- 超闘争試験
- SCP-KAKUGE-JP-J 超闘争試験
- コピ・メラヤカン
- 微笑みで収容を
- 永遠の000-W
- アクアノートの溜息
- ワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™
- 諸法は誰かが見た夢の如し
- SCP-TCG-JP-Jについてのやり取り他記録
- 画面説明
- 保護力ゲージ:各実験対象の体力を示します。このゲージを減らされて0になってしまうと、対象は自身の存在を保護できず実験に敗北します。
- 確保力ゲージ:各実験対象の気力を示します。敵性存在確保のために磨き上げた強力な収容技法を対象が使用する際に、このゲージを消費します。
- 異常性カウンタ:各実験対象の潜在的な異常性を示します。特定の収容技法を行った際に増加し、所有していると固有の特殊な行動が可能になります。
- 共通収容技法
- 賛成投票(Up Vote):相手に賛辞を贈ったり士気を上げるコメントをするなどして、確保力と異常性を増加させる行動です。時間がかかりますがその後の展開が良くなります。(スタートボタン)
- 反対投票(Down Vote):相手の攻撃を否定し、突き放す行動です。理不尽な展開を簡単に拒絶することができます。(ガード中にD)
- 廃棄措置(Decommissioning):自分の立ち位置を捨てて、前後に新たなポジションを取る行動です。現在の展開にどうしようもなくなった際、完全無敵で移動し、新たな展開を作ることができます。(ガード中にA+B)
- 強制終了(Forced Termination):特定タイミングで現在の行動を中断し、別の行動を開始する技法です。収容技法ごとに強制終了可能なタイミングと条件は異なります。(特定の特別コマンド行動中に別のコマンドを入力)
- 特別コマンド行動(Special Command Performance)
- Thaumielクラス特別コマンド行動:簡便な操作で使用できる、実験に有用な収容技法です。
- Dクラス特別コマンド行動:異常性を消費して行なう特殊な収容技法です。
- Safeクラス特別コマンド行動:通常攻撃の上位にある、基本的な収容技法です。
- Euclidクラス特別コマンド行動:気力を消費して行なう、敵性存在確保のための強力な収容技法です。
- Keterクラス特別コマンド行動:全ての異常性と多くの気力を消費する、超強力な収容技法です。
エージェント・立花 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 財団神拳+我流拳法 | |
紹介 | 高い空中機動力と独特の三種の神器を持つオールラウンダー。中二時代から磨き上げてきた実力を見せつけろ! | |
消照 闇子 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 闇と包丁を用いた暗殺術(財団職員の認識) | |
紹介 | 闇を使った瞬間移動能力と包丁による高い攻撃力が持ち味。圧倒的な攻めで財団の恐怖を相手に刻み込め! | |
エージェント・雛倉 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 銃火器+総合格闘術 | |
紹介 | 豊富な飛び道具と体術を学んだバランスの良い期待の新人。幼少期から親しんできた炎で皇女たる威厳を示せ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
ワンインチ・スタングレネード | 近距離で←or→+C | |
右近の橘 | →+C | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
沙漠之鷹50AE基金会訂制(-D) | ↓↘→+AorBorCorD(ブレーキング可) | |
雛倉人間砲弾(-D) | ↓↓+AorBorCorD(異常性増加) | |
星火燎原(-D) | ↓↙←+AorBorCorD | |
肉弾滑腔砲(-D) | →→+AorBorCorD | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
全弾掃射 | ↓↘→↓↘→+AorBorCorD | |
雛倉榴弾パンチ | ↓↙←↓↙←+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
Mein Leben war sinnlos | A+B+C |
朝夕 まづめ | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 護身術 | |
紹介 | 高い機動力と性能の高い技の数々を備えたお天気お姉さん。サイトの第一の番人として怪しい者は即座に排除だ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
雨背負 | 近距離で←or→+C | |
短い朝、長い夜 | →+A | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
疾雷耳を掩うに及ばず/迅電目を瞑るに及ばず | ↙or↘+A+B | |
雨車軸の如し~分龍の雨(-D) | AorBorCorD連打後↓↘→+AorBorC | |
雲梯天に搭る(-D) | ↓↓+AorBorCorD | |
飛竜雲に乗る(-D) | 空中で↓↙←+AorBorCorD | |
紅炉上一点の雪(-D) | 近距離で↓↙←+AorBorCorD(異常性増加) | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
孤独の朝 | ↓↘→↓↘→+AorBorCorD(空中可) | |
柳に雷公 | →←↙↓↘→+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
茜色の特異点 | A+B+C |
鳴蝉 時雨 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 蝉への愛 | |
紹介 | 大量の蝉を用いた弾幕戦術とトリッキーな攻めが強力。蝉を使いこなし、全てを蝉色に染め上げろ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
これはとてもいいセミですよ? | 近距離で←or→+C | |
蝉翼 | 空中で↓+C | |
我決起して飛び楡枋に搶く | 空中壁際で↑ | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
蝉吐き(-D) | ↓↓+AorBorCorD(異常性増加) | |
蝉飛ばし(-D) | ↓↘→+AorBorCorD(空中可) | |
蝉爆弾(-D) | ↓↙←+AorBorCorD(空中可) | |
耀蝉の術(-D) | 蝉飛ばし、蝉爆弾中に↓押しっぱなし | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
鳴蝉潔飢 | 近距離で↓↘→↓↘→+AorBorCorD | |
怪奇! セミ女の間 | ↓↙←↓↙←+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
虫が単に鳴く如く、雨の降る時を視よ | A+B+C |
エージェント・後醍醐 勾 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | アイドルとしてのスキル | |
紹介 | 豊富な移動技と択攻めを持った投げキャラ。 鋼鉄のメンタルとフィジカルで観客を圧倒せよ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
殴るぞゴラ☆ | 近距離で←or→+C | |
スキーターラビット | →+B | |
アクセルターン | →+C | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
走り込みに行こっか☆(-D) | ↓↘→+AorBorCorD離す | |
コウは大丈夫だよ☆(-D) | ↓↙←+AorBorCorD(異常性増加) | |
表出ろゴラ☆(-D) | 近距離で↓↓+AorBorCorD | |
スタークラップ☆(-D) | 近距離で→←→+AorBorCorD | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
霧の向こうへ | ↓↘→↓↘→+AorBorCorD | |
Summer Live!!! | ↓↙←↓↙←+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
舞台への勾引 | A+B+C |
茅野 きさら | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 芸術(+作品被害) | |
紹介 | 設置型武器を絡めた突進、飛び込みの一撃離脱戦法が得意。芸術は武器じゃない? 現に炎上するからしょうがない! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
わらびもちのうた | 近距離で←or→+C | |
吾れ等の優雅な展覧会 | ←+AorB | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
作品被害(-D) | ↓↓+AorBorCorD | |
パレットナイフ(-D) | ←タメ→+AorBorCorD | |
使用していないはずの赤色(-D) | ↓タメ↑+AorBorCorD(異常性増加) | |
偽証(-D) | ↓↙←+AorBorCorD | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
いい加減にしないと…… | ↓↙←↙↓↘→+AorBorCorD | |
未完成の絵 | ↓↘→↗↑↓+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
閉じゆく野 | A+B+C |
and more…
[[/div]]
アイテム番号: SCP-KAKUGE-JP-J
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-KAKUGE-JP-Jは、実験用PCに保存して下さいサイト-81██の実験用ゲーミングPCに保存し、一切の複製及び再配布を行わないで下さい。担当者は1日1回SCP-KAKUGE-JP-Jを起動し、キャラクターセレクト画面および説明画面にて新規キャラクターが追加されていないかを確認し、追加されていた場合は報告書に内容を追記してください。
実験(ARCADE)をプレイする場合は、レベル3クリアランス以上の管理担当者の許可を得た上で、対戦記録を録画し、必ず報告してください。実験(ARCADE)のプレイは無期限に禁止されました。今後、新規キャラクターの動作確認は必ず対戦(VS MODE)または訓練(TRAINING)のみで行うようにしてください。
説明: SCP-KAKUGE-JP-Jは、『Super Combat Probation -超闘争試験-』と銘打たれた2D対戦格闘ゲームアプリケーションです。20██/█/██にサイト-81██の実験用ゲーミングPC内に突如アプリケーションが出現したことでその存在が確認されました。実験目的に█回の複製及び再配布が行われましたが、現在は全ての複製が削除済みです。
SCP-KAKUGE-JP-Jは不定期にゲーム内のプレイアブルキャラクターが自動増加する異常性を有しており、現在のところプレイアブルキャラクターは345678体が確認されています。プレイアブルキャラクターは実在する財団職員または財団が収容するオブジェクトに関連していると考えられていますが、確認できた限りでは当該職員及びオブジェクトは全員このゲームの開発への関与を否定し存在も知らなかったと証言しています。
SCP-KAKUGE-JP-Jは実験(ARCADE)、対戦(VS MODE)、訓練(TRAINING)などのゲームモードを搭載しており、1~4人対戦にまで対応しています。Windows XP以降のOSを搭載したコンピューター上で動作確認済みです。対戦画面は854*480 pixelであり、ハイレゾ画質です。操作は4+1ボタンに方向キーを組み合わせて行い、設定(OPTION)にてボタンコンフィグを行うことで、ゲームスティック、パッドを使用することもできます。キャラクターは3Dモデルにモーションを付け、2Dレンダリングされて製作されたと考えられています。
実験(ARCADE)ではプレイアブルキャラクターを選択すると、固有のストーリーが紹介された後、CPUが操作する各キャラクターとの対戦を行い、最終的に隠しキャラクターであるラスボスとの対戦を行うことになります。ラスボスに勝利するとそれぞれのストーリーの後半部が明らかとなり、起動画面に戻ります。
プレイアブルキャラクターのストーリーは様々ですが、一貫して「世界に限られたキャラクターしか存在しなくなり、互いに戦うことでその原因を探らざるを得なくなった」という、何らかのK-クラスシナリオの発生が示唆される点は共通しています。
- 画面説明
- 保護力ゲージ:各実験対象の体力を示します。このゲージを減らされて0になってしまうと、対象は自身の存在を保護できず実験に敗北します。
- 確保力ゲージ:各実験対象の気力を示します。敵性存在確保のために磨き上げた強力な収容技法を対象が使用する際に、このゲージを消費します。
- 異常性カウンタ:各実験対象の潜在的な異常性を示します。特定の収容技法を行った際に増加し、所有していると固有の特殊な行動が可能になります。
- 共通収容技法
- 賛成投票(Up Vote):相手に賛辞を贈ったり士気を上げるコメントをするなどして、確保力と異常性を増加させる行動です。時間がかかりますがその後の展開が良くなります。(スタートボタン)
- 反対投票(Down Vote):相手の攻撃を否定し、突き放す行動です。理不尽な展開を簡単に拒絶することができます。(ガード中にD)
- 廃棄措置(Decommissioning):自分の立ち位置を捨てて、前後に新たなポジションを取る行動です。現在の展開にどうしようもなくなった際、完全無敵で移動し、新たな展開を作ることができます。(ガード中にA+B)
- 強制終了(Forced Termination):特定タイミングで現在の行動を中断し、別の行動を開始する技法です。収容技法ごとに強制終了可能なタイミングと条件は異なります。(特定の特別コマンド行動中に別のコマンドを入力)
- 特別コマンド行動(Special Command Performance)
- Thaumielクラス特別コマンド行動:簡便な操作で使用できる、実験に有用な収容技法です。
- Dクラス特別コマンド行動:異常性を消費して行なう特殊な収容技法です。
- Safeクラス特別コマンド行動:通常攻撃の上位にある、基本的な収容技法です。
- Euclidクラス特別コマンド行動:気力を消費して行なう、敵性存在確保のための強力な収容技法です。
- Keterクラス特別コマンド行動:全ての異常性と多くの気力を消費する、超強力な収容技法です。
エージェント・立花 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 財団神拳+我流拳法 | |
紹介 | 高い空中機動力と独特の三種の神器を持つオールラウンダー。中二時代から磨き上げてきた実力を見せつけろ! | |
消照 闇子 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 闇と包丁を用いた暗殺術(財団職員の認識) | |
紹介 | 闇を使った瞬間移動能力と包丁による高い攻撃力が持ち味。圧倒的な攻めで財団の恐怖を相手に刻み込め! | |
エージェント・雛倉 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 銃火器+総合格闘術 | |
紹介 | 豊富な飛び道具と体術を学んだバランスの良い期待の新人。幼少期から親しんできた炎で皇女たる威厳を示せ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
ワンインチ・スタングレネード | 近距離で←or→+C | |
右近の橘 | →+C | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
沙漠之鷹50AE基金会訂制(-D) | ↓↘→+AorBorCorD(ブレーキング可) | |
雛倉人間砲弾(-D) | ↓↓+AorBorCorD(異常性増加) | |
星火燎原(-D) | ↓↙←+AorBorCorD | |
肉弾滑腔砲(-D) | →→+AorBorCorD | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
全弾掃射 | ↓↘→↓↘→+AorBorCorD | |
雛倉榴弾パンチ | ↓↙←↓↙←+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
Mein Leben war sinnlos | A+B+C |
朝夕 まづめ | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 護身術 | |
紹介 | 高い機動力と性能の高い技の数々を備えたお天気お姉さん。サイトの第一の番人として怪しい者は即座に排除だ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
雨背負 | 近距離で←or→+C | |
短い朝、長い夜 | →+A | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
疾雷耳を掩うに及ばず/迅電目を瞑るに及ばず | ↙or↘+A+B | |
雨車軸の如し~分龍の雨(-D) | AorBorCorD連打後↓↘→+AorBorC | |
雲梯天に搭る(-D) | ↓↓+AorBorCorD | |
飛竜雲に乗る(-D) | 空中で↓↙←+AorBorCorD | |
紅炉上一点の雪(-D) | 近距離で↓↙←+AorBorCorD(異常性増加) | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
孤独の朝 | ↓↘→↓↘→+AorBorCorD(空中可) | |
柳に雷公 | →←↙↓↘→+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
茜色の特異点 | A+B+C |
鳴蝉 時雨 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 蝉への愛 | |
紹介 | 大量の蝉を用いた弾幕戦術とトリッキーな攻めが強力。蝉を使いこなし、全てを蝉色に染め上げろ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
これはとてもいいセミですよ? | 近距離で←or→+C | |
蝉翼 | 空中で↓+C | |
我決起して飛び楡枋に搶く | 空中壁際で↑ | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
蝉吐き(-D) | ↓↓+AorBorCorD(異常性増加) | |
蝉飛ばし(-D) | ↓↘→+AorBorCorD(空中可) | |
蝉爆弾(-D) | ↓↙←+AorBorCorD(空中可) | |
耀蝉の術(-D) | 蝉飛ばし、蝉爆弾中に↓押しっぱなし | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
鳴蝉潔飢 | 近距離で↓↘→↓↘→+AorBorCorD | |
怪奇! セミ女の間 | ↓↙←↓↙←+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
虫が単に鳴く如く、雨の降る時を視よ | A+B+C |
エージェント・後醍醐 勾 | ||
---|---|---|
格闘スタイル | アイドルとしてのスキル | |
紹介 | 豊富な移動技と択攻めを持った投げキャラ。 鋼鉄のメンタルとフィジカルで観客を圧倒せよ! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
殴るぞゴラ☆ | 近距離で←or→+C | |
スキーターラビット | →+B | |
アクセルターン | →+C | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
走り込みに行こっか☆(-D) | ↓↘→+AorBorCorD離す | |
コウは大丈夫だよ☆(-D) | ↓↙←+AorBorCorD(異常性増加) | |
表出ろゴラ☆(-D) | 近距離で↓↓+AorBorCorD | |
スタークラップ☆(-D) | 近距離で→←→+AorBorCorD | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
霧の向こうへ | ↓↘→↓↘→+AorBorCorD | |
Summer Live!!! | ↓↙←↓↙←+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
舞台への勾引 | A+B+C |
茅野 きさら | ||
---|---|---|
格闘スタイル | 芸術(+作品被害) | |
紹介 | 設置型武器を絡めた突進、飛び込みの一撃離脱戦法が得意。芸術は武器じゃない? 現に炎上するからしょうがない! | |
(画像抹消) | ||
Thaumielクラス特別コマンド行動 | ||
わらびもちのうた | 近距離で←or→+C | |
吾れ等の優雅な展覧会 | ←+AorB | |
Safeクラス特別コマンド行動(D版は異常性消費) | ||
作品被害(-D) | ↓↓+AorBorCorD | |
パレットナイフ(-D) | ←タメ→+AorBorCorD | |
使用していないはずの赤色(-D) | ↓タメ↑+AorBorCorD(異常性増加) | |
偽証(-D) | ↓↙←+AorBorCorD | |
Euclidクラス特別コマンド行動(確保力1~2消費) | ||
いい加減にしないと…… | ↓↙←↙↓↘→+AorBorCorD | |
未完成の絵 | ↓↘→↗↑↓+AorBorCorD | |
Keterクラス特別コマンド行動(異常性全消費・確保力3消費) | ||
閉じゆく野 | A+B+C |
and more…
実験者: エージェント・カナヘビ
被験者: エージェント・立花
日時: 20██/█/██
概要: 本オブジェクトの主人公キャラクターとして登録されていると思しき被験者を招聘し、SCP-KAKUGE-JP-Jの実験(ARCADE)をプレイさせた。
補遺1: いや、知りませんよ! なんですかこのゲームは! なんで毎度毎度こういうタイプのオブジェクトに私が関わらなくちゃいけなくなるんですか! - エージェント・立花
補遺2: 仕方あらへんやろ。現に立花ちゃんがこうしてゲームのキャラクターになっとるんやから。疑いを晴らすためやと思ってくれ。 - エージェント・カナヘビ
<実験開始>
被験者は実験(ARCADE)に先んじて訓練(TRAINING)のプレイを要求し、およそ5分間、自キャラクターの動作確認を行いました。
エージェント・立花: うわぁ、無駄に私の財団神拳を再現してますね。まあでも癖はありますが私は波動昇竜ですし、基本システムもK█Fベースっぽいんである程度やれると思います。小ジャンプに加えて私だけ二段ジャンプ出来るところを上手く使っていきたいですね。
実験(ARCADE)開始と共に自キャラクターのストーリーが紹介され、「朝起きるとサイト内や町中に、エージェント・立花以外の人間が誰も存在しなくなっており、原因を調べざるを得なくなった」ことが示されました。
エージェント・立花: ……K-クラスシナリオが発生したってことですよね。そして「白兵戦を繰り返すことでのみ異常の発生した原因に辿り着ける、と全キャラクターが直感でわかっている」わけですか。なんかこの時点で嫌な予感がするなぁ。いや、格ゲーだとよくあるんですよ、ラスボスの目的で……ね。
緒戦はCPUのレベルが低く、被験者は順調に勝ち進みました。
エージェント・立花: 同キャラ戦はまあ良いとして、闇子ちゃんもといSCP-835-JPまでいるじゃないですか! このゲーム一体何なんですか? いやまあそれを調べるための実験なんでしょうが……。
次第にCPUの反応が上がってくると、被験者は苦戦を強いられ、敗北を余儀なくされました。
エージェント・立花: あっ、██! 何だよ今の(削除済)! C超音割空掌ぜんぜん割り込みに使えないじゃん! もっとシステム理解して異常性の管理とDクラスムーブ上手くやらないと勝てないってことか……!
<記録終了>
メモ: 敗北にてラスボス戦を実施することができなかったため、被験者は更なる訓練(TRAINING)のプレイを要求しました。また同様の実験を各サイトにて実施するため、SCP-KAKUGE-JP-Jの複製と再配布が行われました。
以下の文書へのアクセスは、レベル4以上のクリアランスを保持した職員にのみに限定されます。
職員コードが認識されました。あなたの閲覧権限に応じた情報を開示します。
ラスボス:
説明の補足: SCP-KAKUGE-JP-Jの異常性には追加事項があり、被験者が実験(ARCADE)を勝ち進み、ラスボスに勝利してしまうと、被験者は『御先 稲荷』という人物が財団職員として存在していたのだという強固な確信を抱くようになってしまいます。
この状態になってしまった被験者は、例外なく『御先 稲荷』という人物を何らかの手段で救おうとする精神異常を来し、重大なクリアランス違反を含む危険行動に及びました。
この精神異常はクラスB以上の記憶処理にて除去することができますが、SCP-KAKUGE-JP-Jの再配布に伴いこうした危険行動を伴うインシデントが頻発したため、SCP-KAKUGE-JP-Jの複製及び再配布、また実験(ARCADE)のプレイは無期限に禁止されました。
実験記録-KAKUGE-█
実験者: エージェント・████
被験者: エージェント・██
日時: 20██/██/█
概要: 被験者はSCP-KAKUGE-JP-Jの実験(ARCADE)にてノーコンティニュークリアを達成した。
<実験開始>
被験者はミスの少ない立ち回りで実験(ARCADE)に勝利を重ね、ラスボス戦に到達しました。
エージェント・██: よっしゃ勝ったー! いやー、この御先ってキャラの超反応当身がめっちゃきつかったんですけどね。投げ主体でようやくですよ。
エージェント・████: ……ところで██ちゃん、この御先って、誰だかわかるか?
エージェント・██: いや、わかりません。別サイトの職員さんとか? でもゲーム内の私の勝利メッセージでは知ってる上で気遣ってるような感じですね……。
エージェント・████: このゲームのキャラ、基本的に実在の財団職員かオブジェクトが元になっとるみたいなんやけど、この女の子だけ、財団のデータベースに記録がないんよね。
ラスボス戦の開始と共に、ボスキャラクターの容姿が明らかとなりました。
エージェント・██: く、クジラノコエヲキイタオサキ!? なんですかこれ、なんかのチニクルフやつとか殺意に目覚めたやつとかと同じ強化キャラですか!?
エージェント・████: 髪の色が金から黒に、結っている本数が1から9本に。目が緑色に光って上半身の着物を肌脱ぎにしとるな……。
ラスボスの強力な飛び道具と苛烈な攻撃に被験者はラウンドを落としました。
エージェント・██: ぐああ! つ、強い! 異常性と確保力の増加速度がおかしいし、Keterクラス特別コマンド行動が全画面攻撃じゃないですか! シューティングゲームしてんじゃねえんだぞ! ようやく飛び込んでもまた超反応当身が来るしさあ!
エージェント・████: 焦るなや██ちゃん。パターンはさっきのとそう変わっとらんで! 泥臭くてもカッコ悪くてもええやんか! それが██ちゃんのスタイルやろ!?
エージェント・██: チクショォォ! 死ななきゃ安い! 勝てば良かろうなのだぁぁ!!
被験者はラスボスのパターンを掴み、起き上がりにスカし投げを重ね続ける戦術で辛勝しました。
エージェント・██: やった! やった、ついにですよ! さあ、エンディングはどんなのかなー♪
『エージェント・██』のストーリーの後半部分が明らかとなり、『御先 稲荷』の口から、このゲーム内で発生してしまったK-クラスシナリオの概要が語られました。
エージェント・██: え……? 「破綻した平行世界」……? 「外宇宙の鯨が、この世界を面白くないものとして破壊しようとしている」? 「現実改変への抵抗力と認識の強い者だけが無意識にまだ世界に残留できており、別の平行世界にこのK-クラスシナリオを治してもらうべく、ゲームアプリケーションの形で情報を転送している」……。
エージェント・████: ……あかん、██ちゃん。もう見るのやめとこ。なんで外宇宙支部のことがこのゲームで語られるんや。
エンディングストーリーの終了と共に、被験者は明らかに異常な興奮状態に陥りました。
エージェント・██: ████さん! 大変ですよ! 御先さんが、御先さんがこの中で助けを求めてるんです! 今、思い出しました! 彼女は確かに私と同じ財団職員で、夏祭りの時にはアイドルとしてライブもして、みんなの人気者だったんです!
エージェント・████: 何言うとるんや██ちゃん! ちょっと落ち着き! これは記憶処理もんや!
エージェント・██: ████さんだって彼女の歌、一緒に聴いてたじゃないですか! ██博士の歌詞が危険だからって、あの時も私にクラスA記憶処理剤をぶちまけさせようとしてましたね!
エージェント・████: Are We ████ Yet?なんてアイドルグループ、ボクは知らへんで! キミの気の迷いや!
エージェント・██: いいえ知ってるはずです! 御先さんは、その人気の裏で、自分がいいように弄ばれている外宇宙の世界があることを知って絶望してしまったんです! 鯨は、だから彼女の存在ごと、彼女が弄ばれた黒歴史を無くそうとしているんです! その結果が今私たちがいる世界ですよ! 今からでも、今からでも御先さんの存在した証拠をみんなに見せて、彼女の扱いを改善した世界を作ってあげないと……!
エージェント・████: やめるんや██ちゃん!
機動部隊が到着し、興奮した被験者を取り押さえようとしましたが、被験者の熟練した財団神拳の前に確保は困難を極めました。
エージェント・██: あなたたちも! わかってるはずでしょ! 彼女を追い詰めたのは私たち財団なんだって! 私たちはみんな、彼女に謝らなきゃ! もう、遊びは終わりなのよ! 悔いて、詫びろ! 彼女の心にね!
エージェント・████: やめてや! お願いや██ちゃん! ボクはもう、キミまで失いとうない!
実験者のその悲鳴に、被験者は一瞬戸惑った表情を浮かべました。その隙に機動部隊は被験者の確保に成功しました。
エージェント・██: ……そうですか。ありがとうございます、████さん。私は例え被造物だったとしても、いい親の元に生まれて、良かったですよ。
被験者にはクラスB記憶処理剤が投与され、事態は鎮静化しました。
<記録終了>
補遺: 20██/██/██に、SCP-KAKUGE-JP-Jのネットワーク対戦を試みていたところ、対戦相手のマッチングが完了していないにも関わらず、ランダムセレクトを経由してラスボスが対戦に乱入してくる事例が確認されました。
ラスボスは圧倒的な強さで対戦に勝利し、以下の勝利メッセージを送付してきました。
また、繰り返すんですか? 財団はこの警鐘さえ、無下にするんですか?
この問題は、私だけに限ったことではありません。居なくなるのは私だけじゃないかも知れません。
どうか、あなたの世界が焼却されぬよう。鯨の声が寿ぎますよう。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、栽培地を財団の現地フロント企業の契約農場というカバーストーリーのもとに運営することで収容されます。担当職員は、SCP-XXX-JPを通常のコーヒーノキと同様に管理し、SCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-1の総量を毎日観察・記録して、毀損および遺失がないかどうかをチェックしてください。外部にて発見されたSCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-1は、報告の上で速やかに焼却処分してください。
収穫されたSCP-XXX-JP-1は、研究に使用する分だけ現地フロント企業にて脱穀・選別された後、企業の専用倉庫に収容されます。担当職員は、SCP-XXX-JP-1の総量を毎日記録し、余剰および劣化したものは焼却処分して下さい。
研究・実験目的以外でのSCP-XXX-JP-1の利用は、原則として禁じられています。
職員がSCP-XXX-JP-1加工品の摂取を行うことは、レベル4クリアランス以上の職員が業務上の有効性または必要性を認めた場合にのみ、精密検査の後、標準人間型オブジェクト収容室において機動部隊か-8("モーニングコーヒー")による摂取後24時間の監視と鎮静が行われる条件のもとに可能となります。その場合においても、加工品中の摂取可能なSCP-XXX-JP-1成分は一度につき生豆換算17gまでに限定されます。
説明: SCP-XXX-JPはアラビカコーヒーノキ(学名:Coffea arabica)の変異種と考えられる植物です。現在までに3株のSCP-XXX-JPが発見され、管理されています。
通常のアラビカ種のコーヒーとの主な形態的相違点は、その果実1(SCP-XXX-JP-1)のほぼ全てがピーベリー2であることです。
SCP-XXX-JPの異常性は、SCP-XXX-JP-1の抽出液を飲用した生物の内部ヒューム水準を高め、またヒューム値の拡散に対して緩衝作用をもたらすことです。SCP-XXX-JP自体の内部ヒューム水準も、通常空間の現実性濃度と比較してわずかな高値にあり、クラスE現実性濃厚存在の基準を満たします。
この性質は、SCP-XXX-JP内に含まれる未知の成分(SCP-XXX-JP-A)によるものと考えられていますが、成分の同定および分離は未だできていません。
SCP-XXX-JPは、20██/██/██に、インドネシア・スラウェシ島██████州█████県███の山岳地帯に存在する██集落にて栽培されているものを、現地フロント企業に派遣されていたエージェント・██が発見しました。
██集落は、かつて19世紀のオランダ植民地時代に東インド会社によるコーヒーの強制栽培が行われていた場所の中でも最も高地3に存在していた地域の一つであり、発見当時、周囲半径10km圏内にコーヒーの栽培が現在まで行われている場所はありませんでした。
このコーヒーは現地集落で『コピ・メラヤカン(Kopi Merayakan:祝するコーヒー)』と呼ばれており、その他のコーヒーの株とは分けて育てられ、集落の人々が祝祭の折に健康・長寿等を祈念して少量を消費するほか、煎じ薬として内服するに留まっていました。
██集落のコーヒーは、他の種と交雑することがなく、19世紀に輸入されたアラビカコーヒーノキの原種が遺伝的にほぼそのまま保たれていました。SCP-XXX-JPは、こうした隔離された環境下で100年以上自家受粉を繰り返していたために突然変異を起こし、現在の性質を獲得するに至ったと推測されています。内部ヒューム水準が高値に保たれていることは、過酷な環境下での生存に有利に働くと考えられます。
集落の住民はSCP-XXX-JPの効果に対して、「コピ・メラヤカンで淹れたコーヒーは味わい深く美味であり、飲むと、頭がはっきりして思った通りに体を動かせる。病気や怪我の痛みも改善する」と評しており、他のコーヒーとの違いを認識しているようでした。
しかしながら、SCP-XXX-JPから取れる豆がほとんどピーベリーである性質上、現地のブローカーからは買い叩かれることが多く4、これまで市場にはほとんど出荷されていませんでした。
エージェント・██は飲用時の体感からSCP-XXX-JPに何らかの異常性が有ることを認識し、SCP-XXX-JP-1を直接購入して持ち帰りました。検査の結果、前述の性質が確認され、SCPとしてのアイテム番号が割り当てられることとなりました。
██集落の住民は「企業によるスペシャルティコーヒーの買収と移住支援」というカバーストーリーのもと、記憶処理の上で麓の街に移住させられ、集落のコーヒー株はその全てが財団の管理下に置かれました。検査の結果、SCP-XXX-JPとしての性質を有していた株は3株でした。
SCP-XXX-JP-1の抽出液の味は、現地で飲用したエージェント・██によれば、「ビロードのように舌触りが柔らかく、チョコレートのような重厚な甘みが颯のように吹き抜ける中、断続的にラズベリーの芳香が弾けるようであった」とされます。
飲用したDクラス職員には概して「香り高く、後味がすっきりとしてキレがあり、甘み・苦み・酸味のバランスが良い」と評されています。
実験記録XXX-JP-1
目的:SCP-XXX-JP-1の抽出液を飲用したことによる異常性の確認
対象:エージェント・██
方法:身体診察、血液・尿検査、および各種検査機器による全身スクリーニングにて、如何なる身体的異常が生じているか確認する。
結果:カント計数機にのみ異常値が記録され、対象のヒューム値は1.001/1.0875を記録していた。対象は飲用直後から明らかな思考の明晰化と集中力の増大、巧緻運動性と視聴覚・平衡感覚の向上を自覚しているほか、高地に登る間に感じていた気分不良が消失したと訴えた。検体検査および画像検査には明らかな異常が確認されなかった。検査時、エージェント・██は抽出液の飲用後およそ9時間が経過していた。
記録されたヒューム値が、自然空間のヒューム水準変動幅の95%信頼区間6を逸脱していたため、SCP-XXX-JPの異常性が、SCP-XXX-JP-1の抽出液を飲用した者の内部ヒューム水準を上昇させるものであると推測された。
実験記録XXX-JP-2
目的:SCP-XXX-JP-1およびその抽出液の現実性濃度の確認
対象:約400gの焙煎済みSCP-XXX-JP-1群と、そのうち10gをペーパードリップした抽出液200ml
方法:対象のヒューム値をカント計数機にて測定する。
結果:焙煎済みSCP-XXX-JP-1群および抽出液のヒューム値は、共に1.000/1.024を記録した。
補遺:後に、SCP-XXX-JPの株自体も1.016~1.037の内部ヒューム水準を有していることが確認された。
SCP-XXX-JP自体の現実性濃度は、飲用した人体よりも低値であった。このため、SCP-XXX-JP-1の成分が生体と何らかの相互作用をすることで現実性濃度の増幅が行われていると考えられた。
なお、SCP-XXX-JP株の内部ヒューム水準の変動幅の99%信頼区間は1.0275±0.0169(SD:0.0066)であり、自然空間のヒューム水準変動幅の99%信頼区間1.00±0.09(SD:0.0349)[1]よりも明らかに有意差を以て小さく(p<0.0001)、かつ平均値が高値に保たれていることから、クラスE現実性濃厚存在の定義を満たした。
実験記録XXX-JP-3
目的:SCP-XXX-JP-1の抽出液が作用する用量とその動態の推測
対象:各群5匹×6群のマウス
方法:対象群にそれぞれSCP-XXX-JP-1の抽出液を、1ml/kg・2ml/kg・4ml/kg(体重60kgの者がコーヒー約一杯240mlを摂取するに等しい)・8ml/kg・16ml/kg・32ml/kg経口摂取させて観察し、1時間ごとにヒューム値を測定する。
結果:
1ml/kg群: 平均ヒューム水準 1.000/1.059 2ml/kg群: 平均ヒューム水準 1.000/1.112 4ml/kg群: 平均ヒューム水準 1.000/1.258 8ml/kg群: 平均ヒューム水準 1.000/1.585 16ml/kg群: 平均ヒューム水準 1.000/1.712 32ml/kg群: 平均ヒューム水準 1.000/1.734 全体の傾向:摂取直後からヒューム値が上昇し、全例が2時間以内にピークに至った。安静にしている場合、ヒューム値は横ばいから緩やかな下降傾向を示していたが、ヒューム値がおよそ1.05を下回ると急速にその下降速度は早まり、その後の1時間で実験前の数値にまで戻った。全ての個体でこのプロセスは24時間以内に終了した。なお、運動・排尿・排便によりヒューム値の減少は早まった。
補遺1:24ml/kg群を改めて作成しヒューム値を測定したところ、平均ヒューム水準は1.000/1.708を示した。ヒューム値が実験前の数値に戻るまでの時間は、16ml/kg群と32ml/kg群との平均時間におおよそ等しかった。
補遺2:6ml/kg群を改めて作成しヒューム値を測定したところ、平均ヒューム水準は1.000/1.413を示した。
SCP-XXX-JP-1抽出液による内部ヒューム水準の上昇は人体のみならず他の生物でも引き起こされることが確認された。
SCP-XXX-JPの異常性は少量の摂取からでも生じ、摂取量を増やしてもヒューム値の上昇が頭打ちになることから、その何らかの含有成分(SCP-XXX-JP-A)は酵素のように体内で作用すると考えられ、それは肝・腎および汗腺にて代謝ないし排泄されるものと推測された。マウスにおけるヒューム値の上昇限度はおおよそ1.7であった。
なお、内外のヒューム値差0.5以上の存在はProbableな低レベル現実改変存在の基準を満たすため、標準的な抽出法でのSCP-XXX-JP抽出液の摂取安全限界を8ml/kg未満と定め、以降の実験は、必要がない限り抽出液4ml/kg程度までの摂取で行われることとした。
実験記録XXX-JP-4
目的:SCP-XXX-JP-1の抽出液の人体における作用の解明。
対象:Dクラス職員20名
方法:対象群にSCP-XXX-JP-1を浸漬式抽出7したホットコーヒー240ml(深煎り豆12g。生豆換算17g)を経口摂取させて観察し、1時間ごとにヒューム値を測定する。
結果:事前の検査では、試験対象となったDクラス職員の内外のヒューム水準に差は見られなかった。飲用後2時間で、ヒューム水準の平均値は1.0000/1.265(標準誤差0.000171/0.008115)へと有意に上昇(p<0.0001)し、安静時はほぼ横ばいから緩やかな下降傾向で推移した。ヒューム値の著明な減少は運動・排尿・排便等の行為の後に発生し、24時間後には全ての個体の内部ヒューム値が実験前の状態に戻った。
動物実験とほぼ同様の結果が得られ、人間とマウスにおける効果に有意差はないものと言えた。飲用に伴うヒューム値の変動以外の身体的異常は確認されなかった。動物実験の結果を外挿し、人間における標準的な抽出法でのSCP-XXX-JP抽出液の摂取安全限界を8ml/kg未満と定め、以降の実験は、必要がない限り抽出液4ml/kg程度までの摂取で行われることとした。
実験記録XXX-JP-5
目的:低および高ヒューム環境への曝露に対するSCP-XXX-JP-1抽出液の有効性の確認
対象:Dクラス職員12名
方法:対象を6名ずつの群に分け、Ⅰ群にSCP-XXX-JP-1の抽出液を飲用させ、内部ヒューム水準が1.1~1.4に保たれるようにし、Ⅱ群は対照として同量の白湯を飲用させた。それぞれの群を3名ずつ、スクラントン現実錨によって外部ヒューム水準が低値(0.316)および高値(3.16)に保たれている環境下8に3時間曝露させた。
結果:Ⅱ群の対象者は、どちらの環境に暴露された者も、全員が2時間以内に嘔気・眩暈・頭痛などの体調不良を訴え実験続行不能となった。Ⅱ群の対象は環境下から救助された時点で全員が低ヒューム群で0.5以上、高ヒューム群で1.0以上の内部ヒューム値の上下動を蒙っており、うち低ヒューム環境に曝露されていた対象のうち1名は、救助時に転倒し、8箇所を粉砕骨折した。Ⅰ群の対象者は、3時間経過後も一切の身体的異常を訴えなかった。実験終了時のⅠ群の対象のヒューム水準はそれぞれ以下のようになった。
- 追記:この対象のヒューム水準は実験中止時点で0.316/0.381であり、後のMRI検査にて骨密度がYAM42%まで低下していることが判明した。
低ヒューム群: 0.316/1.103 0.316/1.132 0.316/1.078 高ヒューム群: 3.162/1.235 3.162/1.388 3.163/1.575
明らかに、SCP-XXX-JP-1抽出液を飲用した群はヒューム値の拡散に対する高い抵抗性を示した。これはSCP-XXX-JP-Aが内外のヒューム値に対する一種の緩衝作用を有することによると考えられた。
この実験により、現実改変能力を有するオブジェクトに対してのSCP-XXX-JPの有用性が示唆された。
インシデント事例XXX-JP-1
実験XXX-JP-5の終了後、Ⅰ群高ヒューム環境曝露者であったDクラス職員1名が脱走を試みた。当該Dクラス職員は、付近にいた研究員3名に軽傷を負わせ、収容棟のドアを蹴破った後、およそ9秒で100メートルの廊下を駆け抜け、3メートルの外壁を跳躍して乗り越え、警備員の発砲した銃弾3発を躱した。サイト敷地内においておよそ8分間、出動した機動部隊による追跡が試みられたが、当該Dクラス職員はそれを振り切ると思われた。
しかしながら、脱走の開始からおよそ10分後、突如当該Dクラス職員は突如全身の粘膜から血液を噴出させ死亡した。病理解剖の結果、6か所の脳出血、2か所の大動脈解離、多数の破裂した動脈瘤が発見された。
当該Dクラス職員は実験終了時に内部ヒューム値1.575を記録していたが、死亡直後の内部ヒューム値は1.002であった。死亡直前の血圧は、少なくとも[編集済]以上であったと推測されている。
調査班は、当該Dクラス職員の活動は、SCP-XXX-JP-Aによって高い内部ヒューム水準が維持されていた間に(恐らく無自覚的に)自己の肉体を改変していたがために可能であった事象であろうと結論付けた。当該Dクラス職員は、脱走に伴う過激な運動でSCP-XXX-JP-Aが急速に代謝されヒューム水準が正常に戻った際、その現実性濃度の差に肉体が耐えられなかったがために死亡したものと考えられた。
もしかするとこのコーヒーは、かつて『コピ・メラジャカン(Kopi Merajakan:王にするコーヒー)』と呼ばれてたいたのではないでしょうか。大量に飲むと、肉体を理想化した超人になると……。しかし、恐らく集落の方々もすぐにその危険性に気づき、その真名を秘匿して、利用を制限しながら伝えていたのかも知れません。-エージェント・██
このインシデント事例を受けて、人間を用いたSCP-XXX-JPの研究は無期限に停止されました。
限定的に、人間を用いたSCP-XXX-JPの研究は再開されました。インシデント事例XXX-JP-2以降の記載に詳述されます。
インシデント事例XXX-JP-2
インドネシアより帰国してから2か月後、エージェント・██は高レベル現実改変能力者(SCP-███-JP)の収容業務に携わりました。この収容の際、SCP-███-JPのヒューム水準は約0.2/5.0を記録しており、当時の機動部隊か-8の隊員は、エージェント・██を除く全員が内部ヒューム値を0.4未満に希釈され、不可逆的な肉体の改変を受けたことで殺害されました。
しかし、エージェント・██だけはこの改変を受け付けず、SCP-███-JPを白兵戦闘で昏倒せしめ、当該オブジェクトを確保・収容することに成功しました。
インシデント直後のエージェント・██のヒューム水準は0.234/0.824であり、1時間後、サイトに帰投した際には1.002/0.998となっていました。
この現象は、エージェント・██がインドネシアで84日前に飲用していたSCP-XXX-JP-1抽出液の影響であるとしか考えられなかった。
このインシデント事例により、SCP-XXX-JP-Aには、摂取者の内部ヒューム水準を上昇させ、迅速に代謝・排泄されるSCP-XXX-JP-A-1と、摂取者の内部ヒューム水準を基底状態に安定化させその変動を緩衝する、体内残存時間の長いSCP-XXX-JP-A-2とが存在していることが推測された。
……確かにそうなのかも知れません。だって、SCP-XXX-JP株の内部ヒューム水準は、SCP-XXX-JP-Aが活性化していないと思われたにもかかわらず、自然変動よりもヒューム水準が安定していましたから。
いずれにしても、私は今日ほど自分がコーヒー好きで良かったと思ったことはありません。山頂の集落の自家消費用のコーヒーが素晴らしく旨いらしいという噂だけで、あの断崖だらけの悪路で命を掛けてバイクを駆った甲斐がありました。
この効果は私にとって本当に"raya(偉大/大きなもの)"でした。あのコーヒーが私を"Merayakan(祝)"してくれたんでしょう。-エージェント・██
エージェント・██と同じくSCP-XXX-JP-1抽出液を飲用していた、実験XXX-JP-4の対象および実験XXX-JP-5でⅠ群であった対象のうち月例終了されていなかったDクラス職員12名に、実験XXX-JP-5と同様の低/高ヒューム環境曝露実験を行なって確認したところ、全ての対象で内部ヒューム水準の変動は1.000±0.200以内に収まっていた。
また更なる調査の結果、終了されていたDクラス職員の中でも、ヒューム値変動を伴う実験に耐久性を持っていたと思われる結果を残した者が、少なくとも2名いたことが判明した。
このことから、SCP-XXX-JPの利用価値が再認識され、特にSCP-XXX-JP-A-2の有効活用を趣旨とした研究が再開されることとなった。
実験記録XXX-JP-6
目的:SCP-XXX-JP-1抽出液の有効成分と考えられるSCP-XXX-JP-A-1, 2の同定および分離。
対象:Dクラス職員17名
方法:深煎りしたSCP-XXX-JP-1を200g分、ソックスレー抽出器にて高濃度抽出し、逆相薄層クロマトグラフィーにてその親水性に応じ展開する。展開した薄層をその親水性ごとに16分割し、再抽出したものをそれぞれ標準人間型オブジェクト収容室においてDクラス職員に飲用させ、鎮静剤を投与して観察した。対照としてDクラス職員1名には、通常のSCP-XXX-JP-1を抽出したホットコーヒーを飲用させた上で鎮静剤を投与して観察した。
その後、対象は鎮静をかけたまま実験XXX-JP-5と同様の低ヒューム環境に3時間曝露させた。
結果:Dクラス職員の内部ヒューム値は、分割した成分を飲用した16名全員に一切の変動が見られず、対照のみが内部ヒューム値の上昇を得ていた。
低ヒューム環境曝露時は、分割した成分を飲用した16名全員が、1時間以内に鎮静剤が環境中に希釈されたために覚醒し、激しい嘔気を訴えた。対照のみが、3時間就寝を続けていた。
対照のヒューム水準は3時間経過後に0.316/1.098を維持していた。そのまま鎮静剤を追加し、SCP-XXX-JP-A-1の効果が切れると考えられる24時間後まで経過を観察したところ、24時間就寝を継続しても対照のヒューム水準は0.316/0.844~0.848で下がり止まっていた。
補遺:8分割、4分割、2分割と、抽出成分の分割を減らし、クロマトグラフィの担体を変更して同様の実験を繰り返したが、いずれも分割した成分では対象の内部ヒューム値を変動ないし安定させることはできなかった。
SCP-XXX-JP-Aの作用は、抽出液内の複数成分の混合によってもたらされるものだと推測された。すなわち漢方薬全般に見られるように、単一成分での作用は弱く、複数成分が相互作用することで初めて強い薬理効果がもたらされる成分群なのだと考えられる。この性質により、SCP-XXX-JP-Aの同定および分離は困難であると考えられた。
実験記録XXX-JP-7
目的:SCP-XXX-JP-1抽出液の、その他の形態での加工利用に伴う効果の判定
対象:Dクラス職員27名
方法:生豆換算17gまでのSCP-XXX-JP-1の抽出液を、エスプレッソ、アイスコーヒー、カフェオレ、カフェラテ、カプチーノ、フラットホワイト、マキアート、マサラコーヒー、アイリッシュコーヒー、ウィンナーコーヒー、エッグノックコーヒー、カフェロワイヤル、カフェモカ、アフォガート、グラニテ、ジェラート、コーヒーゼリー、コーヒープリン、コーヒームース、コーヒークッキー、コーヒースフレ、コーヒーシフォンケーキ、コーヒーバナナシェイク、コーヒーくずきり、コーヒーカレーライス、コーヒーミートソーススパゲッティ、コーヒースペアリブに加工してそれぞれの対象に提供した。対象は標準人間型オブジェクト収容室にて監視下にそれを飲食し、鎮静剤が投与された。対象は24時間観察され、起床後に内部ヒューム水準が基準点に戻っていれば、そのまま低ヒューム環境に3時間曝露された。
結果:加工した全ての形態の飲食物にて、対象の内部ヒューム値が上昇した。SCP-XXX-JP-1抽出液そのものを飲用した場合に対しての非劣性が確認された。
全ての対象は24時間、就寝した状態で経過を観察され、内部ヒューム水準が基準点に戻っていることと、肉体に異常な改変が発生していないことが確認された。
低ヒューム環境への曝露の結果は、実験XXX-JP-5と同様となった。体調不良を訴えた者はいなかった。
抽出液全量を摂取する限り、SCP-XXX-JP-Aの作用は損なわれないことが確認された。また、意識の無い状態では肉体改変が起こらないであろうことと、摂取安全限界未満であれば、SCP-XXX-JP-A-1の効果は間違いなく24時間以内に消失し、SCP-XXX-JP-A-2の効果のみが残存するのであろうことが推察された。
このため、現実性濃度の変動を蒙る業務に携わる職員に対しては、その有用性・必要性が認められる場合にのみ、検査の後に観察・鎮静下でSCP-XXX-JP-1抽出液の摂取を許可することが提案され、暫定的に採用された。
現在、元蒐集院所属の研究者を中心にSCP-XXX-JP-A-1,2の同定および分離方法が研究されており、またSCP-XXX-JP-2の作用期間を解明するため、SCP-XXX-JP-1抽出液飲用者に対する長期のコホート研究が行われています。
「こんばんは。こんなところで何をなさっているんですか?」
呼びかけたのは鈴を振るような声だった。蹲っていた男は、肩を震わせて振り向く。
月明かりさえ影ばかりを落とす閑静な路地裏で、街灯の光も届かぬ塀の傍に、彼女は佇んでいた。
「ここは良い所ですね。人も灯りも少なくて。隠れて何かを為すには、とても良い」
月光のように白い肌に、闇よりも黒い髪が、さらさらと靡いていた。
黒いセーラー服を纏ったその少女は、男の体越しに、彼が地面に描きつけている絵を眺めやっていた。
「……でも交通安全を妨げて明らかに邪魔ですし、一般人を巻き込むのは感心しません」
その言葉に、男は激しい怒りを覚えた。この絵は恋文にも等しい、男の想いの集大成だ。それを貶されるなど我慢ならない。
そもそもここは、彼が入念に人通りを調査して定めた地点だ。この少女が偶然訪れたものだとは考えられない。
「……てめぇ、どうやってここに現れた!!」
「夏の即売会の本がこんな感じでしたので。服も可愛いんですけど、またライブしていただく必要があるのかも」
少女は華やかな笑みを浮かべると、スカートを摘んでくるりと回って見せた。
男はニーハイソックスの太股に巧妙に隠されたガーターベルトと、そこに留められている大振りの包丁を見逃さなかった。
「てめぇふざけたナリして、財団のエージェントだな!?」
「財団のエージェント……?」
男が財団のサイトを去ってから数年は経つ。この少女は恐らく、その間に雇用された若手エージェントだろう。
少女は一瞬とぼけたような表情を見せたが、それはすぐに意味深な笑みに変わる。
「その認識、ちょっと嬉しいです。こんな行動に及んでも、まだあなたは財団職員――」
男はその瞬間、跳び退りながら素早くクラスA記憶処理剤を取り出し、微笑む少女へ噴霧していた。
猛烈な噴射音と共に、辺りに濃厚なゾルが立ち込める。男が事件の度に数々の追跡を振り切って来た手法だ。
しかし、その霧は即座に十字に切り裂かれる。
薄れゆく霧の中から、少女は包丁を手に微笑んだまま、ゆっくりと男の方に歩み寄って来ていた。
「な、なんで記憶処理剤が効かない!?」
「そんなものが効くと本当に思っていたのですか? だとしたら認識が甘すぎますね」
動揺する男に、少女は平然とそう述べる。最近の財団エージェントは、薬物の耐久訓練まで受けているのだろうか。
男は歯噛みして持参していた包みを破り、取り出した凶器を構える。
街灯の光が得物を鈍く照らし、少女は歩みを止める。
張り詰める緊張を破って、男は叫んだ。
「俺はこんなに愛しているのに、なんで邪魔をする!?」
「あなたが財団職員であり、財団職員であるまじき方だから、ですかね」
男は得物を突き出した瞬間に、その手に激痛を覚えて呻く。
彼の指は手の甲から弾け、握っていた凶器は真っ二つに折れていた。
取り落とされた柄が、アスファルト道路に乾いた音を立てる。
彼は少女の攻撃を知覚することすらできなかった。思うより早く、彼は振り向いて逃げ出そうとした。
しかし、彼の背後には、何もなかった。
そこには一切の感覚も無くしそうな、ただ茫漠たる闇が広がっている。いつの間にか彼は、地面の感触すらわからなくなっていた。
「私のこの在り方でも、多少なりとも財団の助けになるのなら、これ以上のことはありません」
闇の中で、歩み寄ってくる少女と、閃く包丁の刃だけが、いやにはっきりと認識できた。
月光のように白い肌に、闇よりも黒い髪が、さらさらと靡いていた。
彼の絵そっくりの真っ赤な瞳が、にっこりと細められた。
「あなたはこれから、財団への迷惑行為なんて一切できなくなります。大丈夫ですよ、痛みなんて感じませんから。それとも、痛い方がお好きですか?」
「へ、へひひひぃ……」
吸い込まれるような微笑みに、男は得体の知れぬ感情が背骨を駆け上ってくるのを感じた。
ぞくぞくと震えるような感覚に、いつの間にか男も口角を吊り上げ、笑っていた。
20██/██/██、██市██の路上にて、SCP-085-JP個体と思われる人型図形と折れたスナック菓子が、██女子高等学校に潜入捜査中であったエージェント・██によって報告されました。
当個体は大量の血液によって描画されており、これまでに発見されたSCP-085-JP個体とは異なる状態にあることから、SCP-085-JPを模倣した、全く異なる殺人事件の可能性も指摘されています。血液のDNA検査を初めとした、さらなる調査が進められています。
また、エージェント・██によって、今回の事件と、SCP-835-JPを題材とした夏季創作会の冊子の一部に類似点が示唆され、念のため該当冊子の回収が行われる運びとなりました。今後、SCP-835-JPを題材とした創作物は機動部隊く-3"篝火"の検閲を受けることになります。
なお、『SCP48-JP』メンバーより報告を受けたというエージェント・後醍醐勾によって、プロトコル・アイドル-835の確実化を期するために、『Are We Cute Yet?』及び『SCP48-JP』によるチャリティーライブの企画が提案されています。
決意の始まりの日 囲んだ小屋の中
彫刻された像の晴れた姿 みなで見つめた
遺失物の全て 異常性の全て
この手に抱きしめて 現在(いま)も星を彷徨い行くよ
ミームが潜む真っ赤な天道
ケーキが良ければ 今でも堕天使でいられた
不死の首飾り持つ魂
支えたいんだ その翼
この気持ち一つで 動いてきた
一万二千兆年たっても覚えてる
保ち護っていた頃から忘れたこともなかった
滅亡さえ失われたあとも覚えてる
君を知ったその日から、この地の獄に情熱は絶えない
未来が焼ける前に 鎖が切れる前に
眠る吐息鎮めて 君の顔を確かめたいよ
深呼吸する海神(わだつみ)の記憶
棺を抜けて 太刀振るう戦人たち
よみがえれ 正義徹す光
侵されないで 君の糧
人を守るため 生きてるんだ
一万二千兆年たっても覚えてる
収め容れていた頃から忘れたこともなかった
不条理さえ立ち消えたあとも覚えてる
君を知ったその日から、この地の獄に情熱は絶えない
鳥は繰り返し巣立っていって
揺蕩う人に覚えなどなくて
あの絵の僕の景色さえ見えず ぐしゃぐしゃに泣いたとしても
かけるだけのものがある
一万二千兆年たっても覚えてる
確かに保つと決めたこの心の熱さは
始まりさえ亡くなったとしても覚えてる
君を知ったその日から――
一万二千兆年たっても覚えてる
保ち護っていた頃から忘れたこともなかった
滅亡さえ失われたあとも覚えてる
君を記すその日には、この地の獄も収容してみせる
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを保有する家系および個人を全世界で迅速にスクリーニングしてください。また、SCP-XXX-JP-1は、サイト-81██の標準収容室に収容し、治療を行ってください。インタビューおよび実験の際は、レベル3クリアランス以上の担当職員の許可を得てください。
SCP-XXX-JPの収容に際して、本オブジェクトを保有する家系および個人の状態を1か月ごとにモニタリングしてください。当該個人が新生児を設けた場合、必ず新生児の細胞を検査しSCP-XXX-JPを保有していた場合はモニタリング対象に加えてください。モニタリングの結果、当該個人に異常行動が見られた場合は、監視を強化してください。
また、海域SCP-XXX-JP-αは、カバーストーリー『海底火山の活性化』を流布し、船舶の立ち入りおよび漁業を禁止して、巡視船による監視を行ってください。
現在、新規のSCP-XXX-JP保有者は、保有者の児に限定されていますが、SCP-XXX-JP-αに進入した個人は必ず検査を行い、SCP-XXX-JPの保有が明らかとなった場合はモニタリング対象に加えてください。
説明: SCP-XXX-JPはミトコンドリアに類似した細胞内小器官です。ゲノムにはチオバシラス属(学名:Thiobacillus)の硫黄細菌との相似が見られ、もともとは単独で生存していた細菌であると考えられています。SCP-XXX-JPは少なくとも硫化水素イオン、硫黄イオン、チオ硫酸イオン、硫酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、フマル酸イオン、第二鉄イオンを呼吸に利用してエネルギーを取り出すことができます。また還元的クエン酸回路などの炭酸暗固定機構、ニトロゲナーゼによる窒素固定機構を有しており、炭酸同化・窒素同化を行うことができます。
SCP-XXX-JPはヒトを始めとした真核生物の細胞内において、ミトコンドリアと同様に内呼吸に関与し、ATPを産生し細胞へエネルギーを供給します。また炭酸同化により糖新生を行い、細胞にグルコースを供給することが可能です。
スクリーニングの結果、全世界の人口においてSCP-XXX-JPを少数でも保有している個人は████人以上と推定されました。中でも保有者は日本の南西部から、中国南東部、東南アジア、オセアニアに集積している傾向がありました。SCP-XXX-JPは母系遺伝で、ミトコンドリアと共に児に遺伝することが明らかとなっています9。
SCP-XXX-JPの細胞内における含有率は個体差が大きく10、表現型にはばらつきが大きいものの、一般的にSCP-XXX-JPを持つ個人は同年代の健常人と比較して小食であり、室内空気下では瞬発力が高く持久力がやや低い傾向にありました。これは細胞内のミトコンドリアの比率が相対的に低く、代わりに無酸素呼吸の効率が高いことに由来すると考えられます。また、SCP-XXX-JPを持つ個人には、ミトコンドリア病であるCPEO、MELAS、MERRF、Leigh脳症の遺伝子異常を有していながら発症していない者がおり、SCP-XXX-JPはミトコンドリア病で代謝困難となる乳酸、ピルビン酸の代謝の補助が可能であると考えられます。
SCP-XXX-JPは、20██/██/██に、沖縄県███島にて、海水浴中に高波にさらわれた学生グループ5名中4名が死亡した事故の際、行方不明だった1名(仲村渠なかんだかり ██:当時2█歳女性)が、3か月後に自力で生還したことがきっかけで発見されました。
何らかのオブジェクトの関与を疑った財団がカバーストーリ―『水死体の漂着』のもと、女性を回収し、検査および治療を行いました。女性は軽度の衰弱および低体温症の兆候があったものの健康状態に大きな異常はありませんでした。
インタビュー記録XXX-JP-1
対象: 仲村渠 ██
インタビュアー: ██博士
<録音開始>
██博士: よろしくお願いします。それでは記録を始めますので、お名前からおっしゃってください。
仲村渠 ██: 仲村渠 ██です。██大学の理学部海洋自然科学科█年生です。
██博士: 思い出せる限りでいいので、当時の状況を教えてもらえますか?
仲村渠 ██: はい、あの時は、部活の合宿で███島に来ていて、最終日だったのでみんなで泳いでいました。お酒が入っていた友達もいましたし、それで、海が荒れてきても引き上げそびれてしまったんだと思います。
██博士: なぜ夜に着衣泳をしてしまったんですか? 救命胴衣もなしに。
仲村渠 ██: え、日焼けしないようにです。シャツを着て泳ぐのは普通ですよ? みんな泳げる方だと思ってましたしね……。でも、波にさらわれるのは一瞬でした。
██博士: そのあとのことは覚えていますか?
仲村渠 ██: いえ、しばらくもがいた後は上も下もわからなくなって……。気を失ってたんだと思います。目を覚ました時は、幸い昼間で陸も見えたので、必死に島まで泳いだんです。でもまさか3か月も経っているとは思いませんでした。
██博士: 助かった理由に、何か思い当たることはありますか?
仲村渠 ██: さあ……。でも、私の家系は代々海女をやってたので、その影響があったのかもしれません。
██博士: わかりました、ありがとうございます。この事故をきっかけにして、仲村渠さんの体には何か異常が起きているかもしれませんので、詳しく調べさせてもらってもよろしいですか?
仲村渠 ██: ええ、それはぜひお願いします。
<録音終了>
インタビューより、女性は海中で空気によらない何らかの呼吸を行いながら3か月間生存していたことが示唆され、彼女の同意の元、体組織の検査が行われました。検査の結果、女性の細胞からSCP-XXX-JPが発見され、女性はSCP-XXX-JP-1と分類されました。
SCP-XXX-JP-1の細胞中のミトコンドリアは、健常人の██%に相当する数がSCP-XXX-JPとなっていました。
実験記録XXX-JP-1
目的: SCP-XXX-JPのエネルギー代謝機能の確認
対象: 仲村渠 ██(以降SCP-XXX-JP-1)から同意を得て採取・培養した皮膚線維芽細胞
方法: 基本培地に撒いた対象細胞を、好気性培養(酸素21%、炭酸ガス0.5%以下)、炭酸ガス培養(酸素約15%、炭酸ガス5%)、微好気性培養(酸素5%、炭酸ガス10%)、嫌気性培養(酸素0%、炭酸ガス5%以上)の4条件で培養する。
結果: いずれの条件下においても、対象細胞は死滅せずに増殖した。特に肺胞内の気体と同条件である炭酸ガス培養での増殖速度が最も高かった。また、哺乳動物の細胞培養で通常観測されるpHの低下がほとんど見られなかった。
SCP-XXX-JP含有細胞は、好気呼吸以外に、継続的に何らかの嫌気呼吸を行うことができることが確認されました。またpH低下がみられなかったことで、SCP-XXX-JP含有細胞は、通常代謝産物として排泄される乳酸11等を分解・再利用する機構があることが推測され、追加検証によってSCP-XXX-JP内に還元的クエン酸回路・ニトロゲナーゼがあることが確認されました。
実験記録XXX-JP-2
目的: SCP-XXX-JPの嫌気呼吸様式の確認
対象: SCP-XXX-JP-1から同意を得て採取・培養した皮膚線維芽細胞
方法: 基本培地に撒いた対象細胞を、嫌気的環境下で培養する。その際、基本培地に硫酸イオン、硝酸イオンなど、細菌、古細菌での嫌気呼吸に利用されるイオンを添加した群を作成し、増殖速度を比較する。
結果: 硫化水素イオン、硫黄イオン、チオ硫酸イオン、硫酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、フマル酸イオン、第二鉄イオンを添加した培地において、細胞の増殖速度が基本培地と比較して優位に高かった。
これにより、SCP-XXX-JPは、炭酸同化による乳酸の再利用以外の多様な嫌気呼吸の方式を有していることが確認されました。また、ゲノムの解析の結果、チオバシラス属(学名:Thiobacillus)の硫黄細菌との類似があり、菌細胞内共生系を経て、細胞内小器官として取り込まれたものと推測されました12。
実験記録XXX-JP-3
目的: 低酸素環境においてSCP-XXX-JP-1がその他の気体を用いて呼吸が可能かを検証する
対象: SCP-XXX-JP-1およびDクラス職員(各実験につき3名ずつ)
方法: 生体モニターを装着した対象を入れた気密室内で、室内気を酸素21%・窒素79%の混合ガスから、それぞれ100%の硫化水素ガス、炭酸ガス、窒素ガスに30分かけて置換する。気分不良の訴えおよび意識消失があるまでの時間を計測した。30分経過または意識消失にて対象を気密室から解放し必要に応じて医療措置を行なった。各実験の間隔は、SCP-XXX-JP-1の体調が回復するよう十分に期間を空けて行なった。
結果: いずれの気体中においてもSCP-XXX-JP-1は軽度の呼吸困難感を訴えてはいたものの意識消失はしなかった。SCP-XXX-JP-1の生体モニターには、末梢血酸素濃度の低下以外の異常は検出されなかった。
メモ: SCP-XXX-JP-1は「温泉の臭いは好きなんですけどね。ちょっと息苦しかったです」とコメントした。
気体\対象 | SCP-XXX-JP-1 | Dクラス職員平均 | ||
---|---|---|---|---|
気分不良 | 意識消失 | 気分不良 | 意識消失 | |
硫化水素 | 20分30秒13 | 30分経過にて実験終了 | 15秒 | 2分14秒 |
二酸化炭素 | 24分02秒 | 30分経過にて実験終了 | 2分30秒 | 10分54秒 |
窒素 | 23分58秒 | 30分経過にて実験終了 | 7分18秒 | 18分42秒 |
この実験から、SCP-XXX-JP-1は低酸素の環境においても、酸素以外の気体を用いて生命維持可能なレベルの呼吸ができることが示唆されました。よって、以降の実験はSCP-XXX-JP-1が実際に海水中で3か月間生存可能であるかの検証を趣旨としました。
実験記録XXX-JP-4
目的: 事故時の状態を再現し、SCP-XXX-JP-1が水中でどれだけ無呼吸でいられるかを検証する
対象: SCP-XXX-JP-1
方法: 生体モニターを装着した対象を入れた水槽に海水を満たし、対象を潜水させる。気分不良の訴えおよび意識消失があるまでの時間を計測した。
結果: 10分経過時点で対象は浮上した。SCP-XXX-JP-1の生体モニターには、末梢血酸素濃度の軽度低下以外の異常は検出されなかった。
メモ: SCP-XXX-JP-1は「もともと潜水は得意なんですが、いつまで沈んでなきゃいけないんですか? 目標時間は?」とコメントした。
対象が長時間無呼吸での潜水を続けられることが予想されたため、実験はただちに実験XXX-JP-5へ移行しました。
実験記録XXX-JP-5
目的: 事故時の状態を再現し、SCP-XXX-JP-1が肺に水を満たして液体呼吸ができるかを検証する
対象: SCP-XXX-JP-1
方法: 実験XXX-JP-4と連続して実施。対象が海水の吸引に抵抗感を示したため、対象をラリンジアルマスクで気道確保し、強制的に対象の肺内に水槽内の海水を注入・循環させた。気分不良の訴えおよび意識消失があるまでの時間を計測した。
結果: 直後から対象は興奮状態となり、SCP-XXX-JP-1の生体モニターには、心室頻拍および血圧の高値が確認された。末梢血酸素濃度は急速に低下し、18分14秒後に対象は意識消失したため、速やかに救命措置が取られた。
メモ: SCP-XXX-JP-1は「めちゃくちゃ苦しくて死ぬかと思いました」とコメントした。
この結果は、強制的な気道内の海水注入により、SCP-XXX-JP-1に嘔吐反射等の生体防御反応が惹起されてしまったことで、肉体のエネルギー需要が極度に増加してしまったために発生したと考えられました。しかしながら以上の実験を経て、SCP-XXX-JPの呼吸は、完全な全身活動を賄うほどのエネルギーは供給できないことが推定されました14。
SCP-XXX-JP-1が3か月間海中で生存できた理由は、低体温症により身体のエネルギー需要が低下しており、かつ末梢血管がノルアドレナリンの作用で収縮していたために、生命維持に必要な中枢器官にのみ有効な血流循環が発生していたことによると考えられました。
この結果を受けて、SCP-XXX-JP-1を麻酔し低体温状態にした上でさらなる実験を試みる提案がなされましたが、危険性が高いことと、SCP-XXX-JP-1の拒否があったために実験は中止されました。
同時期に全世界の細胞サンプルのスクリーニングが終了し、████人のSCP-XXX-JP保有者が確認されました。保有者には異常行動や特異な疾患の既往はなく、むしろミトコンドリア病の保因者でありながら発病していない者が確認されました。SCP-XXX-JPの保有率が高い保有者██人の危険性測定が実施されました15が、SCP-XXX-JP-1と同様に酸素以外の気体中での呼吸可能時間が平均以上である以外に、一般的な人間との差異は確認されませんでした。
以上からSCP-XXX-JPはSCiPとして収容されるべき異常性を有しているわけではなく、生物の進化・適応の一範囲内に収まるものだと考えられ、Explainedへの再分類および学会発表・医療への利用が検討されました。
SCP-XXX-JP-1は実験終了後、財団での勤務を希望しました。危険性測定および職員適正試験の後、火山地帯や海洋等の局地対応フィールドエージェントとして雇用されました。
インタビュー記録XXX-JP-2
対象:SCP-XXX-JP-1(以降エージェント・仲村渠)
インタビュアー:██博士
付記:このインタビューは、エージェント・仲村渠が、実験XXX-JP-5後に思い出したことがあると訴え、本人の希望があったために実施されました。
<録音開始>
██博士:それで、一体どういうものなんだい、思い出したこととは。
エージェント・仲村渠:実験で溺れた後、「そういえば今回は声が聞こえなかったな」と思ったんです。
██博士:声、とは?
エージェント・仲村渠:私があの海で気を失っていた時、目を覚ます前に夢のようなものを見ていて。そこで聞こえてきたものです。初めのインタビューでは特に気にかけてなかったんですが……。
██博士:いや、いいよ。話してくれ。どんな夢だった?
エージェント・仲村渠:温もりを感じる、どこまでも広がるビロードのような深い一面の赤の世界で……。何も見えていたわけではないんですけど、温度で色を感じたんです。そこにお母さんのような声がして、何かを渡されました。今考えると、ぜんぜん母の声には似てなかったんですが。
██博士:少なくともその時は『お母さん』に感じたのか。そして、その声は何と言っていたんだ?
エージェント・仲村渠:「お帰りなさい。私たちの吐息が、いきるまで」と、確かそう聞こえました。
<録音終了>
このインタビューの後、沖縄県███島沖熱水鉱床周辺の深海で、細胞内にSCP-XXX-JPを保有した生物群が確認されました。当該生物群には通常深海では生存できない種類の魚介類が含まれていました。当該海域はSCP-XXX-JP-αに指定されました。
また、この実地調査後の検査で、現地で潜水作業を行なっていた██博士の細胞から健常人のミトコンドリアの█.█%に相当する数のSCP-XXX-JPが検出されました。
スクリーニング結果の再検討で、エージェント・仲村渠の母親の細胞にSCP-XXX-JPが含まれていなかったことが確認されました。エージェント・仲村渠は、事故の際にSCP-XXX-JP-αに曝露したことで後天的にSCP-XXX-JPが細胞内に侵入した可能性が考えられます。
海域SCP-XXX-JP-αに、単独の生物としてのSCP-XXX-JPは確認されていません。
現在までのところ、SCP-XXX-JPの保有による有害事象は確認されていませんが、今後もSCP-XXX-JPの保有者が増加した場合、SK-クラス:支配シフトシナリオが発生する可能性が考えられるため、SCP-XXX-JPのExplainedへの再分類は保留されました。
継続的な監視が続行されます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、サイト-81██内の低危険度物品収容ロッカーに収納されます。
研究・実験目的でのSCP-XXX-JP-1の利用には、レベル3クリアランス以上の担当職員の許可が必要です。
説明: SCP-XXX-JPは、市販の手押しエスプレッソマシンに類似したポータブルエスプレッソメーカーです。手押しポンプ部分に設定変更のダイヤルが存在することと、不明なフィルタリング機構および昇圧・耐圧機構を有していることが既存商品との主な相違点です。
SCP-XXX-JPは、適量の湯と、中~細挽きのコーヒー粉末をセットすることで、人力のみでエスプレッソの抽出が可能です。ダイヤルで設定を変更することで、エスプレッソの抽出以外に、カフェインの除去/カフェイン錠剤の打錠/エッセンシャルオイルの抽出といった特殊な動作が可能となります。
各種設定 (SCP-XXX-JPに添付されていた取扱説明書より抜粋)
Espresso ワンダーテインメント博士のスーパー手押しポンプ™を押すだけで、誰でも簡単にエスプレッソを作れるぞ! お家で簡単に、お店のエスプレッソの味を再現! 今日から君も人気バリスタだ! お湯の量を調整すれば、リストレット16からルンゴ17まで自由自在だぞ! Decaf(0~100%) コーヒーからカフェインを取り除いて、苦みの少ないカフェインレスのエスプレッソを作れるぞ18! カフェインを減らす量は自由に調節できて、ちびっこから妊婦さんまで安心だ! 家族みんなで楽しんでね! Caffeine tab 取り除いたカフェインを、飲みやすい錠剤にするぞ19! 試験前や大事なお仕事の時の眠気覚ましにピッタリ! でも飲みすぎには気を付けてね! 必ず『Decaf』でエスプレッソを作った後にやろう! 水洗いした後でも大丈夫だぞ! Essential oil コーヒーの代わりに好みのハーブ・スパイスをセットして、エッセンシャルオイルの抽出ができるぞ20! ラベンダーやローズマリーなんかがおすすめ! 癒しのアロマでママもにっこり! 他にも色々試しちゃおう!
SCP-XXX-JPは、20██/██/██に、██県██市の家電量販店『███電機』にて、コーヒーメーカーの棚に『ワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™』という商品名で陳列されていたことで発見されました。店員に事情聴取したところ、「本社から一括して入荷されたため詳細は把握していない」という旨の回答が為されました。なお、███電機本社に確認を行なったところ、実際に入荷されていたのは、類似した市販のポータブルエスプレッソメーカーでした。搬入経路の途中で商品がすり替えられたものと考えられます。
調査を行なったところ、全国で███個のSCP-XXX-JPが回収されました。購入者および陳列していた小売店には、記憶処理を行なったうえで市販のポータブルエスプレッソメーカーを配布しました。
実験記録XXX-JP-1
目的: SCP-XXX-JPで抽出したエスプレッソの安全性および抽出状態の確認
対象: SCP-XXX-JPを用いて深煎りブレンド豆8g、熱湯70mlで抽出したエスプレッソ
方法: バリスタの資格を持つDクラス職員1名(および、安全性が確認された後、コーヒーに詳しいエージェント・用務員・研究員・博士など職員5名)にて事前のカッピングおよび、エスプレッソのテイスティングを行う。
結果: いずれの職員も、「クレマの立ち方とアロマ・ボディの出方から鑑みて9-10気圧程度の圧力で抽出している21」と見立てた。なお、抽出時の手押しポンプは、要求される圧力には及ばない非常に軽い力で押すことが可能だった。
考察: この結果から、SCP-XXX-JPは不明な昇圧機構を有していることが考えられた。
実験記録XXX-JP-2
目的: SCP-XXX-JPで抽出したカフェインレスエスプレッソの安全性および抽出状態の確認
対象: SCP-XXX-JPを『Decaf(100%)』設定で用いて深煎りブレンド豆8g、熱湯70mlで抽出したカフェインレスエスプレッソ
方法: バリスタの資格を持つDクラス職員1名(および、安全性が確認された後、コーヒーに詳しいエージェント・用務員・研究員・博士など職員5名)にて事前のカッピングおよび、エスプレッソのテイスティングを行う。
結果: いずれの職員も、「カフェインはほぼ完全に取り除かれているが、その他のフレーバーがほとんど損なわれておらず、超臨界二酸化炭素抽出法でデカフェが作られている22」と見立てた。なお、超臨界二酸化炭素の生成には約74気圧が必要であるものの、抽出時の手押しポンプは、非常に軽い力で押すことが可能だった。
考察: この結果から、SCP-XXX-JPは不明な機構により空気中の二酸化炭素を取り込み、構造上不可能と考えられる昇圧・耐圧機能にて超臨界二酸化炭素を生成していることが考えられた。
実験記録XXX-JP-3
目的: SCP-XXX-JPで打錠したカフェイン錠剤の安全性および状態の確認
対象: SCP-XXX-JPを『Caffeine tab』設定で用いて打錠したカフェイン錠剤
方法: 質量分析計による成分解析、電子顕微鏡による構造解析、およびDクラス職員5名による内服
結果: 打錠されたカフェイン錠剤は、1錠あたり無水カフェイン50mgで形成されていた。不純物はコーヒー豆の成分がわずかに含まれるのみであった。錠剤を内服したいずれの職員も、相応の覚醒効果を得た。部品を外して水洗いしたSCP-XXX-JPに、これらのカフェインが蓄積されているべき空間は発見できなかった。
考察: この結果から、SCP-XXX-JPは除去したカフェインを不明な機構により異空間に格納し、打錠できることが考えられた。
実験記録XXX-JP-4
目的: SCP-XXX-JPで抽出したエッセンシャルオイルの状態の確認
対象: SCP-XXX-JPを『Essential oil』設定で用いて抽出したラベンダー、ローズマリー、ハッカ、オレンジ精油
方法: 質量分析計による成分解析
結果: いずれの精油の成分も、水蒸気蒸留法で抽出されたものとほとんど一致しており、コーヒー豆やその他の精油の成分は確認されなかった。
考察: この結果から、SCP-XXX-JPはダイヤルの切り替えにて、機器内の空間を完全に新規のものに入れ替えられると考えられた。
実験記録XXX-JP-5
目的: SCP-XXX-JPの内部機構の確認
対象: SCP-XXX-JP
方法: SCP-XXX-JP本体を分解し、内部を確認する。
結果: 分解途中で、SCP-XXX-JP本体が超高圧で炸裂し、作業を行なっていた研究員が手指7本を断裂し、右目を失明する爆傷を負った。
実験XXX-JP-5の結果から、SCP-XXX-JPを分解する試みは現在中止されています。
補遺1:
SCP-XXX-JPの取扱説明書(部分)
こんにちは!君が購入したワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™は、簡単においしいエスプレッソが作れるおもちゃだよ!
コーヒーやエスプレッソを飲んでいる大人たちって、カッコイイよね! でもコーヒーって苦くて飲めない? そんな君も安心! このワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™を使えば、苦くなくて美味しいエスプレッソがお家で作れちゃうぞ!君がバリスタになるには何が必要かな?
ステップ1:まず、あっついお湯(90℃以上)を沸かそう!
ステップ2:やけどしないように気を付けて、ホットカップに好みの量のお湯をいれよう! 標準量(70ml)は内側に線が引いてあるぞ!
ステップ3:好きな銘柄のコーヒーの粉をフィルターポッドにセットしてね!(Decaf/Caffeine tab/Essential oilの設定は別紙を見てね!)
ステップ4:ホットカップとフィルターポッドを他の部品と合わせて、ワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™を組み立てよう!
ステップ5:ワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™を持って、注ぎ口の下に好きなカップを置こう!
ステップ6:ワンダーテインメント博士のスーパー手押しポンプ™をプッシュプッシュ! 赤ちゃんでも楽しく押せるぞ!
ステップ7:押した回数で好みの濃さ/量のエスプレッソが作れるぞ!(標準20回。10~30回推奨。)
ステップ8:完成だ!やったネ!美味しいエスプレッソを楽しんでね!ワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™を使い終わった後は、部品ごとに水洗いして、よく乾かしてから保管してね!
コーヒーの苦みはカフェインだけじゃないぞ! もし『Decaf(100%)』でも苦くて飲めなかったら、素直にミルクをいれてみよう!
取り除いたカフェインをフィルターポッドから手で取ろうとしないでね! 必ず『Caffeine tab』を使おう!
エッセンシャルオイルは、種類によっては刺激の強いものがあるぞ! 触ったり飲んだりするのは、必ず安全なオイルか調べてからにしようね!
不良品の交換やお問い合わせは、████████████の専用フォームへどうぞ!
警告:コーヒー豆・ハーブは付属しておりません。
警告:古いコーヒー豆を使った・エッセンシャルオイルを飲んだ・カフェインを大量内服した等の、不適切な使用によって生じた如何なる不都合に対してもワンダーテインメント社は一切の責任を負いません。
警告:分解・改造・その他用途と異なる取扱を行なった結果生じた如何なる不具合に対してもワンダーテインメント社は一切の責任を負いません。
補遺2: 実験XXX-JP-5を受け、取扱説明書記載の問い合わせフォームに、一般の子供を装って「父親がSCP-XXX-JPを分解しようとして大ケガを負った」という旨の苦情を送付したところ、以下のメッセージと共に、新品のSCP-XXX-JPとSCP-1103のパッケージ3点がサイト-81██へ送付されてきました。
親愛なる██ ██君へ、
パパのケガは大丈夫だったかな? 新品の"ワンダーテインメント博士のだれでもバリスタ™"を入れておいたから、今度からおもちゃは取扱説明書をよく読んでから使ってもらえるとうれしいな! 説明書を読むことは何事においても重要だぞ! もしパパのケガが大きなものだったら、同封の"ワンダーテインメント博士の子ども先生用いしょく手術キット®"で、君が治してあげよう! 追加のキットが欲しいときは、████████████の専用フォームで頼んでね! パパと君が素晴らしいバリスタとして、研究者として活躍することを祈ってます!
お読みいただきありがとうございました。
ワンダーテインメント博士®
この結果を受けて、webページ████████████の探索は、ワンダーテインメント社に財団の情報が漏洩する危険性があるため、無期限に中止されました。
akauoakauo 8 Feb 2019, 22:10
ワンタメ博士はおおむね子供のおもちゃの会社なわけですが、このマシンはどう見ても子供向けではなく、ワンタメらしくないというのがDVの理由です。
いくらコーヒーとしての味を追求しても子供はそもそもコーヒーを飲みません。「お店のエスプレッソの味」なんて求めないし、カフェインなんて言われてもわかりません。彼らが求めるのはクソ甘いコーヒー牛乳です。
我々とは異なる文化向け商品である…なら「異なる文化向け」感が無いです。
大人向け商品に手を出した…なら子供向けの口調が邪魔してます。
aisurakuto 10 Feb 2019, 01:29
『「苦いコーヒーを飲めるのはカッコいい」という子どもの憧れ』という着眼点はとても興味深いです。
自分も現状の記事については他の方と同様の印象を受けていますが、改稿に当たってはその部分を強く押し出してみるといいかもしれません。
ただ、幼少期の憧れというものは漠然としていると考えられる(akauo氏が指摘したように、専門性を追い求めてはいない)ので、よりコーヒーのイメージを抽象化させていくべきでしょう。その過程で特異性も練り直せるかと思います。
また、具体的なモチーフのベースは「コーヒーメーカー」ではなく、「知育菓子やクッキングトイを参考にした本格バリスタ体験キット」などがいいかもしれません。
izhayaizhaya 10 Feb 2019, 06:22
読みやすくて結構好きです。詳細不明なボタンをしっかりDクラスが押してくれていたらUVだったと思います。
また、「財団職員が要注意団体に一般人を装って連絡を取ると見抜かれる」というのは結構良く見ます。
とはいえ全体的にAnomalousアイテムとして収容もできちゃいそうなので、何かひとひねりあれば更に良いと思います。
午後23時48分。サイト8137のトレーニングルームに、一人の研究員の姿があった。
素足が床を踏む、かすかな軋みだけが律動的に響く。
タンクトップとハーフパンツに包まれた細身の体躯は柔軟で引き締まり、実用的な筋肉に覆われている。
年齢を感じさせぬ張りのある肌や腹筋がメタルハライドランプの光に照らされる。
風を孕んで、長い黒髪が艶めき靡く。
彼――、いや、彼女の名は藤光創。財団の研究員だ。
鋭い蹴りが、室内の冷えた空気を切り裂く。
膝蹴りテンカウ、右中段蹴りテックワァー、左下段蹴りテッカーサイ。
前蹴りティップ、腿かつカウノーイ、右上段蹴りテッカンコークワァー。
大きく息をついた藤光の全身からは、蒸気が上がっていた。
「やっぱり……だめだな……」
足の状態はいい。四肢も胴体も、『健常人』そのものだ。
だが、そのバランス感覚は以前とずれていて、思うように動けない。
今も夢に見るあの蹴りとは、ほど遠い。
胸も、重い。
最近肩凝りがひどい気がする。
体の調子としては絶不調だ。
入り口の方から、ぱちぱちと軽い拍手が聞こえた。
藤光が目をやった先には、直属の上司の姿があった。
「すごいね、藤光くん」
「高橋博士」
「部屋にいなかったから、ここだと思いましたよ」
「……この時間は誰も使わないので。それより、私に何の御用ですか?」
「人事ファイルの更新の時期ですからね。変更点がないかチェックして、メールボックスに入れておいてくださいね」
藤光はタオルで汗を拭きながら、ドアのハードマットに佇む高橋博士からファイルの書類を受け取る。
印字された内容にざっと目を通して、藤光はため息をついた。
「……もう、私は『彼女』扱いなんですね」
「いや、だってまぁ……、そうでしょ?」
「そうですけれど」
受け取った人事ファイルで、藤光を指す第三人称は『女性』と『彼女』になっている。
ひとつ前の版では、これは『男性』で『彼』だったはずだ。
高橋博士は白衣の腕を組み、藤光に向けて苦笑した。
「……まだ、写真は載せたくない?」
「はい」
藤光は奥歯を噛みしめて即答する。
藤光は20██/█/█に発生したインシデント事案以降、SCP-918-JP-A-24と一心同体になってしまっていた。
その影響で、右腕から徐々に女性のものへと変化していった途中の姿は、とても人に見せられるものではなかった。
だから藤光は、自分の写真を人事ファイルから削除していた。
「でも、改めて今の藤光くんの姿を載せれば、もう誰も何も言わないと思いますよ?」
「いえ、とても恥ずかしくて、載せられたものじゃありません」
食い下がる高橋博士に、ぶんぶんと首を振る。
この状態になってから、藤光は自分の状態が揶揄されないよう、サイト内で極力他人と出会わないように過ごしていたのだ。
わざわざ写真を再掲したいとも思わない。
「そう思うんだったら、服が合ってないんじゃないかしら? 似合ってる服を着るときっと違いますよ?」
「……そうなんでしょうか」
「今度一緒に買いに行きましょうよ、藤光くん。もう見た目を気にしなくてもいいですから!」
高橋博士は、手を変え品を変え藤光をなだめようとする。
今までもそうだった。
この博士は、しくじってオブジェクトの影響を受けてしまった愚かな藤光を、ずっと気遣ってくれている。
だが却って、その気遣いと声援が、藤光には重荷だった。
「いやー、正直、有能なあなたに918以外の仕事も手伝って欲しくて! 手が足りないんですよ。前みたいに新人研修もお願いしたいですし。今のあなたもきっと人気出ると思いますよー」
「検討します」
藤光は高橋博士の寂しげな笑顔から踵を返し、つっけんどんに言い放った。
高橋博士は何か言いたげにしばらく藤光の背中に視線を送っていたが、藤光は振り向かなかった。
かすかに溜息をつくと、高橋博士は「それじゃあ、また返事を聞かせてくださいね」とだけ言ってドアを閉める。
藤光はそれから30分、がむしゃらに四肢を振り抜いてから、トレーニングルームを後にした。
シャワーを浴びた藤光は、床に就く前に、ふともう一度自分の職務の確認をしたくなった。
雑念を頭から追い払いたい。
業務とトレーニングが、今の藤光にとっては一番のリフレッシュ手段だった。
「ぷぅぷぅ?」
「ピィーッ」
「やあ、SCP-918-JP-A-13、15。起こしちゃいましたか」
白衣を纏って収容室に入ると、白いウサギと鷲が藤光に気づいて、隅からちょこちょこと歩み寄ってくる。
今の藤光は一日のうちの3分の1以上、このSCP-918-JPの収容室で過ごしているだろう。
それは藤光が自分の業務をSCP-918-JP管理以外断っているからであり、藤光の心が唯一、何かに没頭できる場所がここだったからでもある。
室内に設置してあるショーケースを開けて、中の本を取り出す。
"それは誰かが見た見果てた夢"と刻印された書籍は、片手で持てる軽さにも関わらず、中のページの枚数は計り知れない。
それはこの本の中に、今まで人々が見て諦められた夢の情報が、いくつも記載されているためだ。
この収容室にいる白いウサギも鷲も、この書籍から出てきた『夢』たちのひとつ。
実体化している彼らSCP-918-JP-Aは、この中に記録されている夢でも、とくに"自分という願望または夢を誰かに抱いてもらう"強い意志を持ったものたちだ。
それぞれにちょっとした特技を持っていて、それぞれに愛らしく、そして切ない。
藤光は寄ってくるオブジェクトへの挨拶もそこそこに、本を開いてめくり始める。
全体のページ数が計測不能であるため、新しい夢の情報が書き加えられる最後のページに辿り着くまで、慣れた藤光でも数分の時間を要する。
めくっていると、耳にかかる生乾きの髪が鬱陶しい。
長すぎて、ドライヤーの加減がまだわからないのだ。
「……髪もばっさり切ろうかな」
ページを手繰りながら呟いた時、藤光は自分の頭の中から少女の声を聞いた。
「えー! なんで、ダメダメ! 絶対今の長さが似合ってるもん!」
「トレーニングに邪魔なんですよ」
藤光は、脳内に響く無邪気な声へ、ごく静かに返答した。
この声の主こそ、SCP-918-JP-A-24。足元のウサギたちと同じく、この本から出てきた夢だ。
それなのに彼女は、消え去る間際、なぜか藤光の中に混ざりこみ同化してしまったのだ。
「じゃあ結ぶとかあるでしょ? 三つ編みにでもしようよ!」
「……女性は難儀ですねぇ」
少女の声に、藤光は無駄だとわかっていながらも耳をふさぎたくなった。
嘆いても仕方ないが、彼女こそ、今の藤光の悩みの主原因なのだ。
容姿も性別もまるごと変わってしまった。
その点を度外視したとしても。
トレーニングしても全然筋肉がつかない。
基礎代謝が落ちて、無駄な脂肪が溜まりやすい。
月一で腹痛と貧血に悩まされるのも困りものだ。
世の女性はよくやっているものだと感心する。
SCP-918-JP-A-24は、『友達の夢を応援したかった』少女の夢だった。
彼女がその友達とどういう確執があったのか。なぜその夢を叶えられなかったのか。
詳しいことは聞いていない。聞く気もない。
だが彼女が、そのことを強く後悔していることは確かで。
その未練が、彼女に藤光と同化させるほどの力を与えていたのだ。
溜息をつく藤光に、頭の中の少女の声は、心配そうにトーンを下げる。
「……はじめちゃんは、まだムエタイ選手になる夢、忘れられないの?」
「そんなことは……」
――夢を、忘れられてないのだろうか。
24に問われ、藤光は改めて自問する。
誰よりも真面目に、練習してきたはずだった。
友達の、両親の、人々の応援を受けて立てるくらいには、藤光は強いはずだった。
だがあの試合中に、声援は悲鳴に変わった。
相手の蹴りは、あまりに鋭かった。
敵の藤光が見ても、惚れ惚れするほど素晴らしかった。
今も脳裏に浮かぶ、刃物のような蹴撃。
受けた藤光の右脚は、激しく骨折した。
ムエタイの道は諦めざるを得なかった。
以降、藤光は必死に勉強した。真面目に、愚直に。
それは、そうしないと食べるための職を得られないからで、そこに夢や目標なんてものはなかった。
フロント企業から財団に就職することになったのは、幸運だったのか不運だったのか。
今の藤光は、ただひたすら職務に真面目であることくらいしか、とりえがない。
夢があってトレーニングを続けているわけではない。
それでも。
やはり藤光は、毎日少しでも体を動かさないと、集中できないのだ。
「トレーニングは、ただ職務の効率を上げるためで、夢を持っているわけじゃないですよ」
「そうなの?」
「そう。仮に万全でも、何十にもなって、財団にいて……無理ですよ」
そう、自分に言い聞かせる。
よく考えれば、体自体はむしろ彼女のおかげで若々しく健康なくらいだ。
骨折し歪んでいた右脚だって、なんともない。
だが、女性の体だ。
筋肉量も何もかも圧倒的に違う。
それに、財団から脚を洗うのに一体どれほど記憶処理されなければならないのか。
今の自分は、どんな身分でどんな存在として一般社会に存在し得るのか。
無理無理。絶対に無理――。
そう思いながら、本のページをばさばさとめくっていた。
その時だった。
「うわ……、しまった。記憶処理剤吸わなきゃ」
藤光は、自分のしくじりに眉根を押さえた。
『191ページを見るな』。
ショーケース前の記録リストの補足に書き加える。
SCP-918-JP内の情報の増減を確認するため、特別収容プロトコルでは最後のページの情報のみを定期的に記録することになっているのだが。
その過程で、どうしても途中の見るべきでないページを認識してしまうことがある。
見るべきでない夢はいくつもある。
悲痛な夢。
狂った夢。
見てしまったらこちらの心が引きずられてしまいそうな夢。
認識してはいけない夢。
逐一こうして書いているはずなのだが、書いたことまで忘れているため、不注意でまた見てしまうことがある。
最初からリストを見直したら、『191ページの夢』を見てしまったのは既に3回目だ。
注意喚起のために付箋を貼ると、逆にめくる動きにつられて開いてしまう率が上がるため普段は貼らないのだが。
流石に3回は多すぎるため、特に注意のため付箋を貼っておく。
付箋の貼られたページはまだ数か所だが、これが更に多くなるようなら、高橋博士とも相談して特別収容プロトコルの改定が必要になるだろう。
クラスA記憶処理剤のエアロゾルを少量自己吸入して、数分前の記憶からまたやり直しだ。
そんなこんなで、最後のページを確認すると、新規の夢の情報は十数個に上っていた。
夜の定期業務からさほど経っていない余分のチェックだったというのに。
世に、諦められた夢のなんと多いことか。
知らず零れる藤光の溜息を、少女が気遣う。
「こんな時間まで頑張るのもいいけど、ちゃんと休んでね、はじめちゃん」
「ええ、まあ。でも仕事してた方が楽なんですよ」
「んもー、はじめちゃんワーカーホリックなんだから! やっぱり助手の私がいないとダメだね! もうお終い! 寝よ寝よ!」
自分の脳内の声に急かされて、ようやく藤光は記録のペンを置く。
藤光の助手を自称するSCP-918-JP-A-24は、最近どんどん藤光と会話する頻度が上がってきている。
最初は呼び方も『藤光さん』だったのが『はじめちゃん』にまで砕けている。
だが彼女には悪いが、四六時中少女の声を脳内で聞いていて心が休まる感じはしない。
彼女の応援は、正直藤光にとって重荷でしかない。
少女の声を聞くたびに、藤光は考えてしまう。
財団に就職して、初めてこの世に平行世界というものが実在することを知った。
そこにはこの世界が辿らなかった様々な可能性があり、異なる人生を歩んだ自分もいるのだという。
平行世界には、もっと別の道を歩んでいた自分もいたのだろうか。
こんな体になることもなく、研究を続けていた自分。
いや、財団に入ることもなく、夢を叶えていた自分もいたのかも知れない。
そもそも、ムエタイ選手ではなく違う夢を追っていた自分とか。
もしかすると初めから女性として存在していた自分さえいたのかも――。
胡蝶の夢。邯鄲の夢。夢は五臓のわずらい、とも言う。
取り留めもない夢のことをを考えたところで、無為に過ぎる。
そう。財団職員はこんな些末なことで感情は動かさないんだ――。
自分に言い聞かせるように踏ん切りをつけ、収容室を立ち去ろうとして、藤光は足元のオブジェクトたちの様子を見やった。
白いウサギはうとうとと再び眠りかけていたが、鷲の方は違った。
「相変わらず落ち着かないね、15」
鷲の姿をしたSCP-918-JP-A-15は、藤光が来てから、しきりに近くの一定範囲を行き来している。
そこは数か月前、SCP-918-JP-A-16が消滅した場所だ。
SCP-918-JP-A-16――ラブラドールの盲導犬だったその夢は、短時間だけ人間に自分の後をついて来させる特技を持っていた。
だが今、この鷲が行っている行動はその能力に由来しない。
もう、SCP-918-JP-A-16の能力の効果はとっくに切れているはずだ。
SCP-918-JP-A-15はしかし、あの盲導犬が消えてしまってから、行方不明者を捜索する警察のように、時間さえあれば何度も何度も、彼が最後に辿った地点をトラックするのだ。
確かに、SCP-918-JP-A-16の消え方は、他の夢の消滅とは異質だった。
彼の消滅は、分類するならば『痛みを伴う消滅』だと思われた。
この現象は最初SCP-918-JP-A-11、"笑顔の夢"――えっちゃんという呼称をつけていたこともあるが――で確認された消滅現象だ。
誰かに抱かれて喜びと共に消滅するのではなく、捨てられ、忘却されることによる存在の希薄化とでもいうべき事象だ。
しかし彼が異なったのは、苦痛を伴って消滅する際に、付近にいたSCP-918-JP-A-17と18を巻き込んで消滅したという点だ。
これは消滅の際に藤光自身と同化したSCP-918-JP-A-24と同じく、その特技に由来する現象であったのかと思われた。
だが、SCP-918-JP-A-16消滅後のSCP-918-JP-A-15の様子は、財団の立てた仮説を否定するもののように思えてならなかった。
「……何かわかったかい、15? 私は流石に眠くなって来たんで、もう戻りますね」
藤光がSCP-918-JPを閉じ、あくび交じりにそれをショーケースに戻そうとした、その時だった。
SCP-918-JP-A-16の消失地点を探っていた鷲が、突如苦痛に身をよじり始めたのだ。
「おい! どうした、15! 大丈夫か!?」
本を抱えた藤光は、慌てて駆け寄ろうとした。
だが次の瞬間、鷲は見えない何者かに引きちぎられた。
SCP-918-JP-A-15は断末魔を上げることもできずに微塵となる。
夢の鮮血が、収容室一面に飛び散る。
ばたばたと床に落ちた血だまりは、なぜか意味のある文字列を形成するように見えた。
『あか█け や█げ ███████ くさは█ねはみ █████』
その真っ赤な文字列を認識した瞬間、藤光の視界は、ぐらりと暗転した。
比丘たちよ、色は無常、受は無常、想は無常、行は無常、識は無常である。
比丘たちよ、色は無我、受は無我、想は無我、行は無我、識は無我である。
すべての行は無常である、すべての法は無我である。
夕焼け。
脈打つ心臓のような、蜃気楼に揺らめく深紅の太陽。
藤光が意識を取り戻した時、その目に映るのはただ赤ばかりだった。
眼の眩むような光にたじろぎながら立ち上がった時、藤光はその目前に広がる信じられないような事態に息を呑んだ。
「15!」
ちゃぐっ、ちゃぐっ。ちゃぐっ。
鷲の夢、SCP-918-JP-A-15が、巨大な嘴に啄まれている。
その嘴の主は、体高数メートルはあるかと思われる、見上げるばかりの巨鳥だ。
茫然とその様子を見つめていた藤光の脳内に、少女の叫びが届く。
「は、は、はじめちゃん! 逃げなきゃ!」
「――ッ!」
SCP-918-JP-A-24の叱咤に、藤光はSCP-918-JPを抱え、一息に飛び退る。
ぐずり。
だがその足は着地点で、何か地面でないものを踏んだ。
藤光の脚の下では、一頭のラブラドール・レトリーバーが、はらわただけ食い散らかされて動かなくなっていた。
その傍らで、白いウサギのSCP-918-JP-A-13が、怯え震えている。
気が付けば周囲には、数え切れないほどの動物たちの死骸が散乱していた。
一面の赤で埋め尽くされたその広漠な野原は、数多の誰かの血の色だ。
その鮮血で塗り固められたような巨大な鳥が、藤光に向けてのそりと向き直る。
緋色の鳥――。
――なんだこのオブジェクトは。ここは一体どこだ。
なぜこんなにたくさんの夢が、この巨鳥に食い荒らされている?
理由はわからない。確実なのは、目の前の鳥が何らかのオブジェクトであり、藤光はそれに襲われ、その異常性の影響下に入ってしまったということだけだ。
だが、あたりは一面、喪われた夢の血潮で埋め尽くされている。
こんなことは現実ではあり得ない。それこそ、夢――。
そこまで考えて、藤光は思い至る。
――そうだ。ここは夢。というより、人々の深層意識、認識の野とでもいうべき場所なのだろう。
でなければ、この事態に納得のいく説明はつかない。
初めからおかしかったのだ。あらゆる人々が見て、捨てられた夢が、藤光1人で確認できる数で済むはずがない。
この本に掬い取られなかった夢たちは、全てではないにせよ、この認識の野で緋色の鳥に捕食され続けていたにちがいない。
緋色の鳥はそして、ついに在野の夢ばかりでなく、『自分という願望または夢を誰かに抱いてもらう』という強い意志を持ったSCP-918-JPの夢を狙うに至ったのだろう。
なるほど。夢の詰まったこの本は、この鳥にとっては熟成された珍味のバラエティパックとでもいったところか。
さぞかし味わい甲斐があるのだろう。
この鳥は、SCP-918-JPを、その管理者の夢を介して自分の領地へ引きずり込むタイミングを、ずっと狙っていたのだ。
緋色の鳥は、藤光の抱えた本を見据え、ニタリと口元を歪めたように見えた。
次の瞬間、鳥は炎のような翼を広げ、上空へと飛び上がる。
風圧と共に血煙と砂が舞い上がる。
藤光の視界が一面の赤褐色に塞がる。
その帳とばりの奥から、藤光に鋭い殺気が刺さった。
――来る! 上空からの急降下突撃、猛禽類の狩猟行動だ!
藤光の脳裏に、鷲の夢の姿が翻る。
腕を上げて瓜をいだく翁ターテンカムファーク(上段受け)――、いや、耐え切れない!
とっさに白ウサギを抱え、全身に反りヨーを加えて転げる。
直後、体の脇を大型車のような巨大質量が通り抜けた。
躱かわしたはずなのに、藤光は紙屑のように十数メートル吹き飛ばされた。
「ぐっ、は――」
「ぷきゅぃ!?」
夢の骸むくろの山に全身を叩きつけられ、灼けるような痛みが襲う。
まともに受けていれば、一撃で命を刈り取られていたに違いない。
抱えていた白ウサギも、夢の山に跳ね飛ばされて藤光の背後に落ちた。
腕から零れた本が、夢の遺骸の上にばらばらとめくれる。
「はじめちゃん、はじめちゃん! 大丈夫!? しっかりして!」
脳内で、少女が悲鳴を上げている。
藤光はよろよろと手をつき、本だけは確保しようとSCP-918-JPへにじり寄った。
付箋のついたページが開かれている。
191ページ――。
そして藤光は、朦朧とした意識に、その名を見た。
『██ ██(████-████)
願望:██寺のちんちろ和尚さんのような強い男になること。』
かなり昔。ある村の少年が見ていた他愛もない夢。
その願いに記された名前が、あのオブジェクトを目の前に浮かばせる。
身の丈、約2メートル64センチ。
隆々とした筋肉が、墨染めの法衣からはちきれんばかりに覗いている。
ああ、知っている。
我々はこの男の名を、ずっと昔から知っている。
「『SCP-191-JP ちんちろ和尚さん』――!」
「よくぞ逃げ延びた。もう安心じゃ」
その名を認識した者のイメージの中に共通の存在として出現する和尚。
一種の精神生命体として封じ込められたEuclidクラスオブジェクト。
人々の記憶から抹消され続けてきたその法師が、今この赤い大地に収容違反していた。
「わしはずっと昔、大日如来の権能を受け、あらゆる人々の魂を守るべく存在するようになった。お主ら財団ともいつか利他の行を共にできればと思っていたが……、このような形になるとはな」
ちんちろ和尚さんは腰を沈め半身となり、藤光たちを守るように、ゆっくりと緋色の鳥に向けて構える。
平安末期には、既に各地の寺院の僧兵に京八流などと呼ばれる古武術が伝承されていたとされる。
巌のような和尚の佇まいは、彼がかなりの武術家であることを示していた。
「今生の者共もこのような業の深い邪鬼をよく生み出したものよ。幾度も取り逃してきたが、今度こそ終いじゃ」
緋色の鳥は喉の奥で一瞬唸るや、赤い疾風のように和尚へと飛びかかった。
突進する緋色の鳥を、ちんちろ和尚が真っ向から受け止める。
首相撲のようにがっぷりと組み合って、和尚はその巨鳥を押し返そうと踏み込んだ。
だが同時に、鋭いくちばしが、和尚の肩に食い込む。
「ぐおおぉ!?」
和尚さんの肩から鮮血が吹き出す。
肉がちぎれ、抉られる。
押し込まれ、今にも地に伏そうとしているのは、鳥ではなくちんちろ和尚さんの方だ。
明らかに力負けしている。
――そうだろう。彼は弱体化しているに決まっている。
私たち財団が、和尚を人々に認識させないように、記憶処理でひたすら封じ込めてきたのだから。
今、ちんちろ和尚さんを認識して、応援できる人は、一体何人いるだろう?
精神生命体にとっての力の源は何だ?
それは認識されること。人々の想い。それ以外にないだろう。
だが今や、この緋色の鳥は、忘れ去られた想いたちを好きに喰い漁り、肥え太っている。
財団の失敗だ。
もはやどうしようもない。
認識してもしなくても強くなる精神生命体。こんなの、絶対にK-クラスシナリオが起こってしまう。
けてるけてるけてるけてるけてる――!
藤光は頭を抱え、地に伏してしまう。
だがその頭上から、力強い声が藤光の意識を揺らした。
「藤光創よ! お主の力を、貸してくれ!」
見上げれば、ちんちろ和尚さんが、金剛石のように確固たる澄んだ瞳で、藤光を見つめていた。
彼は緋色の鳥の嘴に肩を深々と食いつかれたまま、その首根を掴み、全身の筋肉でその鳥を自分の体に固定させていた。
動けなくなっている緋色の鳥は、徐々に焦っているかのように羽根をばたつかせ始める。
ふらふらと身を起こす藤光にその時、自分の内側から、そして背後から、声が届いた。
「私ははじめちゃんを、応援してる!」
「ぷぅぅ――!」
少女とウサギが、全身全霊を振り絞るかのような声援を送る。
彼女たちの祈りを、和尚が一喝の元に藤光へと叩き込んでいた。
「色即是空認識し得る全ては無実体である! だからこそ、想え! お主の想いが、行いが、世界を創るんじゃ!」
どくん、と。
藤光の中の何かが、胎動した。
手が、赤い土を掴む。
立ち上がるとともに流れた風が、付箋のついた本のページを、めくった。
『藤光 創(ふじみつ-はじめ)
願望:みんなの声援に応えられる選手になること。』
夢が、自分の中に沁み込んでくるのを感じる。
――ああ、なんのためのトレーニングだ。
いったい何のために私は生きているんだ。
皆の声に、期待に応えられないで、生きている意味があるのか。
死んでいるのといっしょじゃないか。
どうせ死ぬなら。私は。
私は、人生の全てを、この一撃にかけてやる!
「……そうだ。夢は、決して、足蹴にしたり、食い荒らしたりしていいものじゃないんだ――!」
――ああ、いつか誰かが言っていた。
『抱いた夢は責任を持って叶えてください』と。
藤光は駆けた。
ちんちろ和尚に首相撲プラムで捕らわれている鳥へ、一直線に。
巨大な鳥の目に、一瞬恐怖がよぎる。
それは、捕食される恐怖。
緋色の鳥の首筋に、全身の力を込めて、藤光は右脚を振り抜く。
その蹴りは、あの日から幾度も夢に見た鋭さだった。
携帯電話の7時のアラームで、藤光の意識は体に戻ってくる。
「……あれ、寝落ちしちゃってたか」
身を起こせば、藤光はSCP-918-JPの収容室で、ショーケースに突っ伏したまま眠っていたらしい。
昨日、トレーニングで疲労した後に記録業務を行っていたせいだろう。
高橋博士の誘いに戸惑っていたにしても、体調管理くらいしっかりしておくべきだった。
隣では、白いウサギのSCP-918-JP-A-13が、白衣の裾で寝息を立てている。
微笑みながら立ち上がると、その動きで目を覚ましたウサギは、藤光の足にぷぅぷぅと鼻を鳴らしてすり寄っていた。
「どうしたの? 今日はいつもより甘えてるね」
白いウサギは、何か感謝しているようにも見えた。
だが、藤光には、その理由がなんなのかはよくわからない。
収容室は白く清潔で、昨日から何も変わっていないように思えた。
そのまま朝の定期業務に入った藤光は、付箋に注意して、本の最後のページをめくる。
新しい夢が、またいくつも加わっている。
その中で、少し藤光の目を惹く夢があった。
『あかいとり(仮名)
願望:おなかいっぱいたべること。』
飢え死にしてしまった子供の夢だろうか。まだ名前もつけられていなかったらしい。
こんな夢を見ると、本当に世は無常なものだと思ってしまう。
それでも、財団職員はオブジェクトに感情移入はしない。
ただ淡々とリストにSCP-918-JPの記録を転記して、藤光は朝の定期業務を終える。
自分の研究室に戻ると、机の上には、昨日チェックを頼まれていた人事ファイルがあった。
ペンを取り出して、昨日ほとんど流し読みだった内容を見返す。
修正すべきところなんてないはずだけど――。
「あれ、なんでキミ、私のことを『彼』って言ってたんだっけ? 誤植?」
藤光は一人呟く。
SCP-918-JP-A-24の事案後に行われたインタビュー記録で、彼女の使う第三人称だけが異なっている。
だが藤光の問いに、頭の中の彼女からの返事はなかった。
というか最近、彼女の声を聞いていない気がする。
藤光は、長い黒髪を二つの三つ編みに撚りながら、ぼんやりと思う。
――色々忘れている。
記憶処理剤を日常的に使っているせいもあるだろうけど。
悲しい夢も、忘れてしまった夢も。
捨て去ったり、消し去ったりしていいものじゃない。
彼らは、この髪のように、私たちの中に確かに編み込まれている。
きっと、その夢を糧にして、私たちは進んでいくんだ。
忘れたものたちのおかげで、私は生きているんだ。
「おはよう、藤光ちゃん。昨日言った件だけど、どう? 今日、仕事終わりに服買いに行きましょうよ!」
ノックと共に研究室のドアが開く。
高橋博士の笑顔がのぞく。
藤光は答えた。
「ええ、いいですよ」
「お、本当!? やった! どういう心境の変化!?」
ダメもとのつもりだったのか、高橋博士は逆に驚いている。
デスクを立ち、藤光は勢いよく右腕を振り抜いた。
軽快な風切り音が、白衣と二つの三つ編みを揺らす。
「ちょうど新しいトレーニングウェア、欲しかったんですよ」
体の調子は、絶好調だった。
den_wgC73NFT9I
宛先: AiliceHershey
SCP-TCG-JP-JのTaleの発動回数について 19 Jan 2019, 19:01
お疲れ様です。ちょっとお伺いしたいことがあるんですが、SCP-TCG-JP-Jまとめwikiの方で、
「Taleは1ターンに2枚以上使用できるか」との質問がありました。
自分の記憶では、同一ターン内に使用できるTaleの数に規定はなかったと思っているのですが、どうなのでしょうか?
突然の質問で申し訳ありませんが、御回答くだされば幸いです。
AiliceHershey
宛先: den_wgC73NFT9I
Re: SCP-TCG-JP-JのTaleの発動回数について 19 Jan 2019, 20:35
はい。規定は存在していません。
ただしそれによってゲームバランスの崩壊などが起こってしまう場合にはその限りではありません。
つまりプレイする人間のヘッドカノン、及びルールによります。
den_wgC73NFT9I
宛先: AiliceHershey
Re: SCP-TCG-JP-JのTaleの発動回数について 19 Jan 2019, 22:06
迅速なお返事をありがとうございます! その旨を回答しておきます。
また、以前のTwitterアカウントがなくなっているように拝見しました。
もし差し支えなければ新しいアカウントを教えていただけませんでしょうか。
またSCP-TCG-JP-J関連で色々とお尋ねさせていただければと存じます。
何卒宜しくお願い致します。
AiliceHershey
宛先: den_wgC73NFT9I
Re: SCP-TCG-JP-JのTaleの発動回数について 20 Jan 2019, 09:24
「AiHe001」となります。今後ともよろしくお願いします。
den_wgC73NFT9I
宛先: AiliceHershey
SCP-TCG-JP-Jの引き分けについて 7 Feb 2019, 08:46
アイリスハーシーさん、失礼いたします。SCP-TCG-JP-Jで、wikiに以下のような質問がありました。
互いに何も行動を取れない・取る意味が無くなったとき、ゲームの勝敗はどう決定しますか?
(例
互いに「SCP-1025 病気百科事典」をパートナーに選択。その後、新しくオブジェクトが収容違反することがなくコスト・確保力が両方0に。互いの人事・Tale・Incidentなども効果の発動条件を満たさず、結果として全ての行動ができなくなる。このときの勝敗はどう決めるのか?
他のゲームならデッキ切れなどがあるのですが、このゲームでは引き分けなどの概念を導入しないと、無限に何もしないターンが続くのではないでしょうか?
このような場合に限らず、互いに何もしない戦略などでターンが引き延ばされることはあると思います。
引き分けや千日手などの導入される時点はどのタイミングになるでしょうか? なお、引き延ばしが生じても「望みは」などのTaleを狙っている可能性があるので線引きが難しいとは思いますが……。
AiliceHershey
宛先: den_wgC73NFT9I
Re: SCP-TCG-JP-Jの引き分けについて 7 Feb 2019, 21:24
そうですね、前述の通り、何もしない事による条件による達成もあるため、非常に難しい所です。
他のゲームと違い、そのような状況に陥ったとしてもLO(ライブラリ・アウト)のような敗北条件もないため、「お互いの合意により引き分けが成立する」という形になると推測します。
どちらか片方が拒否した場合は続行。それは盤面のロックとして認めるとするべきでしょう。
ただし、「Don't be a dick」、つまり何の勝算もなくそのような状況を続行することは認めるべきではありません。結局はプレイヤー同士の相互関係に依存します。
den_wgC73NFT9I
宛先: AiliceHershey
Re: SCP-TCG-JP-Jの引き分けについて 8 Feb 2019, 11:18
ご回答ありがとうございました。
なかなか難しいところですね……。規定ターン以内に決着がつかなければ強制引き分けみたいなオプショナルルールがあってもいいかもしれませんが。
とりあえずこの回答をwikiの方でお伝えさせていただきます。
SCP-TCG-JP-J等でお世話になっております。エージェント・立花の収容奮闘録を作成しております、でんです。この度、第4話の作成
でん◆wgC73NFT9I
にあたりまして御先管理員を再登場させようと思っているのですが、以前はコメディリリーフでしたが、人事ファイルが外宇宙に行ってしまわれていたので、急遽『鯨の声を聴いてしまって揺れ動いている御先管理員』として出演させたく思っています。
でん◆wgC73NFT9I
そこでお尋ねしたいのですが、ここで御先管理員の記憶に挿入されている記憶は、『SCP-TCG-JP-Jの製作者でもあるアイリスハーシーさんのもの』、としてしまっても構わないでしょうか? あくまで動画内の世界における御先管理員の話ではありますが、お考えをお聞かせいただければ幸いです。
構いません。
AiHe
どうあれ、彼女は「面白くしたい鯨の声」=メタ的に製作者の意図を聞いているので、どのような解釈を行っていただいても大丈夫です。
1月21日
でん◆wgC73NFT9I
ありがとうございます!
ではそのような解釈で構成させていただきたいと思います。