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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは自己収容状態にあります。

GoIの襲撃からオブジェクトを防衛する為、エリア-XXX-JP-Wに警備を目的とする機動部隊オメガ-16(“最後の壁”)を配置します。2018年11月10日から2019年11月9日までの1年間、最重点警戒体制が敷かれ、オメガ-16の指揮下に対奇跡論装備を伴った戦術チーム1個大隊(第345聖職者大隊“ヒイラギ”)が増強されます。

説明: SCP-XXX-JPはドイツ連邦共和国の首都ベルリンにあるベルリンの壁跡地(“エリア-XXX-JP-W”と指定)に出現する、1961年から1989年にかけてドイツ民主共和国1からドイツ連邦共和国2へ亡命するため、ベルリンの壁を越える最中に死亡した人物の霊体(“SCP-XXX-JP-a”と指定)、及びそれにまつわる一連の現象です。

財団が把握しているSCP-XXX-JP-aの総数は136体であり、発見順に採番管理されています。現在においてはドイツは統一された為、新規のSCP-XXX-JP-aが発生することはありません。ただし、かつてベルリンの壁を越える途中で死亡した人物の正確な人数は判明しておらず、財団が未発見のSCP-XXX-JP-aも存在すると考えられます。

SCP-XXX-JP-aは超常的ではない通常の物質とは相互作用せず、よって通常の五感においては感知できません。このことから、一般市民がSCP-XXX-JPを認識する可能性はほぼ存在しないといえます。

典型的な現象例では、SCP-XXX-JP-aはエリア-XXX-JP-Wの東側3に出現し、西側に向かって徒歩で移動するように見えます。その後、エリア-XXX-JP-Wの西端に到達する以前に、例外なく消滅します。観察の結果、この時多くの場合で、SCP-XXX-JP-aは同様の霊体で出来た射出点不明の銃弾に銃撃を受けていることが判明しています。消滅後、SCP-XXX-JP-aは再びエリア-XXX-JP-Wの東側に出現し、消滅までのサイクルを繰り返します。これはSCP-XXX-JP-aの生前最期の状況を繰り返しているものと考えられます。

SCP-XXX-JP観察記録(一部)

エリア-XXX-JP-W-1 - 1988年撮影

ナンバー: SCP-XXX-JP-a-1
 
出現地域: エリア-XXX-JP-W-1
 
行動内容: 出現後、エリア-XXX-W-1に流れる運河を東岸から西岸に向けて泳ぎはじめる。数メートル泳いだところで背後を振り返り、両手を頭上に上げる。直後に肢体が脱力し下流に流されたところで消滅する。

エリア-XXX-JP-W-52 - 1965年撮影

ナンバー: SCP-XXX-JP-52
 
出現地域: エリア-XXX-JP-W-52
 
行動内容: エリア-XXX-JP-W-52の東端上空、約10メートル地点に直立状態で出現する。上半身を屈めた状態で何かを跨ぎ超えるような動作をしたのち、再び直立状態に戻ろうとしたところで自由落下する。接地後、消滅する。

エリア-XXX-JP-W-103 - 1986年撮影

ナンバー: SCP-XXX-JP-103
 
出現地域: エリア-XXX-JP-W-103
 
行動内容: エリア-XXX-JP-W-103の東部に出現し、西に向かって中央芝生地帯を約3.6メートル走ったところで転倒。2度、痙攣した後に消滅する。

補遺1: SCP-XXX-JP-aが受ける銃撃を防ぐなど、何らかの方法を用いることでSCP-XXX-JP-aをエリア-XXX-JP-Wの西端まで到達させると、SCP-XXX-JP-aがエリア-XXX-JP-Wから恒久的に消滅することが、インシデント-XXX-JP-1により判明しました。消滅後のSCP-XXX-JP-aの追跡調査は失敗しており、行き先は不明となっています。

インシデント記録XXX-JP-1 - 日付2009/11/9
当日市内で催されていたベルリンの壁崩壊20周年を祝う式典の混雑に紛れる形で、『蛇の手』に属すると見られるグループの者たちが奇跡論的手法を用い、SCP-XXX-JP-a-6、11、24、55、62、78、81、86、93、95、96、101、107のエリア-XXX-JP-W西端への到達を同時多発的に幇助しました。これにより、上記13体のSCP-XXX-JP-aはエリア-XXX-JP-Wより消滅し、これ以降再出現していません。この大規模収容違反をインシデント-XXX-JP-1と指定します。

実行犯のうち1名が財団によって拘束されましたが、それ以外のメンバーは逃走しています。拘束された実行犯(“PoI-248812”に指定)は近隣に存在するサイト-92に連行され、奇跡論行使の恐れから重拘束下に置かれました。

インタビュー記録XXX-JP-1 - 日付2009/11/9

インタビュー対象: PoI-248812(外見は20代くらいの白人女性)

インタビュアー: エージェント█(渉外局所属・尋問担当)


(記録開始)

エージェント█: お名前は?

PoI-248812: 西の魔女。

エージェント█: 本名ですか?

PoI-248812: (鼻で笑う)

エージェント█: 私の質問には真剣に答えていただきたいものですね。さもないと、真剣に答えざるをえなくなりますよ?

PoI-248812: 本名とはどういうものかしら? 親からもらった名前? 友人に知られている名前? エーテルに漂うという存在に対する真の名前?

エージェント█: お住いの自治体に届けられている公的な名前です。

PoI-248812: (鼻で笑う)黙秘します。

エージェント█: では、フラウ・モクヒシマス、年齢を教えていただけますか?

PoI-248812: 3600歳。

エージェント█: うらやましいですね、年金をもらいながら悠々自適にテロリストですか。

PoI-248812: 拉致監禁してサラリーをもらう生活もいいものじゃない。

エージェント█: (笑う)

PoI-248812: (笑う)

エージェント█: どうやら我々が何者かご存知のようですね。では、我々があそこでしていた事を知った上で、あんな事をしでかしたのですか?

PoI-248812: していた? していなかったの間違いでしょ。あの哀れな魂たちは死んだ後もずっと銃で撃たれ、苦しみ続けていた。あなたたちはそれを知った上で、何もせず放置していた。50年も!

エージェント█: 我々がアレを確保したのは、今日で丁度20年目ですよ。それまでは“P”が。

PoI-248812: (遮って) T█████ C████は、東ベルリンで暮らす極普通の市民だった。

エージェント█: (手元の資料に目を落とす)SCP-XXX-JP-a-6のことですね。

PoI-248812: T█████の職場は西ベルリンにあり、資金を貯め、いずれは西ベルリンに移住するつもりだった。ところがある日突然、東西の交通が遮断され、有刺鉄線が張られ、『壁』が出来た。

エージェント█: そこら辺の事情はご説明いただかなくても存じております。

PoI-248812: 『壁』は日に日に高くなる。今ならまだ超えられる。でも、明日にはもう超えられない高さになるかもしれない。ある夜、T█████は決心して『壁』をよじ登り、そして撃たれた。

エージェント█: (資料の耳をそろえる)

PoI-248812: テルトウ運河で死んだ彼4は名前も、なぜ越えようとしたのかも、誰も知らない。運河を泳ぎ越える途中で撃たれ、死体を確認されることもなく、下流へと流されるままに放置されたから。

(PoI-248812はこの日収容違反した13体のSCP-XXX-JP-aについて順に説明を述べた。重要性が薄いため省略)

PoI-248812: 彼らはただ、撃たれて消え、また現れるオブジェじゃない! かつては生き、様々な願いを持っていた人間なの! それを撃たれるがままに50年も放置するだなんて、よくもそんな非人道的な!

エージェント█: (遮って)わかりました。それが理由で、あなた方は我々が20年間収容していたオブジェクトを消滅させたんですね?

PoI-248812: 開放したのよ、可哀想な魂たちを。

エージェント█: どこへ?

PoI-248812: どこって……天国よ。

エージェント█: 証明できますか?

PoI-248812: 出来るわけないじゃない! あなたバカなの?

エージェント█: ここで一旦インタビューは終了します。今後はあなたの所属するグループについていろいろとお伺いすることになると思います。素直にご協力いただければ、あなたの待遇は改善されるでしょう。

PoI-248812: 何も喋らない。

エージェント█: いえ、今日ぐらい喋っていただければ十分ですよ。では。

(記録終了)

補遺2: SCP-XXX-JP-a-がSCP-XXX-JP-Wに囚われる現象について、関連すると思われる資料が1991年に発見されています。