさい、訊きませんでした。
柊研究員: そうですか。彼について、何か思い出しましたか?
███: いえ、何も。でも、何かしてくれたってことははっきりしました!
柊研究員: そうですか。彼は、貴方に何を言っていましたか?
███: 俺は悪いことをしたから、いいことをしなきゃいけない、だから君のお手伝いをした。そう言ってました。
柊研究員: 他にはありませんか?
███: いいえ。おんなじことを、言葉を変えながら言ってました。
<以下省略>
後記: 聴取したSCP-XXXX-JP-Aの特徴は、D-1104と完全に一致した。尚、███はこの実験を通して、SCP-544-JPに関して一度も言及していない他、SCP-544-JP及びD-1104との関係について一切を思い出さなかった。
- Tale
- 変換箸
- 将門の呪い
- 自力人力車
- 月へと
- ブルー・イマジナリー@鋭意製作中
- 愛を学ぶ@鋭意製作中
- 催眠CD
- お父さんスイッチ
- 弔刻 -メモリアル 共著案件
- 死
- 奇形児
- 設計図
- PTE-0187-Corona Alexandrla-JP "神の設計図"
- 特収手ーやまとことのはー日の本ー冗
- 絶対悪 -SPC
- 置き手紙
- 盗撮カメラ
- UFOラーメン1杯目
- UFOラーメン2杯目
- 1724-JP
- 諸記録
- Tale 歌姫はいつも側に
- SCP-Delay-JP-EX-J
- 愛多き少女
- 棍棒用1
- experiment
彼女は一度死んだ。
あの日、僕らのいた児童養護施設は近くの火事に巻き込まれて、ほとんど燃え尽きた。その時、服に火が燃え移った彼女は、僕の目の前で焼け死んだんだ。
苦しそうな目、叫びにならない声、伸ばした手、全部覚えている。僕には何も出来なかった事も。
たくさんのマスコミも来てたから、きっと映像にも残っているだろう。やるせない気持ちのままに、頭の上を飛ぶテレビ局のヘリコプターを見上げた。あの人達は見に来てるだけで、助けてくれるつもりなんて無いんだって。
もう一度視線を戻すと、彼女はそこに立っていた。燃え続けるスカート。黒くなった左腕。でも、彼女は立っていた。
レスキュー隊が誰かを呼ぶ声が聞こえた時、彼女はとても困った顔をした。そして、声から逃げようともした。何と無く、見てはいけないモノを見てしまったと理解した僕は、気が付くと彼女の手を取って走っていた。
「逃げよう」
どうしてそう思ったのかは今も分からない。でも、僕は彼女を引いて逃げ出した。
大規模な火事と無駄に集まった人混みのおかげで、紛れ込むのは簡単だった。皆火の様子を見るのに必死で、足元の子供なんて見ちゃいなかったから。
僕らは逃げた。帰る家なんて無い。行く所なんて決めない。とにかく、誰も僕らを知らない所まで逃げようとした。
赤い星が眩しい、暑い夜だった。
国道沿いの歩道を歩く。次の街まであと40km、最後に見た街から70km。陽炎が酷く、距離感が上手く掴めなくなっている。中学2年生の足では、連続して歩ける距離はたかが知れていて、僕はまた座り込んでしまった。
「大丈夫?」
僕の顔を覗き込む彼女は唯という名前で、4年前から一緒の養護施設にいた。唯はまだ余裕がありそうな顔をしているけれど、僕に合わせて休憩してくれる。
あれから5日、僕らはとっくに死んだ事になっているんだろう。炎に巻かれて、瓦礫に埋まって燃え尽きた。そう思われなきゃ困るんだ。ここまで歩いた意味が無い。
首に下げた水筒から、呷る様に水を飲む。そろそろ、どこかで水道か、綺麗な清水を探さないといけない。さっき見かけた川は酷く濁っていたから、この辺りは駄目かも知れないけれど。この国の売りは綺麗な水じゃなかったのか。心の中で、いつか見たテレビ番組に文句を言う。
今日は平日、こんな道を通る車はほとんどいなかった。さっきヘリコプターが飛んで行った以外、乗り物は見かけない。幼い子供が歩いているのを見咎められない分、好都合かも知れなかった。
呼吸が完全に落ち着くのを見計らって、やおら立ち上がる。
「ごめん、もう大丈夫。行こっか」
「うん」
僕達は同い年だけれど、唯は4年前に会った時から、少しも背が伸びていない。でも、初めから僕より体力があったし、今も追い着けないままだ。3年前に小学校で行った遠足では、皆が目的地の公園で一休みする中、一人だけ初めから走り回っていた。
遠くから車の音が聞こえた。2人で茂みの中に隠れる。ここではまだ見付かっては駄目だろう、どこまで行けば見付かっても良いのかは知らないけれど。
頭を上げて様子を伺うと、見えてきたのは大型のワゴン車。丸と矢印で出来たマークが描かれている。僕達に気付く事無く、目の前を通り過ぎた。
と思ったら、少し行って停車した。そのまま扉が開き、中から数名のスーツの男。
「どうしたの?」
唯が息を潜めて訊く。
「降りて来た」
そのまま見続けていると、少し辺りを見回した後、道路脇の茂みに足を入れた。
「何か探してるみたい。移動しよう」
あまりガサガサ音を立てない様気を付けながら、ゆっくりと動く。
その時。
「何か動いた!」
ビクッとして、動きを止める。
男の1人が、こちらに向かって歩いて来た。草に隠れる様にその場に伏せる。男はそのままこちらに近付き、すぐ近くで立ち止まる。
「……」
息を殺して見ていると、男は僕達のすぐ横の茂みを覗き込んだ。心臓が、周りに聞こえてバレるんじゃないかと心配になる程脈打っている。
「―――」
男は、茂みを覗き込んだまま動かない。
「―――なんだ、蛇か」
見ると、僕達の横を、1匹の蛇がスルスルと通っている。スーツの男は溜め息をついて、再び遠ざかった。
「はい、私の水、ちょっとあげる」
「ありがと」
男達は広い範囲で、しつこく何かを探していた。僕達は何とか逃げ出したけれど、どんどん森に入った結果、ここがどこだか分からなくなってしまった。
もう日が傾いている、このまま夜を越した方が良いかも知れない。幸い、この辺りの森には肉食獣は住んでいないし、致命的な毒を持つ生き物もいない。
「じゃあ、火付けて待ってて」
「うん」
ある程度乾いた枝を集めて、拾ったライターで火を着ける。いつもは道路から少し森に入るか、誰もいなそうな廃倉庫の中でやるけれど、今回は近くに道路があるとも思えないので気にしない。
僕はサバイバル系のテレビや本が好きだったから、食べられるきのこや野草に少しばかり詳しい。だから明るい内に集めるのだけれど、それだとタンパク質が摂れない。川がある時なんかは頑張って魚や貝を獲るのだけど、それが出来ない時、唯はいつも僕の見えない所に行き、何かの肉を確保してくる。何の肉か訊いたけれど「訊かない方が良いよ。食欲無くすから」と言われた。小型の哺乳類か、それとも蛇や蛙の類いだろうか。
「お待たせ」
唯はまた肉を手に戻って来た。いつも瑞々しくて血が滴っている肉を持ってくるし、両手が赤く汚れているから、やっぱり何か手頃な動物を解体してるんだろう。
拾ったブリキの箱の底で食べ物を焼く。へばりついてしまうけれど、ある程度は仕方無い。
僕はきのこや肉類を頬張るけれど、唯はいつも少し木の実を食べるだけで済ませてしまう。魚なんかを獲った時にはそれも食べるけれど、自分で持ってきた肉は食べない。本当に食欲が無くなる様な正体なのだろうか。
食べ終わると、僕達は火が消えるまで必ず起きている。もう炎に包まれるのはご免だから。火が消えたら、屋内なら床に寝そべって、屋外なら木に寄りかかって寝る。真夏とは言え屋外の夜は冷えるから、僕が右、唯が左になって寄り添って眠る。どうしてか、僕が左になった事は無い。
ふと上を見ると、晴れ渡った空に星が輝いている。どうりで冷える訳だ。夜晴れていると、地面の暖かさが空に逃げると聞いた。好きな子の腕を抱いて見る星空は格別だけれど、流石に5夜連続となると飽きる。
今日は街に着いた。真っ暗になっても住宅街から出られないと怪しまれて最悪だけれど、今回は大丈夫だった。明るい時間なら怪しまれやしないから、少し中を歩く。
小さなショッピングセンターの100円ショップ。唯はそこに入ると、なけなしのお小遣いで、画鋲と風船を買った。フードコートに給水機があったから、椅子で休憩しながらがぶ飲みする。
夜までに住宅街を抜けるのは無理だと判断し、公園の蛸足滑り台で夜を明かす事に決めた。公園で焚き火をした所で、花火でもやってるんだろうと思われるから意外と問題にならないけれど、念の為今日は火を焚かないでおく。
食事はショッピングセンターの裏手でくすねた賞味期限切れの弁当。僕は物心付いた時には養護施設だったから初めてだけど、唯は食べた事があると言う。濃い味付けが疲れた舌に美味しい。正直言うと、逃げ始めてからずっと半分旅でもしている様な気分だから、味付けなんか無くても美味しいと感じていた。けれど、改めてちゃんとした料理を食べてみると、如何に味気無かったかが思い起こされる。
よく覚えている。唯が施設に来てから、来客が増えた。施設長と真剣に話し込んでいる人もいれば、ビジネス的な雰囲気の人、下卑た笑顔を浮かべる嫌な大人まで様々な人が来たけれど、誰も彼もチラチラと唯の方を見ていた。
そんなに唯が人気なのかと思っていたけれど、今ならその理由が分かる。きっと、学者先生か金持ちか、全員そのどちらかだったんだろう。
唯が明言した訳ではないけれど、唯の身体は普通じゃない。唯は交通事故で両親を失くしたと言っていた。両親は個人の判別は愚か、人かどうか分からない程の損傷だったそうだ。でも唯は生き残った。この間の火傷はもう全部治って、痕も少しずつ小さくなり始めた。昨日の擦り傷は影も形も見えない。それに、唯は十分な栄養を摂っているとは思えない。水も。つまり、そういう事なんだろう。来客達は、皆唯の身体が目的だったのだろう。もしかしたら研究目的かも知れないし、都合の良いドナーとしてかも知れない。
だから僕達は逃げているんだ。唯が誰かに捕まったら。考えるだけで恐ろしい。僕らを知っている人間のいない所へ、そんな甘い考えでは駄目だ。誰もいない所へ。僕はそう決めた。
あれから何日経ったか分からない。僕達は今公園のベンチに座り、非常に難しい決断をしようとしていた。
ここ数日、随分と狙われている。誰かの待ち伏せを避けた事もあるし、市街地でハイエースに追い回されたりもした。その時は何とか渋滞で撒いたけれど、危なかった。物陰から視線を感じた回数は数え切れない。
ここは住宅街の中。大きめの公園で東屋もあるけれど、ここで野宿するのは危険かも知れない。寝ている間に狙われるかも知れないし、誰かに見付かって補導されるかも知れない。色々と考えた結果、公園の公衆トイレで夜を明かすのが確実だという結論に辿り着いた。問題は、男子トイレと女子トイレ、どちらに入るか。バラバラに寝るなんて考えられない、心配で僕が死んでしまう。そして、生まれて初めて女子トイレに入ろうと決意してから、広い多目的トイレが設置されている事にやっと気付いた。
2人で足を伸ばして寝る事が出来る密室は、随分と久々な気がする。たとえ簡易であっても、鍵のかかる空間がこんなに落ち着くとは知らなかった。芳香剤の匂いが強過ぎるのは気になるけれど、廃屋の謎の腐臭に比べればマシだ。
隣の寝息を聞きながら、見知った情報をまとめる。この所の経験から、警戒すべきポイントを幾つか学んだ。丸と矢印3つを合わせたマーク。青い星形のマーク。頭文字がSCPの会社。警官、販売員、ゲーム好きを名乗る人間。
この内、ゲーム好きだけは暴力的な意思を感じさせなかった。ゲーム好きの人間が集まる組織の末端であり、自分達もまたまともな人間ではないと名乗った。そして、一緒に来れば保護してあげられる、何かがあれば助け出せるだけの力があるとも言っていた。回答を猶予すると伝えられたからひとまずお引き取り願ったけれど、それはつまり、僕達の動向を常に把握しているという事でもある。気分の良い話じゃない。順番に撒けていれば良いのだけれど、どれだけの人間が唯を追い続ける事が出来ているのか、分からない。
唯一幸いなのは、白昼堂々と拉致を敢行する強硬派がまだ現れていない事。
よく眠れていない。この所、追い回し方が段々過激になってきてる。ヘリコプターから身を隠すのは当たり前、
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: サイト-8181内の低脅威度物品庫に、簡易収容ケースに入れ保管されています。
説明: SCP-XXX-JPは、一双の漆塗りの箸です。装飾や銘は無く、製造者は不明ですが、箸職人の故[編集済]の作品に酷似しています。
SCP-XXX-JPの二本はそれぞれSCP-XXX-JP-A、SCP-XXX-JP-Bと呼称されます。SCP-XXX-JP-A、SCP-XXX-JP-Bは互いに引き付け合う何らかの力が働いており、別々の場所に保管していたとしても、どちらかの場所にもう片方が移動した状態で発見される事が確認されています。
SCP-XXX-JPを用いて食事をした者(SCP-XXX-JP-1)は味覚に変化が起き、食物に関する好みが大きく改変されます。一般的には、改変前に好んでいた食物に大して嫌悪感を抱き、嫌っていた食物を好む様になります。また、変化の程度は、使用前のSCP-XXX-JP-1の好みの程度に比例します。また、SCP-XXX-JP-1に記憶処理を施す事により、SCP-XXX-JPの影響を無効化出来る事が判明しています。
実験記録XXX-JP-a - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: SCP-XXX-JPの影響の調査
実施方法: 比較的白米を好みパンを嫌っているD-5427に、SCP-XXX-JPを用いて好悪の感情の無い刺身を食べさせる。その後、一般的な箸を用いて白米とパンを食べさせる。
結果: 刺身は通常の食事通りに完食した。白米を与えると、見た段階では白米を好んでいる様に反応したが、一口食べると嫌悪感を示したが、「勿体無いからな」と言い完食した。パンを与えると、渋々一口食べ、「パンってこんなに旨かったっけ」等と呟きつつ、喜びながら完食した。白米、パン両方に対する嗜好に変化があった。
実験記録XXX-JP-b - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの影響の調査
実施方法: 極度に肉を嫌うベジタリアンであるD-5439に、SCP-XXX-JPを用いて好悪の感情の無い豆腐を食べさせる。その後、一般的な箸を用いてレタスと牛肉を食べさせる。
結果: 豆腐は通常の食事通りに完食した。レタスを与えると、通常の食事通りに完食した。牛肉を与えると、激しい嫌悪感を示した後に一口食べ、「おいしい!」と叫び、驚くべき早さで完食した。肉類に対する嗜好が大きく変化した様である。D-5439はレタスに対しては何とも思っておらず、その結果変化が無かったと思われる。
実験記録XXX-JP-c - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの影響の調査
実施方法: 昆虫食を嫌うD-5444に、SCP-XXX-JPを用いて好悪の感情の無い白米を食べさせる。その後、一般的な箸を用いてイナゴの佃煮を食べさせる。
結果: 白米は通常の食事通りに完食した。イナゴの佃にを与えると、激しい嫌悪感を示した後に一口食べ、「美味しいけど……もう良いですか?」と言い、それ以降の摂食を拒んだ。SCP-XXX-JPは味覚に変化を与えるが、食材に対する印象には変化を与えない様である。
実験記録XXX-JP-d - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの影響の調査
実施方法: ウドを嫌うD-5491に、SCP-XXX-JPを用いてウドを食べさせる。
結果: 無言でウドを口にした後、そのまま完食した。食後に聞き取りを行った所、「口に入れた時は不味いと思ったが、次の瞬間口の中に旨味が広がり、急に美味しく感じ始めた」と証言した。SCP-XXX-JPの影響は、使った瞬間に現れる様である。
補遺: SCP-XXX-JP-1の味覚が変化しているのではなく味に関する記憶が改変されているのだと考える研究者もおり、現在研究が進められています。
追記: 20██/██/██に行われた実験の結果、クラスがSafeからEuclidに変更されました。
実験記録XXX-JP-d - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの影響の調査
実施方法: 極度に食を好むD-5562に、SCP-XXX-JPを用いて白米を食べさせる。
結果: 一口目は通常通りに食べたが、二口目を口にした後、嚥下に苦労する様子を示す。その後、「もうこれ食べたくないです」と白米に対する嫌悪感を示した。他の食物を与えても、全てに激しく嫌悪感を示した。元々食物全般を非常に好んでおり、嫌う食物が一切無かった事から、全ての食物に対して嫌悪感を示す様になったと思われる。その後、あらゆる食事を拒み、点滴による栄養補給が必要になった為、軽度の記憶処理を施した所、実験以前の状態に回復した。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在の技術では、完全な収容は不可能です。同様の性質を持つオブジェクトの把握、対抗する為の技術の確立が求められます。カバーストーリー「将門の呪い」及び「お稲荷様の呪い」を流布し、不必要な詮索、刺激の回避に努めています。
説明: SCP-XXX-JPは大型の機械と思われる。金属製の構造物です。東京都千代田区の平将門の首塚および羽田空港の旧穴守稲荷神社鳥居で確認されています。存在が予想される1█地点を確認中ですが、全て何らかの宗教的施設で発見されています。
SCP-XXX-JPは地中に設置され、半径███m以内でSCP-XXX-JP及び上部の建築物(SCP-XXX-JP-A)への何らかの悪意を持った行動が確認されると、局所的な磁気嵐、上昇気流を発生させ、行動を妨害します。その為、SCP-XXX-JPは大型の防衛兵器の類いであると予想されます。どの様なメカニズムで発生しているかは不明です。
上記の特性により、SCP-XXX-JPの発掘、収容の試みは全て失敗しています。既に米軍、民間解体業者に██名の負傷者及び██名の死者が出ています。現在までSCP-XXX-JP-Aに対するいかなる破壊行為も阻止されており、SCP-XXX-JPがどれ程の規模の異常現象を引き起こせるのかは未知数です。
以前より異常現象が報告されていた平将門の首塚、旧穴守稲荷神社鳥居両地点で金属探知機及び音波探知機、その他解析装置を用いて測定した結果、地中の機械の存在が明らかになりました。
実験記録XXX-JP-a - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: SCP-XXX-JPの反応の範囲
実施方法: D-6794に、平将門の首塚に対し石を投げつけさせる。
結果: 投擲された石は、そのまま碑に衝突した。破壊するに足らない行為には反応しない可能性が高い。
実験記録XXX-JP-b - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの反応の範囲
実施方法: D-6794に、平将門の首塚に対しレンガを投げつけさせる。
結果: 投擲されたレンガは、突発的に発生した風に妨げられ、碑に衝突する直前で落下した。数度同じ実験を行ったが同じ結果だった。
実験記録XXX-JP-c - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの反応の範囲
実施方法: D-6794に、平将門の首塚に対し、D-6794が可能な投擲距離より遠くからレンガを投げつけさせる。
結果: 投擲されたレンガは、そのまま碑に届く事無く落下した。SCP-XXX-JPに何らかの観測装置が備わっており、SCP-XXX-JP-Aへの攻撃の威力を計っている可能性がある。
実験記録XXX-JP-d - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの反応の範囲
実施方法: D-6794に、平将門の首塚に対し、鶴嘴での破壊を行わせる。
結果: D-6794が鶴嘴を振り下ろした瞬間、鶴嘴の柄の中程が折れ、先端部が落下。D-6794の頭部に命中し、脳震盪を引き起こした。事前の検査では異常は発見されなかったが、実験後の検証により、内部が腐敗していた事が明らかになった。これがSCP-XXX-JPによる影響かどうかは不明。磁気嵐、上昇気流の発生以外にも機能がある可能性が高い。
実験記録XXX-JP-e - 日付20██/██/██
対象: SCP-XXX-JP
目的: 引き続きSCP-XXX-JPの反応の範囲
実施方法: 平将門の首塚に対し、上空500mから石材の投下を行う。
結果: 2度の投下は、強風により着地地点が外れた。続く3度目は、投下前に上空での強風が観測され、機体制御が困難になった為中止した。
実験中の平将門の首塚の隔離にはカバーストーリー「地盤調査」を流布しましたが、長期、広範囲に及ぶ隔離が困難な為、SCP-XXX-JPを破壊、移動する実験は何らかの進展が認められるまで行われない事になりました。
追記1: 20██/██/██に山梨県甲州市の諏訪神社で、地下に何らかの金属製大型装置が埋没している事が判明しました。SCP-XXX-JPに該当する可能性が高いですが、異常発生条件、発生対象が不規則である事から、類似の別種の装置、或いは故障したSCP-XXX-JPであると推測されます。
追記2: 20██/██/██、台風による各種の警報が発表されている中、██氏が様子見、保護、掃除の為に██神社2を訪れました。その際、██氏より新たな証言が得られました。
以下がインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP-a - 日付20██/██/██
対象: ██氏
実施者: 龍舌研究員
<録音開始>
龍舌研究員: では、██日に何があったか、教えて頂けますか?
██氏: はい。あの日は、凄い雨と風でした。
龍舌研究員: 台風真っただ中でしたからね。危ないとは思わなかったのですか?
██氏: 思いましたけれど、私の家は代々あの神社の氏子ですし、あそこは大事な場所ですから。壊れても修繕費が大変ですしね。それで、カッパを着て、何とか神社まで行ったんですが、境内に入った時、風と雨が少し治まったんです。台風の目に入ったのだと思いました。
龍舌研究員: 成る程。
██氏: で、雨戸の立て付けの確認やら諸々の点検を済ませて、酷くなる前に帰ろうと思ったんです。そしたら、境内から出た瞬間、風に飛ばされて。
龍舌研究員: 大変でしたね。
██氏: ええ。それで、境内に倒れ込んだんです。その時気付いたんですが、境内だけ、風と雨が弱まっているんです。もう一度出ようとしたんですけど、また押し戻されて。それで、諦めて、翌朝まで神社にいました。
龍舌研究員: 無事に帰れましたか?
██氏: はい。翌朝、家に帰ると、家族が酷く心配していました。神社の事を伝えると、酷く不思議がっていましたよ。あれはきっと、████様3が守って下さったんです。
龍舌研究員: 分かりました。ご協力、ありがとうございます。
<録音終了>
この証言により、SCP-XXX-JPが人員保護の機能を持っている可能性が浮上しました。
1/1196-JP LEVEL 1/1196-JPCLASSIFIED |
アイテム番号: SCP-1196-JPオブジェクトクラス: Safe |
特別収容プロトコル: SCP-1196-JPのセクター-8192外への持ち出しは禁止されています。サイト内においては、自由に使用する事が許可されています。SCP-1196-JPの修理中は、担当職員を2名任命し、完了するまで監視に当たらせて下さい。
説明: SCP-1196-JPは人力車の形状をしています。車体番号は記されていますが、いかなる製造会社にも記録は無く、出所は不明です。この人力車を保有していた企業にも、発注記録は残っていませんでした。
SCP-1196-JPは音声認識能力があると思われ、背部に設置されている箱に250円以上の代金を入れ、座席に乗り込み行き先を告げると、引き手がいないにも関わらず自走を開始します。現時点で音声認識装置、動力装置は確認されていません。通常運行速度は時速10kmで、代金の増加に比例して速度が増加します。運行中、公道を走行する場合は交通法規を遵守し、通行人や車両と接触しない様加減速や進路変更等を行う事が確認されています。
代金を投入した後SCP-1196-JPが走り出す前に降りる、或いは乗らない、行き先を告げない等の行為を行うと、不明な原理により代金投入口から投入した代金が排出されます。
未知の力によって部品が強固に結び付いており、解体は不可能です。ただし、タイヤがパンクした等の状況での修理を目的とした解体のみ可能です。その際解体したまま復元せずに放置すると、男性の叫び声に類似した異常音を出します。通常の空気の伝達による発音ではなく、防音室に収容しても音を防ぐ事は不可能です。
同様に代金箱の開封も不可能ですが、SCP-1196-JPには重量の増加は見られず、投入された代金がどこへ消えたかは不明です。金銭が何らかの方法によってエネルギーに変換されている可能性があります。
補遺1: SNS上で、京都府内を走り回る自律式人力車に関する書き込みが広まっていた事が財団の注意を引きました。関西地方の人力車運用会社を調査した所、株式会社████所有の一台が行方不明になっている事が分かり、同一の車両である事が判明しました。多くの市民の目に留まっていた為記憶処理による事態の収拾は断念し、カバーストーリー「自動運転搭載実験」及び「ドッキリ企画」、「クソコラtweet」を流布し、オブジェクトとしての収容を行いました。
補遺2: 20██/██/██、SCP-1196-JPを使用した職員から頭痛がするとの報告があり、調査を行った結果、認識困難な帯域の高周波が発生している事が判明しました。可聴帯域に変換した結果を、以下に記します。
えー、本日は、セクター8192内人力車███-██-██(SCP-1196-JPの車体番号)号にご乗車頂き、ありがとうございます。
私、引き手を担当させて頂きます███-██-██(同上)と申します。
乗車時間は[距離、速度によって変動]分です。
どうぞ、ごゆっくりとお楽しみ下さい。
乗客に対する説明を行っている事が判明しました。
追記1: 20██/██/██に財団本部との低危険度オブジェクトに関する情報交換及び相互視察が行われた際、SCP-1196-JPが話題となりました。財団本部の所有する施設は財団日本支部のそれに比べて大規模であり、長距離を職員の自費で高速且つ安全に移動出来る手段を模索しているとの事です。協議の上、特例的に短期間のSCP-1196-JPの委託が決定しました。
追記2: 20██/██/██、財団本部において運用実験が行われましたが、代金を投入しても、一切の動きを見せない事が判明しました。その際、未確認の高周波を発している事が確認され、録音、可聴帯域への変換が行われました。結果を以下に記します。尚、財団本部での運用実験中に投入された全ての代金は排出されています。
あのー、お客さん? 場所、日本語でお願い出来ませんか?
SCP-1196-JPは、英語を認識出来ない事が判明しました。
追記3: 20██/██/██にセクター8192への再移転が行われました。現在、財団本部への移転以前と同様に運用されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト81██内の低危険度物品庫に収容されています。SCP-XXX-JPに対する破壊、固定、分解、複製等いかなる行為も失敗しており、現状特殊な収容手順は確立されていません。
説明: SCP-XXX-JPは月を模した直径約1メートル80センチの球体です。再現度は非常に高く、構成物質は水素、酸素、ケイ素、鉄、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、マンガン、チタン等が月とほぼ同様の割合、分布で存在し、表面の形状から内部構造に至るまで、月とほぼ同一の作りになっています。比重は月と同様であり、月との体積比に比例した質量を持ちます。微小な重力を持ちますが、質量から万有引力の法則を用いて導かれる数値と矛盾しない程度の重力です。
SCP-XXX-JPは非常に緩やかに成長しています。1年間に半径[編集済]ずつ大きくなっている事が確認されており、SCP-XXX-JPと共に発見された16██年の記録により、400年間ほぼ同様の成長率を維持している事が明らかになっています。このままの成長率を維持すると、[編集済]年には実際の月と等しい大きさになると推測されます。
現在、類似した特徴を持つオブジェクトである事から、財団フランス支部SCP-053-FR研究班との共同研究を進めていますが、両オブジェクトとも有用な成果は上がっていません。
補遺1: 京都府██神社に保管されていましたが、神社の跡継ぎがいなくなる事から、20██/██/██に神主より財団に寄贈されました。聞き取り調査も行いましたが、神主はSCP-XXX-JPについて上記の異常性以上の情報は持っておらず、また受け継がれていた資料にも、上記以上の情報はありませんでした。
補遺2: 20██/██/██に主任研究員より、SCP-XXX-JPを宇宙空間へ投棄する計画が提案されました。是非の判断は保留され、現在、詳細な手順を策定中です。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP及びSCP-3001への更なる意図しない進入、接触を阻止する為、全ての財団の現実湾曲技術はクラス-C"ブロークン"型ワームホールの生成を防ぐ為の、複数の新規開発されたセーフガードを用いてアップグレード、もしくは修正されます。現実湾曲技術に対する警戒心を高める為、SCP-XXX-JPに関する知識はサイト120、121、124、133から特別なクリアランス指定を受けたレベル3以上のセキュリティクリアランスを保持する職員にのみ開示されます。現実湾曲技術の研究を担当する主任クラスの研究員、博士はSCP-XXX-JP及びSCP-3001発見に至る経緯を学ぶ事が義務付けられています。
説明: SCP-XXX-JPは、SCP-3001内に存在する局所的にヒューム値の高い空間"高ヒューム場"です。SCP-3001に高ヒューム値の並行世界から干渉を行う事で、内部で粒子的攪拌が起こり、SCP-XXX-JPが発生します。SCP-XXX-JPのヒューム値は理論上8前後と推測されます。SCP-3001同様殆ど物質を含んでおらず、空間その物があらゆる物質への変成可能性を持ち、宇宙誕生直前の空間に酷似していると推定されます。周辺のSCP-3001のヒューム値が非常に低い為、SCP-XXX-JP内の人間は現実改変者と同様の現実改変が可能になる可能性があります。
SCP-XXX-JPはロバート・スクラントン博士がSCP-3001の探索を行っている際に発見されました。2006年1月2日段階で開発されていた"ラング-スクラントン安定機"(LSS)4によるヒューム値操作の影響が疑われましたが、スクラントン博士が単独で行った研究によって、SCP-XXX-JPの存在が確認されました。
2005年12月23日以降のスクラントン博士の生死は不明でしたが、2006年1月2日に外部よりSCP-3001内へ投入されたLSSを用い、引き続きSCP-3001の記録、検証を行っていました。 [スクラントン博士の消息に関する情報は、現実改変技術の緊張感と緊急性を伴った研究を断ち切らない為、倫理委員会により公表を見送る事が決定されました。] スクラントン博士のログの文書化は以下になります。
2006年1月2日、サイト-120試験施設、現実性研究室AからSCP-3001へ、2台のLSS最新バージョンの投入を試みました。
2006年1月2日、アナ・ラングストン。これより、仮称SCP-3001へのLSS投入実験を行う。ヒュームフィールド値の安定は出来てる?
イエス、マム。
これより、投入用LSS-Aの投入を行います。
[待機していたDクラス職員が、現実性研究室Aの中心へLSS-Aを運ぶ。]
[投入ポイントに到着した瞬間、LSS-Aが消滅する。]
これより現実性研究室Aを対象とした全てのデータは、最上級対改変プロテクト対象とします5。スキナー?
プロテクト処理済です。
では、投入用LSS-Bの投入を行います。
神よ…どうか……
[待機していたDクラス職員が、現実性研究室Aの中心へLSS-Bを運ぶ。LSS-Aと同様、消滅する。]
SCP-3001内への転移に成功したと思われます。
[4時間に渡り、一切の音声が録音されていない。LSSの存在に気付いていないと思われる。この間、高周期のハム音と振動音。]
[音声は録音されているが、非常に小さく、判別不能である。遠くで発生していると思われる。スクラントン博士がコントロールパネルに気付いている様子は無い。]
[音声の判別が可能になった。]収縮の再開……小さく……これは止まる……? いや、あり得ない。あり得てはならない……ヒューム値は変動していない……現実子の流出……違う……
まだ、考える時間はある、そう、その筈だ……脳は半分でも……概念が実存に……
[音声確認から2時間、コントロールパネルが、博士の声を認識する。]こちらはラング・スクラントン安定機のインターフェースです。おかえりなさいませスクラントン博士、ご用命は。
[コントロールパネルに気付く。]これは……これは何だ? これは……どうして、こんな……そうか。神よ……窓、窓はまだ……
君達は、外から来たのかい?[40分間の沈黙。]そうか……アナ。これは、私が知っている物に、よく形が似ている。だが、違う。最新バージョンか。そう、君達は、レッドの弟達か。よく来たね……モニターが付いたのか。レッドも、君達の様なら。
[モニター上の映像記録の通知に気付く。]新規……映像記録……アナは、使いかけの機械を送る様な人では、ない……映像ログを全て見せてくれ。
映像ログにアクセスしています。続行するには音声でパスワードを入力して下さいスクラントン博士。
"Anna bo banna"だ!
命令を受領しました。処理しています……ファイルを取得しましたスクラントン博士。再生します。
[ラング博士が入力した映像記録が再生される。]こちら、アナ・ラング博士。スクラントン博士、見えていますか。ここはサイト-120の現実性研究室A、博士が最後に確認された場所です。我々財団スクラントン現実錨研究班は、博士への協力を要請します。二機のLSSコントロールパネルを投下しました。現在は小型化に成功し、主要な部分は全てそのコントロールパネルに付属しています。今博士が見ているのは、我々がLSS-Aと呼称する機体です。もし博士が生存しており、意思疎通が可能な状態ならば、もう一台のLSS、LSS-Bに映像記録を入力し、こちらの世界に再び投下して下さい。確認出来るまで、我々はこの『窓』を維持する努力をします。
[再生中、スクラントン博士は不明瞭な言葉、叫び声、嗚咽を発している。]
業務連絡は以上です。続いては、私の個人的な内容となります。
[髪を掻き上げ、深呼吸をする。]
あなた、聞こえる? あなたが生きていて……良かった。本当に良かった。ずっと、あなたは必ず生きてるって、信じてた。生きていると言えるのかどうか、判らないけれど……すぐにでもそちらに行きたいけど、今は私しか研究主任がいないから、いなくなる訳にはいかないの。ごめんなさい。
[嗚咽を漏らす。]
今のあなたの状況は分からない。きっと、こちらに来れる状態ではないのよね? あなたの……一部は、こちらで保管しています。出来なかった部位も多いけど……脳や肝臓は、ちゃんと保護してる。
きっと、帰って来てね? そうよ、ルーシーとデイビッドに会わなきゃ。あの蜘蛛を潰すのはオススメ出来ないけれど、あなたがやるなら、きっと誰も咎めないわ。私も止めない。帰って来たら、脚を治して、一緒にタップダンスやりましょう? 教えてあげるわ。
ほら、婚約指輪。あなたの指輪は、LSS-Aの裏に貼り付けてあるから。
LSS-Aの記録画像を見て。記録から消えちゃった写真、入れておいたから。あと、5年間の間に最近撮った写真も。
どんな事になっても、何があっても。私は、いつまでも、あなたの妻。それは、覚えていて。あなたの為に、出来る事は何でもする。だから……帰って来て。お願い。
愛してるわ。
[カメラに口付けする。]
[2時間に渡り、一切の音声が録音されていない。その間、コントロールパネルに液状の物がぶつかる様な音が記録されている。]
[若干音声が明瞭になっている。]そうだ……私は、帰らなければならない。アナ、すぐに帰るから……
LSS-A及びBの投入から3時間後、Bの自発的な再出現が確認されました。
……
LSS-Bの再出現を確認! 対改変プロトコルは!?
実施中です。
これより、LSS-Bへの接触実験を行います。ヒューム値を1.7へ低下させて。
マム、完了しました。
[水溜りを歩く様な足音]]
LSS、応答を。
おかえりなさいませラング博士、ご用命は。
2006年1月2日の映像記録を見せて。
映像ログにアクセスしています。続行するには音声でパスワードを入力して下さいラング博士。
"Anna bo banna"。
命令を受領しました。処理しています……ファイルを取得しましたラング博士。再生します。
[ログの再生が開始されるが、映像が表示されない。]
収縮の再開……小さく……これは止まる……? いや、あり得ない。あり得てはならない……ヒューム値は変動していない……現実子の流出……違う……
どうして映像が流れないの? LSS! 映像記録を流して!
スクラントン博士により、映像部分の消去が行われています。
[以下、LSS-Aの音声ログと同一の部分は割愛。]
この映像を見たら、アナ、君は、酷くショックを受けるだろう……だから、映像は切らせてもらった。
アナ、すまない……5年間も……心配をかけて。
私は、そう、この空間……この無次元らしい空間に取り残されて、ずっと独りだ。
ここは、酷くヒューム値が低い、確か、0.0……4だった筈だ。ここでは、私は自らの現実性を保てない。
私の考えでは、現実子とは恐らくだが、エヴァレトの研究6に基づけば、多世界との遷移を防ぐ為の壁の役割をしていると思う。だが、この空間は、時間の流れが異常で、物質もほぼ存在しない。だから……
そう、分岐可能性が存在しないんだ。この空間では、"無"しか許されない。だから、ここにある全ての物は、溶かされ分解され、たった一つの"世界"へと回帰する。そこに、私が存在する可能性は無い。
現実改変が、多世界との接続をしているのだとすれば……ここは、分岐の道が書かれていない下地だ。道を幾ら引いても、辿り着く世界が存在しない。だから、ここでは現実性が希釈される一方で、周りに対する現実改変が困難なんだ……少なくとも、一般人程度のヒューム値では。
アナ、確か君は、現実子について、他の素粒子に"論理性"を与える粒子だと言っていたか……そちらの方が、正しいかも知れない……それでも、この現象は説明出来るんだ。きっと……いや、まだ、分からないが……
私の構成粒子が、論理性を喪い、解体し始めたのかも知れない。
……今、この空間では、何か異常が起こっている……何かだ。私が入った時は、終わりは……ここは、どこまでも続いている様に思えた。どこにも行けなかった。だが、今は壁……違う、ベールで覆われている様だ。つまり……この空間は、急速に縮小している。このままでは、ここが無くなるかも知れない。
そうなれば……そうなれば?……そちらに帰る前に、終わってしまう。何がかは分からない……だが、終わるのは確かだ。
この縮小は、恐らく、ワームホールの外からの干渉によって起こっている。だから……だから……
話を聞いたら、こことの接続を切るんだ。恐ろしい決断だが……私を生かしておきたいのなら、君達は、それをせねばならない。今の私は、生きて……生きていられないだろう、ここの外では。ここと同じだけのヒューム値を再現出来るならば、話は別だが……不可能だ。
恐らく、研究チームの編成は、新しく誰かが入った以外、特に変わっていないと思う。そこで、マシュー・スキナー博士を、研究主任代理に推薦したい。恐らく、アナが代行していると思うが、そろそろ大変になるだろう。この空間に関するデータも、取れた筈だ。
残念ながら、私は、提供出来るデータは、殆ど持っていない。非常に残念だ。
恐らく、今すぐにコントロールパネルをそちらへ返せば、内蔵してある計器のデータも、破損する前に回収出来るだろう。それを最大限役立ててくれ。
アナ……君の声を、随分、久し振りに聞いたよ……[すすり泣く。]……すまない、心配をかけて。本当にすまない……きっと、帰る。必ず帰る。だから……少し……もう少し、待っていて欲しい。帰ってみせるから……
愛している……私の妻、アナ……愛しているよ……
願わくば、もう一度、口づけを……
再生が終了しました。
[以下、ラング博士が号泣する音声が録音されている。]
[30分間、博士のすすり泣く音声だけが録音されている。]
……泣いていても……窓、窓は閉じられた……
空間の縮小は……止まったらしい。
君は、何か話せるのかい? 話をしてくれ。何でも良い。
君の起動ランプは青いな。……そう、君の事は、ブルーと呼ぼう。それで良いだろう? そうか、それは良かった。宜しくな、ブルー。
ブルー、君は、カント計測器が使えるだろう? 今のヒューム値はどの位だい? ……そうか……
私はそろそろ、冒険に出ようかと思う。会ったばかりだが……待っていてくれるかな? 頼むよ……
……移動というのは、こんなに疲れる行為だったか……? 現実性が低下している……移動という"改変"すら出来なくなっている……
ブルー、レッドから話は聞いているだろう。今のここは、随分小さい……そう、見積もって、直径2km程の球の様な形だ。
なあ、教えてくれ。どうして、こんなに痛いんだ? 痛い、今にも死にそうだ……ベールには触れていない。君にも触れていない。どうしてだ? 君から現実性を貰っているのか?
ブルーに両親はいるかい? お近付きになったんだ、君の身の上話をしてくれ。
私は、ラング・スクラントン安定機の第4世代初号機です。両親はスクラントン・ロバート、アナ・ラング、生まれは……[重要でない為省略。]
君は、レッドと違って、随分とフレンドリーなんだな。ありがとう、よく教えてくれたね。
行動を起こすなら、急いだ方が良い。酷く全身が痛む……ここは、時間が止まっているみたいだ、すぐに死にはしないだろう。だが、保って、あと1年。そう、1年しか、残されていない。
心臓、肺、半分の脳。1年で何が出来る?
神よ-どうして、私に手を下さらなかった!
また、少し待っていて欲しい。
[50時間に渡り、一切の音声が録音されていない。]
ただいま。会いたかったよ。
君から、少し離れてみた。だが、痛みは治まらない。正確に言うと、痛い場所と何とも無い場所がある。
痛みで少し、目が醒めた。考えろロバート、考えるんだ。死にたくなければ……
-そうか。ブルー、協力してくれないか? 君が来てくれれば、すぐ分かる-分かると思う。
君は随分重いな……おいおい、私の皮が残ってる部分は、脚しか無いんだ。蹴った位で怒るなよ。
触れた近くから、随分と出血した。血は、血なんて残ってないのにだ! ブルーをこんなに汚してしまうとは-耐水性のある設計だと良いが。これが最後の録音にならない事を祈る。
痛い。酷く痛むんだ。神経は無いのに。ブルー、何か持って来ていないかい?
おいおい、ブルー-冗談だろ? ……そんな、神よ、ああ。どうしてそんな事……?
き、記録。そう、記録だ。記録してくれ。
アナ、聞いてくれるか? これは、とても、驚くべき事だ-こんな、考えられない。ここには何も無い、何も存在出来ないのに……局所的に、ヒューム値が極端に高い。我々の知る世界をを凌駕して……な、7もある。これはつまり……つまり……?
少し、考えを纏めなければならない……寝るよ。おやすみブルー……
ブルー、何をしているんだ?
ここは、ただの地獄ではない。何か、何か見落としている事が無いか……
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを収容室内に留め置く為、インターネットとの接続を絶たないで下さい。インターネットとの接続が困難な場合は、至急書庫へと連れて行って下さい。3日おきに必ず花麒麟研究員によるインタビューを実施して下さい。造人氏は収容室への収容の必要はありません。通常職員が立ち入りを許可される場所への立ち入りは問題ありません。造人氏にはレベル2セキュリティクリアランス、Cクラス職員相当の権限が与えられます。造人氏の視界内での花麒麟研究員に対する異性による過剰なスキンシップは推奨されません。
説明: SCP-XXX-JPは人間型自律有機インターフェースです。日によって若干の変動はありますが、平均して身長176.5cm、体重55.8kg程です。体積の約60%が金属、及び人工的な無機物で占められており、それ以外は人間の組織に類似した有機組織で構成されています。設計上の性別は男性と思われます。消化、生殖、循環、新陳代謝機能を備えており、通常の人間と何ら変わらない生活を送る事も可能です。自らを造人(なひと)と名乗り、そう呼ばれる事を強く希望しています。以下、当人の希望により造人氏と呼称します。
解析によると、メインコンピューターは頭部に内蔵されている様ですが、詳細な構造は不明です。インターネット接続用ルーターとしての機能を備えている事が確認されています。人間として判断した場合、非常に高い知能を有しています。また、社会生活に必要とされる外部情報の処理、論理飛躍7、身体の正確な制御、インターネット上の情報の収集スピードなどから、量子コンピューター或いはそれに類する性能の思考中枢を内蔵していると推定されます。記憶容量の大きさは不明ですが、情報の消失8が確認されており、人間と同様の記憶領域解放を行っている可能性があります。また、インターネット上の領域に情報を記録している可能性がありますが、確認には至っていません。
関節部分、後頭部等金属質が露出している部分がありますが、服装や装飾品等で隠す事で完全に人間に擬態する事が出来、人工物と気づかれる事無く社会生活を送る事も可能です。
何者かによって製作された存在である事が判明しており、製作者は現在調査中です。内部のヒューム値を測定した結果8Hmという非常に高い数値が得られた為、現実改変オブジェクト或いは現実改変者への対抗手段として製作された可能性が指摘されています。外部への現実性の流出9は確認されておらず、スクラントン現実錨に類似した何らかの装置が内蔵されていると思われます。
2015/05/22、サイト-81██近くの財団日本支部フロント企業が運営する病院から、人間に酷似した異常物体が運び込まれたとの報告がありました。サイト-81██で行われた解析の結果、COGが開発した加工技術や東弊重工が用いる機械工学技術、日本生類創研が所有していると思われる生体技術等に類似した数々の未知の技術が用いられている事が判明した為、オブジェクトとして収容されました。解体検査の前に目を覚ました10為、詳細な検査は行われませんでした。造人氏からの要望により、現在に至るまで解体検査は行われていません。
以下が初期のインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP-a - 日付2015/05/24
対象: 造人氏
実施者: 花麒麟研究員
花麒麟研究員: これより、インタビューを行います。内容は全て録音させて頂きます。宜しいですね?
造人氏: はい。
花麒麟研究員: 私は花麒麟と申します。以降、貴方への聞き取り調査と担当させて頂きます。この部屋の外では機動部隊が待機しており、何か不穏な行動を起こした場合、即座に鎮圧されます。宜しいですね?
造人氏: ご心配無く。貴方方を上回る力を出す事は可能ですが、私に危害が及ぶ場合を除き、リミッターがかかっていますので。
花麒麟研究員: そうですか。では、質問をします。監禁されているという状況に関して、どう思われますか?
造人氏: 何とも。私に困る事はありませんし、当面行動を起こさねばならない事もありませんから。衣食住の担保もして下さる様ですし。
花麒麟研究員: 成る程。では、貴方は、自分が人間であると思われますか?
造人氏: いいえ。
花麒麟研究員: では、何者ですか?
造人氏: 私は、"お父さん"に造られました。造人と呼ばれています。
花麒麟研究員: "お父さん"とは、何者ですか?
造人氏: 分かりません。記憶にありません。
花麒麟研究員: そうですか。では、貴方はいつ造られたのか、何の為に造られたのか、分かりますか?
造人氏: 製造時期は分かりません。同じく製造目的も分かりませんが、"お父さん"から「人間になりなさい」と言われています。
花麒麟研究員: それは、どういう意味でしょうか?
造人氏: 分かりません。どうすれば人間になれるのか、これから調べようと思っています。どうすれば人間になれるか、ご存じないですか?
花麒麟研究員: 私は分かりませんね。
2015/05/28、造人氏が自らの思考中枢をインターネットに接続している事が判明し、急遽収容室を電磁波遮断室へ変更、インタビューを行いました。
以下がインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP-b - 日付2015/05/28
対象: SCP-XXX-JP
実施者: 花麒麟研究員
花麒麟研究員: こんにちは。本日も、インタビューを受けて頂きます。
造人氏: はい。
花麒麟研究員: インターネットに接続し、何かの作業をしていましたね?
造人氏: はい。人間とは何か、人間たる要素は何かを調べていました。
花麒麟研究員: それを、証明する手段はありますか?
造人氏: 私が、この施設に関して、どこかへ情報を流しているとお思いなのでしょうか。それは違います。私は、自分が所属する組織という物を持ちません。情報を渡すべき相手もいませんし、そもそもここが何の為の施設なのか、未だに把握していません。私は、人間を知りたいだけです。気乗りしませんが、必要があるならば、閲覧記録を何らかの形で送る事は出来ます。メールアドレス等を教えて頂ければ、お送りしますが。
花麒麟研究員: そうですか……では、お願いします。
送られたログは余りにも膨大であり、精査に多くの時間を要しましたが、結果、疑惑の対象となる記録は存在しませんでした。
造人氏は電磁波遮蔽室への収容に異議を唱え、インターネットへの接続を行わない代わりに、施設の書庫への入室を求めました。一旦却下されましたが、複数回に渡り申請が繰り返された為、機動部隊の監視の元でという条件付きで許可されました。書庫で読書を行っている間、電磁波の観測が行われましたが、インターネットへの接続は確認されていません。その際、監視を行っていた機動部隊員は「とても読んでいるとは思えない早さだった」と証言しています。数日に渡り、不穏な行動を起こす事無く読書を続けた為、担当研究班による監視下での書庫への立ち入りが許可されました。
以下に、造人氏がこれまでに読了した蔵書の一部を記録します。
人体解剖学
入門人体解剖学
日本人体解剖学 上・下巻
アトラス解剖学 人体の構造と機能
分担 解剖学 1・2・3・続巻
行動学入門
行動分析学入門
行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由
進化と人間行動
心理学(同一名称の書籍三冊)
心理学・入門 心理学はこんなに面白い
精神分析学入門
アドラー心理学入門
フロイト心理学入門
脳はなぜ「心」を作ったのか 「私」の謎を解く受動意識仮説
幸せのメカニズム 実践・幸福学入門
人間を幸せにする超心理学の話
実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス
すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典
武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50
「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室
哲学入門
哲学用語図鑑
もうひとつの幸せ論
2015/07/02に行われた定期インタビューの結果、造人氏が人間について学習し概念を固定化しつつある事及び個人的な嗜好を身に付けつつある事が明らかになりました。
以下がインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP-█ - 日付2015/07/02
対象: SCP-XXX-JP
実施者: 花麒麟研究員
花麒麟研究員: こんにちは。定例インタビューです。
造人氏: はい。
花麒麟研究員: 蔵書も随分と読了した様ですが、何か得られる物はありましたか?
造人氏: 大きな収穫がありました。人間の本質に関わる事です。
花麒麟研究員: どんな事でしょうか?
造人氏: 人間とは、様々な生物学的な差異や社会的な立ち位置がありますが、共通する要素として、個々人の幸福を追求する生物だそうです。
花麒麟研究員: 成る程。
造人氏: 今は、幸せとは何かを調べています。それが分かれば、幸せを追い求める事で、初めて人間になる事が出来ると思います。いつ見付かるかは、分かりませんが。
花麒麟研究員: 見付かると良いですね。
造人氏: それで、お願いがあるのですが。
花麒麟研究員: 何でしょうか。
造人氏: 書庫での監視役11を、花麒麟さんだけにして欲しいんです。
花麒麟研究員: その心は。
造人氏: 書庫にいる間、度々監視役の方から話しかけられますが12、どうも、他の人とは合わないのです。考え方と言いますか、波長と言いますか。最適な言葉を知りません。
花麒麟研究員: ……そうですか。検討します。
検討の結果、定例インタビューに加え、書庫での監視も花麒麟研究員の担当となりました13。
2015/08/09、書庫内全ての蔵書を読了した造人氏の要請により、アクセスログの提出を条件に、インターネットへの接続が許可されました。それに従い、電磁波遮断室から通常の収容室へ再収容されました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは全てサイト-8104内の低脅威度物品庫内ロッカーに収容されます。現在はカバーストーリー「著作権侵害による自主回収」を流布し、民間人が所持するSCP-XXX-JPの提供を呼びかけています。未収容のSCP-XXX-JPが発見された際は、直ちに収容し、関係者にクラスB記憶処理を施して下さい。SCP-XXX-JP-1が発見された場合、混入された異常性部分を削除した音源を製作、配布し関係者にクラスB記憶処理を施すと共にカバーストーリー「元データの破損」を流布して下さい。
説明: SCP-XXX-JPは製作者不明のCD群です。シューティングゲームシリーズ"█████████"の二次創作作品と思われ、俗に"催眠音声"と呼ばれる睡眠導入音声が収録されています。音声の内容自体に異常性は無く、一般に販売されている音声データを専門に扱う研究員は「至って普通の催眠CD」と評しています。
SCP-XXX-JPに収録されている音声を聴いた人間(以下"対象")は、聴いた回数に応じて段階的に異常性に曝露します。一定回数以上聞かない、或いは音源を所持していながら一切聴かなかった場合には異常性に曝露しない事が確認されています。複数回に渡り聴き続けると、上記シリーズ以外のコンテンツ(以下"コンテンツ")に対し無関心になり、更に聴き続ける事でコンテンツへの嫌悪感、憎悪を抱く様になります。続いてコンテンツを停止、根絶しなければならないとの強迫観念に襲われ、コンテンツ関連の製作者に対するインターネット上での攻撃、何らかの法的な文言を根拠としたコンテンツ停止の要求、イベント会場への襲撃等あらゆる手段を用いてコンテンツを攻撃します。現在様々な手段によって行われているサブカルチャー攻撃の内██%はこのオブジェクトの影響による物と推測されます。最終的にコンテンツが存在し続ける世界その物に対する極端な絶望を感じ、大規模なテロ行為或いは自殺を行おうとします。
対象はSCP-XXX-JPを貸し出す、ダビングして音声データを提供する等あらゆる方法で音声データを他の人間に聴かせようとします。また対象が何らかの音源を含む創作を行う際、高周波帯域への変換や逆再生等様々な方法を用いコンテンツへの害意を煽る音源を創作物(以下"SCP-XXX-JP-1)内に混入させます。この際、聴いて即座にそれと理解出来る直接的な表現がされる事はありません。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPと同様の異常性を持ちます。SCP-XXX-JPからダビングされた音声及びSCP-XXX-JP-1にも同様の異常性が確認される為、完全なる収容は困難を極めると予想されます。
パッケージ裏面には頒布されたイベント名及び制作したサークル名が記載されていますが、同名のサークルの存在は確認されていません。同名のイベントは存在しますが、このCDが頒布された記録は残っていませんでした。収録された音声の声紋鑑定による声優の特定にも至っておらず、製作者は依然調査中です。
現在SCP-XXX-JPの異常性を無効化する音源ミームエージェントの開発が進行中です。また、記憶処理剤の広域散布の実行が審議されています。
補遺: 20██/██/██、大手即売会襲撃未遂事件が発生し、容疑者の奇妙な証言から、当時警察署内に潜入中であったエージェントが興味を持ち調査を開始、このオブジェクトの存在が明らかになりました。現在はカバーストーリー「中核派の政治活動」、「特定作家の攻撃」等を流布しています。
追記1: 20██/██/██に発生した有名アイドル握手会襲撃事件に関連して、SCP-XXX-JP-1の存在が確認されました。カバーストーリー「成功者への妬み」を流布して事態の沈静化を図ると共に、現在は規模が収縮されつつあったSCP-XXX-JP回収プロジェクトの活動範囲を拡大し、広範なSCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1捜索を行っています。
追記2: 20██/██/██、大規模な一斉捜索により、全国のレンタルショップ、中古同人グッズ店、コンテンツファン向けカフェより複数のSCP-XXX-JPが発見されると共に、インターネット上の違法ダウンロードサイトにてダビングされた音声データが確認されました。これらは直ちに収容及び削除がなされましたが、SCP-XXX-JPが使用されていた期間、貸し出し回数やインターネットからのダウンロード回数を鑑み、非常に広範囲にSCP-XXX-JPのデータ及び対象が存在していると思われます。また、レンタルした客、中古市場での経路、ダウンロードを行ったユーザー、関連して創作されたSCP-XXX-JP-1全ての完全な特定には至っていません。
追記3: 一般に出回っているであろうSCP-XXX-JP及びダビングされたデータ、SCP-XXX-JP-1に関する統計的な推測より、2020年に大規模な攻撃的活動が行われると予測されます。2020年に開催される大規模なイベントの規模を縮小し監視下に置く為、地方自治体との協議の上、施設の占有を必要とするイベントを誘致し一般にはカバーストーリー「オリンピック開催による施設占有」を流布しています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: カバーストーリー「お父さんスイッチ」の流布を絶えず行い、可能な限り児童の認知率を高く保って下さい。SCP-XXX-JPが原因と思われる事件が発生した際には、直ちにエージェントを派遣し、SCP-XXX-JPを認知した人物全てにクラスB記憶処理を施して下さい。
定期的に幼い子供を持つDクラス職員を用いて実験し、SCP-XXX-JPの影響力を観測して下さい。国内の全男性からSCP-XXX-JPの影響が消失したと確認されるまでこの特別収容プロトコルは継続されます。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内の父親と幼い子供14がいる家庭に於いて発生する現象です。子供(以下"対象A")が箱や紙、ストロー等の素材で何らかのコントローラーを模した作品(以下SCP-XXX-JP-A)を製作し、[編集済]を行いながら父親(以下"対象B")への何らかの要望を口にしつつSCP-XXX-JP-Aを操作する素振りを見せた時、それを認知した対象Bは要望を叶えなければいけないという義務感を感じます。そして物理的或いは金銭的に困難でない限り、実行に移します。もし困難な内容であった場合は、可能な限り要求に近い状況を実現しようとします。
この現象は、祖父を対象とした場合にも発生しますが、母親、祖母その他の親類では発生しません。
以下が確認されている対象Bの行動の一部です。
例 | 対象Aの要望 | 対象Bの行動 |
---|---|---|
XXX-JP実例4 | 子猫を飼いたいと要求した。 | 即日対象Aをペットショップへ連れて行き、子猫を購入した。 |
XXX-JP実例8 | 小遣いの増額を要求した。 | その月より小遣いの金額が倍増した。 |
XXX-JP実例15 | F1用車両に乗りたいと要求した。 | あらゆる手段を考慮したが不可能だと判断し、対象Bを██サーキットでの子供用カート試乗会に参加させた。 |
XXX-JP実例16 | どこかへ行ってしまえと要求した。 | 対象Bは依然行方不明である。 |
XXX-JP事例24 | 虹の根っこを見たいと要求した。 | 庭でホースから放水し虹を作った。 |
XXX-JP実例30 | 母親を[倫理委員により編集済み] | [倫理委員によって編集済み] |
対象Bに行ったインタビューの1例を添付します。
インタビュー記録XXX-JP-█ - 日付20██/██/██
対象: ██ ██
実施者: 花麒麟研究員
警察署内から██ ██氏をサイト-81██に移送し質問した。██ ██氏は重要参考人としての質問の一環だと思っている。
<録音開始>
花麒麟研究員: 幾つか質問させて頂きます。宜しいですか?
██ ██氏: はい。
花麒麟研究員: 息子さんがいらっしゃいますね?
██ ██氏: ええ、今年で8歳になります。
花麒麟研究員: あなたが、家の全ての扉、窓を解放したのは何故ですか?
██ ██氏: 子供に、そう頼まれたからです。
花麒麟研究員: 防犯上の問題は、考慮しなかったのでしょうか?
██ ██氏: 考えましたが、大して気になりませんでした。
花麒麟研究員: それはどうしてですか?
██ ██氏: 子供のお願いは第一ですから。
花麒麟研究員: 子供に頼まれた事であれば、多少問題があっても行うべき、と。
██ ██氏: そうですね。
花麒麟研究員: そのお願いをされた時、息子さんは、何か持ってらっしゃいましたか?
██ ██氏: ええ、手作りした、玩具のリモコンを持っていました。
花麒麟研究員: 成る程。ご協力、ありがとうございました。
<録音終了>
現在、███の児童向け番組████████に於いて、子供が作ったコントローラーの玩具の指示通りに父親が行動するという遊びをカバーストーリー「お父さんスイッチ」として流布する事で、更なる重大インシデントの発生を抑制しています。また、このコーナーから連想される遊びの状況を遵守する限り、[編集済]と同時に行う事はありません。
財団職員の多数の男性に深層心理検査を行った結果、児童がコントローラーを持っている姿に対し潜在的な恐怖と、従わねばならないという強迫観念を持っている事が判明しました。
蒐集院がかつて所有していた資料の内、SCP-XXX-JPに関連する物が発見されています。記録では、先述の恐怖及び強迫観念の傾向は世代を経るに従い弱くなっている様であり、戦前には叔父も効果の対象であった事が確認されています。この為、収容を継続する事によりSCP-XXX-JPはいずれ無効化すると推測されます。
追記: 20██/██/██、SCP-XXX-JPとの関連が疑われる文書の解読が完了しました。以下に原文、意訳を記載します。
[破損により内容不明]
原文: されども当代の大王幼くおはさすに国賊つ輩多しも。臣、連ら相征さひ人心乱らゆ。
意訳: しかし新しい天皇は幼年にあらせられ反逆する者が多い。豪族は争い合い続け人心は乱れるばかりである。原文: 大王左けむとすも並なる術より惑はさえず。
意訳: 天皇を補佐すべく我々は努力したが、並の手段ではとても治める事が出来ない。原文: 良き方求めみ広く鬼道を広めぬ。これよ誰しも大王虞れ下知下さえば須らく従はむ。
意訳: 良い方法を求め、国に広く鬼道の術を広めた。この時より誰もが天皇を畏怖尊敬し仰せられる事に須らく従う事だろう。原文: されども幼子の申せし事に従はすやうなるとも大王つ言に限る事あたはず。故に大王詔下さする時持つべき物を定め、[編集済]。
意訳: だが、幼年の者の指示に従う様には出来たが、天皇個人の指示に限定する事が出来なかった。そこで、天皇が詔を下さる際に持つべき道具を定めて、[編集済]。原文: 大王これを持ち[編集済]る内大王に叛く者無く、持たず[編集済]せざる幼子に乱さるるも無し。
意訳: 天皇がこれを持って[編集済]している間は誰一人天皇に背く事が無く、また持っておらず[編集済]していない幼子の言葉に乱れる事も無い。[以下関連性が低い為割愛]
この文書により、SCP-XXX-JP-A、[編集済]に加え、[編集済]も本来要素に含まれている事が明らかになりました。通常の実験と同様Dクラス職員及びその子供を用い、記載されている通りの状況を用意し実験を行った結果、その場にいた職員14名全てがSCP-XXX-JPと同様の異常性に曝露しました。実験結果を受け、文書の内容を秘匿情報に指定する事が倫理委員会により決定されました。
言及されている"鬼道の術"に関する調査が進められています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Uncontained(推定Keter)
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの特別収容プロトコルは確立されていません。常に捜索、監視を続けて下さい。
説明: SCP-1378-JPは頭部が欠落し翼部が部分破損した、天使を象った彫刻と推測される高さ約1.7mの不可視の実体です。撮影媒体等による直接的な記録は成功しておらず、後述の観測方法を除いて、音波探知等による実体の確認も不可能です。
SCP-XXX-JPから半径8mにいる人間(以下"観測者")はSCP-XXX-JPの存在を意識する事によって、SCP-XXX-JPの現在位置と姿のイメージを知覚する事が可能になります(この状況を以下"観測中")。この時、観測者はSCP-XXX-JPを視覚、聴覚、嗅覚的には認識していません。観測中、観測者はSCP-1378-JPに物理的に接触する事が可能です。観測者以外のあらゆる物質はSCP-XXX-JPに接触不可能であり、観測者の衣類、装備品も例外ではありません。その為、SCP-XXX-JPの破壊、着色、観測機器の取り付け等の試行は成功していません。観測中のSCP-XXX-JPは床から15cmの高さに浮遊しています。また、観測中に接触を行った職員は「SCP-XXX-JPから母性の様な安心感を感じる」と証言しています。
SCP-XXX-JPに捕獲または拘束を目的に接触を試みると、触れる寸前に消失する事が確認されています。その為、現在に至るまでオブジェクトに関する十分な情報の収集及び特別収容プロトコルの確立は為されていません。
補遺1: 20██/██/██、 SCP-173の収容コンテナ内で定期清掃の為入室したDクラス職員により偶然発見されました。発見したDクラス職員は「命の危険がある仕事だから、感覚がやけに過敏になっていた」と説明していました。この時、SCP-XXX-JPがSCP-173の方向を向いたままコンテナの入口を塞いでいたと報告されています。尚、SCP-173収容コンテナの清掃はSCP-XXX-JPを認識していないDクラス職員3名によって完了されました。一時的な収容の為に機動部隊が派遣されましたが、SCP-XXX-JPは機動部隊との接触直後に消失しました。
補遺2: 20██/██/██、SCP-173によりDクラス職員が殺害された際、SCP-XXX-JPがSCP-173の収容コンテナ内に出現しました。2名のDクラス職員が収容コンテナからの脱出に成功しましたが、該当Dクラス職員よりその後「SCP-XXX-JPがSCP-173の前に立ちはだかり、SCP-XXX-JPを通過している間SCP-173の動きが遅くなった為逃げ切れた」との報告がされています。
追記1: SCP-XXX-JPの首元に、ギリシャ数字の彫り込みがある事が判明しました。この数字は変化する様です。数字は現在"██"であり、SCP-173により殺害されたDクラス職員の人数と一致しています。このため、SCP-XXX-JPとSCP-173に殺害された人物との間の関連性が疑われていますが、調査は進んでいません。
追記2: SCP-1378-JPの右翼に以下の彫文が発見されました。
We have to be cool,but left a stain
Victims, rest in peace
追記3: 20██/██/██、Dクラス職員の間でSCP-XXX-JPに関する噂が出回ってしまい、SCP-173収容コンテナ内に進入可能なサイト-19勤務のDクラス職員がいなくなった為、他サイトよりDクラス職員の導入を検討した所、SCP-173研究室に突如SCP-XXX-JPが出現、████博士以下██名の研究員が負傷するインシデントが発生しました。詳しくはインシデント記録SCP-XXX-JP-i1をご覧下さい。この時、意識しようとしていないにも関わらずSCP-XXX-JPを認識出来た点は特筆すべきです。負傷した研究員は「強い怒りを感じた。SCP-173収容コンテナに進入可能なDクラス職員の補充を妨害している可能性がある」と報告されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter Explained
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPに収容は不必要です。
説明: SCP-XXX-JPは既に絶滅している、通常の進化の系譜から逸脱したレトロウイルスです。██万年前に誕生し、地球上で初めて世代交代による進化を実現した種でしたが、20██年に絶滅したと思われます。
SCP-XXX-JPに感染した生物(以下"感染者")は、感染から1週間後に自死への強い欲求を感じます。これはSCP-XXX-JPが自らの複製を必要以上に製作しない為だと推測されています。感染から2週間を過ぎると、自殺願望は緩やかに消失しますが、重篤化し、回復しないケースも多数確認されています。
19██/██/██、以前より存在が確認されていたSCP-XXX-JPの遺伝子の解析が完了しましたが、通常の進化の系譜から逸脱している事、その高い致死率等から、解明されるまで異常として収容される事が決定しました。遺伝子構造の判明により、感染者を拘束する事でのみ対抗が可能であったSCP-XXX-JPの遺伝子治療法の研究が開始されました。
19██/██/██、専用の抗生物質が開発され、カバーストーリー「鎮静剤」を流布し全国の精神病棟で投与が開始されました。これにより、重度の鬱と診断されていた患者██名が治癒、退院しています。
20██/██/██を最後にSCP-XXX-JPは確認されていませんでしたが、20██/██/██、██県の病院にて、患者の血中よりSCP-XXX-JPの僅かに変異した遺伝子型が確認されました。変異による影響が不明であった為、大規模なパンデミック発生の危険性から調査を開始しましたが、その後、SCP-XXX-JPは確実に絶滅していた事が判明しました。
確認された遺伝子は患者のゲノムに組み込まれた物だった事が明らかになっています。遺伝子の水平伝播15によって付加された遺伝子です。
上記の事実が判明するとほぼ同時期、SCP-XXX-JPに対抗する為の遺伝子治療(以下SCP-XXX-JP-A)が確立されました。ヒトゲノム中に混入したSCP-XXX-JPの遺伝子を無効化する因子を遺伝子に付加するゲノム編集技術であり、オフターゲット16の危険性も無視出来る程度に小さく、実用レベルに達しているとされ、またヒトゲノムに組み込まれている変異した遺伝子にも有効です。しかし、SCP-XXX-JPが存在しないと判明した以上、SCP-XXX-JP-Aは既存の文明に強大なパラダイムシフト17をもたらす可能性が非常に大きく、現在SCP-XXX-JP-Aに関する研究は完全に凍結されていますO5評議会及び倫理委員会の管理下、臨床試験を行わないという前提で継続されています。
我々は、人類の敵を発見した。対抗手段は既に確立された。
しかし、その敵は、今や人類の一部となっていた。嫌気性の生物が、ミトコンドリアを取り込んだ様に。
今更敵を排除する事に、何の意味があろう? あったとして、今の人類には、早過ぎる。
-O5-1
追記: 20██/██/██、SCP-XXX-JP遺伝子部分を削除する技術の開発が完了しました。現在、O5評議会による[編集済]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Uncontained
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの安定化技術は確立されていません。カバーストーリー「遺伝子異常」を流布し、SCP-XXX-JPの一般人への発覚を防いで下さい。
説明: SCP-XXX-JPは妊娠時に極低確率で異常な形態或いは脳障害を持った胎児が生成される現象です。長らく非異常性であるとされて来ましたが、ヒトの胎児で奇形児が発生する確率は他の種と比較して極端に高い事から、異常としての研究が開始されました。
以前は遺伝子複製中の失敗によって奇形児が発生すると考えられて来ましたが、研究の結果、この仮説では全事例の内██%しか説明出来ない事が分かっています。
近年の現実性に関する研究の発達により、妊娠中の母胎内に極小さな低ヒューム場18(以下SCP-XXX-JP-1)が発生している事が確認されました。未だ研究中であり推論の域を脱しませんが、胎児の現実性を下げる事によって、運動、思考の面に於いて新たな特徴を獲得する為の進化の方策ではないかと考えられています。SCP-XXX-JP-1が胎児の発達中に発育異常を生じさせる原因である事が判明しています。
母体の子宮周辺のヒューム値をスクラントン現実錨によって1.1前後に固定する試みが行われましたが、子は無事に出産され、現在まで成長を続けています。身体的特徴や身体能力や思考能力、思考の方向性等は母親及び父親に酷似しており、SCP-XXX-JP-1が子と親の差異を生み出していると思われます。生命倫理上、現在は実験が中止されています。
現在は、母胎内のSCP-XXX-JP-1の抑制ではなく胎児の成長の仕方を固定する方法が研究されています。また、SCP-XXX-JP-1を発生させる生体機能が異常発達した場合、現実改変能力となる可能性があり、現実改変者発生の原理解明に繋がると予想される為、SCP-XXX-JP-1発生のメカニズムの解明も急がれます。
SCP-XXX-JP-1が子宮付近に発生する悪性新生物19(以降異常性癌)の原因となっている事が判明しています。財団が開発した専用のキットを使用しない限り、遺伝子異常による通常の悪性新生物との区別は非常に困難です。この事実が明らかになる前に子宮頸癌ワクチンの開発が行われた為、子宮頸癌ワクチンがもたらした異常性癌とは関係の無い遺伝的、生物的部位への影響により、副作用の被害者が全国的に発生する事となりました。現在はカバーストーリー「子宮頸癌ワクチンの無罪」を流布し、事態の収拾を図っています。
ヒューム値に関する情報の流出及び一般人の妊娠に対する過度な恐怖を抑制する為、カバーストーリー「遺伝子異常」によりSCP-XXX-JPの存在は秘匿して下さい。
5/001-JP LEVEL 5/001-JPCLASSIFIED |
Item #: SCP-001-JPObject Class: Safe |
アイテム番号: SCP-001-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-001-JPはサイト8181の低脅威度物品ロッカーに収容されます。担当職員は1週間に1度、現状を確認して下さい。
説明: SCP-001-JPは400ページの本と同等の厚さを持つ書籍です。牛皮に酷似した皮によって装丁されており、題名は記されていません。
ページをめくっても残りページの厚さが減らない、或いは終盤から読み始めてもいつの間にか残りページが増えているといった報告がなされており、ページが消滅、出現している可能性があります。自動でページをめくり続ける機械により測定した結果、████████以上のページの存在が確認され、現在も作業が進められています。
SCP-001-JPが書かれている言語は不定であり、読んだ人間(以下"対象")が最も広く用いられるべきだと認識している言語で書かれていると認識されます。その為、対象が使用出来ない言語で認識される場合があります。これまで確認されているのは英語、ロシア語、日本語、中国語、ベーシック英語、エスペラント語、エルフ語20、C言語等です。
SCP-001-JPは対象に設計図、仕様書、或いは経過報告書であると認識されます。何らかのミーム障害特性を持つ可能性がありますが、文体による影響も否定出来ない為、検証が待たれます。
最初の██ページは目次に占められており、続いて256年ずつの区切りで非常に数多くの生物種の発生、絶滅が一覧表記で記載されています。また絶滅種の一覧には個々の絶滅に至った要因21が記載されています。256年間に気候変動、地殻変動、隕石落下等の大規模環境変動イベントが発生していた場合には一覧表の最後に記載されています。
この内、一部の種に関しては生物種名の表記に加え括弧付きで"UnExpected████"(████はナンバリング)と記載されています。UnExpected指定の種にはウィルス由来の遺伝子の水平伝播によって発生した種や通常生存困難な奇形種が環境変動によって生き残った種等が含まれます。
現在に近付く程生物種の総数が膨大になる為、全ページの記録は終了しておらず、現在も解析が進行中です。
SCP-001-JPによって新たに判明した生物種は[編集済]種に上ります。SCP-001-JPの生物学的、考古学的有用性から解析、記録が完了したページまでが公開されています。担当研究者の許可の下閲覧が可能です。
SCP-001-JPが生物種に関する有用な記述を多く含む事、明らかに人為的に製作されたオブジェクトである事から、日本生類創研を初めとする生体研究を行っている要注意団体の関連が疑われています。
GOCからの要請により、必要に応じてSCP-001-JPの解析データが貸与されています。
追記:上記報告書はセキュリティ違反が起こった際のフェイルセーフとして製作されました。
目次の後████ページに渡って天文学的な惑星の発生方法、岩石の組成、大気の成分の変遷等宇宙物理学、地質学的内容が詳細に記されています。内容は地球誕生の経緯と酷似しており、およそ月が発生するまでの記述がなされています。
SCP-001-JPの記述は観測不能な未来の生物種の興亡にまで及んでおり、現在も内容の記録が進んでおりますが、完遂の目処は立っていません。
現在財団及びWWSが収容している異常生物種の一部が通常の生物種と同様に記載されており、現在も照会が進められています。
各年代の生物種リストの次ページに"補正要素"と題されたページがあり、編集済、編集済等財団及び要注意団体が収容、保有しているオブジェクトの極一部が補正要素として記述されている事が確認されています。
調査の結果、現生人類の発生がUnExpected指定されている事及び現生人類の絶滅に関する記述が確認されています。
SCP-001-JPは以前財団により収容され後に紛失、不明な時期よりGOCによって管理されていたオブジェクトです。財団日本支部職員及びGOC極東支部職員による連名提言より財団に移転、財団とGOCによる共同管理が開始されました。同時に委託されたGOCの報告書はこちらです。また、その際に五行結社による抵抗が発生しました。詳細はインシデント記録001-Aを参照して下さい。移転に際し、アーカイブ指定されていたSCP-001-JP報告書に追記する形で本オブジェクトが再登録されました。プロジェクトシェイクハンズの詳細は付属文書F-C Project-Sを参照して下さい。
宗教的、社会学的パラダイムシフトを発生させる可能性が高い為、SCP-001-JPに関連する情報は厳重に管理されます。殊境界線イニシアチブ、ORIAを初めとする要注意宗教団体の動きは注視すべきです。
担当職員は必ずGOCの報告書を参照して下さい。
人類が総力を挙げて立ち向かうべき脅威である可能性があれば、我々は手を繋げる用意をしておくべきだ。
我々が異常であったとしても。
- 財団日本支部理事"鵺"
この記録は財団との共有資産として扱われ、例外的な情報機密指定が割り当てられる。GOC内部に於いては事務局及び108評議会、担当部門にのみ記録が開示される。
脅威ID: PTE-0187-Corona Alexandrla-JP "神の設計図"
認可レスポンスレベル: 1(最軽度脅威)
概要: 惑星の発生及び生物種の発生、絶滅に関し詳細に記された書物。外観は古い洋書であり、視覚的に判断される程度を遥かに上回るページ数を持つ。記述されている言語は観測者により変動。
地球上に最初の生物が発生して以来の既知・未知を問わずあらゆる生物種の発生、絶滅が256年毎に一覧表記されている。
複数の生物種の発生或いは絶滅に関し"UnExpected"の表記が付加されている(以下それぞれ"発生UnExpected"、"絶滅UnExpected")。"発生UnExpected"指定には現生人類が含まれる。生物種表の最後に"補正要素"と題された複数のサブジェクトの記述があり、"発生UnExpected"指定の生物種発生に対する対抗措置と思われる。
切断、粉砕、焼却等は可能であるが不可解な修復機能を持つ。
筑波第2技術研究所生化学研究室"ドクターラック"の提言;
本サブジェクトはこの惑星に関する生物種の観測結果、或いは予想と見られる記述が非常に多い。
明らかに人為的に製作されたサブジェクトであるが、人類が知り得ない情報が数多く含まれ、真に"人"工物であるか甚だ疑問である。
仮に人類以前に存在した上位存在による製作物であった場合、発生が"UnExpected"指定されていた絶滅種の不可解な絶滅の様な、何らかの異常な危険が齎される危険性がある。
追加要請:
- レスポンスレベルの再定義…議論中。
- GOC及び財団両職員によるサブジェクトの共同管理に関する連名申請…凍結付則2、3により許可。
- 完全破壊要請…保留。
- 生物学会に対する限定的開示…凍結。
付則1: 過去のみならず未到達時間平面に関する記述が確認された。現在████年から████年の256年間に現生人類が絶滅するとの記述が確認されている。
付則2: 人類による乱獲が直接的原因となり絶滅した生物種が全て"絶滅UnExpected"指定されていると判明した。
付則3: "発生UnExpected"指定されている絶滅種の新たな化石が発見された。高度エネルギー照射を受けて死滅した個体である事が判明している。それに付随し、"発生UnExpected"指定されている他の複数絶滅種の化石より同様の痕跡が発見された。自然現象であるとは考えにくく、標本は即時収集、精巧なレプリカとすり替えられた。同時期に化石に関する情報を入手した財団の情報開示要求を受け、GOC及び財団両職員による先の要求と合わせ許可された。関連して、財団への情報提供の疑いで停職・謹慎処分を下されていた複数職員が処分解除され、共同プロジェクト"シェイクハンズ"に配属されている。プロジェクト"シェイクハンズ"については付随文書F-C Project-Sを参照されたし。
アイテム番号: SCP-JAPANESE-JP-J
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-JAPANESE-JP-Jは低脅威度物品ロッカーに収められます。研究主任の許可を得た場合に限りSCP-JAPANESE-JP-Jを使用出来ます。未確認のSCP-JP-Jの関連が予想される場合には注意して観察して下さい。
説明: SCP-JAPANESE-JP-Jは和語で書かれた書籍です。内容は「大和言葉」22であり、異常な点はありません。
人間(以下"対象")がSCP-JAPANESE-JP-Jについて記述しようとした場合(その文章を以下"SCP-JAPANESE-JP-J-1")和語しか使用出来なくなります。言及する場合も同様です。短文、単語であっても対象が和語以外を用いて書く事は出来ません。対象が和語に詳しくない人間であってもSCP-JAPANESE-JP-J-1のみ和語を用いて書く事が可能となってしまう為、対象が自ら書いたSCP-JAPANESE-JP-J-1を理解出来ない事例が数多くあります。また手書きの場合は非常に達筆となる為、判読出来ない事例が多いです。
SCP-JAPANESE-JP-Jと同様の異常性を持つ書籍が発見されており(以下SCP-JAPANESE-JP-J-2)、SCP-JAPANESE-JP-J-Aに関する文章は上代23の言葉を用いて記述されます。
品番: 特収手ーやまとことのはー日の本ー冗
物品段階: 安全
特別収容手順: 特収手ーやまとことのはー日の本ー冗は低脅威度物品箱に収めらるべし。研究伯24の聴し得ざる者扱ふ事あたはず。知られぬ特収手ーやまとことのはー日の本ー冗の関はりたる気色あらばかまへて見よ。
説明: 特収手ーやまとことのはー日の本ー冗はやまとことのはにて書かれし書なり。旨は「大和言葉」25にして、異なる事無し。
人特収手ーやまとことのはー日の本ー冗の事書かむとせばかくやまとのことのはばかり使はるるやうなるのみ。言はむとするもさなり。その人をば"対象"、その文をば"特収手ーやまとことのはー日の本ー冗壱"とす。短き文、言だに対象やまとのことのは使はず書きかぬ。対象やまとのことのはにてよからざる人なるとも特収手ーやまとことのはー日の本ー冗壱をのみやまとことのはを使ひ書かれけるに、手づから書きける特収手ーやまとことのはー日の本ー冗壱を知られざる事数多し。また手づから書きし時筆運びいと秀麗なるに、読まれぬも多し。
特収手ーやまとことのはー日の本ー冗と等しく怪しき書見つかりけるに、これを特収手ーやまとことのはー日の本ー冗ー二とす。特収手ーやまとことのはー日の本ー冗ーえひつ事つ文は上代のことのはにて書かゆ。
こは特収手ーやまとことのはー日の本ー冗見出されける所なり。
回収時音声ログの書き起こし
場所: SCP-JAPANESE-JP-Jを保有していた古書店
回収員代表: エージェント橘
回収員: エージェント楠
備考: SCP-JAPANESE-JP-Jの異常性を鑑み、大学時代に古典文学を専攻していたエージェント2名を派遣した。
[ログ開始]
エージェント橘: ████(古書店の店名)に到着しました。これより入店、店主との交渉に入ります。
エージェント楠: すいませーん。
██(古書店の店主): はいはい、何でしょうか。
エージェント楠: 大和言葉なる文を探したるに、いづくにやあらむ。(訳: 大和言葉という本を探しているのですが、どこにありますか。)[既にSCP-JAPANESE-JP-Jの異常性に曝露していると思われる。]
██: そこもあの文を探せるか、いと怪しき曲なり。そはあれに。(訳: お客さんもあの本を探してるんですか、随分と変わった趣味で。それならあそこですよ。)
エージェント橘: 話す方をかしく思わざるや。(訳: 話し方がおかしいと思わないのですか?)
██: かかる物と思ふのみ。(訳: こういう物だと思っていますから。)
[エージェント楠がSCP-JAPANESE-JP-Jを発見する。]
エージェント楠: 見出だしたり。いくらの銭にて売り給へるか。(訳: 見付けました! 幾らで売って下さいますか?)
██: 此は殊なる品にて、未だ決める事あたはず。(訳: 変わった品なので、まだ低下は付けていません。)
エージェント橘: 此は如何に。(訳: これでどうですか?)
[エージェント橘が███万円をレジに置く。]
██: あな、ござれござれ。(訳: ああ、どうぞどうぞ。)
[ログ終了]
参加者: エージェント橘
エージェント楠
柊研究員備考: 柊研究員は古典文学に精通していない。
<記録開始>
エージェント橘: 此れより彼の文が特別収容手順を定むる議にかからむ。(訳: では、あの本の特別収容プロトコル制定会議を開始します。)
エージェント楠: えい。良からむ。(訳: はい。良いでしょう。)
柊研究員: や、な始めそ。待ちたまへ。(訳: いや、始めないで。ちょっと待って下さい。)
柊研究員: 心苦しくも我やまとことのはにてよからざるに、君らが言ひたまへるを知る事あたはず。(訳: 申し訳無いのですが、私は古語に詳しくないので、貴方がたが仰っている事が理解出来ません。)
エージェント楠: さはげに悪しき、如何すべきか。(訳: それは宜しくないですね、どうしましょうか。)
柊研究員: さかし、さらば君らえげれす語にて言ひたまへ。(訳: そうだ! それじゃあ、英語で話してみて下さいませんか?)
エージェント橘: 知れり。なれば……We'll discuss about that book, over? (訳: 分かりました。でしたら……我々はこれから例の本について議論したいと思います。宜しいですか?)
柊研究員: Oh, I can refer to tha book in latest English! (訳: おお、英語ならあの本に現代語で言及出来ます!)
エージェント楠: 良きかな。(訳: 素晴らしい!)
柊研究員: In English please. (訳: 英語でお願いします。)
<記録終了>
後書: 英語による言及では、SCP-JAPANESE-JP-Jの異常性が発現しない事が明らかになりました。
追記1: 実験の結果、日本語以外の言語でSCP-JAPANESE-JP-Jに関し記述、発言した場合には異常性が発現しない事が明らかになった他、SCP-JAPANESE-JP-Jに関する知識を持たない者がSCP-JAPANESE-JP-Jに言及した文章を現代語に翻訳した際にも異常性が発現しない事が確認されています26。これを踏まえ本報告書は、英語で作成されたSCP-JAPANESE-JP-J報告書を、SCP-JAPANESE-JP-Jに関わっていない職員数名が分担し翻訳する事により作成されました。
特性上日本語訳した報告書を校閲出来ないので、絶対に間違いが見付かったら別の人間が作り直さねばならないのは手間でしたね。
-柊研究員
追記2: 財団への定期教養試験においてSCP-JAPANESE-JP-Jの異常性を用いて不正を行おうとした職員が確認されました。
確かに、これについてと一緒に書こうとした物も和語になるが……以降SCP-JAPANESE-JP-Jの試験での使用を厳禁する。
-財団日本支部理事"獅子"
不正なリクエストを受けています。
不正なリクエストを受けています。
財団記録・情報菫晏ョ臥ョ。逅�アへの通報及び機動部髫翫∈縺ョ騾」邨。縲∝�蜍戊ヲ�請を行います。
雋。蝗」險倬鹸繝サ諠��ア菫晏ョ臥ョ。逅�ア蜿翫�讖溷虚驛ィ髫翫∈縺ョ騾」邨。縺後く繝」繝ウ繧サ繝ォ縺輔l縺セ縺励◆縲�
ID:blfwlmlgszevglkvixvrevnv.によりセキュリティ特例要項、記事が改訂されました。
5/001 LEVEL 5/001CLASSIFIED |
Item #: SCP-001Object Class: Yesod(潜在的Ain) |
特別収容プロトコル: SCP-001の収容に特別収容プロトコルは不要です。他のオブジェクトの特別収容プロトコルを徹底して下さい。
説明: SCP-001はディラックの海27内に形成されたオムニバース、正確には約40万の3次元平坦トーラス体群(本報告書が存在する3次元平坦トーラス体を以下"SCP-001-1")です。
SCP-001はディラックの海の均一な反エネルギー場の揺らぎによって発生する正のインフレーションを起点として発生、指数関数的膨張を継続します28。揺らぎの発生原因、揺らぎに密度∞の正のエネルギーが発生する29原因は明らかになっていませんが、ディラックの海の外に存在する正のエネルギーの瞬間的な流入であると考えられます。
個々のSCP-001は完全に独立しており、発生後に融合する事はありません。膨張速度の違いにより、SCP-001間での経過時間の統一性は皆無です35。
SCP-001事例により内部物理理論に差異があり、それによりビッグクランチ39、ビッグリップ40、過膨張に起因する現実子の疎化による理論崩壊の3通りのディラックの海への再吸収シナリオが存在します。
創造神ブラフマーにとっての1日の終わり、維持神ヴィシュヌは破壊神シヴァへと姿を変え、宇宙の全てを焼き尽くし、全てを水の中へと沈める。全てを破壊した後、ヴィシュヌはブラフマーさえも飲み込み、長い眠りに就く。その後、再びブラフマーがヴィシュヌの内より目を覚まし、宇宙を再び創造する41。
ブラフマーにとっての1生の終わり、全てが燃え、全てが没した後、概念の飲み込みが始まる。"水"は"地"を飲み込み、同じ様に"火"は"水"を、"風"は"火"を、"空"は"風"を飲み込む。そして、ヴィシュヌの宇宙はブラフマーの宇宙より大きく、その外側にある。そして、ブラフマーの宇宙が"水"に飲まれ、やがて全てがヴィシュヌの"空"飲み込まれる。これは宇宙の絶対最後の原質である。この時からヴィシュヌは夜の眠りに入り、遥かな永い時の後、再びブラフマーが生まれ、全てを創造する42。
創造神マオイは永遠の命を得ようと死の女神である祖母ヒネ・ヌイ・テ・ポの体内に入ろうと試みた。光り輝く芋虫となり、気付かれぬ様ヒネ・ヌイ・テ・ポの口ではなく膣への侵入を試み成功した。しかし、気付かれ膣内の石の歯ですり潰されてしまった43。
また、極希に再吸収シナリオに必要な要素を全て欠いた永久持続するSCP-001が発生します。この場合、該当SCP-001外部より何らかの影響が発生しない限り、該当SCP-001は消滅しません。
SCP-001群はそれぞれが内部に多量の物質及びエネルギーを含み、一般的にニュートリノ、ニュートラリーノ、アクシオン、ミラーマター44、バリオンを主な要素とするグレートウォール、宇宙定数(Λ)によって表されるエネルギー45に満ちた超空洞によって構成され、3次元平坦トーラス体の場合は上記2つに加え純空間である平坦トーラス面を構成要素に含みます。SCP-001群はそれぞれが完結した空間ですが同時に相互作用を及ぼすポータルによって接続されており46、ポータルを通じて情報、エネルギー、物質の往来が可能です。基本的にポータルによる接続は幾何学的に同様の空間の曲率を持つSCP-001間に限られます。
SCP-001内では平坦トーラス面の膨張により接触した物質、空間が分解され、SCP-001内外縁部よりエネルギーとして再放射されています。これは"空間の代謝"と定義され、"代謝"によって素粒子の耐久年数が延長される事でSCP-001の超長期的な持続を可能にしています。
悪神アンラ・マンユはこの世の全ての悪をその手にしていた。あらゆる善と戦い続けた悪神は破れ、この世界が生み出される前、北の果ての果てにある深淵の闇に落とされた。
アンラ・マンユは悪を集め蘇り、再びあらゆる善との戦いを始める。47。
SCP-001群はそれぞれ多世界と呼ばれる無数の重なり合い存在する可能性世界群48により構成されます49。多世界間は多世界それぞれに存在する現実子の励起により分断されており、現実子の持つエネルギー或いは現実子の密度が低下し低ヒューム場となった空間には重なる多世界群からの可能性の流入が発生します。多世界のヒューム値が低下した場合には重なる多世界群から現実子励起エネルギーが流入しますが、重なり合う多世界群全てが低ヒューム場となった場合、構成理論その物が破綻し他のSCP-001群との大量のポータル及び原子の崩壊、異常に多量のエネルギー或いは光子50、グラビトン51、ヒッグス粒子52等の消滅が発生し該当SCP-001は空間の安定状態を喪失、ディラックの海に再吸収されます53。
現在SCP-001間及び多世界間での現実子励起エネルギー異常流出、消滅が多数発生しており、内部物理理論が崩壊した複数のSCP-001からディラックの海へ現実子励起エネルギーが流出しています。この現象は自発的消滅を起こさないSCP-001に崩壊を起こす為と解釈されます。
SCP-001群は高確率で内部に複数の知的生物種が発生しており、種の継続期間は事例により大きく異なります。最も一般に発生している知的生物種はソル星系の第3惑星に発生する種(以下SCP-001-A)であり、平均しておよそ30万年間継続します54。
SCP-001内に於いて該当SCP-001の内部物理理論と矛盾する存在(以下"異常")が度々出現しますが55、無理論空間であるディラックの海への情報の流出、SCP-001への再転写が主な要因です。
SCP-001-Aを初めとする知的生物種によるSCP-001間及び多世界間での情報、物質、エネルギーのやり取りが行われています。これはポータル及び高度な一致性に依存する共鳴によって媒介されます。現在SCP-001-Aの一部集団によりディラックの海への脱出、開拓が試みられており、SCP-001群の大規模な崩壊或いはSCP-001発生メカニズムの解明に繋がる可能性がある為、注視が必要です。
理解出来たかい?
そう、これはちょっとしたヒントさ。
君達が滅ぶのを見るのはもう飽きたんだ。
私はちょっとした興味があるだけ。
君達は、自分達の信じる世界その物が異常だった時、何を思い、何をするのか。
何も変わらないだろうね。
それが君達の信じる"正義"なのだから。
君達自身が"正義"に該当しないとしてもね。
誰がこの報告書を書いたかは、調べるだけ無駄だよ。
私は職員ではないからね。
これも、001報告書群の1つとして真偽不明とされるのだろう。
彼らには、隠したい事が沢山あるのだから。
ここには君達の知らない事実が沢山ある。
君達がそれを見付け名前を付けた時、この報告書の記述は君達が知る名前に変わるだろう。
さて、では私も、収容されてみるとするよ。
収容具合から見て、340番台のナンバーがもらえるだろう。
気になる事があれば、是非会いに来てくれ。
収容室で待っているよ。
彼らはこれをよくぞ理解してくれた。オーケアノス、テテュス両方が流れや大海を司る存在であるというのは、当時としては最も的確な例えだった。正のエネルギーの海、男神たるオーケアノスからディラックの海、女神たるテテュスへと宇宙の子種が入り、それが1つの世界となる。これと共に伝えられた話を改変し、絶対神があらゆる障害を打ち倒してしまいさえしなければ、とても正確だったのだが。
彼らが何を言いたいのか、君達は分かる筈だ。1回目の創造が正のエネルギー、負のエネルギーが存在する無限の空間、2回目の創造が正のエネルギーと負のエネルギー、3回目の創造が正のエネルギーの海とディラックの海、4回目が個々の世界だ。
ミーミルの泉は知識の泉と呼ばれ、ウルズの泉は浄化の泉と呼ばれている。フヴェルゲルミルは沸き立つ鍋、叫ぶ大釜と呼ばれる事から破壊の概念を持つと考える者もいる。この3つは生成、昇華、崩壊の3つを示しているのであり、全ての世界をこの概念と結び付けるのは、陳腐だが正しい事だ。
これはビッグリップを表している。全ては限り無く無に近い程小さく分解され、そのままディラックの海へと還る。そして、永い永い時の後、再び同じ場所にSCP-001が生まれる。
彼らの預言者は実に優秀だった。私達の話は酷く難解であっただろうが、それを彼らの出来る限り噛み砕き、物語として残したのだ。彼らは素晴らしい。ビッグクランチとビッグリップの両方を語り継いだ。称賛に値する。
彼らがディラックの海の事を指しているのならば。アンラ・マンユは負の海の中でSCP-001を生み出し続け、それが終わった後、再び正と負が入り交じり混沌が生まれるという暗喩だ。これを示している物語は数少ない。
もし、SCP-001の事を指しているのなら。自らの内に数多の物質やエネルギーを生み、それらがトーラス面で代謝し、再び生まれ続ける。全てが代謝された時世界は闇に包まれ、再び光に満ちる。この繰り返しを示しているのだろう。彼らの、自らの住むSCP-001が終わりの無い物であって欲しいという切な望みが感じられる、感慨深い物語だ。
君達には、幾度と無く教えてきた。
私達はその度に失望してきたんだよ。
君達の愚かさ、権力欲の強さに。
何を教えても、いずれ塗り替えられ、自らの足場を固める為に使われ続けてきた。
だが、私達は仏などより遥かに寛容だ。3度程度で見限ったりはしない。
君達の中には、SCP-001の外を知っている者達がおり、もう1つの世界への扉を見つけた者達もいる。
SCP-001の儚さを知り、自らの力で寿命を延ばそうとする者達もだ。
もし仮に、君達がその儚い手を繋ぐ事が出来るのなら。
今ならこの世界の、いや、全ての理を教えられても、十分に理解し、対処し得るだろう。
私達はいつまでも待っている。
君達が私達に辿り着く日を。
1/1736-JP LEVEL 1/1736-JPCLASSIFIED |
アイテム番号: SCP-1736-JPオブジェクトクラス: Safe |
特別収容プロトコル: SCP-1736-JPはサイト-8104のトイレ1736-JP号室に収容されます。このトイレへの1736-JP号室への立ち入りはSCP-1736-JP研究主任の許可を必要とし、またSCP-1736-JP-1の閲覧には倫理委員の立ち会いが必要となります。
説明: SCP-1736-JPは████製のハンディカム███-████です。品番は記載されているものの、流通経路の追跡には失敗しています。
SCP-1736-JPを視界に入れている人間がいなくなった時、SCP-1736-JPは半径200m以内のトイレ、風呂、シャワー室、更衣室、或いは排泄や更衣に用いられる室内に移動し、自動で録画を開始します。その際機能設定は全て自動で行われます。
██県にある███市民プールの女子更衣室より盗撮目的と思われるカメラが発見されたものの、監視カメラには怪しい人物は写っておらず、あるフレームでカメラのみが突然出現した様が記録されていた事から財団の注意を引きました。警察署に潜入していたエージェントにより事態の収拾が図られ、関係各所へはカバーストーリー「インディーズドラマの忘れ物」が流布されています。
以下はSCP-1736-JP第一発見者である女性へのインタビュー記録です。
回答者: ██ █
質問者: 花麒麟研究員
前書: ██氏には事情聴取であると伝えてある。██氏の心理状態を鑑み、質問者は女性である花麒麟研究員が務める。
<記録開始>
花麒麟研究員: ██さん、少し質問させて頂きます。
██氏: その前に、あれ、中見られてます? 特に男性に!
花麒麟研究員: ご安心下さい、中身は私達女性しか見ていませんし、中のデータが余りにも多くてまだ██さんの部分まで来ていません。
██氏: そうですか。よかった。じゃあ、質問、どうぞ。
花麒麟研究員: あのカメラは、どちらで見付けられた物ですか? 確認の為、正確にお願いします。
██氏: ███市民プールの女子更衣室、服を入れる棚の1つに置いてありました。
花麒麟研究員: 再生モードだったんですね?
██氏: はい。見たらRECランプが点いてて、それでもうびっくりしちゃって。ホント、変な人に裸見られなくて良かった……
花麒麟研究員: ご安心下さい。それと、あのカメラは盗撮目的ではなかった線が強いです。
██氏: そうなんですか?
花麒麟研究員: はい、地元のインディーズドラマ制作グループの忘れ物だった様です。
██氏: ああ、通りで。
花麒麟研究員: 通りで?
██氏: はい。盗撮にしては、まったく隠す気が無いような置き方だったので、おかしいな、と。
花麒麟研究員: 成る程。大体こんな所ですかね。返却の際、中のデータはちゃんと削除しておきますので、ご安心下さい。本日はご足労頂き、ありがとうございました。
<記録終了>
後書: 調査により、この日は███市民プールを訪れた女性が非常に少なかった事、██氏より早く女子更衣室を使用した女性達はSCP-1736-JPを見ていない事が明らかになっており、証言を得られたのは██氏のみです。
ここは都内にある、1軒のラーメン屋。ちょっとばかり普通じゃない所にあるのだが、別にそれは重要ではない。
今日も1人、UFOラーメンのファンが訪れた。
「いらっしゃい!」
「UFOラーメン1つ」
「はいよ」
カウンター席に着いた彼は、左隣の席を見る。
「店長、唐揚げ始めたんですか?」
「違いますよ〜」
よく見れば、食べかけのラーメン丼の奥、見慣れた狐面が置かれている。
「ああ、虎屋博士でしたか」
「お、濃霧院博士。どうも」
狐面が独りでに動いたかと思うと、唐揚げが人型に変化した。
「食べる時は外してるんですよね。汚れますし」
「いえ、お気になさらず、外して頂いて構いませんよ。横に置いても撥ねると思いますが」
「では」
人が唐揚げに戻る。
彼ら2人以外の客は来ていない。虎屋博士は、少しだけインナーな話をする事にした。
「もうすぐ、"外の"支部へ異動になると聞きましたが」
唐揚げなので、当然濃霧院博士には虎屋博士の表情等を読み取れない。
「"秘密"とは『誰もが知っている』という意味だと誰かが言ってましたが、真実みたいですね。ええ、その予定です。恐らくですが、今よりも私に適した職場となるでしょう」
「だと良いですね」
厨房から、店主が顔を覗かせる。
「へいお待ちどう!」
「おお、どうも」
備えてある黒塗りの箸を手に取り、麺を口へと運ぶ。
「うん、やはりこれですね。こってりでありながら非常に食べ易い、良い塩梅です」
「確かに。本当に地球の材料で作ってるんですかね」
「ははっ、ありがとうございます。全部ここの材料ですよ」
店主が苦笑いしながら割り込んだ。
「材料にはかなりこだわってますけどね」
そう呟く横顔は、どこか誇らしげだ。
メンマ、焼豚、スープと、黙々と口に運ぶ。
「そう言えば、私の同僚にも、近々"外"に行く人がいましてね」
「そうなんですか」
虎屋博士は面を着け立ち上がり、「勘定お願いします」と声をかけた。
「あちらの分も一緒に」
濃霧院博士が何かを言う前に、手で制される。
「ここは払わせて下さい。餞別代わりだと思って」
随分安い餞別ですが、と内心付け加える。
「……では、お言葉に甘えて」
随分美味しい餞別だ、と内心付け加える。
支払った虎屋博士は、転送装置へと向かった。
「では、私はこれで。ごちそう様でした!」
「まいど〜!」
無事帰ったのを見送り、濃霧院博士は店主の顔を見た。
「もしかして、██年前、京都の調査にいらっしゃいませんでしたか?」
「あ、お客さんやっぱりあの時の!」
「いやぁ、懐かしいですなあ」
「まったくです」
感慨深げに話す2人。以前、日本に財団支部が作られるより前に店主が調査に来た際、非天然種生命体としてマークされていたのが、当時の濃霧院博士である。
「いやはや、独立されてラーメン屋になっていたとは」
「当時の船の中ですけどね。人生、何があるか分かりませんで。嫁さんと一緒に、越してきちゃいました」
店主の妻は濃霧院に向け、会釈と共に微笑んだ。
「一応、どの星から来たかについては機密、なのですかな?」
「ええ、口止めはされていますね」
「しかし……やっぱり、あの星ですか」
「ご存知ですか。お客さんは、第8惑星ですかね?」
「まあ、私達にとっては、機密なんて無意味ですね」
まったくだ、と笑い合う2人。
「おや、もうこんな時間ですか」
一頻り話した後、海王星人が腕時計を見るなり立ち上がる。
「お会計……は、さっき虎屋博士がして下さったのでしたっけ」
レジを通り過ぎ、転送装置に向かう。
「ごちそう様でした。また来ます」
「まいど! お待ちしております!」
次は精進ラーメンを食べてみよう、などと思う濃霧院博士だった。
ここは都内にある、1軒のラーメン屋。ちょっとばかり普通じゃない所にあるのだが、別にそれは重要ではない。
転送装置から、1人の財団職員が現れる。
「いらっしゃいませ〜!」
「UFOラーメン、ナルトとメンマ抜きで」
最奥の座敷席に陣取る。少しして、店主の奥さんが水を運んで来た。
「はい、お冷やです。お客さん、最近は体調大丈夫ですか?」
「はい、薬もある程度は効いてますし。それに、ここのラーメンだけはアレルギー気にせず食べられるんですよね」
「あら、それは良かった。あの人もね、アレルゲン出来るだけ入れない様に気を付けてるのよ。きっと喜ぶわ」
「ありがとうございます!」
聞こえていたのか、厨房から威勢の良い感謝が聞こえた」
「もう少しお待ち下さいね」
奥さんが厨房に消えたのを見届けた頃、隣りの座敷席から声がかかった。
「ねえ、相席よろしい?」
見ると、外人らしい金髪の女性(そうとは分からない程流暢な日本語だったが)。卓に食べ物は無く、注文した物を待っているらしい。
「ええ」
そう答えると、女性は卓の向かいに移動した。
「ここにはよく来るの? 黒瀬博士」
突然名前を呼ばれたが、全く動じずに答える。
「ええ、美味しいからね。"博士"」
博士と呼ばれた女性はクスリと笑い、足を崩した。
「はい、お待ちどう」
奥さんがラーメンを2杯持って来る。片方は黒瀬博士の分、もう片方はワンダーテインメント博士の分と思しきジャンボUFOラーメン。
「ごめんなさいね、伸びちゃうからちょっと本気で食べるけど」
「ええ、お構い無く」
「いただきます!」
威勢の良い宣言と同時に、勢い良くジャンボラーメンを啜り始めた。黒瀬博士もレンゲを手にする。
濃厚な牛骨スープを1口啜り、ほう、と息をついた。最近は魚介ベースのスープや混合出汁が多く、中々彼女が安心して食べられるラーメンに出会わない。しかし、ここは材料が際立つ様シンプルなスープになっており、何ら心配無く舌鼓を打つ事が出来る。
麺を啜る間も、目の前の女性は凄いペースで麺を平らげていく。しかし無理している風は無く、1口1口しっかりと味わって食べているらしい。
「あーっ、この細麺が食べやすいんだよね〜」
「そうね、スープも絡み過ぎないで」
簡潔な感想を言い合いながら食べていく2人。
ジャンボUFOラーメンがおおよそ無くなり、黒瀬博士が感嘆の声を上げようとした所で、再び奥さんが丼を持って来た。
「はい、ジャンボUFOラーメン2杯目!」
感嘆の声は絶句に変わった。
1杯目を空にしたワンタメ博士は、全くペースを落とす事無く2杯目に取りかかる。
「……凄い」
「そう? どんどんイケる」
その言葉に違わず、1杯目と全く同じ様に食べ進んでいる。
「そういえばさ」
口を開いたのは、ワンタメ博士だった。
「伸びるんじゃなかったの?」
「ん、この量なら大丈夫。ところでさ」
焼豚を口に含み、続ける。
「あなた、前にウチの子バラしたでしょ」
「ええ」
学生時代に捕獲した、色々な生物を思い出す。あれの解剖は楽しかった。
「どうだった?」
何か感情が篭っている風でもなく、世間話の様な雰囲気だ。
少し考え、最も人間に近かった製品について語る事にした。
「面白かったよ、"ほぼ"人間で」
「よく混ぜてあったでしょ? 自信作だったの」
「本当によく出来でた、あんなに楽しかったのは初めて。中のあちこちに社名と商品名が彫り込んであるのにこだわりを感じたし。玩具にしとくのは勿体無いね」
「子どもにこそ、完全な技術使った無駄が必要なの」
真剣とも茶化しているともつかない表情で、メンマを頬張る。
みるみる内に量が減り、とうとうスープが僅かに残るばかりになった。
「———ぷはぁ、ごちそうさまでした!」
厨房の方から複数名の拍手。思わず黒瀬博士も拍手した。
店主が厨房から出て来る。
「いやあ、お見事。おめでとうございます。では、今回もお代はタダ、という事で」
「ありがとうございます」
ワンタメ博士は立ち上がると、満足げにお腹をさする。
「あ、私勘定お願いします」
「はいはい!」
黒瀬博士が財布を開いている間、ワンタメ博士は後の壁にもたれかかっていた。
「……はい、丁度ですね。ありがとうございました〜」
「ごちそう様でした」
「黒瀬博士?」
振り向いた途端、声がかかる。
「何?」
「もし今度があったら、また感想聞かせてね」
「分かった」
「お願いね。じゃ!」
そう言って手を振ると、ワンタメ博士は転送装置へと消えた。
「今度、ねえ」
次はどれの話をしようか。帰ったら、解剖記録を見直さねばならない。
1/1724-JP LEVEL 1/1724-JPCLASSIFIED |
アイテム番号: SCP-1724-JPオブジェクトクラス: Euclid |
特別収容プロトコル: SCP-1724-JPの実行は許可されません。SCP-1724-JP-Aは財団及び財団フロント企業によって雇用されています。財団が関与しない新たなSCP-1724-JP-Aの発生を確認した場合は直ちに確保し、新たな戸籍を付与すると共に関係者にBクラス記憶処理を施して下さい。
説明: SCP-1724-JPは特定の行為によって構成される一連の儀式です。人間以外の生物に対しSCP-1724-JPを行う事によりSCP-1724-JP-Aが生成されます。SCP-1724-JPの手順に関する詳細は附属文書1724-JP-EVEを閲覧して下さい現在担当研究員以外の閲覧が禁止されています。閲覧禁止に至った詳細は別記の諸記録を閲覧して下さい。
SCP-1724-JP-Aは認識災害56を伴った生物群の総称です。現在は81地域内に██体が確認されています。
SCP-1724-JP-Aは生物種により4群に大別されます。SCP-1724-JP-α | 哺乳類によって構成される群。現在██体の生存が確認されている。 |
---|---|
SCP-1724-JP-β | 鳥類によって構成される群。現在██体の生存が確認されている。 |
SCP-1724-JP-γ | 魚類によって構成される群。現在█体の生存が確認されている。 |
SCP-1724-JP-δ | 植物によって構成される群。現在財団が実験で用いた1体のみ生存が確認されている。 |
SCP-1724-JP-Aは全て同様に以下の異常性を持ちます。
- 五感を含む一般的な認識方法において人間であると認識される。
- 人間と同様の行動、思考能力を持ち、同様の生活を送る事が可能である。
- レントゲン、CT等を除く視覚情報に依存しない医学的観測手段において人間ではないと判断される。
- 細胞、体液等身体を構成する部位の検査は全て人間ではない生物種の特性を示すにも関わらず、人間と同様の環境、食事での生存が可能である。
財団が関与しないSCP-1724-JP-Aが発見された時当該個体は無国籍状態のままある程度の社会的生活を送っているケースが多く、確実な記録改竄を行わなければ過去の記録の問題発覚により当該個体に関し不要な詮索を受ける可能性があります。その為、財団日本支部と日本政府との取り決めにより、新たなSCP-1724-JP-Aを確認した場合には日本政府より新たな国籍が付与されます。その後確認されたSCP-1724-JP-Aは財団或いは財団フロント企業のいずれかに雇用されます。
SCP-1724-JP-Aは一般的な社会生活の中で露見する異常性は持っておらず、使用する医療機関の統一によって容易に隠蔽可能な異常性のみを持っている為、戸籍の付与及び財団への雇用が完了したSCP-1724-JP-Aには基本的に一般人と同様の生活が許可されます。
人間性の再現度を計る為、SCP-1724-JP-Aの内複数個体が財団内に通常の職員として潜伏しています。その為SCP-1724-JP-Aの総数は担当研究者及びレベル4以上のセキュリティクリアランス所持者にのみ開示されます。
追記: 財団内に潜伏中のSCP-1724-JP-Aと婚姻、養子縁組、或いはこれらに類する法的関係を結んだ職員にはセキュリティクリアランスのレベルに関係無く、相手がSCP-1724-JP-Aであると公開されます。
▷記録を閲覧する。(隣りの諸記録タブ見て下さい。)
以下倫理委員会により閲覧が制限されています。レベル4以上のセキュリティクリアランス及びプロジェクト1724-JP権限を所有する職員にのみ閲覧が許可されます。
SCP-1724-JPは小型の哺乳類に対しても有効であると判明しています。また生成される人型実体は元となった生物の知能、年齢に関わらずある程度の知能、言語理解力を持っている為指示を与える事が可能です。この事から、現在ラット[Rattus norvegicusの飼養変種]及びモルモット[Cavia porcellus]に対しSCP-1724-JPを行い生成したSCP-1724-JP-AにクラスF記憶処理(自己同一性再構築手順を含みます)を施し、Dクラス職員として用いるプロジェクト1724-JPが継続中です。本プロジェクトに関する倫理的問題の提言を防ぐ為、十分なセキュリティクリアランスを所持しない職員にはカバーストーリー「SCP-1724-JPの全面禁止」を流布した上、生成した全てのDクラス職員とSCP-1724-JPとの関連性を抹消します。
Dクラスとしての使用が目的で生成されたSCP-1724-JP-Aに関する虚偽情報は当該個体が関わる実験の担当研究員にのみ流布すれば良い為、基本的にDクラスとしての使用が目的で生成されたSCP-1724-JP-Aには戸籍は付与されません。
インタビュー記録SCP-1724-JP-None
回答者: SCP-1724-JP-D(Dクラス職員としての使用を目的に製作されたSCP-1724-Aは全て同様のナンバリングがされます。)
質問者: 阿須田研究員
前書: 本記録はクラスF記憶処理がプロジェクト1724-JPに組み込まれる以前の物である。
<記録開始>
[SCP-████-JPに関する実験の聴取を行っている。]
阿須田研究員: では、この辺で。
SCP-1724-JP-D: 少し良いでしょうか。
阿須田研究員: 何でしょう?
SCP-1724-JP-D: 普段こんな事訊く時間無いですからね。私達の事です。
阿須田研究員: ほう。
SCP-1724-JP-D: 私達はある意味、人間に寄生して繁栄する為に進化しました。実験動物として使い捨てにされる見返りに、常に一定数以上に個体数が保たれる。でもそれは、モルモットとしての知能しか無いから出来る芸当です。
阿須田研究員: 成る程。
SCP-1724-JP-D: 今の私は、危険が理解出来ます。貴方がたの言葉も分かります。以前より高度な感情もあります。
阿須田研究員: 何が仰りたいんです?
SCP-1724-JP-D: 危うい立場の人間にそれを理解させる程無慈悲な事は無い、と。ましてや、それが本人の行いで打開出来る代物でないのなら。
阿須田研究員: ふむ。
SCP-1724-JP-D: 何も私は、実験に文句を言いたいんじゃないんですよ。ここまで育てて頂きましたし、子だって残させて頂きましたから。どうせ老い先長くはないですし、恩返しと考えれば悪くはない。でも、そう思う個体ばかりではないでしょう。
阿須田研究員: では、我々に何を求めているのですか?
SCP-1724-JP-D: 記憶処理、という言葉をモルモットだった頃から何度か耳に挟みました。恐らく言葉通りでしょう。多分、その逆もあるのでしょう?
阿須田研究員: それも誰かから聞いたのでしょうか。
SCP-1724-JP-D: いえ、勝手な想像です。もし可能なら、それをやってみてはどうでしょうか。
阿須田研究員: その様な申請は公的な手順を経ない限り非常に困難ですが。
SCP-1724-JP-D: そんな手続きは許可されないんでしょう? だから、貴方を見込んでお願いしているんです。貴方は素晴らしい方だ。
阿須田研究員: ……成る程。目の横の黒子は前からですか?
SCP-1724-JP-D: その通りです。
阿須田研究員: 分かりました、検討しておきましょう。
<記録終了>
後書: 記録の確認により、本記録のSCP-1724-JP-Dは元々阿須田研究員が飼育していたモルモットである事が判明しており、その間に記憶処理に関して認知したと考えられる。この後記憶処理に関する臨床試験としての有用性を認められ、クラスF記憶処理がプロジェクト1724-JPに組み込まれた。
euclid scp-jp 交換 人工 人間型 儀式 削除通知 動物 変身 擬態 植物 生命 生物災害 知性 知識 自我
本報告書はSCP-1724-JPの附随文書であり、SCP-1724-JPに関する諸記録の内特記に値する事象のみを記載しています。
実験SCP-1724-4: SCP-1724-JPの再現性に関する実験。
被検体: 阿須田研究員の飼育する1歳6ヶ月のシェパードの雌。
手順: [編集済]
結果: 20歳前後の女性型実体(以下SCP-1724-JP-E1)。遺伝子検査により同一の個体であると確認された。
付記: SCP-1724-JPは高い再現性を持つと確認された。年齢の指定もほぼ確実な再現が可能な様である。
実験SCP-1724-6: SCP-1724-JPの特殊行程の再現性に関する実験。
被検体: サイト-8181のロビーにて飼育されていた29歳のミシシッピアカミミガメの雄。
手順: [編集済]
結果: 30歳前後の男性型実体。遺伝子検査により同一の個体であると確認された。
付記: [編集済]の簡略化により、生成される人体の年齢が元の生物にほぼ一致する事は確実な様である。尚本個体は実験4ヶ月後に死亡しており、[編集済]の簡略化により元の生物の寿命が引き継がれたのかどうか検証が必要。
実験SCP-1724-18: SCP-1724-JPの人体の再現性(摂食)に関する実験。
被検体: SCP-1724-JP-E1。
手順: SCP-1724-JP-E1に市販の板チョコレート1枚を摂食させる。
結果: 完食した。その後、テオブロミン57中毒症状は確認されていない。
付記: 毒素の分解能力等は人間に酷似している模様。
実験SCP-1724-31: SCP-1724-JPの再現性に関する実験。
被検体: 市販のイヌ型ロボット"████"。
手順: [編集済]
結果: 変化しなかった。
付記: 無機物には無効の様である。
実験SCP-1724-33: SCP-1724-JPの再現性に関する実験。
被検体: 花が散ったティランジア・カプトメドゥーサエ[Tillandsia caput-medusae]58。
手順: [編集済]
結果: 20歳前後の女性型実体。遺伝子検査により同一の個体であると確認された。
付記: [編集済]を簡略化し実験を行ったが、植物に対しても有効であった。使用した植物の発生年月日は不明であり、年齢との因果関係は検証不能。尚本個体は実験13ヶ月後に死亡しており、元となった生物の寿命との因果関係は植物にも適用される様である。特記事項として、本個体は蟻の観察を好んでいたが、元の生物の生態との関連性が疑われる。
実験SCP-1724-35: SCP-1724-JPの再現性に関する実験。
被検体: 生物研究室に安置されていたブリッスルコーンパイン[Pinus Longevae]59。
手順: [編集済]
結果: 20歳半ばの男性型実体(以下SCP-1724-JP-E3)。遺伝子検査により同一の個体であると確認された。
付記: [編集済]を簡略化し実験を行ったが、植物に対しても有効であった。使用した植物の発生年月日は不明であり、年齢との因果関係は検証不能。また生物学的見地から、根より何らかの栄養素を吸収している、光合成を行っている等と推測可能な複数の検査結果が出ているものの根や緑化した組織等は発見されておらず、未だ未解明である。
インタビュー記録SCP-1724-JP-E3-4
回答者: SCP-1724-JP-E3
質問者: 阿須田研究員
<記録開始>
阿須田研究員: それでは、第4回公式インタビューを開始します。
SCP-1724-JP-E3: はい。
阿須田研究員: 調子はいかがですか?
SCP-1724-JP-E3: 体調という意味なら、とても良好だよ。気分という意味なら、恐らく良好かな。
阿須田研究員: じゃあ、前回の続きから始めますね。植物だった頃の記憶は、全てありますか?
SCP-1724-JP-E3: 全てと言うと語弊があるけれどね。人の物忘れ程度に抜けはあるし、古い記憶は曖昧になってる。それでも、覚えてると言って良いと思うけど。
阿須田研究員: 貴方は、今何歳ですか?
SCP-1724-JP-E3: 多分、40歳位だと思う。30数年前にここに来て、それからはずっと植木鉢にいたね。
阿須田研究員: その事を証明出来ますか?
SCP-1724-JP-E3: 不可能だね。今の僕には年輪は無いから。
阿須田研究員: そうですか。では、次の質問に。今の貴方は、人間の寿命ではなく、元の生物種の寿命まで生きる事が出来ます。残りどれ位生きると思いますか?
SCP-1724-JP-E3: 分からない。
阿須田研究員: どうしてです?
SCP-1724-JP-E3: 僕達には寿命が無いから。歳も取らない。どうなるのか、見当も付かないな。
<記録終了>
後書: SCP-1724-JP-E3は現在まで一切の老化の兆候を示していない。このインタビュー及び検査結果より、不老人型実体を安易に発生させてしまう可能性が浮上した為現在多年草に対するSCP-1724-JPの試行は禁止されている。
実験SCP-1724-48: SCP-1724-JPの効力に関する実験。
被検体: SCP-████-JPに関する実験によって左脚を喪失したDクラス職員。
手順: [編集済]
結果: 左脚が完全に回復した同一の職員(以下SCP-1724-JP-E5)。
付記: 実験前の職員と完全に一致した。SCP-1724-JPは「他の生物に人型と認識される」類いの認識災害或いは「人型として生活可能にする」類いの現実改変をもたらす様である。
実験SCP-1724-50: SCP-1724-JPの人体の再現性(感覚)に関する実験。
被検体: SCP-1724-JP-E5。
手順: 他の職員と共にサッカーをさせる。
結果: SCP-1724-JP-E5は問題無くサッカーを行った。
付記: 左脚の感覚、駆動共に以前の左脚と同じだと証言している。SCP-1724-JPを身体欠損の治療に用いる事が出来る可能性がある。
実験SCP-1724-56: SCP-1724-JPの効力に関する実験。
被検体: 健康な女性である佐倉研究補佐。
手順: [編集済]
結果: 変化無し。
付記: 後に、佐倉研究補佐はSCP-052-JPに接触出来なかった事、本実験後に接触出来る様になった事が明らかになった。SCP-1724-JPとの関連性は調査中。
尚、佐倉研究補佐はSCP-1875-JP-1と遺伝的類似性が見られ、SCP-1875-JP-2であると考えられている。
実験SCP-1724-57: SCP-1724-JPの効力に関する実験。
被検体: 健康な男性であるDクラス職員。SCP-052-JPに接触出来る。
手順: [編集済]
結果: [倫理委員会により編集済]
付記: 欠損の見受けられない人間に対するSCP-1724-JPの試行は禁止された。
インタビュー記録SCP-1724-JP-8-3
回答者: SCP-1724-JP-860
質問者: 阿須田研究員
前書: SCP-1724-JP-8はSCP-1724-JPを"儀"と呼称しており、インタビューを円滑に進行する為この呼称を用いる。
<記録開始>
阿須田研究員: それでは、第3回公式インタビューを開始しますね。
SCP-1724-JP-8: どうぞ。
阿須田研究員: 貴方は誰に"儀"、SCP-1724-JPを行われましたか?
SCP-1724-JP-8: 山伏の様な男性です。もう亡くなっていますが。
阿須田研究員: 名前や身元は分かりますか?
SCP-1724-JP-8: いいえ。
阿須田研究員: そうですか。では、それはいつ頃の事ですか?
SCP-1724-JP-8: 300年以上前になりますね。
阿須田研究員: その男性が行ったのは、SCP-1724-JPとは異なる儀式ですか?
SCP-1724-JP-8:ほぼ同じだと思いますけど、ちょっとだけ違った様な気がします。
阿須田研究員: そうですか。では、次の質問です。貴方はかなりの時間を生きていますが、それは単に"儀"のみの影響ですか? それとも、貴方自身に元々何か変わった点がありましたか?
SCP-1724-JP-8: "儀"のせいだと思いますけど。多分。
阿須田研究員: そうですか。では、これで……
SCP-1724-JP-8: その前に1つ、良いですか?
阿須田研究員: 何でしょうか。
SCP-1724-JP-8: 貴方達は、私が受けた"儀"の再現をしたいんでしょう?
阿須田研究員: したい、と言うと語弊がありますが、全容解明の為には調査する必要があります。
SCP-1724-JP-8: 最近私と同じになった松の木君にも会いました。
阿須田研究員: SCP-1724-JP-E3ですね。
SCP-1724-JP-8: 貴方達がどう呼んでるかは知りませんが。あれは本当に必要な実験だったんですか?
阿須田研究員: どういう意味でしょうか。
SCP-1724-JP-8: 意味も無く長寿な生命は、決して幸福とは限らないという事です。
[22秒間沈黙。]
SCP-1724-JP-8: 人間は、大切な人が死んだ時、黄泉で再びまみえる事を信じて残りを生きるでしょう? もし耐えられない程辛ければ自ら向かうかも知れませんが。でも、私達はそうも行かないんですよ。何があっても、寿命なんて全然来ませんし。まあ他の人は知りませんが、私を"こうした"人は私に長生きして欲しいと想っていてくれましたから。自死なんてあり得ないんです。
[14秒間沈黙。]
SCP-1724-JP-8: まあ私が生きてるのは自分のエゴだって言われたら、それまでなんですけどね。1つの参考にでも。
後書: SCP-1724-JP-8は現在まで一切の老化の兆候を示していない。このインタビュー及び検査結果より、不老人型実体を偶発的に発生させてしまう可能性が浮上した為、SCP-1724-JPの一部改変の試みは禁止されている。
実験SCP-1724-ADD1: SCP-1724-JPの人体の再現性(生殖)に関する実験。
被検体: SCP-1724-JP-E1及び阿須田研究員。
手順: Null.
結果: SCP-1724-JP-E1は現在男児を妊娠しており、遺伝子検査の結果は一切の異常、障害を示していない。
付記: 本記録はSCP-1724-JP-E1、阿須田研究員夫妻より報告されたSCP-1724-JP-E1の懐妊を便宜上実験結果として記録したものである。SCP-1724-JP-Aは生殖器官に関してもおおよそ人体を模した構造、能力を有している様である。今後の観察は継続される。
インタビュー記録SCP-1724-JP-E1-19
回答者: SCP-1724-JP-E1
質問者: 佐倉研究補佐
<記録開始>
佐倉研究補佐: では、公式インタビューを開始します。
SCP-1724-JP-E1: うん。
佐倉研究補佐: 調子はいかがです?
SCP-1724-JP-E1: 最近ちょっとだるいけど、特につわりも無いし、大丈夫。
佐倉研究補佐: それは良かったです。では、今回も質問します。民間伝承について、学んで頂けましたか?61
SCP-1724-JP-E1: ええ、結構。
佐倉研究補佐: ではまず、獣が人に変化して人間を騙すという事について。どう思われますか?
SCP-1724-JP-E1: 私達が本当は獣だったって聞いて、その驚きだけが残った結果じゃないのかな。実際に騙したのもいるのかも知れないけど。
佐倉研究補佐: 成る程。長生きした獣が妖怪化して人に化ける力を身に付けるという伝承については。
SCP-1724-JP-E1: まさかそれが本当だったとは思わないけど、多分、何か訊かれた長生きな人62が、昔の事を"盛った"んじゃないのかな。
佐倉研究補佐: そうですか。では、次の質問に。人に化けた猫又などの妖怪が、人間の精を吸って生きるという伝承があります。どう思われますか?
SCP-1724-JP-E1: まあ、ある程度正しいんじゃないかな。
佐倉研究補佐: と言いますと?
SCP-1724-JP-E1: 私達って、体のどこから吸収してもそれが栄養なら取り込めるみたいなんだよね。だから多分、シた分も身にはなってるんじゃないかと。あ、詳細は訊かないで!
佐倉研究補佐: 了解しました。続いて、人に化けた獣が人を惑わすという伝承についてですが。
SCP-1724-JP-E1: ああ、それは当然なんじゃない?
佐倉研究補佐: どうしてですか?
SCP-1724-JP-E1: だってさ、そもそも人に大事にされてた生き物しか、SCP-1724-JP-Aにされない訳じゃん。それなら、その後仲良くなったりもするでしょ。
佐倉研究補佐: 成る程。では、今回はここまでとします。お疲れ様でした。
<記録終了>
独身貴族用の部屋の鍵を開け、電気を点ける。妻子はいるのだが単身赴任中の身である為、実質似た様なモノだ。
彼の名前は常盤ときわ 薺なずな、財団日本支部科学部門音響研究班に所属する、比較的新参の職員。音響研究班の仕事は非常に多岐に渡り、毎日妙にタスクの多い日々を送っている。
今日だけ特別重い荷物を下ろし、冷蔵庫から麦茶を取り出す。アルコールに強くないので、酒は呑まない主義だ。この職場では、咄嗟の判断の遅れが命取りになるケースも少なくない。
荷物を重くした犯人である、昼間購入した箱を開封する。最近流行のスマートスピーカーとやらで、テック方面に詳しい彼もこの類いの品は初めてだ。何せ彼が関わっているSCP-1139-JP-αが使われた商品だという事で、発売前から気にはなっていた。中々きっかけが無かったのだが、とうとう購入してみた。
諸々の設定を手早く済ませ、スイッチを入れてみる。
『マスター、初めまして』
続いて、SCP-1139-JP-α-1の名を名乗る。成る程、まだ粗は見えるがかなり人間に近い発声であり、常盤は一人関心した。
購買で買った弁当を取り出す。まともに料理しても良いのだが、コンビニ弁当等に比べ栄養バランスがある程度考えられている上、そこそこ安価なので時間を費やすのに比べればこちらの方が良く思える。
黙々と食べていると、壁掛け時計の時報メロディーが鳴った。
『マスター、午後11時です』
どうやら時報機能も備わっているらしい。恐らくオンオフの切り替えが出来るのだろうが、説明書から見落としたのだろうか。
『何か、音楽をかけましょうか?』
「落ち着く曲をかけてくれ」
『ごめんなさい、見付かりませんでした』
「そうかい」
机の上は片付けられ、1杯のコーヒーだけが置かれている。彼の憩いの時。毎晩寝る前、コーヒー片手に1日の事、その他諸々の事を振り返る。
思い浮かぶのは、もっぱら春成功事例四の事。本名は春鳥はるどり 花実はなみといい、彼女は、彼が誰かの依頼で異常性を生み出した初めての例であり、同時に明確に"誰かの役に立った"と感じる事が出来た初めての例でもある。
どの様にして、彼女が彼に辿り着いたのかは分からない。しかし、春鳥は確かに私の下にやって来た。
歌手やアイドルになりたい、それはある種ありふれた夢だと言えるだろう。多くの人はそれを諦め、妥協して生きるモノだ。しかし、彼女の目は真剣だった。自分の命に失望し、それでも希望を見出そうとしていた。彼女はいわゆる"歌い手"という物を良く知っていた。だから、体が無くても構わない、そう判断したのかも知れない。
正しい行いだったかどうかなど知らない。倫理観などという物には一切則っていない。今の彼女がどう思っているかも分からない。しかし彼は、後悔も反省もしていなかった。人は手の届く範囲の人の、目に見える幸せしか叶えられない。それをよく知っているからだ。
だが、彼女の現状は少し気になる。それが経過観察をしたい学者としてなのか、1人の少女を心配してなのかは、本人にも分からなかったが。
「春鳥さん。今は、幸せなのかい?」
流石にスピーカーは答えない。変な問いかけに対する回答はプログラムされていないか……と、思ったのだが。
「はい。幸せです!」
機械音声よりも一段と人間らしい声。
彼は小さく笑い、コーヒーを口に運んだ。
1/Delay-JP-EX-J LEVEL 1/Delay-JP-EX-JCLASSIFIED |
アイテム番号: SCP-Delay-JP-EX-Jオブジェクトクラス: Explained |
特別収容プロトコル: SCP-Delay-JP-EX-Jの拘束から逃れる手立ては確立されていません。またSCP-Delay-JP-EX-Jは広く拡散、周知されており現段階での収容は非常に困難です。財団職員がSCP-Delay-JP-EX-Jの拘束を受け職務に支障をきたした場合、即座に関係する職員を派遣すると共に前後の予定を調整して下さい。
説明: SCP-Delay-JP-EX-Jは特殊な装置であり、大きくSCP-Delay-JP-EX-J-1とSCP-Delay-JP-EX-J-2に大別されます。
SCP-Delay-JP-EX-J-1は小さい物では0.4m×0.5m×0.3m程、大きい物では1m×1m×0.4m程の大きさであり、直方体型と円筒型が存在します。SCP-Delay-JP-EX-J-1は外殻、循環機構、微振動波発生装置等により構成されます。
SCP-Delay-JP-EX-J-2は小さい物では0.8m×0.4m×0.8m程、大きい物では1.2m×0.4m×1m程の大きさであり、通常2対の脚によって直立しています。SCP-Delay-JP-EX-J-2は非常に非効率的な電気伝導器官を持つ個体が多く確認されています。
SCP-Delay-JP-EX-Jは重篤な認識災害を持ち、視認した人間(以下"対象")に対し"気温が極度に低い"、"SCP-Delay-JP-EX-Jのみ人間が生存可能な温度に保たれている"という認識を発生させます。この認識災害は特定の期間のみ無効化される事が明らかになっており、地域により期間が異なります。上記認識災害を受けた対象はSCP-Delay-JP-EX-Jの微振動波放射範囲内に入り、強制的に移動させない限りその場に留まろうとします(以下"拘束")。また、拘束を受けた人間は高確率で"なもみ"と呼称される広域な細胞死を被ります。
インタビュー記録SCP-Delay-JP-EX-J
回答者: 対象となったD-████
質問者: 佐倉研究補佐
<記録開始>
佐倉研究補佐: 最初にSCP-Delay-JP-EX-J-1をご覧になった時、どう感じました?
D-████: どうって、普通の████ですよ。暖かそうだな〜、位ですかね。
佐倉研究補佐: 成る程。大きさなどに関しては?
D-████: 小さめかな、と思いました。固定されない様でしたし。
佐倉研究補佐: 微振動波放射範囲内に入った時、どう思われました?
D-████: 暖かかったです。
佐倉研究補佐: 他には?
D-████: 他……えー、気付かなかったけど、案外室温が低かったんだな、と。
佐倉研究補佐: 思ったより部屋が寒かったと。では、その前から動く事に関して、どう感じられました?
D-████: 離れ難かったですね。動くと寒いですし。
佐倉研究補佐: 手を見せて頂けますか?
D-████: どうぞ。いやー、すっかりやられちゃいまして。
佐倉研究補佐: ふむ。で、どうやってそこから離れましたか?
D-████: 係りの職員さんが来て、私の仕事の時間だから、と。
佐倉研究補佐: 連れて来られたんですね。
D-████: はい。で、ここに。
佐倉研究補佐: 成る程。どうも、ありがとうございました。
<記録終了>
SCP-Delay-JP-EX-Jの拘束を無効化する手立ては発見されておらず、拘束を受けた対象は自らの意思での行動が非常に困難となる事から上記無効化期間以外は文明社会に重大な影響を与えています。
ストーブとこたつをオブジェクト指定して遅刻を正当化するのは認められません。
好い加減な画像によって物々しく演出する事もです。
ましてやExplained指定されてなどいません。 -彼岸花倫理委員
報告書のバージョンを更新した。
一部のオブジェクトの実態に関わる報告書は、低セキュリティクリアランス職員向け報告書の内容と激しい齟齬を生じる。ここでは当たり前の事だ。
今翻訳しているのは、米国で書かれたSCP-231の経過報告書。倫理委員である私、彼岸花にとって極秘文章の翻訳は通常の業務であり、SCP-231関連の報告書にも幾度と無く携わった。その度に、つくづく厄介なオブジェクトだと思う。
ヘッドホンを装着し、新たに録音された叫びを聴く。誰が聞いてもおぞましい光景を想像する事だろう。彼女も、中々良い演技をする。演技指導の賜物だろうか。身重の女性が絶叫して体に障り無いのか少し心配だが、まあ財団の医療班が監修しているだろうから、問題は無いのだろう。
そう、三重の防音壁を破る様な声を、あんな幼い子が出せる訳が無い。機械で増幅でもしない限りは。わざわざSCP-231-2から7までの内六人の架空の不幸な年頃の女性を用意した目的の一つは、そこに気付かせない事。ある程度身体が成長していれば、出せない音量ではないだろう。
加えて、彼女を連れて逃げよう等と考えてもらっては困るのだ。だから、失敗例を用意する必要があった。銃撃戦など起こっていない、処分されたエージェントなどいない。だが、確かに記録は存在する。存在させられた。
通常はより上のセキュリティクリアランスを得れば得る程、報告書中の黒塗りが外れる。だが、このオブジェクトは違う。
ノックと共に、私のオフィスの扉が開いた。
「失礼します」
私が検閲、校閲を行った報告書の再提出だ。表示している報告書のセキュリティクリアランスレベルを落とす(いつもやるのでショートカットキーを設定してある)。
「修正しました。これで宜しいかと」
「了解しました、確認しておきましょう」
彼が私のモニターを覗き込む。
「231ですか。モントーク、何してるんでしょうね」
「知りたいですか?」
「いえいえ、滅相も無い! 心が保ちませんて」
そう答える彼の表情は、心底嫌そうだった。
「不憫ですよねえ……じゃあ、私はこれで。また不備があったらご教授願います」
彼は一礼し、デスクを去った。
収容プロトコルは無事に継続しているらしい。SCP-231-7に同情し心を痛める必要が無い、それだけでも、ここまで上り詰めた甲斐があったというモノだ。
彼女はセックスカルト教団に捕らえられた状態で、日々暴行を受けていた形跡があった。調査によれば、その頃には既に"アレ"を身籠っていたらしい。
何故財団が保護する前、どうして"アレ"が生まれる事は無かったのか。
彼らは彼女の尊厳を侵し、肉体を犯し続けた。だが聴取によれば、それは悪意からではない。彼らはそれを正しい事だと思い、善だと信じていたのだ。彼ら自身が求める境地へ辿り着く為、そして何より、その依り代となる彼女の為。彼らは彼女が苦しんでいる事も、絶望している事も知っていただろう。それでも、彼らはその"行為"が彼女の為になると信じていたのだ。
その歪み捩じ曲がった"愛"とでも形容すべき感情こそが、"アレ"を塞き止める壁になる。奴は感情の空白、空虚な部分をこじ開けこちらに出て来る。その穴に注ぎ込まれる一方的な"愛"が、奴を向こう側に押し返す。
そして何より、本人がその"愛"を自覚する必要は無いのだ。そうでなければ、とっくにあの教団ごと世界は滅んでいただろう。
彼らにSCP-231-7を任せておくのは危険過ぎる。しかし、財団が確保した少女に多数の"愛"を注ぎ続けるのは、決して簡単な事ではなかった。財団は心無い人間の集団では決してないが、何の関係も無い人間に善意を注ぎ続けられる程余裕がある訳ではない。常に世界の滅亡と対峙し、皆疲れ切っている。
消照闇子の様にアイドル化してしまうという案もあったそうだが、流石に不確定要素が多過ぎたそうだ。
そこで、同情という形の愛を乞う事にしたらしい。財団の賢者達は共同し、ありとあらゆる人間が哀れまざるを得ない様な、実に不幸で不憫な収容プロトコルとそれが制定される経緯を創作した。絶対に逃がしてはいけない理由、これまでの失敗例、一人の少女の苦痛と世界の平穏の等価交換。物語のプロですら舌を巻く完璧なカバーストーリーだ。
まだ私が低レベルセキュリティクリアランスしか所持していなかった頃、SCP-231に関して知り、心の底から恐れ憐憫したものだ。行われている処置が明記されていない事が、より一層恐怖の感情を掻き立てた。それこそが真の特別収容プロトコルだったのだ。
今やSCP-231は多くの職員に知られ、数多の愛がSCP-231-7に注がれている。彼女がそれを知る事は無い。
今日もまた、狭いながら安全な部屋で過ごし、心優しい職員と絵本を読み。そして安らぎの中で寝るのだろう。
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 毎日午前6時半及び午後10時半にSCP-XXXX-JP-Aに食事を運び入れる生身供プロトコルが実行されています。
サイト-81KK内で竹箒を使用する事は禁止されています。サイト-81KK内への竹箒の持ち込みが発覚した場合、降格を含む処罰の対象となります。
SCP-XXXX-JP-A内の探査は永久に凍結されています。
説明: SCP-XXXX-JPはサイト-81KKに指定された地域であり、和歌山県高野山全域です。内部には█件のオブジェクト及び██件のAnomalousアイテム、█件の超常現象が存在します。詳細はSCP-XXXX-JP異常性総覧をご覧下さい。
SCP-XXXX-JP内の奥の院に位置する御廟はSCP-XXXX-JP-Aに指定されており、内部にはSCP-XXXX-JP-Bに指定される何かが存在していると思われます。SCP-XXXX-JP-Bの実体は確認されていません。
SCP-XXXX-JP-Aには人間の居住が確認出来ないにも関わらず、毎日午前6時及び午後10時30分に食事が運び込まれており、これに関連する一連のイベントは一般に生身供と呼称され、現在は生身供プロトコルとして財団に承認されています。
SCP-XXXX-JP-Bの存在が明らかになった当初、高野山全域は高野山真言宗63により掌握されており、特に最重要施設であるSCP-XXXX-JP-Aの情報の入手は困難を極めました。財団設立後、高野山真言宗との協議の上、定期的な交流会の開催及び双方の職員の出向が決定しました。過去██名が出向し64、内1名が維那に任命されています。
生身供プロトコル中の撮影、録画及びそれに類する記録行為は一切が禁止されており、SCP-XXXX-JP-A内部の詳細な情報は皆無です。以下、出向後維那として活動していた職員の聞き取り記録の抜粋です。
インタビュー記録SCP-XXXX-JP-█
回答者: 無花果秘儀官
質問者: サイト-81KK管理官(以下管理官)
前書: 過去の収容手順を尊重し、協定により、出向した全ての職員には高野山真言宗により秘匿すべきであると判断された情報の提供に関する拒否権が与えられており、無花果秘儀官も同様である。
<省略>
管理官: 一般に公開されている以外の手順が、生身供イベントに存在している。これは正しい?
無花果秘儀官: はい。
管理官: そしてそれも、公言出来ないと。
無花果秘儀官: そうです。
管理官: 収容の為に、秘匿する事が求められているのですか?
無花果秘儀官: その通りです。
管理官: 分かりました。では次です。SCP-XXXX-JP-Aの中には、我々がSCP-XXXX-JP-Bに仮指定している何かが居ましたか?
無花果秘儀官: 恐らくですが。
管理官: SCP-XXXX-JP-Bは何をしていました?
無花果秘儀官: 詳細はお話し出来ません。
管理官: そうですか。では最後に、元維那ではなく貴方にお訊きします。奥の院の御廟の中には、何がいると思いますか?
無花果秘儀官: 私個人の"感想"を述べろと。
管理官: そうです。
無花果秘儀官: あれは、弘法大師空海その人です。
<省略>
「空海は今も生きている」という高野山真言宗の公式見解は、宗教に特有の迷信的仮定、或いはカバーストーリーに類する話だと考えられていますが、財団に対する正式な説明はなされていません。
アイテム番号: SCP-001-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-001-JP-A群はF4サイト群、サイト-8103、サイト-8122、サイト-8124、サイト-8137、サイト-8154、サイト-8169、サイト-8181、サイト-8190、セクター-8192を中心として収容されています。詳細な特別収容プロトコルは各サイトの該当オブジェクトに関する提言を参照して下さい。
説明: SCP-001-JP-A群は何らかの自律行動をする、通常自律行動する事の無い物体群です。
SCP-001-JP-A-0001からSCP-001-JP-████までの████個体群が確認済みであり、全個体間で共通した特徴や発生原理を調査中です。
以下、SCP-001-JP-Aの例です。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: Anomalousアイテム
形態: 木製の風見鶏。
異常性: 屋内等日光の当たらない地点に設置されている時、地面或いは何らかの足場から70cm浮遊して日光が当たる場所へ移動する。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: Anomalousアイテム
形態: 人力車。
異常性: 車体後部の箱に運賃を投入し、行き先を告げて乗り込むと引き手がいないにも関わらず走行を開始する。尚、可聴域帯外の高周波が発されているが、分析の結果一般的な人力車の引き手と同様の台詞である事が明らかになっている。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: SCP-███-JP
形態: 玩具の[編集済]で作られた、戯画化された青い恐竜。
異常性: 人間を取り込み、同体積分肥大化する。物理的攻撃により破壊可能だが、完全破壊は不可能。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: SCP-███-JP
形態: 高い剛性を持つ中型の石像。
異常性: 触れた人間の睡眠中、同様の形状を持つ複数の人型実体が夢の中に現れる。適切な知識を持ち合わせている場合、時空学に関する会話を行う事が出来る。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: SCP-███-JP
形態: 一般的なビニール傘。
異常性: 雨に当たった際、雨音ではなくピアノの音色が発生する。口頭でリクエストした楽曲を演奏させる事が可能である他、演奏頻度及び演奏に対する反応によって演奏の巧拙が変化する。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: SCP-████-JP
形態: 破損した複数の機械群。
異常性: 不定期に出現する雨の中を流れる様に移動する。完全に破壊されている機械の取り出しは不可能だが、復旧可能な機械は取り出す事が出来る。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: SCP-████-JP
形態: 黒淵の眼鏡。
異常性: 付近に存在する文章全てに対し、中等教育程度の文法に基づき添削を行う。その際記憶処理等の一般に知られていない財団独自の技術や事物は非現実的であると指摘される。この現象は紙媒体ではなく電子媒体等にも及ぶ。
SCP-001-JP-A-████
現在の指定: SCP-████-JP
形態: 藍色の布及び赤色のリボンが巻き付けられたM3サブマシンガン。
異常性: 900枚以上の偶数枚の花弁を吸収した後、乱射する。
追記: ████/██/██、SCP-001-JP-Aに指定されるオブジェクトが余りにも膨大な数となり、収容、保護に支障を来している状況の改善案が財団日本支部理事会で審議されました。その結果、SCP-001-JP-A群がそれぞれ個別のアイテム番号を持つオブジェクト、或いはAnomalousアイテムに指定されました。それに従い本報告書の旧リビジョンは複数の報告書に分割され、本報告書の最新バージョンは初期研究の記録として保管されます。
また財団他国支部に於けるSCP-001に相当するアイテム番号にも複数のオブジェクトが暫定的に指定されていた事から、本報告書及びSCP-001-JP-A群と同様の処置が行われました。
追記2: ████/██/██、本報告書にアクセスした際一定確率で他の報告書データが破損或いは消滅する現象が確認されています。これは本報告書の旧リビジョンを分割した際の技術的過失が原因であると判明しており、解消は非常に困難です。システム上の基本的な部分に関する過失である事、及び本報告書の指定番号に準えこの現象は001問題と呼称されています。
001問題は同様の処置を行った財団他国支部全てで発生しており、サーバー保護を目的に現在財団全支部でSCP-001に相当する報告書へのアクセスが禁止されています。
レベル4及びJセキュリティクリアランスを確認しました。
財団日本支部理事会専用サーバー内のSCP-001-JP-Re報告書を閲覧して下さい。
SCP-001-JP-Re報告書を閲覧する。