クレジット
タイトル: SCP-XXX-JP - お天道様
著者: ©︎
atrs_lg
作成年: 2018
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1はサイト-81██内の生体認証ドアロックを備えた標準的絵画収容室にて不透明なカバーで覆った状態で保管してください。SCP-XXX-JPに劣化の兆候が確認された場合、特殊部隊め-9("街角芸術家")によるSCP-XXX-JPのメンテナンスを申請してください。
説明: SCP-XXX-JPは███社製のペンキを用いて描かれたアジア系男性と思われる顔の絵です。SCP-XXX-JPが視界内にあることを認識してから5秒以上視界内にSCP-XXX-JPを保った人間(以下、被曝者)は猜疑心が非常に増強され、その結果として他人の粗探しをすることに一日の殆どを費やすようになります。なお、盲目の場合はSCP-XXX-JPの効力を受けません。20██/02/██、██県██町内の一部地区において異様に高い犯罪検挙率が報告されたため、エージェントによる実地調査が行われた際に██商店街の塀(SCP-XXX-JP-1に指定)に描かれているSCP-XXX-JPが発見されました。カバーストーリー「改修工事」を適用しSCP-XXX-JP-1を撤去したところ、現在██町の犯罪検挙率は通常程度まで低下しています。聞き込み調査の結果、SCP-XXX-JPの作者(以下、作者)は年齢不詳の浮浪者男性であり、SCP-XXX-JP-1の前を根城にしていたこと、そして現在行方不明であることが判明しました。財団は作者の行方を捜索しています。収容後の実験にて、粗探しの結果として他人のミスや行動の欠陥を発見するまで被曝者の猜疑心は増強され続けることが判明しました。
補遺-XXX-JP-1: 20██/05/██、SCP-XXX-JPに関係した職員による再調査の請願が増加したことから、SCP-XXX-JPの再調査が行われました。その結果、SCP-XXX-JPは猜疑心の増強効果よりも微弱ではありますが、SCP-XXX-JPの閲覧時間に応じた注意力の減退効果を有していることが判明しました。██県██町内の一部地区で確認された犯罪検挙率の上昇はこの効果による件数そのものの増加も一因であると考えられています。
補遺-XXX-JP-2: 前述の再調査の際に、住民からの聞き取り調査の一部データが発見されました。紛失の経緯やインタビュアーが誰であったかは不明です。内容は以下の通りです。
対象: [編集済]氏
インタビュアー: [データ破損につき不明]
<録音開始>
[データ破損につき不明]: [編集済]さん、他に何かありませんか。
[編集済]氏: …ああ、そういえばあの爺さんはよくこんなことを言ってたなあ。
[データ破損につき不明]: それは何ですか?早く教えてください。
[編集済]氏: えっと、確か…「この町はいいとこだ。こんな流れ者の俺なんかもちゃんと誰かが見ててくれる。ただ、もうちっとみんな気楽に生きた方がいいとは思うけどな。」とかなんとか。
<録音終了>
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在サイト-81██内の標準的人型オブジェクト収容房に自主的に収容されています。SCP-XXX-JPに対して定期的に忠誠度テストを実施してください。SCP-XXX-JPが何らかのセキュリティクリアランス2以下の資料を要求した場合、サイト管理者の許可があり、かつSCP-XXX-JPが忠誠度テストで基準以上の値を取り続けているならばそれを与えても構いません。
説明: SCP-XXX-JPは複数の動植物の臓器や部位の継ぎ接ぎで構成された人型の生命体です。SCP-XXX-JPは20██/09/██、サイト-81██の前で横たわっているところを発見、保護されました。SCP-XXX-JPは自身をサイト-81██所属の勅瀬研究員であると主張しています。複数の精神分析テストやSCP-XXX-JPの証言と勅瀬研究員の記録との照会を行った結果、SCP-XXX-JPの人格は完全に勅瀬研究員と一致していました。勅瀬研究員が以前より複数のSCiP研究で成果を上げており、SCP-XXX-JPが財団へ貢献したいという強い意志を示しているため、現在の特別収容プロトコルが制定されました。SCP-XXX-JPの関与によってSCP-███-JP、SCP-███-JPの性質解明が大きく前進しました。現在のSCP-XXX-JPの主な研究対象は自身の生命維持機構です。
補遺-XXX-JP-1: 20██/11/██、放棄されたとみられる日本生類創研の研究所から実験記録が発見されました。その内容は以下の通りです。
今から記録するのは人間強化用組織パッチの実用化に向けた異種間組織定着術式のテストだ。術式と相性がいいっぽいので前捕まえた財団職員を使う。組織パッチは未完成なのでその辺の動植物を使うことにした。奴さんを実験に従わせるために[データ削除済]を導入した。 - [判別不能]博士
記録001 - 20██/04/██
手法: 右手を切除し、加工済チンパンジー(Pan troglodytes)の右手を移植する。
結果: ちょっと尺骨神経接続が甘かったようだが成功。
記録002 - 20██/04/██
手法: 肝臓を摘出し、加工済イリエワニ(Crocodylus porosus)の肝臓を移植する。
結果: 肝機能正常。奴さんは少々飲みすぎだったみたいだし、タダで健康になれて喜んでくれるといいのだが。
以降同様の記述が続くため、一部を省略しています。実験記録の全文を確認する場合はこちらを参照してください。
記録1██ - 20██/05/██
手法: 左眼を摘出し、加工済バラ(Rosaceae rosa)の花を移植する。
結果: 見えてるっぽいのでセーフ。おっしゃれー。
記録3██ - 20██/05/██
手法: 血液を全て除去し、加工済ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の樹液を輸血する。
結果: 酸素運搬能は通常の血液よりやや劣るが、死ぬほどじゃない。
記録6██ - 20██/06/██
手法: 脳を摘出し、加工済██(█████ ███████)の脳を移植する。
結果: 成功。[罵詈雑言のため編集済]。
付記: ██1体分の脳では不足したので[削除済]体分の██の脳を用いた。
記録███ - 20██/08/██
手法: 心臓を摘出し、加工済ブタ(Sus scrofa domesticus)の心臓を移植する。
結果: 普通に動いてる。 心拍数はブタに準じれば正常値。財団の[罵詈雑言のため編集済]にはお似合いだな。
付記1: これで全組織の置換が完了した。もう要らないからこいつは財団へ返してこよう。
付記2: 今まで除去した組織・臓器で元通りの人間を組み上げてみたが、それに関する実験はまた今度で。疲れたからしばらく休暇を取ることにする。
実験記録内に書かれた施術とSCP-XXX-JPの状態は一致しています。また、同施設内で生命維持装置に接続された人間(以下SCP-XXX-JP-1)が発見されました。SCP-XXX-JP-1は外見や生体データ、遺伝子情報の全てがMIAに指定される以前の勅瀬研究員と一致しています。現在、SCP-XXX-JP-1の休眠状態を解除する実験や、SCP-XXX-JPとSCP-XXX-JP-1を遭遇させる実験の認可は倫理委員会による審査中です。
補遺-XXX-JP-2: SCP-XXX-JPの身体構造を精査した結果、大動脈の一部組織にヒト由来部分が残存しているのが見つかりました。遺伝子解析の結果、SCP-XXX-JPの素体となったのはエージェント・臼田であったことが判明しました。現在、財団は実験記録内で言及されていたエージェント・臼田の臓器や組織を用いて再構築されたヒト型実体の行方を捜索しています。
20██/12/██: SCP-XXX-JP-1の休眠状態を解除する実験が申請されました。 サイト管理者によって申請は却下されました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの完全な収容は、その性質のため事実上不可能です。SCP-XXX-JPによるインシデントが発生した場合、機動部隊さ-6("アミティ保安部隊")によってカバーストーリー「シリアルキラー」を適用し、関係者にクラスB記憶処理を行ってください。現在SCP-XXX-JPを用いた実験は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは、特定のテンポ・周波数を持つ一連の旋律です。これは1975年に発表されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「JAWS」の劇中で用いられた、ジョン・ウィリアムズ作曲「メイン・タイトル~最初の犠牲者」に類似しています。
SCP-XXX-JPは何らかの方法で12小節以上演奏された時、その異常性を発現します。SCP-XXX-JPの12小節3音目の八分音符(以下SCP-XXX-JP-1)は、いかなる手段によって演奏しても、必ず波形がノコギリ波状になります。また、演奏が23小節目に到達した時、SCP-XXX-JP-1を聞いていた全ての生物(以下SCP-XXX-JP-2)の身体に、大きな顎で噛み千切られたような傷が出現します。歯形などからこの傷は大型のホホジロザメ(Carcharodon carcharias)による咬傷と一致していることがわかりました。この傷はSCP-XXX-JPの213小節4音目の付点八分音符を聞いたSCP-XXX-JP-2を除く全てのSCP-XXX-JP-2が死亡するまで、大きさや現れる部位を変えながら15~30秒ごとに出現し続けます。このときSCP-XXX-JP-2が死亡していても、条件が満たされるまで傷は出現し続けることに留意して下さい。
SCP-XXX-JP-3は、 SCP-XXX-JPの楽譜が印刷された37枚のコピー用紙です。SCP-XXX-JP-3は19██/08/██、行方不明とされていた編曲家の████氏の自宅の書斎にて発見、回収されました。SCP-XXX-JP-3の最終ページの下端には████氏のものとみられる筆跡で以下のような殴り書きが残されています。████氏と要注意団体との関連性は現在も調査中です。
補遺-XXX-JP1: SCP-XXX-JP-3に記されていた殴り書き
真に優れた音楽は、全てを奪う。
心も、体も。
Are we cool yet?
20██/09/██、██県のアパートにて、動画投稿サイト███に映画音楽のアレンジ演奏を投稿していた[編集済]氏が全身に無数の咬傷のようなものを受けた状態で発見されました。[編集済]氏はヘッドホンをしたまま部屋の中央に倒れており、右脚の80%以上と左の手首から下が大きな顎で噛み千切られたように無くなっていました。創傷の状態から何らかのSCiPの関与が疑われたため、エージェントによる現場検証が行われました。その結果、[編集済]氏がインシデントの直前まで編集していた作曲ソフトからSCP-XXX-JPが確認されたため、ただちに機動部隊さ-6("アミティ保安部隊")が出動し事態を収拾しました。財団の調査ではSCP-XXX-JPは現在既存のどの「メイン・タイトル~最初の犠牲者」のアレンジ楽曲とも一致していなかったため、[編集済]氏が独自に行ったアレンジが偶然SCP-XXX-JPと同一になってしまったのだと推測されています。
もし彼がこれをライブストリーム配信でもしていたら大規模な収容違反が発生していただろう。
そう考えると、彼一人の犠牲で済んだのは運が良かったのかもな。 - 宇都宮博士
補遺-XXX-JP2: 事件-XXX-JP-20██09██以降、財団は国内外における全ての「メイン・タイトル~最初の犠牲者」のアレンジ楽曲の発表を監視しています。
補遺-XXX-JP3: 20██/10/██、[編集済]氏の隣に居住していた██一家の行方不明者届が受理されました。SCP-XXX-JPとの関連は不明です。
補遺-XXX-JP4: 20██/██/██、[編集済]氏が回復したとの連絡を受け、エージェント・家永によるインタビューが行われました。以下はその記録です。
対象: [編集済]氏
インタビュアー: エージェント・家永
付記: [編集済]氏は事件-XXX-JP-20██09██を何らかの事故だと考えており、混乱を防ぐため「エージェント・家永は刑事であり、[編集済]氏の遭遇した事故について調査しに来た」と説明している。インタビューは病室にて行われた。
<録音開始>
エージェント・家永: [編集済]さん、お身体の調子はいかがですか?
[編集済]氏: ああ、おかげさまで。まだ松葉杖には慣れないし、幻肢痛もしますがね。
エージェント・家永: お気持ちお察しします。…さて、本題に入りましょう。編曲家の████さんはご存じですか?
[編集済]氏: いえ、聞いたこともないです。その方がこの事故に何か関係あるんですか?
エージェント・家永: …いや、そういうわけではないんですがね。それでは、事故当時について詳しく教えていただけますか。
[編集済]氏: (しばし沈黙)
エージェント・家永: なかなか思い出したくないでしょうが、話していただけませんか。
[編集済]氏: …わかりました。あれは18時頃だったでしょうか。お隣の██さんが帰ってきて、奥さんと娘さんが出迎えてる声が壁越しに聞こえていたので、それくらいだったと思います。私はその日は一日休みでしたので、趣味の作曲をやってました。それで、やっと納得のいくものになったので、一度通して聞いてみようと思ったんです。その前にベランダで一服して、戻ってきて、頭から再生し始めて、それから…。(強張った顔で黙り込む)
エージェント・家永: しばらくして、あなたの身体に傷が現れ始めた。
[編集済]氏: …そうです。すみません、刑事さん。ここから先の記憶はあまりないんです。あとは気が付いたらここのベッドの上でした。
エージェント・家永: わかりました。それでは今日はこれで終了させていただきます。またなにか思い出されましたらいつでもご連絡ください。
[編集済]氏: お役に立てず申し訳ないです。
エージェント・家永: いえいえ。では、お大事になさってください。失礼します。
[編集済]氏: …あの、一つだけ今思い出したことが。関係あるかどうかはわかりませんが。
エージェント・家永: 関係なくても構いません。なんでも話してください。
[編集済]氏: 再生し始めた時、音が小さいなー、と思って音量を上げてたんですけど、よく見たらヘッドホンが刺さってなくて。さっき一服しに行った時に抜けちゃってたのに気づいてなかったんですよね。それで慌てて刺し直したんです。
エージェント・家永: 端子を刺し直した時にはは再生開始から何秒程度経過していましたか?
[編集済]氏: ええっと、詳しくは覚えてませんけど、盛り上がりの前だったから、多分1~2分は経ってたんじゃないかなあ。
エージェント・家永: そうですか。ありがとうございました。
<録音終了>
終了報告書: インタビュー終了後、[編集済]氏にはクラスB記憶処理が行われた。