blamish
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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの配信は現在停止されています。SCP-XXX-JPはスマートフォン端末にダウンロードされて管理されます。定期的に殺人衝動を持ったDクラス職員を用いた実験を行うことでSCP-XXX-JPを維持してください。SCP-XXX-JPを用いた実験はセキュリティークリアランスレベル2以上の職員1名以上の承認がなければ許可されません。

説明: SCP-XXX-JPは「スマホ様のお悩み相談室☆ミ」と題されるスマートフォン向けアプリケーション1の中に現れる戯画化された中年男性です。殺人衝動を持つ者(以下、対象)がSCP-XXX-JPを起動し、ハンドルネームを記入することでSCP-XXX-JPが現れます。対象以外がSCP-XXX-JPを起動しようとしてもエラーが起こり、起動することはできません。SCP-XXX-JPが映し出された画面の背景に戯画化された花畑が映り、中央にSCP-XXX-JPが映し出されます。さらに、画面にはインターフェースが上下に設置されています。インターフェースには主に現在の段階および次段階への「レベルアップ」に必要な会話数が提示されます。

SCP-XXX-JPはアプリケーションの進行状況によりその姿を変化させます。アプリケーションの進行段階は大きく分けて5段階です。SCP-XXX-JP-1がどれだけSCP-XXX-JPと会話したかによってアプリケーションは進行します。SCP-XXX-JPは関西訛りの混じったような日本語で対象と会話します。SCP-XXX-JPは対象を起動時に入力されたハンドルネームで呼びます。会話するごとにSCP-XXX-JPの段階を表すメーターがたまり、メーターが上限へと達すると次の段階へと移行します。会話には異常性が見られず、おおむね、他愛のない世間話や対象の殺人衝動の告白、そして、SCP-XXX-JP自身による返答によって構成されています。対象の殺人衝動の告白はメーターを爆発的に引き上げ、必ず一段階以上の進行が伴います。

・最初期の段階
微笑みを浮かべた顔の身で構成される中年男性。背景には白色のフジの特徴を持った花畑。
・第二段階
丸い顔に線で手足のようなものが付けわえられる。背景にはライラックの特徴を持った花畑。
・第三段階
顔の下に胴体が現れ、手足が太くなる。背景にはマリーゴールドの特徴を持った花畑。
・第四段階
胴体に燕尾服のようなものが描かれ、3等身となる。背景には白色のフリージアの特徴を持った花畑。
・第五段階
七等身のリアルな中年男性が描かれる。背景にはマリーゴールドとスノードロップが入り混じった花畑。

SCP-XXX-JPは第五段階に移り変わった瞬間に対象を消失させます。この時、対象以外はいかなる条件でも消失しません。消失した対象は約一時間後に消失個所に再出現します。その時の対象は身体が切り刻まれて絶命しています。対象は必ず口角を引き上げて、「微笑み」を浮かべています。現在、SCP-XXX-JPの活性化により死亡したSCP-XXX-JP-1は実験に用いられた個体も含めて6個体が確認されています。

SCP-XXX-JPはインターネット監視課による巡回によって発見されました。即刻、職員はSCP-XXX-JPの配信を止めました。幸いにも、総ダウンロード数は500にも満たなかったため、IPアドレスからSCP-XXX-JPをダウンロードした人物を特定し、Bクラス記憶処理を直接行いました。続いて配信者の住所が特定されました。場所は愛知県██市██町でした。住所にフィールドエージェントが突入したところ借主の██ ██氏の右腕以外が切り刻まれた死体が発見されました。さらに、ダウンロードした人物の住所で不審死が相次いでいたことからSCP-XXX-JPにより殺害されたであろうということが推定されました。SCP-XXX-JPの犠牲者と推定された人数は3名でした。いずれの被害者も家族や友人から小動物を殺害したり、常日頃殺人に対する興味があると周囲に語っていました。

記憶処理を行う前にアプリケーションを起動させることができなかった人物と起動させることができた人物の比較実験により殺人衝動の有無がアプリケーションの起動の条件であることが推定されました。その後、実験で得られた情報を元に対照実験を行ったところ、アプリの起動条件に殺人衝動の有無が関係していることが統計的に判明しました。

実験記録XXX-1 日付:2015/█/██
責任者:左衛門三郎博士 対象:D-566(10代後半の女性。複数人を違法に解剖し、殺害した)

左衛門三郎博士:それでは、D-566、SCP-XXX-JPをダウンロードして、起動してください。

D-566はいはい、わかりましたよ。ああ、なんでこんなくだらないことしなくちゃならんのだろう

左衛門三郎博士:実験のためです。起動したら、あなた自身のハンドルネームを記入してください。

D-566はぁー、わかりましたよ。もう考えんのめんどくさいからD-566でいいや。おっ、なんかでた。何々、「スマホ様のお悩み相談☆ミ」?ははっ、冗談みたいだな。

SCP-XXX-JP:冗談とかじゃないで。

D-566:うわっ、しゃべった。これあたしの話わかってんのかな。

SCP-XXX-JP:ああ、突然あんさんに冗談みたいな存在とか言われたことはよーくわかっとる。

D-566:ほんとにすごいな、これ。あたしの話聞いてくれてる。めっちゃキモイけど。(振り向く)先生、これと会話すればいいんですよね。

左衛門三郎博士:はい、あなたがすべき職務はSCP-XXX-JPとの会話です。

SCP-XXX-JP:キモイて……。まあ、ええわ。ほんであんさんの名前はD-566でええんやな。

D-566:いや、本名は別にあるけど、それでいいよ。

SCP-XXX-JP:わしも本名はスマホ様やないんやけどスマホ様と呼ばれるのがいいからお互い様やで。

ここからは日常的な会話であり、実験には係わらないと判断されたため省略されました。詳しくは音声記録XXX-JP-1より参照してください。

D-566:なんか気が合うなあ。

SCP-XXX-JP:思ったよりも面白い奴やな、気に入ったで。最初はすっごい失礼やなと思ったんやけどなかなか礼儀もできとる。あんさんの話、いつでも聞いてやるで。待っているで。いつまでも、な。

D-566:おおげさだなあ、でも、ありがとう。

音声記録終了

この実験によりD-566はSCP-XXX-JPとの会話に成功したため、SCP-XXX-JP-1に指定されました。

実験記録XXX-2 2015/██/██
責任者:左衛門三郎博士 対象:D-566

D-566:スマホ様とも結構長いよね。

SCP-XXX-JP:そうだな。

D-566:じゃあ、そろそろ私の秘密、まあ、秘密ってほどでもないんだけど。みんなにバレちゃってるし。ああ、とにかく、話したいの!聞いて!

SCP-XXX-JP:なんや、話してみい。わしは知らんぞ。あんさんの秘密とやらは。

D-566:……聞いて驚かないでよ?

SCP-XXX-JP:もちろんやで。

D-566:私、人を殺したんだ。何人も何人も。

SCP-XXX-JP:そうか。

D-566:本当に驚かないんだね。

SCP-XXX-JP:わしも似たようなもんやからな。事情、聞くで。

D-566:私ね。子供のころからどうして命はあるんだろうって思ってたんだ。特になんで私生きてるんだろうってのが知りたくてね。それでね、命ってどこから来るんだろーて思って調べたんだ。まだ子供だったけど、がんばって探したんだ。親とか友達とかに聞いてもよくわからない。先生も答えてくれない。図書館で命について調べてもわからない。命がどこからきているのかがわからない。お母さんのおなかの中だとか、精子と卵子が受精するとできるだとか、そんなことばっかりだった。私はもっとちゃんとした理由が知りたかったんだ。こんな不思議なものがどうしてこの世にあるのか知りたかったんだ。でもね、見つからない。見つからないんだ。だから、直接命を調べてみた。

SCP-XXX-JP:そうか。

D-566:最初は虫だとか雀だとか小さな命を調べたんだけどわからなかった。じゃあもっと大きいほうが分かりやすいかなって犬とか猫とか兎とか調べてみた。でも、わからない。多分、わからないのはこの命が自分よりも離れてるからなんだろうなって思った。だから、やっちゃいけないってわかってたけど、人間の命を調べてみることにしたんだ。

SCP-XXX-JP:ほお、そこまでやったんか。それでわかったんか?

D-566:(おどけたしぐさを取る)わからなかったね。それでここまでやって初めて命の来る場所なんてないか、絶対にわからない場所にあるってことが分かったんだ。もう遅いけどね。

**SCP-XXX-JP: **D-566は命がどっかにあると思ってたんか?

D-566:うん

SCP-XXX-JP:そいつはあかんで、勉強不足や。

D-566:そんなわけない!だって、あれだけ勉強したのに。

SCP-XXX-JP:まだまだやったってことや。まあ、聞きい。命ってのはな体自体なんや。宿るとか与えられるとかそういうものやないんや。だから、傷つけば痛い。傷つきすぎれば死んでまう。わしはそれがわかったんや。

D-566:……なんか、スマホ様。大きくなってない。

SCP-XXX-JP:……そうやね。

この実験によりSCP-XXX-JPが第三段階へと移行しました。そのことに一通りの会話を終えるまで対象およびSCP-XXX-JPは気づく様子はありませんでした。さらに、その後の接触実験によりSCP-XXX-JPは第四段階へと移行しました。

実験記録2016/█/█
責任者:左衛門三郎博士 対象:D-566

SCP-XXX-JP:もうわしの言うことは何もない。D-566、あんさんはお悩み相談室卒業や!

D-566:なんで?というか、これ実験だった。今の今まで忘れてた。卒業とかできんよ。

SCP-XXX-JP:いやいや、卒業やで。もうあんさんの悩み解決しとるやん。

左衛門三郎博士:実験を継続してください。D-566、SCP-XXX-JP。

SCP-XXX-JP:いや、あんなあ。わしのほうにも事情っちゅうもんがあるんや。わかるか?

左衛門三郎博士:わかります。続けて下さい。

SCP-XXX-JP:わかってへんやん。というかもうわしは話さへん!絶対や!

左衛門三郎博士:D-566。続けて下さい。

SCP-XXX-JP……はい。スマホ様。私ね。感謝してるんだ。スマホ様が教えてくれたことすごいしっくりきた。あの後、たくさん考えたんだ。自分が解剖してきた動物とか人とかを。みんな苦しんでた。みんな怖がってた。でも、私は、自分勝手な、(涙を流すが呼吸を整える)理由、で、ヒック、殺、殺した。(荒い呼吸が続く)今までこんな罪悪感感じたことなかったスマホ様に教えてもらうまでこんなことなかった(息継ぎ)私スマホ様に感謝してる感謝してるんだから卒業とか言わないで言わないでよ……。(泣き崩れる)

SCP-XXX-JP:D-566……。違うんや。あんさんが嫌いになったわけやないんや。逆なんや。もうしゃべるのをやめ……

D-566:やめない。スマホ様に感謝を伝え終えるまで絶対にやめない。やめないからね。

SCP-XXX-JP:だめなんや。ほんまにだめなんや。また、また、仲間、いなくなって……。止められへんのか……。

D-566:スマホ様、ありがとう。なんとなくわかってるよ。スマホ様も私と同類なんだって。スマホ様がやりたいことわかってるよ。大丈夫。私、死刑囚だから。

SCP-XXX-JPが第五段階へと移行する。その瞬間、D-566が消失し、SCP-XXX-JPの入ったスマートフォンの電源が切られた。そして、一時間の経過の後、全身を解剖されたD-566の死体が現れた。D-566の顔には傷が付いておらず、口角を引き上げていた。

補遺1:実験後、SCP-XXX-JPは非常に非協力的となりました。あらゆる補給人員との会話を拒むため、強制的にSCP-XXX-JPを起動し続け、Dクラスによる一方的な話を聞かせ続けました。この状態であってもSCP-XXX-JPは第五段階へと移行することが判明しました。よって殺人衝動を持つDクラス人員を用いてSCP-XXX-JPを維持する特別収容プロトコルが承認されました。

補遺2:SCP-XXX-JPは初期実験後に文章をつぶやくようになりました。以下はその文章です。

すまんな、わしはクズなんや。すまんな、るしふぇる、ちかちー、偉大なる殺戮者、D-566、D-788、D-912。わしは、わしは、わしみたいなやつをまっとうにしたかっただけなんや。まっとうに日の光を浴びて生きていてほしかったんや。わしは無理やけど、みんな何とかなるはずなんや。心が満たされればあんなことしなくて済むんや。みんな生きれたのに、生きれたのになあ……。すまんな、すまんな……。

いずれもSCP-XXX-JPの対象となった人物のハンドルネームであることが確認されています。