アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの配信は現在停止されています。SCP-XXX-JPはスマートフォン端末にダウンロードされて管理されます。定期的に殺人衝動を持ったDクラス職員を用いた実験を行うことでSCP-XXX-JPを維持してください。SCP-XXX-JPを用いた実験はセキュリティークリアランスレベル2以上の職員1名以上の承認がなければ許可されません。
説明: SCP-XXX-JPは「スマホ様のお悩み相談室☆ミ」と題されるスマートフォン向けアプリケーションの中に現れる戯画化された中年男性です。殺人衝動を持つ者(以下、対象)がSCP-XXX-JPを起動し、ハンドルネームを記入することでSCP-XXX-JPが現れます。対象以外がSCP-XXX-JPを起動しようとしてもエラーが起こり、起動することはできません。SCP-XXX-JPが映し出された画面の背景に戯画化された花畑が映り、中央にSCP-XXX-JPが映し出されます。さらに、画面にはインターフェースが上下に設置されています。インターフェースには主に現在の段階および次段階への「レベルアップ」に必要な会話数が提示されます。
SCP-XXX-JPはアプリケーションの進行状況によりその姿を変化させます。アプリケーションの進行段階は大きく分けて5段階です。SCP-XXX-JP-1がどれだけSCP-XXX-JPと会話したかによってアプリケーションは進行します。SCP-XXX-JPは関西訛りの混じったような日本語で対象と会話します。SCP-XXX-JPは対象を起動時に入力されたハンドルネームで呼びます。会話するごとにSCP-XXX-JPの段階を表すメーターがたまり、メーターが上限へと達すると次の段階へと移行します。会話には異常性が見られず、おおむね、他愛のない世間話や対象の殺人衝動の告白、そして、SCP-XXX-JP自身による返答によって構成されています。対象の殺人衝動の告白はメーターを爆発的に引き上げ、必ず一段階以上の進行が伴います。
・最初期の段階
微笑みを浮かべた顔の身で構成される中年男性。背景には白色のフジの特徴を持った花畑。
・第二段階
丸い顔に線で手足のようなものが付けわえられる。背景にはライラックの特徴を持った花畑。
・第三段階
顔の下に胴体が現れ、手足が太くなる。背景にはマリーゴールドの特徴を持った花畑。
・第四段階
胴体に燕尾服のようなものが描かれ、3等身となる。背景には白色のフリージアの特徴を持った花畑。
・第五段階
七等身のリアルな中年男性が描かれる。背景にはマリーゴールドとスノードロップが入り混じった花畑。
SCP-XXX-JPは第五段階に移り変わった瞬間に対象を消失させます。この時、対象以外はいかなる条件でも消失しません。消失した対象は約一時間後に消失個所に再出現します。その時の対象は身体が切り刻まれて絶命しています。対象は必ず口角を引き上げて、「微笑み」を浮かべています。現在、SCP-XXX-JPの活性化により死亡したSCP-XXX-JP-1は実験に用いられた個体も含めて6個体が確認されています。
SCP-XXX-JPはインターネット監視課による巡回によって発見されました。即刻、職員はSCP-XXX-JPの配信を止めました。幸いにも、総ダウンロード数は500にも満たなかったため、IPアドレスからSCP-XXX-JPをダウンロードした人物を特定し、Bクラス記憶処理を直接行いました。続いて配信者の住所が特定されました。場所は愛知県██市██町でした。住所にフィールドエージェントが突入したところ借主の██ ██氏の右腕以外が切り刻まれた死体が発見されました。さらに、ダウンロードした人物の住所で不審死が相次いでいたことからSCP-XXX-JPにより殺害されたであろうということが推定されました。SCP-XXX-JPの犠牲者と推定された人数は3名でした。いずれの被害者も家族や友人から小動物を殺害したり、常日頃殺人に対する興味があると周囲に語っていました。
記憶処理を行う前にアプリケーションを起動させることができなかった人物と起動させることができた人物の比較実験により殺人衝動の有無がアプリケーションの起動の条件であることが推定されました。その後、実験で得られた情報を元に対照実験を行ったところ、アプリの起動条件に殺人衝動の有無が関係していることが統計的に判明しました。
実験記録XXX-1 日付:2015/█/██
責任者:左衛門三郎博士 対象:D-566(10代後半の女性。複数人を違法に解剖し、殺害した)
左衛門三郎博士:それでは、D-566、SCP-XXX-JPをダウンロードして、起動してください。
D-566はいはい、わかりましたよ。ああ、なんでこんなくだらないことしなくちゃならんのだろう
左衛門三郎博士:実験のためです。起動したら、あなた自身のハンドルネームを記入してください。
D-566はぁー、わかりましたよ。もう考えんのめんどくさいからD-566でいいや。おっ、なんかでた。何々、「スマホ様のお悩み相談☆ミ」?ははっ、冗談みたいだな。
SCP-XXX-JP:冗談とかじゃないで。
D-566:うわっ、しゃべった。これあたしの話わかってんのかな。
SCP-XXX-JP:ああ、突然あんさんに冗談みたいな存在とか言われたことはよーくわかっとる。
D-566:ほんとにすごいな、これ。あたしの話聞いてくれてる。めっちゃキモイけど。(振り向く)先生、これと会話すればいいんですよね。
左衛門三郎博士:はい、あなたがすべき職務はSCP-XXX-JPとの会話です。
SCP-XXX-JP:キモイて……。まあ、ええわ。ほんであんさんの名前はD-566でええんやな。
D-566:いや、本名は別にあるけど、それでいいよ。
SCP-XXX-JP:わしも本名はスマホ様やないんやけどスマホ様と呼ばれるのがいいからお互い様やで。
ここからは日常的な会話であり、実験には係わらないと判断されたため省略されました。詳しくは音声記録XXX-JP-1より参照してください。
D-566:なんか気が合うなあ。
SCP-XXX-JP:思ったよりも面白い奴やな、気に入ったで。最初はすっごい失礼やなと思ったんやけどなかなか礼儀もできとる。あんさんの話、いつでも聞いてやるで。待っているで。いつまでも、な。
D-566:おおげさだなあ、でも、ありがとう。
音声記録終了
この実験によりD-566はSCP-XXX-JPとの会話に成功したため、SCP-XXX-JP-1に指定されました。
実験記録XXX-2 2015/██/██
責任者:左衛門三郎博士 対象:D-566
D-566:スマホ様とも結構長いよね。
SCP-XXX-JP:そうだな。
D-566:じゃあ、そろそろ私の秘密、まあ、秘密ってほどでもないんだけど。みんなにバレちゃってるし。ああ、とにかく、話したいの!聞いて!
SCP-XXX-JP:なんや、話してみい。わしは知らんぞ。あんさんの秘密とやらは。
D-566:……聞いて驚かないでよ?
SCP-XXX-JP:もちろんやで。
D-566:私、人を殺したんだ。何人も何人も。
SCP-XXX-JP:そうか。
D-566:本当に驚かないんだね。
SCP-XXX-JP:わしも似たようなもんやからな。事情、聞くで。
D-566:私ね。子供のころからどうして命はあるんだろうって思ってたんだ。特になんで私生きてるんだろうってのが知りたくてね。それでね、命ってどこから来るんだろーて思って調べたんだ。まだ子供だったけど、がんばって探したんだ。親とか友達とかに聞いてもよくわからない。先生も答えてくれない。図書館で命について調べてもわからない。命がどこからきているのかがわからない。お母さんのおなかの中だとか、精子と卵子が受精するとできるだとか、そんなことばっかりだった。私はもっとちゃんとした理由が知りたかったんだ。こんな不思議なものがどうしてこの世にあるのか知りたかったんだ。でもね、見つからない。見つからないんだ。だから、直接命を調べてみた。
SCP-XXX-JP:そうか。
D-566:最初は虫だとか雀だとか小さな命を調べたんだけどわからなかった。じゃあもっと大きいほうが分かりやすいかなって犬とか猫とか兎とか調べてみた。でも、わからない。多分、わからないのはこの命が自分よりも離れてるからなんだろうなって思った。だから、やっちゃいけないってわかってたけど、人間の命を調べてみることにしたんだ。
SCP-XXX-JP:ほお、そこまでやったんか。それでわかったんか?
D-566:(おどけたしぐさを取る)わからなかったね。それでここまでやって初めて命の来る場所なんてないか、絶対にわからない場所にあるってことが分かったんだ。もう遅いけどね。
**SCP-XXX-JP: **D-566は命がどっかにあると思ってたんか?
D-566:うん
SCP-XXX-JP:そいつはあかんで、勉強不足や。
D-566:そんなわけない!だって、あれだけ勉強したのに。
SCP-XXX-JP:まだまだやったってことや。まあ、聞きい。命ってのはな体自体なんや。宿るとか与えられるとかそういうものやないんや。だから、傷つけば痛い。傷つきすぎれば死んでまう。わしはそれがわかったんや。
D-566:……なんか、スマホ様。大きくなってない。
SCP-XXX-JP:……そうやね。
この実験によりSCP-XXX-JPが第三段階へと移行しました。そのことに一通りの会話を終えるまで対象およびSCP-XXX-JPは気づく様子はありませんでした。さらに、その後の接触実験によりSCP-XXX-JPは第四段階へと移行しました。
実験記録2016/█/█
責任者:左衛門三郎博士 対象:D-566
SCP-XXX-JP:もうわしの言うことは何もない。D-566、あんさんはお悩み相談室卒業や!
D-566:なんで?というか、これ実験だった。今の今まで忘れてた。卒業とかできんよ。
SCP-XXX-JP:いやいや、卒業やで。もうあんさんの悩み解決しとるやん。
左衛門三郎博士:実験を継続してください。D-566、SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP:いや、あんなあ。わしのほうにも事情っちゅうもんがあるんや。わかるか?
左衛門三郎博士:わかります。続けて下さい。
SCP-XXX-JP:わかってへんやん。というかもうわしは話さへん!絶対や!
左衛門三郎博士:D-566。続けて下さい。
SCP-XXX-JP……はい。スマホ様。私ね。感謝してるんだ。スマホ様が教えてくれたことすごいしっくりきた。あの後、たくさん考えたんだ。自分が解剖してきた動物とか人とかを。みんな苦しんでた。みんな怖がってた。でも、私は、自分勝手な、(涙を流すが呼吸を整える)理由、で、ヒック、殺、殺した。(荒い呼吸が続く)今までこんな罪悪感感じたことなかったスマホ様に教えてもらうまでこんなことなかった(息継ぎ)私スマホ様に感謝してる感謝してるんだから卒業とか言わないで言わないでよ……。(泣き崩れる)
SCP-XXX-JP:D-566……。違うんや。あんさんが嫌いになったわけやないんや。逆なんや。もうしゃべるのをやめ……
D-566:やめない。スマホ様に感謝を伝え終えるまで絶対にやめない。やめないからね。
SCP-XXX-JP:だめなんや。ほんまにだめなんや。また、また、仲間、いなくなって……。止められへんのか……。
D-566:スマホ様、ありがとう。なんとなくわかってるよ。スマホ様も私と同類なんだって。スマホ様がやりたいことわかってるよ。大丈夫。私、死刑囚だから。
SCP-XXX-JPが第五段階へと移行する。その瞬間、D-566が消失し、SCP-XXX-JPの入ったスマートフォンの電源が切られた。そして、一時間の経過の後、全身を解剖されたD-566の死体が現れた。D-566の顔には傷が付いておらず、口角を引き上げていた。
補遺1:実験後、SCP-XXX-JPは非常に非協力的となりました。あらゆる補給人員との会話を拒むため、強制的にSCP-XXX-JPを起動し続け、Dクラスによる一方的な話を聞かせ続けました。この状態であってもSCP-XXX-JPは第五段階へと移行することが判明しました。よって殺人衝動を持つDクラス人員を用いてSCP-XXX-JPを維持する特別収容プロトコルが承認されました。
補遺2:SCP-XXX-JPは初期実験後に文章をつぶやくようになりました。以下はその文章です。
すまんな、わしはクズなんや。すまんな、るしふぇる、ちかちー、偉大なる殺戮者、D-566、D-788、D-912。わしは、わしは、わしみたいなやつをまっとうにしたかっただけなんや。まっとうに日の光を浴びて生きていてほしかったんや。わしは無理やけど、みんな何とかなるはずなんや。心が満たされればあんなことしなくて済むんや。みんな生きれたのに、生きれたのになあ……。すまんな、すまんな……。
いずれもSCP-XXX-JPの対象となった人物のハンドルネームであることが確認されています。
僕は力を手に入れた。虐げる者を救うための力を。
初めは喜ばしいと思った。虐げる弱者を救うことで虐げられる者も救われる。こんな都合のいいことが世の中にあるもんだ、と無邪気に思った。
だけど、それは違った。この力は僕が制御できるようなものではなかった。この力が、何よりもこの力自身がそう雄弁に僕に伝えてきた。
すべての弱者を救え。すべては弱者だ。
すべてが弱者?そんなはずがない。弱者と言うのは虐げる者だけだ。決してすべてが弱者であるはずがない。
「お前は弱者である」「お前は許されなければならない」
たまらなく眠い。ああ、確かに僕は弱者だろう。僕のやったことは明確に暴力だ。だが、許される必要はない。僕は自らが弱者へと堕することを覚悟している。力自身に決められるいわれはない。僕は許されてはならない。弱者はすべてではない、弱者とは虐げるものだ。それ以外は決して弱者などではない。
……本当に僕が弱者を定めてもいいのか。力に吸収させたあれらは社会にとっての害悪だった。果たして本当にそうだろうか。彼らは本当にただ眠るだけの存在に落ちなければならないほどの悪だったのか。弱者だったのか。いまさらだ。いまさら、疑問がわき出てくる。疑問が侵食する。疑問が意志を削る。
眠い。僕がかき消されていく。眠い。力自身に吸収される?眠い。
せめて消える前に、消える前にやらなければ。僕の理想で押さえつける。ああ、そうだ。泥がいい。すべてを包み込む泥となるのがいい。僕にとっての、僕にとってだけの弱者を救う。それだけのことをしよう。それ以上のことはさせない。僕の理想で力を固めてしまうんだ。眠い、眠気が……
初めから言葉など意志などいらなかった。お前は弱者である。お前は許されなければならない。すべての弱者の共存こそが許し。お前は許された弱者だ。
願う。救えないものにこそ安息を。強き意志の永劫を。僕たちを止めてくれ。
「至急、SCP-623-JP収容室に収容エージェントを派遣してください!いや、可能な限り職員をSCP-623-JPの収容室から離れさせて下さい!Euclidオブジェクト収容区画から離れさせて下さい!繰り返します。収容区画から離れさせて下さい!」
私は警告を出す。記憶を呼び起こす。現在を打破するために。あれを収容するために。私にできること、それは意志を保つことだけであった。
「あれ、おかしいな」
私、左衛門三郎英理座辺栖は現在一人でSCP-623-JPを観察しています。そこで私は現在困ったことに直面しています。SCP-623-JP本体の様子がなんだかおかしいような気がするのです。あれは体積を増やしたりはしなかったはずなのに、微妙に大きくなっているような気がします。
思えば、SCP-623-JPは初めから不自然でした。どうにも体積を増やさないことが不自然のように思われます。単なる直観ですが、まるでわざと体積を増やしていないかのようです。体積に応じて知覚範囲を増やすならば、人間を吸収した後、体積が上昇していてもおかしくはない。これの目的を考えればそうなるのが合理的だ。わけのわからないオブジェクトでも妙なところで合理性を発揮する。この場合もきっと当てはまる。ああ、そうだ。このオブジェクトの発見時の体積も不自然に大きい。
あの文書が気になります。あれが正しいならば、これはせいぜい数人分の体積しかないはず。初めからこの大きさであるならば、発見も比較的容易だったはず。もしも、もしも、これが本当は後でまとめて体積を増やすオブジェクトであるならば……。
私は即刻サイト管理者に連絡をします。この仮説の提言のためです。そのためにほんの少し、ほんの少しだけSCP-623-JP本体から目を離しました。
次の瞬間、SCP-623-JP本体が収容コンテナいっぱいに広がりました。私は反射的に緊急アラートを鳴らします。手に取った内線電話を提言の代わりに警告に使います。
SCP-623-JPは即座に活性化し、収容コンテナを摩耗させ始めます。摩耗速度は実験と同様でした。実験と同じならば、数分の猶予はある。
私は即刻駆け出しました。もっとも近くにいるのは私です。私が離れなければ、活性化は止まらないはずです。幸いななことに収容室は200mの冗長性を保っていました。おかげで不測の事態が現在訪れていることがわかりました。SCP-623-JPの感知範囲は200mどころではないことが判明しました。
「ああ、もうっ!」
口汚い言葉が出てくるのをおさえ、考えます。私はもっと離れなければ、可能な限り離れなければならない。
あれはもうすでにこのサイトだけの問題ではない。とにかく、あれに餌を与えてはならない。あれにこれ以上、人間を食べさせちゃいけない。最悪の事態、そう最悪の事態が予測されます。あれの対象の上限がないとすれば……。
後方で叫び声が聞こえます。逃げ遅れたのでしょう。すぐさま、叫び声は消え去りました。逃げ遅れたのでしょう。餌を与えてはならないというのに。これ以上は……。
走って、走って、走り続けてます。もうそろそろ、Euclidオブジェクト収容区画から突如壁が、床が消失しました。最悪の事態が訪れました。「人工物」の消滅です。「人工物もまた弱者」。弱者の定義が広すぎる!やっぱり、あれに際限なんてなかった!
私にできることはもう何もない、いや、とにかく、あれにこれ以上の餌を与えてはいけない、私自身を餌にしてはならない。私の体はすでにスライム状になっています。よかった、この体で。おかげで床がなくても転ばずに済んだ。まだ、やれる。
「サイトの裏にある山に設置されたTNTを爆破してください!サイトを土で埋めます!」
少なくとも、まだ「自然物」は大丈夫なはず。なんとかなる。そう信じよう。
もうすでにあれは後方に迫っているでしょう。私は覚悟を決め、向かい直ります。視界に高速で迫る一つの泥山と轟音をあげて雪崩れかかる土砂が移りました。犬死だけは、しない。
「こんなものが見れるなんて財団は何て素晴らしい場所なんでしょうね!」
こらえていた悪態を放出します。そして、全身に力を入れ、泥山に飛びつきました。
気がつけば、私は暗闇の中にいました。温かい、温かい暗闇の中にいました。強烈な眠気が襲いかかります。声が流れ込んできます。
「お前は弱者だ」「お前は救われなければならない」
無視します。私は考えなければならない。あれを収容する方法を。私は眠ってはならない。眠ることは敗北だ。意志を捨て去ることは敗北だ。収容だ。お前は私たち財団に収容されなければならない。私は弱い。でも、お前たちが考えるほど弱くはない。お前たちにかき消されたりなどしない。私はお前たちを収容する。私はお前たちを保護する。全人類から、そして、お前自身の力から、保護してやる。
否定します。否定して、否定して、助けが来ることを、私自身が私自身を助けられるようになることを信じます。奇跡に頼るなんて敗北かもしれない。でも、まだ奇跡が訪れる可能性があるならば、財団は敗北していない。
意志と言う奇跡。この泥に対抗できるのは意志だけだ。意志なき泥に対抗できるのは愚かなほどの意志だけだ。
あなたはだれかを虐げるが弱者ではない。
意志を激励する声が聞こえた。さあ、長期戦の始まりだ。
絶対肯定についての書簡
哲学的オブジェクト。この文書に触れたもののすべては肯定の文言のみを口にすることができる。(否定の構造をもった文章は全体が消失する。)
このレポート自体にもミーム汚染能力があり、徐々に肯定能力に特化することになる。
そのため、定期的に執筆者を変更することが推奨される。(10人ぐらい?)暴露した瞬間から肯定に特化する。(否定と言う概念自体が初期から消失している)
限定用法を用いることは可能だが、ミーム汚染が進行するごとに使用可能な文法が削られる。限定用法もある段階から(空白)徐々に否定の要素を含む動詞を用いることが(空白)暴露者はこのオブジェクトを肯定することになる。
さらに進行することで身体の死という概念が消滅し、永久に増殖するガン細胞のようになる。増殖速度は財団の手に負える程度。破壊 。破壊もまた のため。物量系?それらしき文章をつけたい。絶対的肯定によって死の概念すらも止揚される。
(Keterにしたい)もっと力をつけてから
特別収容プロトコル:ミーム対策された収容ロッカー。暴露者は太陽にでも打ちこむ。宇宙のほうがいいかもしれない。
貧困撲滅運動!
「さあ、貧困を撲滅しよう!」と書かれたポスター。
札束でできたウォーハンマーを持った笑顔のおばさんも描かれている。
見た者は自らの判断に従って「貧困である者」をあらゆる手段で破壊しようとする。
スラム街に張られているため、多くの場合暴露者は自己終了をすることになる。
自分が貧困の状態にないと思っている者は自己終了をまぬがれるが、別の貧困者に襲いかかる。暴露者に接触した者は同時に暴露者になる。
初期収容が大変だが、それ以降はこのポスターを広げて壁に張らなければいいため、Safe?
初期収容に多くの労力を割くべき
ウイルスではない系パニックホラー。(EuclidかKeter、もしかするとSafeに抑えられるかもしれない)
収容プロトコルはポスターを裏返して丸めて、低危険度物品収容室に。暴露者は人型収容房に。暴露者を考慮すれば、Euclidか。ただ身体能力は通常の人間のためSafeに格下げできるかもしれない。
ファントムペイン
特定の人物のみを轢殺する踏切
謎の非実体が轢殺する(電車?)
どれだけ財団が轢殺される人物を保護しようとしても、轢殺される。
轢殺されるのは、自己増殖に特化した現実改変者、過去改変者(どちらか)
あまりにも増殖しすぎてしまったため、多くの人物の友人に潜り込んでいる。
過去改変者の目的は人々に「子供時代の楽しい思い出を作ること」
意識の共有をしていない。それぞれは実質別個体
現実改変に対する世界の粛清効果だと思われる。
殺害した現実改変者の過去を改変し、存在しなかったことにする。
しかし、それ以外の現実改変者の過去は存在し続ける
そのため、財団の博士の中には実験途中で大切な友人の存在を忘れてしまうことになる。
大切にしていた写真から現実改変者が消失し、不自然に空間のあいた写真だけが残ることとなる
最終的に、財団は一人の過去改変者を確保するが、突如踏切の場所に赴き、死亡。インタビューの後。
過去改変がなされ、Neutralized
財団博士の手記が発見される。
「私には友人の死を悼む権利すらないのか」
突然、友人の記憶が消える。消えていたことに気づかない。たまたま、同窓会の約束をしていたため、謎の痕跡からSCiPの存在に気付いた
「私には友人の死を悼むことすらできないのか」と書かれた手記が発見。博士はその手記の存在を忘却している。
これを完璧な効果で表現するために工夫する
SCP-623-JP 「弱者のための泥」として、投稿済みです。
アイテム番号: SCP-623-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-623-JPの職務に携わる全職員は精神スクリーニングテストの基準を満たしたDクラス職員ではない職員によって構成されます。職員は防護服を着用することが義務付けられています。
SCP-623-JPは分割されて、密閉された厚さ0.5mの鉄製のコンテナにそれぞれ収容されます。収容を容易にするために、SCP-623-JP本体の収容されたコンテナを中心として、それぞれのコンテナを5m以上の間隔をあけて設置してください。コンテナの内部にはカメラが設置され、常にSCP-623-JPを監視します。何か異常が感知された時もしくはコンテナの摩耗が確認された場合、即時サイト管理者に連絡をしてください。コンテナの入れ替えを行う場合、SCP-623-JPの感知範囲外の上空より既存のコンテナを囲うようにして、新たなコンテナを投下してください。
SCP-623-JPを分割する場合、常に本体を確認しながら、作業を遂行してください。分割をするために用いる道具は金属製で直接素肌に接触する恐れのない程度の長さがあれば、どのようなものでも分断に用いることが可能です。
実験以外の理由でDクラス職員がSCP-623-JPに接近することは許可されません。実験の監察官は精神スクリーニングテストの基準を満たしていなければなりません。Dクラス職員を用いた実験はLevel3の職員3名以上の承認がなければ、実行されてはなりません。
収容違反事例より、実験は無期限に停止されました。いかなる理由があろうと全職員はSCP-623-JP収容コンテナに接近することは許可されません。SCP-623-JPの分断はすべて無人機によって実行されます。
説明: SCP-623-JPは高さ約2.3m、幅約4m、長さ約5m、体積約4600万立方cmの泥のような実体です。SCP-623-JPの容貌は体積を増加させても、細部を除けばほぼ一定です。SCP-623-JPの表面はざらついていますが、わずかに水分を含んでいるような見た目をしています。SCP-623-JPの収容当時の質量は2,235kgでした。実験の結果、現在のSCP-623-JPの質量は約2,521kgに増加しています。SCP-623-JPの体積と質量の増加量は実験に参加したDクラス人員の体重の量と同値でした。そのため、消失させた物質に応じて、SCP-623-JPの体積と質量は増加すると推定されています。
SCP-623-JPは常に約3km/hで移動しています。SCP-623-JPの接触した個所にはSCP-623-JPの構成物質が付着します。このとき、ごく少量体積が減少します。SCP-623-JPの移動に伴い、SCP-623-JPが接触した個所は摩耗していきます。
SCP-623-JPに接触したDクラス職員および精神薄弱者(以下、対象)は瞬時に消失します。対象以外がSCP-623-JPに接触しても消失現象は引き起こされません。対象を消失させたSCP-623-JPは即時消失した対象に応じて、体積と質量を増加させます。
SCP-623-JPは知覚能力を有していますが、知性は有していません。しかし、対象以外に外的な圧力を加えられても、SCP-623-JPは反応を示しません。
SCP-623-JPによって、対象が感知された時、SCP-623-JPは活性状態に入ります。活性状態は対象がSCP-623-JPの感知範囲外に移動するもしくは対象を消失させるまで継続します。活性状態時のSCP-623-JPは約20km~200km/hで移動します。このとき、SCP-623-JPはその構成物質をあたりに分離しながら、対象へと接近します。SCP-623-JPと対象の間に障害物がある場合、SCP-623-JPは構成物質を障害物に擦りつけて摩耗させます。この摩耗は非常に高速で行われ、最終的に障害物にSCP-623-JPが通過できる穴が開きます。
分離した構成物質は活性状態時、3km/hで移動をしますが、非活性状態への移行と同時に200km/hでSCP-623-JP本体に回収されます。回収される構成物質に接触した対象は消失します。しかし、障害物によって、回収が阻害されると即時SCP-623-JPの構成物質は非活性状態に移行します。分離した構成物質が対象を消失させた時、構成物質の質量と体積が増加します。
非活性時のSCP-623-JPは職員によって能動的に分割することが可能です。さらに、分割されたSCP-623-JPはその知覚能力を大幅に減少させます。しかし、活性条件は変化しません。分割されたSCP-623-JPのなかで、最も体積が大きいものが本体とされます。分割されたSCP-623-JPは非活性状態時でも移動しますが、摩耗能力は本体に劣ります。
SCP-623-JPは未知の物質と少量の人間の細胞で構成されています。細胞のDNAは██県に在住する現在行方不明の男性████のものと一致しました。
████の調査を行ったところ、████およびその両親の消息は不明でしたが、████年█月█日、████によって、両親の行方不明届が提出されていたことが確認されました。
SCP-623-JPは地元警察によって██県██市██町の廃工場で発見され、その特異性から財団に応援要請がなされました。即時財団エージェントは現場に急行し、SCP-623-JPを収容しました。回収班との合流時、SCP-623-JPが活性化、収容が破られるという事例が引き起こされました。SCP-623-JPはエージェント██████を消失させ、非活性状態へと移行しました。SCP-623-JPは再収容され、サイト81██に移送されました。
その後、エージェント██████のGPS反応を確認したところ、██県██市██町の空き家に位置が移動していたことが確認されました。さらに、エージェント██████との通信が可能であることが発覚し、██████博士によるインタビューが実行されました。詳細はインタビュー記録にて確認してください。
██県██市██町の空き家の探索中、文書が発見され、確保されました。詳細は補遺1より参照してください。
対象:エージェント██████
インタビュアー:██████博士
<録音開始>
██████博士:エージェント██████聞こえますか?
エージェント██████:ああ、聞こえるよ。クソッ、ここはどこなんだよ。真っ暗で何も見えねえ。それに……なんかに包まれてるみたいだ。これは……、泥か?>
██████博士:あなたは██████町の廃屋にいるようです。GPS反応が示しています。
エージェント██████:そんなに遠くに移動したわけではないみたいだな。だが、おかしいな。ここは家の中なんかじゃないぞ?……んっ、なんか聞こえるな。いや、聞こえるというよりも意識か何かが流れ込んでくるみたいだ。
██████博士:流れ込んでくる?
エージェント██████:ああ、うまく言葉にはできないんだが、とにかく、「お前は暴力を振るわなくてもいい」、「お前は許されている」、「お前は苦しまなくてもいい」、「お前は許されなければならない」、「お前は弱い」って感覚があるんだ。それにその感覚はそれぞれ独立にあるんじゃなくて、、何か交り合ってるみたいなんだ。みんな考えていることは違うけど最終的には全会一致で可決される議題に参加しているみたいな……。ああ、とにかく、表現が難しい。難しいこと考えてたら、眠くなってきやがった……。
██████博士:気をしっかり持ってください。現在、あなたの救出方法を模索中です。
エージェント██████:そいつはいい。だが、ここにいるのも悪くはないような気がするな。[あくびと思われる音]クソッ……。しゃべってられないほど、眠い……
██████博士:職務の途中です眠ってはなりませんよ、エージェント██████。エージェント██████?応答してください!
エージェント██████:なんか口に、[もがく音]きも…ち…い。
その音声を最後にエージェント██████は応答しなくなりました。
<録音終了>
その後、定期的に連絡を試みましたが、寝息の音以外の音声は確認されませんでした。
収容違反事例後、音声に粘着質な音が混じり始めました。最終的に、粘着質な音声によって、寝息の音はかき消され、音声が途絶えました。通信機が何らかの理由で機能しなくなったことが予測されます。
SCP-623-JPの特別収容プロトコルを制定するための初期実験が行われました。
対象:D-1025(右手が先天的に欠損しています。大規模な詐欺を行い、複数の人物を自殺に追い込んでいます。)
結果:D-1025が感知範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。
対象:エージェント████(本人の志願。SCP-623-JPの初期収容メンバーでした。初期収容参加前に後天的に左腕を失っています。殺人の経験の記録はありません。)
結果:エージェント████がSCP-623-JPの3m範囲内に入っても活性状態へと移行せず。
対象:エージェント██(本人の志願。家庭内暴力によって、厳重注意を受けています。殺人の経験はありません。)
結果:エージェント██が感知範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。
対象:██博士(SCP-███-JPに暴露したところ、精神疾患が発生。終了の予定でしたが、実験に参加することになりました。殺人の経験の記録はありません。)
結果:██博士が感知範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性化した。
さらに、同条件の追試験を複数回行い、活性条件に精神疾患の有無および社会的立場が関係していることが推定されました。
██████博士の提言によって、SCP防護服を着用したエージェントによって、SCP-623-JPの分断実験が行われました。結果、体積が2万立方cm以下であれば、感知範囲を最小であると予測される約3mに抑えられることが発覚しました。
以上の事実を踏まえ、特別収容プロトコルが制定されました。
感知範囲が判明したのはいい。これで収容がかなり容易になる。だが、活性条件は本当にこれだけなのか?あのインタビューが気になって仕方ない。もしも、SCP-623-JPが単一の基準に基づいていないとしたら、活性条件の実験など無意味と化すかもしれない。この懸念が杞憂であるといいが……。
██████博士
[補遺1:下記は、回収された文書から抜粋した文章です。
私の親を名乗る二つの物質が消失した。私の中で安らかに眠っているのを感じる。
心地いい。どのようにすれば、あれらを許せるかを考え続けてきた日々が嘘のようだ。
あれらが沁みわたってくる。「お前は弱者だ」と意識に潜り込もうとしてくる。
弱者とは何か。私は弱者なのか。
暴力をふるう者こそが真の弱者だ。だからこそ、私は弱者だ。
弱者には暴力以外の手段はない。
正しいものなど何もない、それでもやらなければならない。
そうだ。泥がいい。すべてを包み込む、物言わぬ泥となるのがいい。
会話がなりたたずとも、安らぎは与えられる。言葉など、意志など初めから不必要だった。
救えないものにこそ安息を。
収容違反事例1:実験中に、SCP-623-JPの収容違反事例が発生しました。SCP-623-JPがエージェント████を対象に活性状態へと移行しました。エージェント████を消失させたSCP-623-JPはDクラス宿舎へと移動し、宿舎にいたDクラス職員すべてを消失させ、非活性状態へと移行しました。その後、SCP-623-JPは職員に再確保され、収容違反事例は収束しました。
エージェント████が初期収容や実験に参加していたにも関わらず本事例でSCP-623-JPを活性化させたことから、活性条件に新しく「身体欠損を持つ者」が追加されたのではないかと推測されます。
実験により、SCP-623-JPの体積と質量は増加していましたが、この収容違反事例が引き起こされるまで、活性条件の追加は確認されませんでした。そのため、SCP-623-JPの活性条件の追加には、体積および質量が関係していることが予測されます。
この収容違反事例より、特別収容プロトコルは改訂されることとなり、あらゆるDクラス職員を用いた実験は禁止されました。
収容違反事例2:プロトコルの改訂後、すべてのSCP-623-JPが感知対象無しに活性化しました。さらに、SCP-623-JPがコンテナに接触すると同時に非活性状態へと移行しました。この事例によって、SCP-623-JPの収容違反事例の収束が取り消され、財団は即時SCP-623-JP本体の探索をしました。結果、財団周辺に位置していた██村で非活性状態のSCP-623-JPが発見されました。その時のSCP-623-JPの高さは約6m、幅は約10m、長さは約20mでした。現在、██村の住民のすべてが行方不明です。
SCP-623-JPの再収容のために、エージェント██がSCP-623-JPに接近したところ、SCP-623-JPは活性状態に移行しました。エージェント██は迅速にSCP-623-JPの感知範囲から逃れましたが、陸上からの収容が不可能と判断されました。
そのため、SCP-623-JPは感知範囲外の上空から投下されたコンテナによって収容され、収容違反事例は収束しました。
以上から、SCP-623-JPはすべての人間を対象とするほどに活性条件を緩和させたと推測されます。SCP-623-JPを移動させることは困難なため、SCP-623-JPは屋外にて収容されます。SCP-623-JPの周囲300mが立ち入り禁止区域に指定されました。
確かにこの泥によってでしか救われ得ないものもいるだろう。しかし、我々、財団はこの泥を必要としてはいない。我々は常にDクラスが行った犯罪などはるかに上回るほどの暴力を用いている。この泥にしてみれば、明確に我々は弱者だろう。しかし、我々は温かい救済の中に身を浸すのではなく、暗い闇の中でバケモノを押さえつけることを自ら選びとった。我々は意志を捨て去ったりなどしない。我々に救済など必要ない。我々に必要なもの、それは人類がわけのわからないものに滅ぼされていないという事実だけだ。
██████博士
SCP-453-JP「一生!満腹!饅頭!」として投稿済みです。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは低危険度物品収容室に保管して下さい。SCP-XXX-JP-1およびSCP-XXX-JPの摂食者は人型収容房に収容して、毎日決まった時間に点滴を与えて下さい。SCP-XXX-JP-1およびSCP-XXX-JPの摂食者が望むものは禁止されていない、もしくは、予算的に不可能でなければ与えることが可能です。SCP-XXX-JP-1およびSCP-XXX-JPの摂食者が精神の錯乱を主張した時、カウンセリングを行って下さい。SCP-XXX-JPの摂食者が死亡した時、体内からSCP-XXX-JPを取り出し、焼却処分を行って下さい。SCP-XXX-JP-2によるSCP-XXX-JPの発生を防ぎSCP-XXX-JPの迅速な収容をするために、全国の一口饅頭を取り扱っている個人、および、事業所を監視してください。そのなかに「謎の声」を聞いた者が現れた時、即時その者をSCP-XXX-JP-1として収容してください。
説明: SCP-XXX-JPは直径3cmの一口饅頭のような12個の物体です。SCP-XXX-JPは箱に収容されており、その表面には「満足!満腹!饅頭!」と記載されています。成分表および製造会社などの起源を特定できる情報は記載されていませんでした。SCP-XXX-JPは摂食もしくは物理的損傷によって消失した時、箱の中に12個になるように再出現します。SCP-XXX-JPの組成には異常がなく、一般的に流通している一口饅頭と同様の成分が検出されました。
SCP-XXX-JPを摂食した人間は満腹感と身体の充足感を主張します。検査の結果、摂食者の胃にはSCP-XXX-JPが増殖して、隙間なく詰まっていることが判明しました。さらに、SCP-XXX-JPは摂食者の胃の中で消失と再出現を繰り返します。摂食者によって、SCP-XXX-JPは消化および吸収されることはありません。
摂食者は食物の摂食時に苦痛を感じます。苦痛は食物が固体に近いほど大きくなります。これは食物がSCP-XXX-JPを押しのけ、胃を圧迫することから生じていると推測されます。そのため、摂食者の多くは数値上飢餓状態に陥っていました。しかし、彼らの容貌に異常は現れません。摂食者が食物を摂取せずにいると、飢餓状態が進行し、通常の人間通り死亡します。摂食者が死亡した場合、増殖と消失のサイクルが止まり、SCP-XXX-JPは異常性を失います。
SCP-XXX-JPを胃の中から摘出した時、同量のSCP-XXX-JPが摂食者の胃の中に発生します。そのため、SCP-XXX-JPの影響を取り去ることはできません。胃を摘出しても、胃が位置していた場所にSCP-XXX-JPが発生し、消失と再出現を繰り返し続けます。摂食者はこの状態でも満腹感を主張します。さらに、摂食者はSCP-XXX-JPを非常に美味と評価するため、摂食者はSCP-XXX-JPを他人に勧める傾向があります。この傾向には異常性が見られず、記憶処理によって取り去ることが可能です。詳細は追記より確認してください。
SCP-XXX-JPは██県██市██町の病院に搬送される栄養失調患者が急増していたため、その特異性が発覚しました。財団は摂食者をすべて保護しました。██氏の家屋からSCP-XXX-JPを回収しました。その後、██町の全域にAクラス記憶処理を行い、カバーストーリー「新型感染病の蔓延」が流布されました。摂食者の一人である██氏はSCP-xxx-JPを██市██町の夜店の屋台で買ったと主張しました。その証言に基づき、財団によって屋台の店主が確保されました。屋台の店主もSCP-XXX-JPを摂食し、SCP-XXX-JPの影響を受けています。SCP-XXX-JPの来歴を知るために、店主へのインタビューが行われました。詳細はインタビューログ(SCP-XXX-JP-1)より確認してください。
追記:██氏は包丁による自殺を図った直後を財団に保護されました。財団職員による治療により息を吹き返しましたが、██氏には錯乱がみられ、何らかの異常性が予測されるため、██氏にインタビューが行われました。インタビューにあたり██氏の精神に配慮するために、カウンセリングの方式を用いています。
インタビューログ
聴取者:█████博士 対象者:██氏
█████博士それでは、インタビューを始めます。あなたの好きなところからお話し下さい。
██氏:私は、私は食べることが、食べることが大好きだったんです。大好きだったんです。なのに、あれを、あれを食べてから、あのとってもおいしかった饅頭を食べてから……。(泣き始める)
█████博士落ち着くまで待ちましょう。
10分経過し、██氏は話すことができる状態になりました。
██氏:と、取り乱しました……。すみません。
█████博士ゆっくりと話して下さい。時間はまだまだあります。
██氏:あ、ありがとうございます。でも、話したいんです。とにかく、話して楽になりたい……。話しても、楽にはならないけど、楽になりたい……。
█████博士どうぞ、あなたの言葉はすべて記録されています。
██氏:は、はい。まず、あの饅頭を食べた時、とにかく、今まで食べてきた饅頭が、饅頭がアレに思えるほどおいしいって思ったんです。それに、お腹もいっぱいになった。たった、一個でですよ?それで、それで、皆に勧めたいと思いました。独り占めは、絶対だめだって、思ったんです。それで、皆を呼んで、饅頭をふるまって。そのとき、饅頭の中身が減っていないことに、減っていなかったんです。私、私は愚かにも、愚かにも、バカらしいです。饅頭をたくさんひとに勧められると思ったんです。皆も不思議で美味しい、魔法の饅頭だって、だから……。(涙をこらえている)
█████博士はい、存じ上げています。ゆっくりどうぞ。
██氏:また、別の友達にふるまった後、夜ごはんを食べようと思ったんです。その日は大好きな焼肉の日でした。焼肉なのに、お腹がいっぱいで全く食べられなかった。夫も子供もです。ずっと、お腹一杯なんです。それで、来る日も来る日も、お腹いっぱいで、お腹いっぱいで、全くご飯も、水すらも、食べられませんでした。それで、ある日、うちの子が倒れたんです。ああ、かわいそうな██!すぐに病院に連れて行きました。そして、検査を受けたら、栄養失調でした。栄養失調ですよ?そんなの、日本であり得るわけがありません。なのに、なのに!そして、夫も病院で倒れました。夫も、夫もでした。私は急にくらくらして、くらくらして……。
█████博士大変でしたね。とても、とても。しかし、なぜあなたは自殺を?
██氏:違います。あれは自殺じゃない。自殺なんかじゃない。お腹をすかせるために必要だったんです。お腹をすかせるためには、あれしかなかったんです。胃薬もだめ、下剤もだめ。お腹がいっぱいで、夜、眠れなくなって、睡眠薬を飲んだ、飲んだのに、眠れない。それで、かきだそうと、思ったんです。たくさん出てきました。いくらだしてもなくならない。なくならない。おなかがいっぱい。もっと、たくさんださなきゃ。掃除機でも、足りない、から、直接、出さなきゃ。とっても、たくさん。美味しそう。
█████博士インタビューを終了します。██氏に、即時、鎮静剤の投与を。
インタビューの結果、SCP-XXX-JPは満腹感の副産物として精神の錯乱を起こすことが予測されます。認識汚染のような異常性は見られませんが、摂食者には定期的にカウンセリングを行うほうがいいようです。我々は彼らを保護しなければならないのです。いつか来るSCP-XXX-JPの解明の日のために。█████博士
インタビューログ
聴取者:█████博士 対象:███氏(夜店の店主)
█████博士:あなたはどのようにしてSCP-XXX-JPを手に入れたのですか?おっと、SCP-XXX-JPとは、あなたの作成した饅頭のことです。
███氏:ああ、あれですかい、「満足!満腹!饅頭!」のことですかい?
█████博士:その認識で正しいです。質問に答えてください。
███氏:おっと、こいつは失礼。あれは試行錯誤の結果生まれた究極の饅頭なんでさ!食べれば、体は元気になって、空腹も吹き飛ぶ!おまけに、とびっきりうまい!これを究極の饅頭と言わずして、なんと呼びやしょうか!ええ!
█████博士:落ち着いてください。SCP-XXX-JPはあなたが作り出したもの、ということでよろしいでしょうか?
███氏:おうよ!重たい腹抱えて、研究した甲斐があった、ってもんだ!
█████博士:あなたはSCP-XXX-JPを摂食したものが栄養失調に陥っていることを知っていますか?
███氏:……なんですって。そいつは、ああ、そんなことが……。
█████博士:あなたはどのようにしてSCP-XXX-JPを作成しましたか?
███氏:満足満腹饅頭は丹精込めて、ええ、魂込めて作り上げて、ただ、特別な製法とか材料使ったわけじゃなくて……。なんで、できたんだろうなあ……。
█████博士:作成時に何か異常はありませんでしたか?
███氏:異常なんて、ああ、もしかして、世界中の人間がみんな[削除済み]食えるようになりますようにって、祈りながら作ったから……。そんなわけあるはずが……。
█████博士:なぜ、あなたはそのような念を込めて、饅頭を作ったのですか?
███氏:それは……、ああ、そうだ、突然、頭の中に「お前は饅頭を選んだ。選んだからには、義務を果たさなければならない」って、浮かび上がってきたような……。それで、考えたんだ、俺が果たせる義務ってやつを。そうして……、あれが、できたんだ……。
█████博士:ありがとうございました。これでインタビューを終了します。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP担当職員はSCP-XXX-JP-1によって構成されます。SCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-1は標準生体収容房および標準人型収容房に収容されます。SCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-1には毎日決まった時間に給餌を行ってください。SCP-XXX-JPをSCP-XXX-JP-1以外が目視することは許可されません。SCP-XXX-JPの実験には、セキュリティークリアランスレベル3以上の職員1名以上の承認が必要です。
説明: SCP-XXX-JPは認識汚染能力を持ったメスのタヌキ(Nyctereutes procyonoides)です。SCP-XXX-JPの首関節は通常の個体よりも柔軟ですが、それ以外の身体的異常はありませんでした。
SCP-XXX-JPの特異性はSCP-XXX-JPが後ろ足をたたみ、額を床につける姿勢、いわゆる土下座の姿勢を取ることで発現します。その姿を見た生物は踊ることは素晴らしい、という観念が植え付けられます。このようにして、SCP-XXX-JPに暴露したものはSCP-XXX-JP-1に指定されます。SCP-XXX-JP-1個体に記憶処理を実施しても異常性は消失しません。SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-1個体によって「Mr.コジロウ」と称されています。
多くの場合、暴露してすぐにSCP-XXX-JP-1はその場で踊り始めます。その踊りには個体差があります。SCP-XXX-JP-1の身体の構造は踊りのために最適化されます。具体的には、四肢の関節の可動範囲の増加、四肢の筋力の増加、二足歩行のための体幹の強化が確認されています。現在、SCP-XXX-JP-1は125個体が収容されています。多くは、異常性のない動物および人間です。しかし、一部異常なオブジェクトがその中に含まれており、SCP-███-JPへと再指定されました。SCP-XXX-JP-1は睡眠中や食事中以外は基本的に踊りを踊っています。踊りを阻止することは可能ですが、SCP-XXX-JP-1の反発があるため、推奨されません。SCP-XXX-JP-1は暴露直後の踊りを終えた後、別のSCP-XXX-JP-1を探索し、「グループ」を構成します。グループの構成員は12~69です。このようにして4つのグループが構成されていることが確認されています。
SCP-███-JPは後述のSCP-XXX-JPの回収の際、オブジェクトの影響を受け踊っている状態で発見されました。現在はSCP-XXX-JPと異なる収容施設に収容されています。SCP-███-JPの詳細は別紙の報告書を参考にしてください。
SCP-XXX-JP-1個体実例
分類番号 |
種別 |
顕著な強化点 |
追記 |
SCP-XXX-JP-1-1 |
イエネコ(Felis silvestris catus) |
四肢の強化 |
立ち上がって、フラダンスを踊る。 |
SCP-XXX-JP-1-2 |
イエネコ(Felis silvestris catus |
体幹の発達 |
ポールがないにもかかわらず、ポールダンスを踊る。 |
SCP-XXX-JP-1-6,7 |
ブタ(Sus scrofa domesticus) |
下半身の発達 |
二個体によって創作ダンスがなされる。 |
SCP-XXX-JP-1-25 |
人間(初期収容時に暴露) |
体幹の強化 |
器械体操を行う。非常に高度な技を継続して行い続けた。以前はこのように踊ることはできなかったと主張している。 |
SCP-XXX-JP-1-58 |
キハダマグロ(Thunnus albacares) |
ひれの異常発達。陸上での二足歩行。陸上での呼吸 |
水中でも、陸上でもシンクロナイズドスイミングが行われる。 |
SCP-XXX-JP-1-79 |
アシダカグモ(Heteropoda venatoria) |
強化はなし |
ブレイクダンスを行う。ごくたまに足がもつれ、転ぶようなしぐさをする。 |
SCP-XXX-JP-1-94 |
アミメキリン(Giraffa camelopardalis) |
特に下半身の強化が顕著だった。 |
2足歩行しながらロボットダンスを踊る。██の動物園で行方不明になっていた個体と特徴が一致した。 |
SCP-███-JP |
既存の生物と一致した特徴を持たない軟体生物 |
強化個所不明 |
全身をねじり続ける動作を行う。SCP-███-JP自体の異常性の曝露を受けて周囲30m以内にいる6名のDクラス職員が身体をねじり5名が終了した。生存者はSCP-XXX-JPに暴露していた。 |
SCP-XXX-JPはテレビ局に不審な集団が現れ、11名がSCP-XXX-JPに暴露したことから存在を知られました。SCP-XXX-JPは後方にSCP-XXX-JP-1個体をすべてひきつれて、テレビ局エントランスで「土下座」を行い、SCP-XXX-JP-1は各々の踊りを踊りました。SCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-1の収容は財団エージェントに2名の暴露者を出しながらも成功しました。別途、SCP-███-JPも財団エージェント8名の暴露者を出しながら収容されました。SCP-███-JPの暴露者のうちSCP-XXX-JPに暴露していた2名は生存しました。
補遺:SCP-XXX-JPが20██年に老衰で死亡しました。そのとき突如、SCP-XXX-JP-1-1、SCP-XXX-JP-1-6,7、SCP-XXX-JP-25、SCP-███-JP、が「私がMr.コジロウの後継者だ」と主張し始めました。この主張はそれぞれの個体が発することができる音によって、十分に認識可能な形式でなされました。その後、SCP-XXX-JP-1-1、SCP-XXX-JP-1-6,7、SCP-XXX-JP-25、SCP-███-JPは順に踊り始めました。その後、SCP-XXX-JP-1はお互いに隔離されているにもかかわらず、「後継者争い」のために踊ったSCP-XXX-JP-1の踊りの「評論」をはじめ、最終的にSCP-███-JPが後継者にふさわしいという意見の一致が行われました。その後、SCP-███-JPは自らの特性を失い、代わりにSCP-XXX-JPの特性を得ました。そのため、SCP-███-JPをSCP-XXX-JPとして再指定しました。
アイテム番号: SCP-623-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:みんなお姉さんに抱きしめられてあげて下さいね。
説明:SCP-623-JPは泥によって構成されたお姉さんです。お姉さんは弱い人がいると、率先して抱きしめてあげます。そうして、弱い人はお姉さんのことが好きになり、お姉さんと一緒になります。すると、お姉さんは弱い人はもっとたくさんいることに気付きます。そして、お姉さんはもっとたくさんの弱い人を抱きしめて、一緒になります。最終的に、お姉さんは人間はみんな弱いものだと気づいて、みんなを抱きしめてあげたいと思いました。
事件記録XXX-JP-incident: 突如財団データベースが何者かによる侵入を受け、データを書き換えられる事件が発生しました。殆どの報告書は既にバックアップによって復旧していますが、もしも未だ改変されている報告書を発見した場合ただちに財団情報課までご連絡ください。
データベースの報告書全てにこの事件記録付記は記載され、復旧が完了次第削除されます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは低危険度物品収容ロッカーに収容してください。SCP-XXX-JPを移動させる場合は必ず肌に直接触れないようにしてください。ラウンチイベントに備えて、SCP-XXX-JPの収容ロッカーから110m以内に再生紙を設置することは許可されません。ラウンチイベントにより異常性を持った再生紙は保存のため複数を確保し、それ以外は焼却してください。SCP-XXX-JP関連の実験をする場合、サイト-81██の近辺に設置された実験用家屋のトイレにも職員を待機させてください。
説明: SCP-XXX-JPは未使用のダブル巻きのトイレットペーパー1ロールです。SCP-XXX-JPにはエンボス加工が施されており、材質は通常の再生パルプでした。SCP-XXX-JPは芯紙を持ちません。初期収容時のSCP-XXX-JPの長さは約12mでしたが、ラウンチイベントにより60mへと延長しました。SCP-XXX-JPの製造元は不明です。
SCP-XXX-JPの特異性は人間の肌がSCP-XXX-JPに接触した時に発揮されます。人間以外の動物がSCP-XXX-JPに接触しても異常性は発揮されません。接触した人間はSCP-XXX-JPに接触した個所を起点にちょうど100m上空へと転移します。SCP-XXX-JPが人間を転移させた時、SCP-XXX-JPの長さが2~25m減少します。SCP-XXX-JPの長さが0になるとラウンチイベントが引き起こされます。ラウンチイベントについては補遺を参照してください。
SCP-XXX-JPは人間を転移させたのち自らも転移します。転移先はSCP-XXX-JPが設置されていた建物外で最も近くに位置している建物のトイレの個室に設置されます。
SCP-XXX-JPは愛知県██市██町で下半身に衣服を身につけていない飛び降り死体が散発的に店舗の屋上で発見されたことから財団の目を引きました。調査の過程でフィールドエージェント███が休憩中に意図せずしてSCP-XXX-JPに接触し、その地点の上空100mへと転移しました。この事例よりSCP-XXX-JPのおおまかな場所が把握され、SCP-XXX-JPは収容されました。調査部隊はSCP-XXX-JPと同様の物品の存在を予測し、探索しましたが同様のオブジェクトは発見されませんでした。
補遺1:20██/██/██にDクラス人員を用いた初期収容実験によりSCP-XXX-JPが消失しました。実験前のSCP-XXX-JPの長さは12mでした。その後、100m範囲内に存在するすべての再生紙がSCP-XXX-JPの性質をもつようになり、新たなSCP-XXX-JPがサイト外に設置された実験用家屋のトイレに設置されました。この収容違反事例より範囲内にて再生紙に接触していた職員のすべてが上空に転移し、落下死しました。ラウンチイベント事例によりサイト-81██の業務においては可能な限り再生紙の代替物として上質紙が用いられることとなりました。
補遺2:ラウンチイベント後に現れたSCP-XXX-JPの側に芯紙が現れました。芯紙には文章が書きつけられていました。以下はその文章です。
さらなる爽快感のために改良してみました。