chuukunn

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博士は、今日も今日とておもちゃを作っていた。先日の失敗もさることながら、あれから取引先に土下座して期間を3日伸ばしてもらい、徹夜で資料を書き直したのだから無理もない。
鏡を見ると、目の下に深いクマができていた。疲れた。眠い。眠い。
「あー………あれを使うか………」
博士は、引き出しの中を探り、昔作った健康増進剤を見つけた。
子供が摂取すると即座に大人になるという代物だが、大人が飲めば疲労回復の効果がある。
すぐに瓶を開け、中から一粒飛び出し飲み込む。ジャリ、という変な感触がして思わず瓶を見る。
「ああああああ!!」
中には虫がたかっていた。最悪だ。クソ、今飲み込んだのは多分……
嗚咽を漏らしながら、自らの運命をひたすらに呪い続ける。クソ、クソ、クソ!
それからは大して動くこともなく、ゆっくりと寝床についた。


目覚まし時計のうるさい音によって、博士は目覚めた。だるい。体の疲れが抜けきっていないのか、漬物石でも乗っているかのような負荷を感じる。
そんな体をゆっくりと起こしながら、博士は外に出かけた。
「はー……」
今はもう真冬だ。雪の一つでも降っていればロマンチックなのだろうが、あいにく外は曇っている。まるで自分の心を表しているようだな、と思った。


。博士はなんとか体を上げて、必要な器具を取り出した。
「これで俺も有名になるぞぉ………!」
そう言って意気揚々と取り出したのは、撮影用の道具だった。
「これを背景にして……」
そう、彼が頼まれた仕事は撮影だ。「博士」の活躍に惚れた人達が、博士のイメージビデオを作るという話が持ち込まれてきたのだ。もちろん承諾した。こんなうまい話はないだろう。クソガキ共が自分を崇める姿が目に浮かぶようだ。
「これを………こうして。で、これをこうして……よし、準備完了だ」
撮影の準備が整った。あとは、あらかじめ渡されている台本を読むだけで向こうが合成してくれるらしい。
「で、台本はっ、と………」
台本の内容には思わず笑みが漏れた。あのワンタメを「博士」がやっつけるという願っても無いものであったからだ。
息を整え、ゆっくりと台本を読み始める。

博士: やあ! 日本の子どもたち、私が誰だか分かるかな?

子供A: あ、ワンダーテインメント博士だ!

博士: そうだ! 私だとも! ワンダーテインメント博士!

博士: ……って!誰だそれは!

子供A: え?じゃあ、さっきのは……

[博士は子供に促され右手側を見る。そこには、ワンダーテインメント博士と名乗る人物とそれにおもちゃを押し付けられる子供が見える]

ニセ博士: ぐへへ、お嬢ちゃん、このおもちゃで遊ぼうよぉ?

子供B: うわーん!博士ー!助けてー!

博士: 待てっ!

ニセ博士: な、なにっ、お前は……!

子供B: わー!博士だー!

博士: 子供だましの玩具を作るお前など、こうだ!

ニセ博士: ぐわーっ!

子供B: わーい!博士が助けてくれた!

子供A: 正義はやっぱり勝つんだね!

博士: ははははは!! さあ子供たち! 私の玩具で遊ぶんだ!

ニセ博士: くっ………私の野望が……

博士: ハーッハッハッハッハ! さらばだ、老いぼれ!

子供A,子供B: わーい!!

セリフを読み終わって、私はにっこりと笑みを浮かべた。
最高だ。あのクソワンタメを完全に潰せた。これが映像化されれば奴の評価もダダ落ちに違いない。
それから、博士は他に渡されたいくつかのセリフを読んだ。

博士: さあ! 楽 し も う ね !

博士: 貴様! ワンダーレディ!

博士: ギャーッ!

悲鳴を録音するのは疑問に思ったが、正義のヒーローにもピンチはあるだろうと思い、あまり気に留めないことにした。


全てのセリフを撮り終わった博士は、それを封筒に入れて依頼元に送った。
さあ、これで私の名声が得られる。博士は黒い笑みを浮かべた。

しばらく経ってから、1通のビデオテープが届いた。ああ、待ち望んだ私の記念すべき特撮だ。
私は小躍りしながらテレビの前に座り、ビデオデッキに入れて、それを再生した








(博士のワクワク映画製作!ここまで)

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は、冷たい檻の中で、己の半生を振り返っていた。

いままでの人生で、自分は他人に救われたことがあっただろうか。

思えば、子供の時から違和感があったのだ。両親が自分に向けるのは、いつも仮面のような笑顔か、理不尽な怒りだった。家庭環境からして、自分は他人と違っていたのだ。周りの人間は、愛をもらい、それ以上の愛を与えて育っていった。[修正箇所、投稿版で修正済]自分はどうだろうか。愛なんてものは生まれた時から持ち合わせていない。あるのは、ただひたすらに明日を生きようという思いだけであった。

すくすくと成長して、私は小学校に入った。背中に背負ったランドセルは、まるで枷のように冷たく私を「拘束」していた。家と学校をただひたすら往復する毎日。親は寄り道なんて許してくれるはずもなかった。ひたすら家の中に閉じ込められ、外の世界から遮断された。家に私の居場所はない。

学校はどうだろうか。その時の先生は、良く言えば生徒に無干渉な[修正箇所]、悪く言えばひたすらに怠惰な人間であった。私はここでも、愛を向けられることはなかった。同級生と遊ぶのは楽しかった。鬼ごっこをしたり、サッカーをしたり、虫捕りをしたり、ジャングルジムで遊んだり。それらの「遊び」に飽きることはなかった。だが、それは愛ではない。私は、愛をもらえないという現実を、何か他のもので埋め合わせようと必死だった。いや、正確には、「何か足りないもの」だ。私は愛なんて知らなかったのだから。

中学生になった時、父が亡くなった。別に不幸でもなんでもない、飲酒運転による事故だった。父が死に際に放った言葉は何だったか覚えていない。おそらく自分のことでないということは確かだった。私は最後まで、父に愛されることはなかった。父がいなくなってからというもの、母は一層ヒステリックになり、よく喚き散らしては家のものを徹底的に破壊し尽くしていた。それが治ったかと思えば、今度は新しい男探しを始めた。実に母らしい行動だった。母はとにかく必死で、誰かれ構わず家に連れてきては男に愛想をつかされ逃げられていた。
母に、愛はなかった。誰でも良かったのだ。自分を養ってくれるなら、誰でも。

特に何も無い中学校生活と高校生活を送り、私は進路選択を迫られた。といっても、私達には大学に行く資金など無い。母は口うるさく「とにかく金を稼ぎなさい」と言っていた。ああ、私は子供ではなく、金だったのだな。そう自覚した。

経緯を話すと長くなるので省くが、結果的に私は財団で勤務することになった。といっても最初は下っ端としての雇用だったのだが。下っ端なりにゆっくりといくつかの功績を作っていき、私はやっとの事でエージェントになることができた。こんなことができたのも自分が今まで「道具」として使われてきたおかげだろう。
エージェントとなってからの人生にはある程度満足していた。仕事内容にも、給料にも文句はない。とても素晴らしい毎日を過ごす、はずだった。
しかし、自分には何かが足りない。いくら他のもので埋めても、どうしても目をそらすことができない大きな空洞があった。どうしても埋められない穴が。

愛。愛を。愛だけを。愛が欲しい。愛が欲しい!愛が欲しい!

そんな時だった。SCPの観察を終え、収容房を歩いている時であった。
私は、突如収容房から脱走したSCP-███-JPに殺された。
別に大したことでもない。財団内では普通のことだ。未知のものを研究する集団として、このようなことが起きるのは当たり前だ。
しかし私の場合は違った。
胸に鋭い痛みが走り、意識が薄れて行く。普通ならそこで終わりだ。だが私は目覚めた。胸の痛みは消え、傷口もふさがっていた。まるで何事もなかったかのように。
しばらくして博士達がやって来て、私に対してインタビューをした。私は異常物品となったのだから当然のことだ。
それから何回か殺害され、観察され、収容された。私の体に投与された鎮痛剤からは財団側の僅かながらの優しさを感じられたが、基本的に財団は冷酷なものなのだ。
ボロボロになりながらも、私はなんとか己を保って生きていた。そうでもしなければ頭がおかしくなってしまいそうなほど過酷な環境だった。
それは、2回目のインタビューの時だった。思えば、あれが人生で最高の時だったかもしれない。

<記録開始>


██博士: 実は……あなたのご家族、ご友人の2█名が死亡した状態で発見されました。

そう言われた瞬間、私の頭は真っ白になった。
子供の時、一緒に遊んでいた友達が。
部活の時に、辛い練習を共に乗り越えてきた友達が。
放課後にこっそりと寄り道をして、一緒にゲームをした友達が。
大人になっても飲み明かして、酒の席で馬鹿らしいことを語り合った友達が。
愛は無くとも、楽しい日々を過ごしていた仲間たちが。
「なんで死んだんですか?」
私は、そう聞き返さずにはいられなかった。そして博士は答えた。
「彼らはあなたが今まで死んできた状態で死んでいました。恐らくは……」
「恐らくは」異常性のせいだろうか。
私は実験の後、あのモニターに映る文字を見ていたのだ。
「残機が半分消費されました」
その時は何のことだかわからなかった。こういう事だったのか。
全てを知った私に生まれた感情は、これまで感じたことのないものだった。

…………………素晴らしい。

私は、これまで誰にも愛される事はなかった。

愛を受けず、愛を与えられず、愛を知らず、育ってきた。

授業や辞書で習うような無機質な愛でさえ、わたしには愛おしく感じられた。

そんなわたしが今。本物の愛を受けている。

自己犠牲の上で成り立つ、本物の愛を。愛を受けることのなかった、この私が。

南 ██も。奥村 ███も。内山 █も、三宅 ██も、そして、あの母でさえも!

皆、私のために命を散らしてくれた。

私に、愛を与えてくれた。

だから、私は叫んだ。

エージェント・時田: 本当ですか!

██博士: (驚く) 大丈夫ですか?

エージェント・時田: 大丈夫もなにも!僕は嬉しいですよ!まさか本当にみんなが支えてくれていたなんて!

██博士: 落ち着いてください。

エージェント・時田: これが落ち着いていられますか!みんな……みんなぁ!(何度も机に頭を打ち付ける)

██博士: 誰か!誰か来てください!

エージェント・時田: 嬉しい!嬉しい!嬉しい!嬉しい!嬉しい!

(職員3名が入室)

██博士: 取り押さえてください!

エージェント・時田: 離してくださいよ!(机に頭を打ち付ける)僕は嬉しいんです!僕は(意識を失う)

██博士: 記録を終了します!

エージェント・時田:ああ、愛を!私に全ての愛を!全てのあ
<記録終了>

そこまで追想してから、男はゆっくりと眠りについた。
枕元には、赤い線で大きくばつ印がつけられた、友達と、家族の写真が置いてあった。