アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 担当職員はプロトコル「NO MORE」に従ってSCP-XXX-JPの次の上映場所を予測し、上映に備えてください。SCP-XXX-JPの上映が確認された場合、機動部隊○-○("パトランプ男")は遅くとも映画本編の上映終了30分前には現地に到着し、速やかに観客全員にAクラス記憶処理を施してください。
それと並行して、担当職員は主要動画投稿サイトを監視し、SCP-XXX-JP-2に分類される新たな動画が投稿されていないかを確認してください。もし新たなSCP-XXX-JP-2の投稿が確認された場合、当該動画の記録を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは日本各地の映画館において本編開始前に上映される異常性を持ったコマーシャルです。SCP-XXX-JPの上映はこれまでに███件確認されていますが、発生地域が広範囲かつ統一性も見られないことから、SCP-XXX-JPの元となっていると思われるコマーシャルシリーズ「██ ████ ████」が上映されているならば、日本全国どこの映画館でも出現しうるものと推測されています。また、当該オブジェクトの異常性に関して元のコマーシャルの制作団体による関与はないものと見られており、制作者や異常性の原理は現在のところ完全に不明です。
SCP-XXX-JPの内容は元のコマーシャルとほとんど同じものですが、登場するキャラクター「████」の頭部のビデオカメラが、元のコマーシャルではシルバーなのに対してSCP-XXX-JPにおいては少しピンク掛かったシルバーになっているという違いがあります。
また、対象のうちSCP-XXX-JPによる異常性の発露に至る人物は限定されていませんが、10代及び20代の男性が優位に多い傾向が認められます。
映画館で人物がSCP-XXX-JPを視認するとその異常性の影響下に置かれ(以下、影響を受けた人物を「被験者」と呼称)、暴露から24時間以内に自慰行為に及んだ被験者に対してSCP-XXX-JPの異常性が発揮されます(以下異常性を発揮した被験者をSCP-XXX-JP-1と呼称)。被験者が自慰行為を行わないまま24時間が経過するか、自慰行為を行う以前にAクラス記憶処理を受けることで、被験者はSCP-XXX-JPの影響から脱することが出来ます。
以下は動画投稿サイトに投稿されたSCP-XXX-JP-2の事例です。(識別番号はSCP-XXX-JP-2群の中での投稿順に割り振られたもの。投稿アカウントが停止処分を受けてもおよそ6~24時間後に同じアカウントが再作成され、この順番通りに再投稿されている。)
番号 |
発見日時 |
再生時間 |
SCP-XXX-JP-1の特徴 |
内容 |
SCP-XXX-JP-2-1 |
20██/09/06 |
40:13 |
20代男性。██県██市のコンビニエンスストアに勤務している。 |
三人称視点で、共に30代と思われる男女が性行為を行う様子が映されている。一連の内容が██████社より販売されている成人男性向けビデオ作品の内容と一致することが確認されている。 |
SCP-XXX-JP-2-11 |
20██/05/17 |
14:47 |
20代男性。サイト81██に勤務する財団の研究員である。 |
一人称視点で、SCP-XXX-JP-1-11が同じくサイト81██に勤務する█研究員(20代女性)と性行為を行う様子が映されている。 |
SCP-XXX-JP-2-17 |
20██/11/25 |
03:39 |
10代男性。東京都██区の中学校に通う学生である。 |
一人称視点で、8歳程度と思われる女性と性行為を行う様子が映されている。女性は漫画『███████!』に登場するキャラクター████だと思われる。 |
SCP-XXX-JP-2-30 |
20██/10/07 |
23:46 |
20代女性。██府███市に暮らしている。 |
三人称視点で、裸のSCP-XXX-JP-1-30に巨大なトビズムカデ(Scolopendra subspinipes mutilans)3匹が巻きついてうごめく様子が映されている。 |
SCP-XXX-JP-2-52 |
20██/02/13 |
19:19 |
40代男性。██県██市の████大学█学部の教授である。 |
終始、フィボナッチ数列が画面右側から左側に向かって流れていく様子が映されている。 |
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 担当職員は適時関係施設を監視し、SCP-XXX-JP個体が異常な兆候を示していないか、新たな個体が出現していないか等を確認してください。また月に1度関係施設の職員等にインタビューを行い、SCP-XXX-JPに関連する異常等が発生していないかを確認してください。もしSCP-XXX-JP個体を目撃したと思われる人物が現れた場合、Aクラス記憶処理を施して解放してください。
説明: SCP-XXX-JPは日本各地の競馬場やトレーニングセンター、生産牧場等の競馬関係施設に出現・消失するウマ(Equus caballus)の形をした霊的実体です。それらは専用のカメラを通してのみ視認することが出来ます。また出現及び消失は全て瞬時に行われており、その方法や出現・消失理由は現在のところ完全に不明です。
SCP-XXX-JPは視覚及び聴覚を有しており周囲のそれらの情報に対して反応を見せますが、SCP-XXX-JPが現実の物体に干渉することは不可能と考えられ、反対に、財団によるSCP-XXX-JPに対する物理的な干渉の試みも全て失敗に終わっています。
それぞれのSCP-XXX-JP個体は、かつて日本各地の牧場で生産されて競走馬に供するために育成されたサラブレッド(Equus ferus caballus)の個体と身体的特徴が一致しています。
以下は発見された個体の一部です。
発見個体(一部抜粋)
個体番号 |
特徴 |
備考 |
SCP-XXX-JP-1 |
鹿毛のメス。 |
19██/11/19付で競走馬登録を抹消された███████号であると推定。中央・地方を合わせて通算44戦1勝。記録上は、引退後は██県の██牧場で繁殖牝馬として繋養されているはずだが、そのような実態は確認できなかった。 |
SCP-XXX-JP-16 |
黒鹿毛のオス。かなり大柄で、推定馬体重580kg。 |
19██/07/08付で競走馬登録を抹消された█████████号であると推定。中央・地方を合わせて通算28戦0勝。引退後の消息は一切確認できていない。 |
SCP-XXX-JP-128 |
栗毛のオス。右前脚に重度の裂蹄が見られる。 |
日本で登録されていた競走馬の中にSCP-XXX-JP-128だと思われる個体は存在しなかったが、発見された牧場にて一致した特徴を持つ個体が誕生した記録がある。当該個体は20██/07/23(当時馬齢3歳)に蹄葉炎の悪化で回復の見込みなしとの診断が下され、安楽死処分となっている。 |
SCP-XXX-JP-394 |
葦毛のオス。 |
20██/12/26付で競走馬登録を抹消された█████号であると推定。出走は中央競馬のみの通算38戦6勝であり、20██年のGⅢ██████ステークスを制している。引退後は██県の████乗馬クラブで乗馬として繋養されている。た。20██/09/13に死亡。 |
以下はSCP-XXX-JPの発見事例に関する記録です。
日時 |
発見個体 |
発見場所 |
状況・補足事項等 |
19██/05/31 20:53 |
SCP-XXX-JP-1 |
██競馬場芝コース上 |
当SCP初の発見事例。発見時芝コースの上をゆっくりと歩いており、発見から17秒後に消失。 |
19██/01/05 06:01 |
SCP-XXX-JP-16 |
██トレーニングセンター調教用ウッドチップコース上 |
出現してすぐにウッドチップコースの上を周回しだし、約20分間走り続けた後に消失。発見日以降、毎日午前6時頃、午前11時頃、午後18時頃、午後23時頃に必ず同様の行動を行っている。 |
20██/03/20 13:40 |
SCP-XXX-JP-128 |
北海道██郡████ファームの放牧地 |
1日中放牧地をゆっくりと歩き回り、時々牧草を食むような仕草を見せている。発見から現在に至るまで、一度も消失していない。 |
20██/05/27 15:57 |
SCP-XXX-JP-394 |
██競馬場芝コース上 |
出現してから動かずじっと一点を見つめていた。視線の先では当日行われたGⅠ████の勝利騎手インタビューが行われていた。出現から12分後、インタビュー終了と同時に消失。 |
SCP-XXX-JPは██競馬場に職員として潜伏していた財団エージェントが「夜の██には予後った馬が化けて出る」という噂話を耳にしたことにより調査がなされて発見されました。その後の調査によって最初に発見されたものと類似した霊的実体が多数発見され、それらの個体がまとめてSCP-XXX-JPに指定されました。
以下はSCP-XXX-JPが生まれる理由を調査するため、元となったと思われるサラブレッドの関係者に行ったインタビュー記録です。
対象: ██調教師
インタビュアー: エージェント出室
付記: ██調教師はかつて███調教師の下で厩務員として働いていた経験があり、当時█████████号(SCP-XXX-JP-16だと思われる元競走馬)の世話を19██年8月から移籍までの1年9ヶ月に渡って担当していた。
<録音開始 20██/11/19>
(冒頭部分は重要度が低いため割愛)
エージェント出室: それでは█████████号についてお伺いしたいのですが、彼のことは覚えていらっしゃいますか?
██調教師: もちろん、私の担当でしたから。今までに担当していた馬は皆はっきりと覚えています。
エージェント出室: なるほど、では率直に彼はどんな性格でしたか?
██調教師: 一にも二にも、本当に真面目な子でしたねえ。気性もおとなしくて、調教のときもいつも素直に動いてくれましたし、厩舎の他の馬とも仲は良かったと思います。ただ、それに報いてやれなかったことが本当に心残りなんですが……。
エージェント出室: ちなみに、██に移籍してからのことは何かご存知でしょうか?
██調教師: いいえ、全く。
エージェント出室: 知りたい、とは思わなかったのですか?
██調教師: 多分、知ったところで物悲しい思いをするだけだろうと思ったので……。信じてやらなきゃいけない立場ではあるんですがね。
エージェント出室: 失礼を承知でお伺いさせていただきたいのですが、今までに担当なさった馬で残念ながら芳しい成績を残せず引退、あるいは地方競馬へ移籍となった馬は他にもいらっしゃったと思いますが、ほとんどの馬のその後は同様にご存じないのでしょうか?
██調教師: はい。ほとんどの馬が1勝も出来ずに去っていく世界ですので、よくあることだと言ってしまえばそれまでではあるんですが。それでも、私は馬が好きでこの仕事をやっているわけで、全ての馬を本当に実の子供のように可愛がっているつもりですので、辛くないと言えば嘘になりますね。
<録音終了>
終了報告書: ██調教師が嘘の証言をしている様子は見られなかった。█████████号が愛情をもって育てられていたことは間違いないと見られるため、SCP-XXX-JP-16が██トレーニングセンターに出現している理由は"幽霊"で想起されるような██トレーニングセンターや██調教師(当時厩務員)に対する恨みなどといった理由ではないと考えられる。
対象: ████氏
インタビュアー: エージェント栗栖戸
付記: ██氏は█████号(SCP-XXX-JP-394だと思われる元競走馬)の元馬主である。
<録音開始 20██/01/26>
エージェント栗栖戸: 私、競馬████(架空の競馬専門紙)の記者をしております武と申します。今年の██████ステークスが開催されるにあたって弊誌で特集を組むことになりまして、是非ともその勝ち馬である█████号についてのお話を聞かせていただきたいなと。
██氏: █████?ええ、いいですよ。それで?
エージェント栗栖戸: █████号について、何か思い出に残っていることなどはございますでしょうか?
██氏: んー、やっぱり██████ステークス勝った時ですかね。口取り式の時はそりゃあ誇らしかったです。あとは引退レースの██なんかも惜しかったですね。もうちょっとインコース突いて早めに仕掛けてたら……
エージェント栗栖戸: レース以外のことで、何かございませんかね?例えば、普段はこんな性格だった、とか。セールで初めて出会ったときこんなことがあった、とか。
██氏: レース以外?レース以外ですか?……あんまり思い浮かばないですかね。
エージェント栗栖戸: 些細なことでも結構ですので……。
██氏: もう10年以上前のことですし、普段は厩舎に任せっきりだったもので。まあ特に大きな怪我なんかもなかったようなので、心配とかはしてなかったんですけど。
エージェント栗栖戸: なるほど、そうですか。では、引退後のことなどはご存じないですか?
██氏: 引退後は████乗馬クラブに行って、それっきりですねえ。私自身もう馬主もやってないですし。仕事が忙しいのでなかなか会いに行く機会とかもないもんで。
エージェント栗栖戸: では、やはり現在の様子もご存じないと?
██氏: そうなりますね。元気にやってるといいんですが。
<録音終了>
終了報告書: ████乗馬クラブにも調査を行ったところ、█████号は昨年9月に死亡していたことが明らかとなった。しかし、██氏に対するインタビューでも氏が意図的に何か嘘をついているような様子は確認できなかった。
補遺1: SCP-XXX-JP個体の元となったと思われるサラブレッドに関して詳細に調査したところ、死亡したという記録が確認できた個体は全体の23%に留まり、その平均没年齢は7歳であった。残りは記録通りの実態が確認できないなど、行方不明状態となっていた。また、全体のうち86%がオスであった。
補遺2: SCP-XXX-JP個体の新たな発生を抑制するため、競走馬の引退後のキャリアを支援することを目的とした財団のフロント法人を設立する提案が██博士よりなされましたが、現時点で十分な収容手順が確立されていること、SCP-XXX-JPの危険度が極めて低いことなどを理由に現在保留されています。
「あー、……めっっっちゃ、暇」
醤油ラーメン半チャーセットを10分で掻き込んだ後の昼下がり、誰に返答して欲しかったでもなく、思わず漏れてしまった。普通に働くのってやっぱ暇だ。
社会人5年目。いや4年目だったか?3年目……いや、やっぱり5年目だよな?社会人5年目を迎えた俺だが、順調にキャリアを積んでるし、職場の人達とも関係は良好だ。まぁ、彼女とは先週別れちゃったとこなんだけど……それでも割と順風満帆と言えるような毎日を送っている。
でもなんて言うのかな、生活が停滞……いや、安定期に入った、とでも言えばいいのだろうか。毎日同じルーティーンを延々と繰り返してる。朝6時半に起きて、いつも通りの準備をして、仕事に行く。そんで帰ってきたらビールを飲みながら動画サイトを放浪して、12時くらいに寝る。そしてまた起きる。本当にそれを延々と繰り返してる。別にそれが悪いことだなんて思ってるわけではない。仕事自体は好きだし、今の生活でも満たされてるとは思ってる。ただ同時に、そんなことで満たされちゃうのか、って思ってる自分もいる。寝て、起きて、そんで次の日が来て、それの繰り返し。定年までこんなこと続けるんだろうか。昔はもっとやりたいこととかあったはずなんだけどなぁ。
いくつか内定取れた中でこの会社を選んだのも「給料も福利厚生も良かったから」だし、なんならメチャクチャ勉強して超名門国立大に入ったのも「学歴があったほうが良いところに就職できるから」だったと思う。夢も希望もありゃしねぇ。ホント、どうしてこうなっちまったんだろうな?
……そういや、小さい頃は発明家になりたいとか考えてたっけ。恐竜を見に行くためのタイムマシンとか、おじいちゃんの癌を一瞬で治す薬とか、今思い返せばバカみてぇな思い付きばっかりだったなぁ。ある種子供らしいと言えばらしい。でも、成長するにつれてそんなバカみてぇな夢も全部どこかに置いて来ちまった。何かショックなことがあったとかでもない。タイムマシンも万能薬も俺には作れない、それが現実。俺がそれを知らずに生きてきただけで世界なんてずっとそうだったんだろうし、きっとそれを知るのが大人になるってことなんだろう。夢のねぇ話だが、明日も来年もずっと先も、このまま順調で平和な生活を続けていくのも悪かねぇかな。
「なーんて、思ってたっけ。『本部』に『栄転』してきた時の俺、どんな顔してたんだろ」
ほんの1ヶ月前、かつて夢の中にあったぼんやりとした憧れの数々は、目を覆いたくなるような、紛れもない現実として俺に襲い掛かってきた。
核兵器がオモチャにしか見えなくなるような超危険物がその辺のロッカーの中にあり、収容施設から解き放たれれば1日で世界を滅ぼすであろう凶悪な怪物に同僚達は気さくに話しかけようとしている。それが、現実。
俺に、この世界に、「明日」は本当に来るんだろうか?
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXX-JPの物理的な収容は不可能であると考えられています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは財団が所有する北海道██町の███牧場で、搾乳機と運動場を備えた40m×70m以上の専用の繋ぎ飼い式牛舎に繋養してください。SCP-XXX-JP専用牛舎は一般の乳牛用の牛舎からは十分に離れた場所に建設し、SCP-XXX-JPの姿を担当研究員及び担当飼育員以外の一般職員が視認することがないようにしてください。食事は一般的な乳牛に与えるものと同様の飼料を通常の200倍の量与えてください。また、午前6時と午後6時の1日2回、牛舎備え付けの搾乳機を使って通常の乳牛と同様の方法で搾乳を必ず行ってください。SCP-XXX-JPの運動は担当研究員または担当飼育員の判断により自由に行わせることが許可されています。
また月に一度、職員8名以上同行のもと、SCP-XXX-JPを北海道内の日帰り旅行に連れていってください。その際、SCP-XXX-JPを目撃する一般人が出ないよう、周辺の封鎖を入念に行ってください。
説明: SCP-XXX-JPはホルスタイン種のメスのウシ(Bos taurus)です。体長10mという体躯の巨大さ以外には何ら外見的な異常はなく、行動も一般的なウシと比較して不自然な点は見られません。乳牛に供される一般的なウシと同様に食事や排泄等の活動を行い、体の構造にも特異な点は見られませんが、食事や排泄や搾乳される乳の量は体躯に比例して莫大な量になっています。
SCP-XXX-JPの異常性はその姿を(直接かカメラや映像記録などの間接的手段かを問わず)視認した際に発揮されます。SCP-XXX-JPを視認した人物(以下、対象者と表記)の視界からSCP-XXX-JPが消えた瞬間から、対象者が記憶しているSCP-XXX-JPの体長が徐々に小さくなっていきます。対象者がSCP-XXX-JPの姿を再び視認することによってこの影響がリセットされ、対象者はSCP-XXX-JPの正しい体長を記憶し直すことが出来ますが、この記憶影響を完全に除去することは(対象者がSCP-XXX-JPの存在に関する記憶を保持している限り)記憶処理を用いても不可能です。異常性の影響の進行度合いに関わらず対象者の「SCP-XXX-JPはとても大きい」という認識だけは上書きされることなく残るため、対象者は「SCP-XXX-JPは体長15mmの巨大なウシである」などといった、通常であれば不自然な認識に違和感を覚えることはありません。
以下はSCP-XXX-JPの詳細な異常性を解明するために行われた実験の記録です。
実験記録SCP-XXX-JP-1
対象: D-1
実施方法: D-1に███牧場で撮影されたSCP-XXX-JPの写真を見せ、10分後にその体長を答えさせる。
結果: 「5メートルくらいだっけ?」と回答。
分析: 写真だろうと関係なく記憶影響は起こるらしい。
実験記録SCP-XXX-JP-2
対象: D-2
実施方法: D-2に、D-1に見せた写真の背景を緑色無地に加工した写真を見せ、10分後にその体長を答えさせる。
結果: 「わからん。ウシなんだから2メートル弱とかそんなんじゃないの?」と回答。
分析: 背景がなければ記憶影響は起こらないのか?
実験記録SCP-XXX-JP-3
対象: D-3
実施方法: D-3に、D-1に見せた写真に写るSCP-XXX-JPの体躯の大きさを通常のウシと同程度のサイズにまで小さく見えるよう加工した写真を見せ、10分後にその体長を答えさせる。
結果: 「そりゃあ、ウシなら2メートルくらいか?」と回答。
分析: どうやら対象者がSCP-XXX-JPのことを「大きい」と認識しなければ記憶影響は起こらないらしい。
実験記録SCP-XXX-JP-4
対象: D-4
実施方法: D-4に「SCP-XXX-JPはとても大きなウシで、体長は10mもある」と伝え、10分後にその体長を答えさせる。
結果: 「さっき10メートルだって仰ってたじゃないですか」と回答。
分析: やはり「見る」ことと「『大きい』と思う」こと両方を満たす必要があるようだ。
実験記録SCP-XXX-JP-5
対象: D-5
実施方法: D-5に1時間SCP-XXX-JPを凝視し続けるよう命じ、その体長を凝視しながら答えさせる。
結果: 「10メートルぐらいはあるな。あの、もうやめてええか?10メートル。10メートル!」と回答。
分析: 2つの条件を満たして視界から外すと異常性が進行する、で確定と見ていいだろう。そして時間を伸ばしても意味は無かった、と。
実験記録SCP-XXX-JP-6
対象: D-5
実施方法: 実験-5実施の3年後、D-5にSCP-XXX-JPの体長を答えさせる。なお、実験-5から実験-6の間にD-5がSCP-XXX-JPの姿を視認していないことは確認済みである。
結果: 「えー、どんくらいやったっけ?えーっと、0.0000000れい、れ、れ、え、え?ちょっと待ってちょっと待って。えーっと、えー、0.0000000、れい、れい、れい、れい、れい、さん……ミリ!」と回答。
分析: やはり3年も経てば相当に小さくなっているようだ。このまま何十年も経過した場合のことなど考えると、少し恐ろしくもある。しかし、30fmか。フェムトなんて接頭辞は一生使うことはないと思っていたが。
SCP-XXX-JPの異常性は上記の点と後述するインシデントを引き起こしたもののみであると見られており、分泌される体液や排泄物、乳などには何ら異常性はないことが確認されています。
SCP-XXX-JPは北海道███市の██牧場において「巨大なウシがいる」との通報が警察に入ったことがきっかけで財団が認知しました。第一発見者であり██牧場の牧場長である及川氏によるとSCP-XXX-JPのような大きなウシを見たり話を聞いたりしたことはなく、同牧場で飼育されている他の乳牛にも異常はないということです。
以下は発見時に及川氏へ行ったインタビューの記録です。
対象: 及川氏
インタビュアー: 棟方博士
付記: 本インタビューは第一発見から約5時間後、SCP-XXX-JPの回収直後に行われたものである。インタビュー当時はSCP-XXX-JPの主たる異常性は判明していなかった。なお及川氏には、棟方博士は警察の依頼を受けて酪農の研究機関から訪れた研究員であると説明されている。
<録音開始>
(冒頭部分は重要性が低いため省略)
棟方博士: では、及川さんが初めてSCP-XXX-JP、あの大きなウシを見つけたときの時間や状況を教えていただけますか。
及川氏: 朝の4時半だったかな、朝起きてウシたちにご飯をやる時間になったもんで、牛舎に向かってたんですが、その道すがらチラッとあのウシが見えたんです。そりゃあもうビックリしたもんで、急いで牛舎の方に走りました。
棟方博士: その時点では特に何もしなかったということですか?
及川氏: 時間が時間だったもんですし、昨日も忙しかったから私も寝ぼけてるんだろうと。まあ見間違いだろうと思ってたんです。あんなに大きなウシなんているわけありませんしね。5ミリくらいあったんじゃないかな?
棟方博士: 5mmですか?私はもっと大きい、20cmほどはあったと記憶していますが。
及川氏: 20センチ?そんなに大きかったでしょうか?まあいいです、とにかく大きくて、怖くなっちゃったもんで、逃げるように牛舎に行きました。それから餌やりが終わって、事務所に帰る道でまたあのウシを見たんです。これはさすがに見間違いじゃないって思って警察に通報したんです。
棟方博士: なるほど、ありがとうございます。では、SCP-XXX-JPを見たときに何か感じましたことはありますか?パッと見てここがおかしかったとか、2回目に見たときには最初に見たときとここが変わっていた、など何でも結構ですので教えてください。
及川氏: うーん、見た目は特に変わったところもない普通の乳牛でしたし、2回目に見たときも同じようにつっ立ってるだけでしたね。
棟方博士: 特に違和感など感じたことはなかったということでしょうか。
及川氏: ああ、そういえば、2回目に見たときはちょっと大きくなっていた気がしました。
棟方博士: ほうほう、最初と比べてどのくらい大きくなっていたか覚えていらっしゃいますか?
及川氏: いや、あの、どのくらい大きくなっていたとかそういうわけじゃなくて、あくまで大きくなっていた気がする、って感じで。
棟方博士: と、言いますと?
及川氏: うーん、なんて言うんでしょうか。本当に大きくなったかどうかはわからなくて、いや、元からそんな大きさだったかもしれないんですけど、なんと言うか、「ここまで大きかったっけ?」って思いました。
棟方博士: つまり、記憶していたサイズと実感が異なったということですか?
及川氏: そうそう、そんな感じですね。めちゃめちゃ大きいとは思ってたんですが、まさか1ミリもあるなんて……。せいぜい0.3ミリくらいかと思ってたもんですから……。
棟方博士: あれ、1mmと仰いましたか?先ほどは5mmと仰っていませんでしたか?と言いますか、SCP-XXX-JPの体長は2cmほどではありませんでしたか?
及川氏: え、そうでしたか?そんなに大きくはなかったはずですけど。……そう言えば、先生も確かさっきは20センチだって仰ってませんでしたっけ?
棟方博士: あれ?
及川氏: あれ?
<録音終了>
終了報告書: 現時点でSCP-XXX-JPに関する詳細は明らかになっていないが、自身の体長を誤認させる、あるいは自身の体長に関する記憶を曖昧にするといった異常性を有している可能性がある。かく言う私も今しがた記憶を辿っていたところ、SCP-XXX-JPの体長は80μmほどだった気がしてきた。
補遺: SCP-XXX-JPは収容初期、収容施設から突如として消失するという収容違反を2回引き起こしました。以下がインシデント記録です。
収容違反インシデント記録
インシデントSCP-XXX-JP-1
20██/07/18、サイト-81██の収容施設内にいたSCP-XXX-JPが突如として消失しました。収容違反発生から7時間後、北海道███市の山間部でSCP-XXX-JPは発見され、再収容されました。消失直前のSCP-XXX-JPにも不審な点は見られず、この時点では消失の原因は全く解明されませんでした。
インシデントSCP-XXX-JP-2
20██/08/12、インシデント-1と同様に、サイト-81██の収容施設内にいたSCP-XXX-JPが突如として消失しました。インシデント-1を受けてSCP-XXX-JPに取り付けられていたGPS装置が問題なく動作したため、収容違反発生から6分後に北海道██市の海水浴場にて発見・収容されました。なお、インシデント-1及びインシデント-2共に、目撃したと可能性が疑われる周辺地域の住民および観光客にはAクラス記憶処理を施し、カバーストーリー「映画の撮影」が流布されました。
これら2回のインシデントを受けて、SCP-XXX-JPははじめから北海道で収容しておくことが合理的であると判断されました。また、この瞬間移動はSCP-XXX-JPが月に一度自発的に行っているものであると結論付けられ、「SCP-XXX-JPが収容違反を起こす前に財団の監視下で施設外に連れ出す」という収容方法が提案されました。これを実践して以来SCP-XXX-JPが収容施設から瞬間移動することはなくなったため、現在は正式な収容手順として採用されました。
しかし、この大きさのウシを月に一度旅行に連れていかねばならないというのもなかなか金がかかるし骨が折れる。輸送機の手配、旅行先周辺地区の封鎖、万一のための記憶処理の用意、SCP-XXX-JPが生み出す恵みを考えれば幾分かおつりが来るが、まったく、世話の焼けるウシだ。 - 棟方博士
いや、なんで日帰り旅行でたかだか同行職員10人の食事代が7万円もかかるんですか?これ収容のためにやってるってわかってますよね?まさかこの間サイト職員に配ってた釧路土産も経費で落とすつもりじゃありませんよね?棟方博士? - ██会計主任
職員10人の食事代が7万円?はて、そんなに高額だったっけなぁ?せいぜい1万円程度だったと記憶しているが……。 - 棟方博士
いやいや、そうはならないでしょ。 - ██会計主任
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 財団の潜水士チームは月に一度、SCP-XXX-JPの棲息する海域でSCP-XXX-JP個体の捜索を行い、発見次第捕獲してください。捕獲されたSCP-XXX-JP個体はサイト-8122の任意の室内に設置された50cm×80cm×50cm以上の水槽内に収容してください。その際、水槽1つにつき収容するSCP-XXX-JP個体は10匹までとし、中には(海藻などを含めて)SCP-XXX-JP以外の生物を入れないでください。
給餌は1日に3回、市販の魚肉練り食品任意の魚肉を10g与えてください。
説明: SCP-XXX-JPはイボショウジンガニ(Plagusia Tuberculata)に酷似した外見を持つカニの一種です。神奈川県沿岸部の限られた海域にのみ棲息すると見られ、異常性以外の部分で通常のイボショウジンガニと見分けることは困難です。
SCP-XXX-JPはハサミから異常性の未知の化合物(以下、SCP-XXX-JP-Aと呼称)を分泌します。SCP-XXX-JP-Aが生物の細胞に浸透すると、2、3分ほどでその部分が魚肉練り食品に変化します(以下、変化した部分をSCP-XXX-JP-Bと呼称)。SCP-XXX-JP-Bは弾力や耐久性などのあらゆる要素が市販の魚肉練り食品のそれと同程度です。また、SCP-XXX-JP-Bは変化前の細胞や器官と全く同じ働きをしますが、触覚及び痛覚だけはほぼ完全に消失しています。加えて、これら全ての変化は5~10分で元に戻ります。以上の理由から、自身の体の一部がSCP-XXX-JP-Bに変化した生物がそのことに気付くことは極めて稀です。
SCP-XXX-JP-Bは何ら異常性のない魚肉練り食品で問題なく摂食することが可能であるため、野生のSCP-XXX-JPは貝類や海藻などの海底に棲息する生物の体の一部をSCP-XXX-JP-Aを用いてSCP-XXX-JP-Bに変えて主食としています。しかし小魚の死骸だけはSCP-XXX-JP-Aを用いることはなく、そのまま摂食することが確認されています。この理由は現在調査中です。(補遺を参照)
補遺: 20██/11/15 13:56、収容中のSCP-XXX-JP個体群が極めて活動的な様子を見せました。当時収容室には担当職員である浅利博士が昼食を摂っていた以外に誰もおらず、特別普段の様子と変わった点も見られませんでした。その際SCP-XXX-JP個体群は給餌後にも関わらず空腹時に見られる動作をしていたことから、小魚の死骸をそのまま摂食する性質に鑑みて、「博士が食べていた塩サバ弁当に何らかの反応を示していたのではないか」という仮説が立てられ、実験が行われました。
注: 以降の実験は全て同一の個体群10匹に対して行われた。
実験記録SCP-XXX-JP-1 - 日付20██/11/16 13:00
実施方法: 餌として██社製のかまぼこを1匹につき10g与える。(材料はスケトウダラ)
結果: 6匹が完食。4匹はそれぞれ1~3g程度残した。
分析: いつもと同じような感じだな。
実験記録SCP-XXX-JP-2 - 日付20██/11/17 13:00
実施方法: 餌としてスケトウダラの魚肉を1匹につき10g与える。
結果: 10匹とも完食。
分析: 昨日以前に比べて明らかに食い付きが良かった。どうも魚肉をより好んで食べるようだ。
実験記録SCP-XXX-JP-3 - 日付20██/11/18 13:00
実施方法: 餌としてスケトウダラの魚肉を1匹につき15g与える。
結果: 10匹とも完食。
分析: かまぼこは10gですら残していた個体が15gを平らげた。そしてもう1つ特筆すべき点は、昨晩与えた餌はいつも通りかまぼこ10gだったが、10匹とも数g残したことだ。
実はこいつらはここが自然界ではないと知っていて、かまぼこは満腹になるまでは食べていなかったのかもしれない。
実験記録SCP-XXX-JP-4 - 日付20██/11/19 13:00
実施方法: 餌としてクロマグロ(Thunnus orientalis)の魚肉を1匹につき10g与える。
結果: 10匹とも完食。
分析: 群を抜いて今までで一番食い付きが良かった。かまぼこに使われることはないとか赤身魚とかそんなことは関係ないらしい。しかしまあ、贅沢な奴らだ。
補遺2: 20██//SCP-XXX-JPの
補遺3: 実験SCP-XXX-JPの期間中及びその後約58時間、収容中のSCP-XXX-JP個体群がSCP-XXX-JP-Aをほとんど分泌していなかったことが確認されています。この事実からSCP-XXX-JPの餌を魚肉にすることによって収容難易度を低下させることが可能であると判明し、特別収容プロトコルが改訂されました。
また、実験SCP-XXX-JP以降、SCP-XXX-JP個体群が空腹時に行う動作を以前より有意に高い頻度で取るようになりました。担当職員はSCP-XXX-JP個体群の行動如何に関わらず、特別収容プロトコルに定められた給餌の量を厳守してください。