摩天蜃気楼
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 財団フロント企業が入居している3ヶ所の高層ビルより、それぞれ最低3名の職員によってSCP-XXXX-JPの発生の有無を常に確認してください。もしSCP-XXXX-JP-1が確認された場合、直ちにその周囲10kmを飛行している航空機及びヘリコプターに連絡し、航空規制と称してSCP-XXXX-JP-1から半径1km以内の上空を飛行しないよう強く警告してください。
説明: SCP-XXXX-JPは東京都█████地区を半径1km以上離れた位置から観測した時に、実在しない高層ビルが観察される異常現象です。この非実在ビルはSCP-XXXX-JP-1と定義されています。
現時点では、SCP-XXXX-JPの出現条件はランダムであると推察されます。
SCP-XXXX-JP-1の出現位置、デザイン、階数に統一性はなく、一見通常の高層オフィスビルのように見えます。しかし、周囲の高層ビルと█████地区の地図から位置を推定すると、SCP-XXXX-JP-1は地理的に存在が不可能な位置に発生しています。 またSCP-XXXX-JP発生時、光学望遠鏡を用いてSCP-XXXX-JP-1を観察したところ、内部は無人ではなく、SCP-XXXX-JP-2と定義される推定███人のスーツを着用した男女が確認できました。
実体の把握のため、これまでにSCP-XXXX-JP-1の基部の特定を行う調査を行いましたが、どの調査も失敗に終わっています。
調査記録: 以下がSCP-XXXX-JPに対する調査記録です。
調査記録XXXX-JP-1 - 201█/03/16
対象: SCP-XXXX-JP-1
調査員: 遠藤研究員、近藤研究員
調査方法: █████地区から1.5km離れた位置より遠藤研究員がSCP-XXXX-JP-1を確認した後に、近藤研究員に対して携帯電話で連絡を行い、SCP-XXXX-JP-1が存在すると考えられる周辺を捜索させる。
結果: 遠藤研究員からはSCP-XXXX-JP-1が確認できているにもかかわらず、近藤研究員はSCP-XXXX-JP-1の存在を確認できなかった。また近藤研究員の報告ののち、遠藤研究員がSCP-XXXX-JP-1から一度視線を外したところ、SCP-XXXX-JP-1が消失した。
調査記録XXXX-JP-2 - 201█/05/14
対象: SCP-XXXX-JP-1
調査員: 遠藤研究員
調査方法: █████地区から1.2km離れた位置から遠藤研究員がSCP-XXXX-JP-1を確認した後に、遠藤研究員自身がSCP-XXXX-JP-1を目視しながらSCP-XXXX-JP-1の基部まで陸路で接近する。この際に瞬きによるSCP-XXXX-JP-1の消失を防ぐために、視線と同軸となるカメラをヘルメットに取り付け、遠藤研究員に被せる。
結果: 陸路ではどのような経路を辿ってもSCP-XXXX-JP-1が他の高層ビルなどの遮蔽物に重なってしまうことが判明した。SCP-XXXX-JP-1の存在する区域から半径1km以内において、遮蔽物によってSCP-XXXX-JP-1が完全に隠れたところで、SCP-XXXX-JP-1が消失することが確認された。
調査記録XXXX-JP-3 - 201█/09/03
対象: SCP-XXXX-JP-1
調査員: 遠藤研究員、ヘリコプターパイロットとその補佐
調査方法: █████地区から2.5km離れた位置より遠藤研究員がSCP-XXXX-JP-1を確認した後に、ヘリコプターに搭乗し、SCP-XXXX-JP-1が他の高層ビルに隠れない経路を辿りながら接近する。
結果: 以下の音声記録を参照ください。
<音声記録 13:45>
遠藤研究員: ████████ビル屋上よりSCP-XXXX-JP-1を確認。これより対象への接近を開始します。
調査本部: 了解した。SCP-XXXX-JP-1の様子はどうだ?
遠藤研究員: 異常はありません。光学望遠鏡で内部を確認したところSCP-XXXX-JP-2は事務作業を行っている様です。また、SCP-XXXX-JP-1の外壁に窓清掃用のゴンドラとSCP-XXXX-JP-2と思われる作業員2名が確認できます。
調査本部: 了解。SCP-XXXX-JP-1の半径1kmまで接近せよ。健闘を祈る。
<遠藤研究員搭乗のヘリコプターがSCP-XXXX-JP-1の半径1kmまで接近>
調査本部: 現状を報告せよ。
遠藤研究員: 異常ありません。ただビルの清掃員とSCP-XXXX-JP-2の数名がこちらに気付いたようでヘリコプターを見ています。
調査本部: 了解。半径500mまで接近せよ。
<遠藤研究員搭乗のヘリコプターがSCP-XXXX-JP-1の半径500mまで接近>
調査本部: 現状を報告せよ。
遠藤研究員: SCP-XXXX-JP-2のほとんどがこちらを見ています。また、SCP-XXXX-JP-1の形状に少し違和感があります。あまりうまく表現できませんが、ビルの基部に近づくにしたがって徐々に薄く歪んでいるように感じられます。しかし、肝心の基部は手前のビルによって隠れてしまっていて確認できません。
調査本部: 了解した。半径250mまで接近せよ。
半径250m地点において調査本部が遠藤研究員へ報告を要求したが、返答は無く、以後音声記録はヘリコプターの駆動音のみとなった。ヘリコプターはSCP-XXXX-JP-1上空を通過した後に█████地区から1.1km離れた██████████ビル屋上へと着陸した。駆け付けたエージェントによって調査が行われたが、ヘリコプター内部は無人であり、通信機器のみが置かれていた。監視カメラの映像より、ヘリコプター着陸後ビル屋上から降りる人物は確認できなかった。
補遺1: 調査記録XXXX-JP-3の結果より現在の特別収容プロトコルが作成されました。さらなるSCP-XXXX-JP-1基部調査に関しましては未だ計画されていません。
補遺2 : 基部調査XXXX-JP-3の後に新しく発生したSCP-XXXX-JP-1の内部を光学望遠鏡により観察したところ、事務作業を行う遠藤研究員と思われるSCP-XXXX-JP-2を発見しました。この結果より、消失した職員はSCP-XXXX-JP-1内部に取り込まれていると予想されます。
補遺3 : 特別収容プロトコルに対する人的コストの削減のため、発生したSCP-XXXX-JP-1の観察を高性能カメラに代行する試験が行われました。この試験におきまして、財団職員による目視でのSCP-XXXX-JP-1の観察を終了し、カメラ撮影へ切り替えを行った13分後にSCP-XXXX-JP-2の挙動に変化が見られました。変化後の様子につきましては画像ログを参照してください。この結果より収容プロトコルに対するカメラを導入は管理委員会によって現在検討中です。
201█/12/13 20:25 SCP-XXXX-JP-1
201█/12/13 20:25 SCP-XXXX-JP-1
それさえあれば
アイテム番号:SCP-XXX-JP-EX
オブジェクトクラス:Explained
特別収容プロトコル:SCP-XXX-JP-EXは既に地球全体に拡散され、収容は不可能です。また、SCP-XXX-JP-EX-1の収容はSCP-XXX-JP-EXの収容に対して無意味であると考えられるため、実行されていません。
説明 : SCP-XXX-JP-EXは極めて強い感染性を持つミームです。調査時点でSCP-XXX-JP-EXは既に拡散された状態であったため、発生元の特定は不可能です。
SCP-XXX-JP-EXは単数の人間に曝露しても異常は見られませんが、複数人の人間がSCP-XXX-JP-EXに暴露されると、その異常性が発現します。
SCP-XXX-JP-EXの異常性は5段階に区別されます。
フェーズ1:感染者(以後、SCP-XXX-EX-JP-aと表記)はSCP-XXX-EX-JP-a群内でコミュニティを形成し、SCP-XXX-JP-EX-1を作成します。SCP-XXX-JP-EX-1はSCP-XXX-JP-EXのミーム的性質を内蔵する物体であり、初期のSCP-XXX-JP-EX-1は身近な物品を材料として作成されます。SCP-XXX-JP-EX-1を作成したSCP-XXX-EX-JP-a群は他の非感染者コミュニティと比較して効率的に生活を行うことが可能となります。そして、非感染者コミュニティに対してSCP-XXX-JP-EX-1を譲渡することによってSCP-XXX-JP-EXへの感染の拡大を図ります。
フェーズ2: SCP-XXX-EX-JP-a群はあらゆる物品に対してSCP-XXX-JP-EXを尺度として思考するようになります。この尺度は不明な手段によってSCP-XXX-EX-JP-a間を伝達し、SCP-XXX-EX-JP-a群全体に共有されます。
フェーズ3:SCP-XXX-EX-JP-a群はあらゆる物行為に対してもSCP-XXX-JP-EXを尺度として思考するようになります。さらに、以前よりもはるかに多くのSCP-XXX-JP-EX-1が作成され、SCP-XXX-JP-EXの感染速度が急激に上昇します 。また、SCP-XXX-JP-EXのミーム的特性はSCP-XXX-JP-EX-1の存在数に依存しているため、SCP-XXX-JP-EX自身も以前と比較してより強力になります。
フェーズ4:SCP-XXX-EX-JP-a群はSCP-XXX-JP-EXの増大を目的とした自己循環プロセスを構築します。自己循環プロセスの過程において
SCP-XXX-JP-EXのミーム的特性をさらに強化するために、SCP-XXX-JP-EX-1は簡素化されます。
補遺1 : 当初SCP-XXX-JP-EXは人類に対して有益なSCiPであると判断されており、収容は行われていませんでした。しかし、事案SCP-XXX-JP-EX-Aによって
事案SCP-XXX-JP-EX-A : 1770年代より、地球上に設置されている全ての財団の重力計において、重力加速度が微小に減少していることを確認しました。当初この現象の原因は地球周辺の重力場の変化であると考え調査を行いましたが、地球全体の重力を減少させるような重力場は存在しませんでした。そのため、重力加速度の減少は地球自身の質量の減少による影響であると判断され調査が行われました。
南極点に設置されている重力系の重力加速度の時間推移については以下の表を参照してください。
〇〇博士の提言
シフトチェンジ
アイテム番号:SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:情報チームは監視カメラ及び車載カメラなどの情報よりSCP-XXXX-JPの発生の有無を常に監視してください。SCP-XXXX-JPが発生した場合、機動部隊み-52(野次馬)が出動し現場の保全・監視を行い、機動部隊れ-23(レッカー代行)がSCP-XXXX-JP-1の回収を行ってください。回収されたSCP-XXXX-JP-1はサイト-8186において検査が行われます。警察に対してはSCP-XXXX-JP-1と同型の車両をSCP-XXXX-JP-1と外見上一致するように破損させ提出してください。
説明:SCP-XXXX-JPは主に自動車などの車両(SCP-XXXX-JP-1と定義)に対して発生するブレーキとアクセルが入れ変わる異常現象です。SCP-XXXX-JPが発生した場合、高い確率で重大な交通事故が発生します。SCP-XXXX-JPの発生頻度は運転手が運転手が高齢になるにつれて増加し、飲酒などによって注意力が散漫になった際に極めて高い頻度で発生することが調査によって判明しています。当初は運転手の不注意が原因であると考えられていましたが、事象XXXX-Aの発生によってSCPと認定されました。事象XXXX-Aの確認にはセキュリティレベル3以上のクリアランス、又はセキュリティレベル4以上のクリアランスを持つ3名の許可が必要となります。
現在、地球上ではSCP-XXXX-JPが原因の可能性がある事故が██████件発生しています。
その一部を抜粋したものを以下に示します。
発生時刻 |
運転手 |
説明 |
1986/07/06 |
60歳 男性 |
国道███号線を走行中にSCP-XXXX-JPが発生したと推察される。車はガードレールを突き破り約60m下へ落下した。運転手の男性は死亡した。 |
1986/07/16 |
28歳 男性 |
デトロイト市街地においてSCP-XXXX-JPが発生したと推察される。自動車は正面の店舗を突き破り停止した。運転手と店舗にいた男性が軽傷を負った。運転手の男性の呼気からは基準量を上回るアルコールが検出された。 |
1991/11/29 |
32歳 男性 |
キルギス共和国首都ビシュケスク郊外を運転中にSCP-XXXX-JPが発生し、自動車に衝突した。衝突された自動車に乗っていた男性が死亡した。 |
1997/08/31 |
—- |
パリ市街を走行中にSCP-XXXX-JPが発生。自動車は中央分離帯のコンクリートブロックに衝突した。この事故によって運転手含め男性2名、女性1名が死亡し、男性1名が重傷を負った。 |
2011/11/30 |
76歳 女性 |
道央自動車道において左カーブ部分で減速をしようとしたところ、SCP-XXXX-JPが発生しカーブを曲がり切れず中央分離帯の樹木に衝突したと推察される。運転手の女性と同乗していた男性が死亡した。 |
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2014/11/13 |
61歳 男性 |
神戸市街の交差点においてSCP-XXXX-JPが発生し前方の乗用車の側面に追突したと推察される。追突された乗用車に乗っていた男性が死亡し、隣の女性が軽症を負った。双方の運転手は無事であった。 |
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1986年7月6日に他のSCPに関する任務を終了した財団職員が自身の自動車に搭乗したとき、何度アクセルを踏んでも一切前進しない現象が発生しました。異常を感じた職員がブレーキペダルを踏んだところ車が急発進し、5m先の電柱へ衝突しました。職員の命に別状は無く、衝突した自動車は財団に回収されました。そのため、職員は徒歩で帰投しました。後のインタビューよりこの職員は自身の自動車を左アクセル右ブレーキに改造していたことが判明しました。
こんぼう論
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト81██の低危険物収容ロッカーに保管されています。SCP-XXXX-JPの周囲には最低5名の麻酔銃、警棒を装備した職員を配置し警備に当たらせてください。サイト81██にSCP-XXXX-JP-aが出現した場合、麻酔銃によって捕獲し調査を行ってください。現在、後述する事象によりSCP-XXXX-JPを放棄するべきか否かの議論がO5評議会によって行われています。
説明: SCP-XXXX-JPは長さ1.3m、重さ2.3kgの棍棒です。取っ手部分は主にオーク材が使用されており、打撃部分には様々な形状の金属が取り付けられることで殺傷力が高められています。SCP-XXXX-JPの異常性は、一部の対象に対して世界で発生している異常な現象及び不可解な事件は、元を辿るとSCP-XXXX-JPに辿り着き、SCP-XXXX-JPを保有する組織がその隠蔽工作を行っていると認識させる点にあります。このような認識を持った対象はSCP-XXXX-JP-aと定義されます。SCP-XXXX-JP-aはおよそ数ヶ月~数十年の間独自の手法で調査を行い、結論としてSCP-XXXX-JPへと辿り着きます。しかし、多くの場合SCP-XXXX-JPとの具体的な関係性はなく、SCP-XXXX-JP-aのこじつけであると判断されています。一方で、捕獲したSCP-XXXX-JP-aに対して入手したSCP-XXXX-JPの情報には必ず部分的に合致する箇所が見られます。
以下がSCP-XXXX-JP-aについての情報の抜粋になります。
SCP-XXXX-JP-a |
対処 |
説明 |
40代の男性 1名 |
警棒を持った職員3名で鎮圧 |
男性は勤務していた会社をリストラされており、そのリストラは秘密組織による陰謀であると供述している。また、その秘密組織はSCP-XXXX-JPに由来しており、SCP-XXXX-JPの破壊が秘密組織の崩壊につながると主張した。財団職員がSCP-XXXX-JPを調査したところ、口述していた秘密組織のトレードマークであるピラミッド状の構造が金属突起の一つから確認された。 |
白装束の集団 13名 |
麻酔銃を持った職員10名で鎮圧 |
白装束の集団は自分たちがSCP-XXXX-JPより発信されている毒電波によって苦痛を与えられていると主張した。SCP-XXXX-JPを調査したところ、電波を発信している様子は見られなかった。しかし、SCP-XXXX-JPの金属突起の一部からマイクロチップが回収された。データの内容は「あけましておめでとうございます」という若い女性の音声のループであった。 |
█████県警 警察官 5名 |
SCP-XXXX-JPまで案内し、情報を得た後に記憶処理 |
現在捜査している殺人事件において、被害者が残した解読不能な暗号に対して円周率内に存在するある特定の数列を作用させるとSCP-XXXX-JPとなると主張した。財団職員は警察官に対して円周率は任意の数列が含まれる旨を説明した。一方で、その殺人事件における被害者の打撲痕とSCP-XXXX-JPの金属突起の一部が一致した。 |
SWAT 12名 |
機動部隊36名が出動 1時間後に鎮圧 |
[編集済み] |
[ 不明 ] |
O5により審議中 |
サイト81██において大気圏外から次のような信号が受信された。「この宇宙における異常現象はすべてSCP-XXXX-JPによって引き起こされている。SCP-XXXX-JPを保有する組織はSCP-XXXX-JPを放棄せよ。さもなければ、惑星もろともSCP-XXXX-JPを破壊する。」 |
補遺: 現在、地球外に存在するSCP-XXXX-JP-aが実際に惑星を破壊できるほどの技術を持った組織なのか、それとも地球外生命体中のマイノリティであるのかの調査が行われています。
収容経緯: 1███/██/██ 財団の異常現象調査チームがこれまでに発生した全ての異常現象はハルトマン認識解析を行うと特定のパターンを得ることができ、そのパターンを聖杯型量子情報分析システムに代入したのちに出現した反フラクタル事象構造の相似安定基底状態をシュレーディンガー・ハイゼンブルグ存在調和方程式に代入したところ、SCP-XXXX-JPが原因となっていると結論付けられました。財団がSCP-XXXX-JPの位置を調査したところ、ある組織がSCP-XXXX-JPを保有していることが判明したため、機動部隊を派遣しSCP-XXXX-JPを収容しました。収容後、SCP-XXXX-JPの調査を行いましたが、特筆した異常性は見られず、低危険度収容ロッカーに保管しました。
追記: 捕獲したSCP-XXXX-JP-aに対して、どのようにしてSCP-XXXX-JPの収容位置を把握したのかについて尋ねたところ、全員がこのように口述しています。
曙
私たちは一つになった。
思えば、人類が楽園から追放されてからの歴史は壁の歴史であった。
まず、私たち土や木や草で壁を作り、雨風を凌いだ。生きるために。
次に私たちは村や町の周囲に壁を作り、外敵に備えた。安全に暮らすために。
さらに私たちは人種や階層、役職などの見えない壁を作り、それぞれの壁の中で生活をした。効率良く暮らすために。
壁は幾度となく作られた。一方で壁が取り払われることは稀であった。
作るよりも壊す方が遥かに簡単であったにも関わらず。
私たちは壁を隔てることで安心を得ていたのだった。
私が普段何気なく生活していた時にも、地球のどこかでは人々が殺し合い、寒さに震え、飢えに苦しんでいることを知っていた。
しかし、私がその人たちのことを気にかけることはほとんどなかった。いや、心の中ではそういった場所と壁を隔てた平和な環境に自分が存在することに安堵していたのかもしれない。
人に限った話ではない。今思えば私が生活していた、数々の壁を構築し作り上げられた平和な環境も狂気に満ち溢れていた。