枝角のあれやこれやなんやかんや
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注意: 当該オブジェクトの特異性が及ぼす影響につき、当報告書内では、日本語の仮名「あ段9行目」の2種類の文字を便宜的に「@」で表します。
 
 
 
アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトク@ス: Safe Euclid Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPとその類似書籍及び各写本は、サイト-8149の紙媒体オブジェクト保管用書庫に収容されています。研究目的を除き、全書籍の持ち出しは禁止されています。書庫へは研究チームの許可と、それとは別にセキュリティクリア@ンスレベル3以上の職員2名の許可を得て入室して下さい。万が一の影響を考慮し、内容を確認する必要がある場合は写本を利用して下さい。SCP-XXX-JP及び類似書籍本体を確認する必要がある場合は、Dク@ス職員を使うよう留意して下さい。

SCP-XXX-JP及び類似書籍はその全個体が収容済みとされていますが、万が一別個体と思わしい書籍を発見した場合は、決して内容を読まずに最寄りの財団サイトに通報・移送して下さい。

説明: SCP-XXX-JPは、表紙と背表紙に『@1抜き言葉のすすめ』と印刷された、全212ページの文庫本サイズの書籍です。組成は一般的な紙とインクであり、特筆すべき点はありません。また奥付が存在しないため、著者や出版社等の書籍情報は一切不明です。20██/04/██、奥付の出現が確認されました(詳しくは下記補遺2参照の事)。本文内容については、写本作成のため読み進めた複数のDク@ス職員へのインタビューによって「@抜き言葉使用の賞賛及び、@を使用した正しい日本語文法への罵倒」「@抜き言葉使用の利点と発展の歴史」「@抜き言葉の正しい使用法とその例文」等である事が判明していますが、各分野を専門とする研究者によってその正当性は完全に否定されています。

SCP-XXX-JPの第1の特異性は、SCP-XXX-JPについての言語表現において発生します。SCP-XXX-JPについて言語の関わるいずれかの方法で表現・理解を試みる際、当該人物は仮名五十音における「あ段9行目」の2文字を認識・表記・発音出来ません。この影響は日本語表現全般に及び、アルファ ベットや漢字を用いた表記の読み、電子端末での入力作業にも影響します2。全文読了しない限り、SCP-XXX-JP内に表記された「@」の字については通常通り認識可能ですが、SCP-XXX-JPの音読及びSCP-XXX-JPへの「@」の字の書き込みについては、この特異性の影響を受けます。

SCP-XXX-JPの第2の特異性は、SCP-XXX-JP全文を読了した人物(以下、暴露者)に発生します。暴露者はSCP-XXX-JP読了の瞬間より、「あ段9行目」の文字表現についての概念と認識能力を恒久的に喪失します。この影響は記憶処理によっても取り除く事は不可能です。またこの特異性については、SCP-XXX-JPの写本の読了では発生しない事が確認されています。

補遺1: 20██/03/██、財団フロント 企業の経営する書店において、SCP-XXX-JPに類似した特異性を持つ書籍が1冊発見・回収されました。当書籍は『理詰めの法廷』と題された奥付のない漫画単行本に見えますが、当書籍に関する言語表現においては「い段9行目の文字」についての認識・表記・発音が阻害されます。またD-XXX-1とは異なるDク@ス職員に全編を査読させた所、「い段9行目の文字」に関する概念と認識の喪失が確認されたため、当該書籍は便宜的にSCP-XXX-JP-βと分類されました。20██/03/██現在、SCP-XXX-JP-β写本の作成が進行中である他、SCP-XXX-JPの暴露効果との重複調査については許可申請中です。
尚、当該書店の書籍発注書や、書籍を納品している出版社・取次会社の各種記録が調査されましたが、SCP-XXX-JP-βに関する記述は一切確認出来ませんでした。

「あ段9行目」の次は「い段9行目」。嫌な予感しかしないな -██博士

補遺2: 20██/04/██、白紙であったSCP-XXX-JPの奥付部分に、記述の出現が確認されました。以下の記述は、観取した研究員によって書き写されたものです。

"Symbol Spoilers series"
 
第16段 『[あ段4行目の平仮名]ぬきのふしぎ』 series初の絵本。お子様の教育に!
第26段 『楽しい[あ段6行目の平仮名]なしができる本』 口下手なあなたに贈る、飽き@れない話題集。
第27段 『火消 ~誕生と歴史~』 江戸の町を守った消防組織をリアルに描く時代小説。
第41段 『@抜き言葉のすすめ』 美しくあた@しい、日本語のすすめ。[当書]

第42段 『理詰めの法廷』 最新作!法廷を舞台に巻き起こる、本格推理サスペンスコミック!

「世界にたった一つだけ」をあなたに サイン堂

書けない文字があるという事は、SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-β以外の3冊も現存すると見ていいだろうな。当補遺作成時点ではSCP-XXX-JP-βが最新作であるようだが、それは言い換えれば、「う段9行目」以降も続いていくという予告だ。いや、何も日本語に限定せずとも、例えばアルファ ベットやキリル文字・ギ リシャ文字なんかに影響を及ぼす「新作」が追加される懸念さえある。嬉しくない予感的中だな -██博士

「サイン堂」を名乗る存在については、その規模・所在・形態に関して、日本国内を中心に調査が進行中です。上記で言及されている3冊を始め、未発見・未収用のSCP-XXX-JP類似書籍が存在する可能性が高いとされ、SCP-XXX-JPオブジェクトク@スのEuclidへの変更が決定されました。

補遺3: 20██/02/██、SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-βを含めた、各清音・濁音・半濁音・撥音に影響する全71種類の類似書籍を収容完了しました。それに伴い、SCP-XXX-JPのオブジェクトク@スはSafeへと差し戻されました。尚2016年時点で存在やその示唆は確認されていませんが、SCP-XXX-JP及び収容済み類似書籍の別個体と、日本語以外の各文字や倍濁音・踊音・倒音に影響する類似書籍の捜索も継続されています。

一部の言語学者の間では、「ぢ」「づ」の文字は今後百年の内に絶滅するだろうなどと言われている。それだけ現代仮名遣いにおける使用頻度が低 いという事だが、それは倍濁音・踊音・倒音とて同じだ。そして、滅多に使われないだ行の2音にさえご丁寧に特異性を持つ書籍が作成されているという事は、「 」「 」「 」に関する類似書籍が存在してもおかしくはない -██博士
 
 
 
警告: 倍濁音「 」・踊音「 」・倒音「 」の認識が不可能である職員は、直ちにサイト-8149に通報の上、記憶のサ ルベージと再構築試行処置を受けて下さい。過去のどこかの時点で、倍濁音・踊音・倒音に影響するSCP-XXX-JP類似書籍を読了した疑いがあります。


   
   
【著者ファイルに関するこまごま】

劇団SCorPioの講演資料

劇団SCorPio 舞台「翼あるものへ」 第3回公演

日時: 20██年6月██日15:00~
場所: ██県立シティホール
チケット: プレミアム席…6,300円 一般席…3,400円
※12歳以下のお子様は半額にて観覧頂けます。詳細はチケット販売サイトにてご確認下さいませ。

 
 
「その日、ぼくたちは、初めて空を見た。」
 
 
ヒトの滅びた遠い未来。動物たちは手に入れた真の自由と引き換えに、空位となった生態系の頂点を争う荒んだ時代を生き抜いていました。海中ではそれまで殴られ続けていたサメたちが、大陸ではねこや恐ろしいオオカミ、犬のようななにかが熾烈な争いを繰り広げる毎日。そんな中、翼を持つ鳥たちは方々の小さな島に住み着き、静かに平和に暮らしていました。
コノハズクの子供、クサツもその一羽です。しかし、クサツは好奇心旺盛な男の子。島の外の世界に憧れ、いつか友達のホオジロのゴヤシと一緒に大陸の空を飛ぶ事を夢見ていたのです。

「大きくなったら、一緒に世界を見る旅に出よう」
「うん、いつか、絶対。約束だよ」

しかしとある日の島に、マオと名乗る一羽のさすらいペンギンが流れ着いた時から、事態は不穏な方向へと向かい始めます。マオが大陸から逃げてきた理由だという、海の向こうから現れ戦場を荒らし回るトカゲ。空を飛ぶミノカサゴたちの島への急襲。そして、どこかの野原で鋭く鳴き声を上げるという、暮れ泥む鳳の目覚め――

おかしくて、不思議で、ちょっと切ない――これはとある少年たちの、ひと夏の成長物語。
 
 
*キャスト*

クサツ: 植木 円 ゴヤシ: 雪原 アネット
コウノトリ: 立尾 識 ハクチョウの仔: 扇 未来
歌うブンチョウ: 肥後 雲助 マオ: 北見 昴

ねこ: 扇 未来 世にも恐ろしいオオカミ: 立尾 識
犬ではないなにか: 肥後 雲助 ミノカサゴ軍(声の出演): 枝角 レイジ

Special Guests
最強のトカゲ: ???
暮れ泥む鳳(声の出演): ???

*スタッフ*

脚本・演出: 立尾 識 音楽・音響: 蓑 金糸雀
衣装: 斑田間 葵ほか 照明: 五反田 勇二郎
小道具: 北見 昴ほか 大道具造形: 角田 鶴臣ほか


 
 

注意:入場は開演30分前より開始致します。
観劇に際しましては、携帯電話の電源をお切り下さい。
また、飲食物の持ち込みはご遠慮下さい。
 
その他のお問い合わせはこちらまで Tel: ████-██-████
劇団ホームページ: http://theatrical_company_scorpio████████


 
 

 
 
 
枝角近影.jpg

近影。研究室にて俯せに寝落ちする姿をAgt.立尾が撮影

名前: 枝角靈璽(Reiji Edatsuno)

SCレベル/クラス: 2、所により3/Cクラス

専門: 生物学(遺伝学)、記号学、比較神話学、ユング心理学

主な職務: SCPオブジェクト研究、(劇団SCorPio一員として)職員への基礎演技指導

所在: サイト-81██

これまでに確認された通称: 副座長、メガネゾンビ、劇団ぼっち、悪筆キラー、蓮コラ嫌い絶対殺すマン、ミスター/ミズ・りょうせいぐゆう

来歴: ████/██/██生まれ(20代後半)、新潟県出身、性別不詳。身長168cm、体重57kg(両暫定)。地元大学の教育学部卒業後、学生時代から所属していた地元小劇団「オリオン座」にて本格活動開始。20██年のとある公演中、小道具及びセリフとして用いられた2種のSCPオブジェクトに同時に暴露、複合的な特異性を獲得。事態収拾のため駆け付けた財団エージェントによる捕縛・尋問を経て、正式に研究員補佐として雇用される。のちに昇格。現在は一般研究員兼、特殊工作部隊ほ-2("アンタレス")副長=劇団SCorPio副座長。

人物: 基本的な態度は穏便で人当たりがよく、誰に対しても笑顔と敬語で応対します。また自らの職務に対しても真摯であり、財団忠誠度テストにおいても毎回高い成績を記録しています。ただし私生活や人間関係においては、物臭かつ利己的・気ままでからかい好きな本性一面4が散見されます。

枝角の技能として特筆すべきは、劇団員時代を経て未だ健在である演技力です。特に「何らかのテーマを持つ1人の人間5」を演じる際はその技能が如何なく発揮され、特殊工作部隊ほ-2("アンタレス")における演技指導任務にも大いに寄与しています。尚、本人は動物の演技(仕草や鳴き声等)の方が自信があるようですが、こちらはリアルさ故に「気持ち悪い」「なんか憑依してるのかと思った」「祓え」「誰か宮司か巫女呼んで来い」などと言われ概ね不評です。

また枝角は、劇団員時代に被ったSCP-███およびSCP-███-JPの複合的暴露効果により、その生命基盤の核が元SCP-███であった細い赤縁のメガネに固定されています。人体部位は枝角曰く「いわばテロメア異常のES死細胞」であり、メガネが破損しない限りは、どこに如何なる傷を負ってもメガネを中心に即時再生が可能です。それ以外の代謝や五感も表面上は正常に働いているように見えますが、少なくとも現在の枝角に食事・排泄の必要性はありません。また、睡眠・気絶等で枝角が意図せず意識を失ったり、人体部位からメガネが離れたりした場合、人体部位は数分~数十分の間通常の死体と同等の性質を表し、のちに空中に霧散し消失します。枝角自身が意図的に人体部位を生成・消去する事も可能です。またメガネ自体にも正常な人体と同速程度の再生能力を有し、メガネのみの状態でも不明なプロセスによって発話が可能です。

 皆さんだって、髪や爪を切ってもほっとけばすぐに伸びるでしょう。言い換えるなら、皆さんにとっての脳や心臓や大動脈が、私にとってはレンズでありフレームであり弦である。つまりはそういう事、ただそれだけの事です-枝角博士

注意事項1:枝角はその性格上、己の利益を確保したり人を煙に巻いたりするためには、自らの持てる技術や特異性の駆使を躊躇いません。以下の所業は一例ですが、その奇行・蛮行には十分注意して下さい。

注意事項2: 枝角の下の名前の目視は、特定の恐怖症6を持つ人間に恐慌的な反応を促します。この恐怖症を患う職員は、枝角の下の名前の漢字表記、とりわけ手書き文字や、解像度が高いまたはフォントサイズの大きい電子文字を極力目視しないようにして下さい。主に記述の煩雑さを理由に、正式書類以外では枝角本人からも「レイジ」表記が推奨されています。