アイテム番号: SCP-1934-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1934-JPが出現する橋の周囲を鉄骨と不透明のメッシュシートで覆い、カバーストーリー「老朽化による補強工事中」を流布して一般人が立ち入らないようにしてください。また職員を最低1名ずつ橋の両岸に配置し、午後3時34分の時点で僅かでも雨が降っていた場合は設置されたカメラ映像でSCP-1934-JPの出現を確認してください。そのまま出現したSCP-1934-JPの消滅まで監視を続けてください。SCP-1934-JPによる曝露実験にはレベル2以上の職員の許可が必要です。
説明: SCP-1934-JPは██県██市██町の██渓谷に架かる██橋に出現する雌の成体の柴犬(学名:Canis lupus familiari)の形態をした認識災害を伴う実体です。付近在住のエージェント██が偶然その吊橋を散策中、SCP-1934-JPと遭遇、暴露したことにより財団にその存在が確認されました。なお、██橋は長さ30メートル程の吊橋であり、この吊橋自体に異常性は確認されていません。
SCP-1934-JPの首には赤い唐草模様の首輪がつけられており、体内にマイクロチップが埋め込まれていることが判明しています。詳細は補遺を参照してください。
SCP-1934-JPは午後3時34分の時点で僅かでも雨が降っていた場合、吊橋の西岸から出現します。この地点を地点-Aとします。出現したSCP-1934-JPは地点-Aから吊橋を17m進み、一旦立ち止まります。この地点を地点-Bとします。その後約█秒から██秒程██渓谷の南側を流れる渓流を凝視した後、吊橋の手摺の隙間から飛び降ります。飛び降りたSCP-1934-JPは着水直前に消滅します。この地点を地点-Cとします。SCP-1934-JPは障害物を透過する性質があり、この異常性のため今まで捕獲できていません。
SCP-1934-JPを直接目視した者はSCP-1934-JPが消滅した直後、█分間に渡って重度の視覚障害が発生し、視力が著しく低下します。この間、曝露者は元の視力に関わらず水中でのみ約2.5ほどの視力を得ます。
実験記録SCP-1934-JP -01 - 日付20█/█/██
対象: SCP-1934-JP
実施方法: Dクラス職員5名によるSCP-1934-JPの捕獲とGPSの装着。
結果: 市販の中型犬用ケージへ誘導しようとしたが、SCP-1934-JPはDクラス職員及びケージに一切関心を払わず歩き続け、待ち構えるDクラス職員及びケージを透過し、地点-Bへ到達。飛び降り、消滅した。装着しようとしたGPSも透過した。Dクラス職員5名は暴露の影響を受けたが、█分後正常な状態に回復した。暴露後の経過観察でも後遺症は確認されなかった。
分析: 有機物、無機物、生物、非生物関わらず障害物は通り抜けることが判明しました。捕獲は困難を極めるため、今のように場所ごと収容するほかないと思われます。 - 賀城博士
実験記録SCP-1934-JP -02 - 日付20█/█/█
対象: Dクラス職員-3612、-3613
実施方法: D-3612にSCP-1934-JPを直接観察させ、D-3613にはSCP-1934-JPをビデオカメラ越しに観察させる。
結果: D-3612は暴露し、短時間の視覚障害を訴えた。D-3613はSCP-1934-JPの姿を確認したが、暴露しなかった。
分析: カメラなどの機器を通しての視認は曝露に繋がらない事が判明しました。SCP-1934-JPの監視カメラによる観察を提案します。 - 賀城博士
実験記録SCP-1934-JP -03 - 日付20█/█/█
対象: 暴露したD-3612
実施方法: 最寄りの財団フロント企業の浴室にて、水中で簡易な視力検査を行う。
結果: 視力検査の結果、D-3612の水中での視力は右2.6、左2.4と判定された。その後視覚障害が収まった後、地上で通常の視力検査を行ったところ、右1.0、左0.8と判定された。
分析: D-3612の暴露後、顔を洗っていたD-3612が水中では物がよく見えると証言した為、急遽行われた実験だが、おかげで新たなSCP-1934-JPの異常性の発見に繋がりました。どういう原理かは重ねて実験する必要があると思われます。 - 賀城博士
実験記録SCP-1934-JP -04 - 日付20█/█/█
対象: SCP-1934-JP
実施方法: SCP-1934-JPの通過地点にX線検査機を設置し、SCP-1934-JPのX線写真を撮影する。
結果: 不鮮明なものの、標準的な柴犬の骨格写真の撮影に成功した。その際頸部にマイクロチップを発見。詳細は補遺を参照してください。
分析: SCP-1934-JPは少なくとも視覚的には生物として振る舞うようです。 - 賀城博士
補遺: マイクロチップから発生している情報を解析したところ、動物愛護管理法で推奨されている個体識別用のマイクロチップであることが判明しました。情報を動物ID普及推進会議のデータベースと参照したところ、IDの一致する柴犬が発見されました。飼主████氏の情報の取得にも成功した為、████氏と連絡を取ろうとしましたが、20█/█/█にこの芝犬と外出した以降、共に行方不明であることが判明しました。██町の監視カメラ映像を調査した結果、████氏は██町を散策した後、██渓谷へ通じる山道を通った事が判明しました。その後の映像記録が無いため、████氏は██渓谷でなんらかの事件、事故に巻き込まれた可能性があります。SCP-1934-JPの発生の原因とも関係があると推測されたため、現在██渓谷近郊にて████氏の捜索活動が行われています。
アイテム番号: SCP-1035-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1035-JPの特性上、財団はSCP-1035-JPの収容に至っておりません。
説明: SCP-1035-JPの詳細はわかっていません。現実世界の外部に存在するとされるオブジェクトであり、既存の宇宙論では説明できない場所に存在するとされています。現実世界と同じ三次元の物体ではなく、0次元の存在である為、大きさはありません。時間の概念の外側に存在するとされる為、過去、現在、未来のどの地点に存在するか不明です。SCP-1035-JPは非実体である為、音波、光波などによる観測も不可能です。発生させる現実改変はカント測定器にも反応しない為、現在財団はSCP-1035-JPに関する一切の観測ができていません。
SCP-1035-JPは多様な現実改変を発生させる異常性を保有しているとされており、19██年の██████にも深く関与していると考えられています。 1962年のキューバ危機にも深く関与していると考えられています。
またその異常性により、SCP-1035-JPが引き起こした現実改変を特定する事にも成功していません。
SCP-1035-JPには一定の知性が確認されており、その行動原理は人間社会に混乱、緊張、不和、衝突を規模の大小に関わらず引き起こす事に一貫しており、人間に非常に敵対的です。
実験記録SCP-1035-JP -1 - 日付20██/██/██
対象: SCP-1035-JP
実施方法: SCP-███によって現実改変を起こし、財団に収容された状態にする。
結果: SCP-███は活性化せず、実験終了。
実験記録SCP-1035-JP -2 - 日付20██/██/██
対象: SCP-1035-JP
実施方法: SCP-738に代償を支払い、財団に収容された状態にするよう要求。
結果: そもそも存在しないものを収容できないと主張され、実験終了。
実験記録SCP-1035-JP -3 - 日付20██/██/██
対象: SCP-1035-JP
実施方法: SCP-738にSCP-1035-JPの報告書がいかにして作成されたかを教えるよう要求。
結果: 代償はSCP-738-2に座った者の左手の小指の爪。その後研究者は角が生えた男性と話したと述べ、その男性から、SCP-1035-JPの報告書は19██から20██の間にデータベース上に突如出現した、と教えられたと述べた。
補遺1: ██博士の提言
この報告書の製作日、製作者共に不明です。削除を要請します。 - ██博士
補遺2: ██博士は定期検査にて統合失調症を患っていることが発覚しました。その為発覚以前に作成した書類全ての信憑性が疑われています。
補遺3: ██管理員の提言
[データ削除済]
補遺4: ██管理員によるSCP-███の無断使用が発覚し、██管理員のDクラスへの降格処分された為、██管理員の作成した文章は全て削除されました。
補遺5: SCP-1035-JPを担当した███博士の手記
現在財団はSCP-1035-JPの収容に成功していない。どころか、現在財団はSCP-1035-JPの体のいい玩具にされているような気がする。収容のために手は尽くしているが、どれも糠に釘を打っているような感じすらしない。そもそも、カント測定器にも反応せず、スクラン現実錨で食い止められない現実改変をどうやって食い止めろと言うんだ! 最早どうしようもないと割り切って存在を隠蔽しようにも、なぜかKeterクラスのSCP-1035-JPの報告書には一切の機密指定がかけられていないし、報告書の削除要請をした██博士は統合失調症で発言力を失うし、何か効果的な提言をしようとした██管理員は降格している! これもSCP-1035-JPなのか? アイツのせいなのか? 絶対にそうとは言えない。でも絶対違うとも言えない。何せ我々はアイツの全てが感知できないからだ! 感知できないから何がアイツの仕業で何がアイツの仕業じゃないのかすらわからない! 世の中に起こる事件事故全てがアイツの仕業に見えるし、実はSCP-1035-JPなんてものはそもそも最初からなかったんじゃないかという気すらしてくる!
結局の所言えるのは、財団ではどうあがいても感知できないオブジェクトの存在がSCP-1035-JPとして報告書に挙げられているという事。SCP-1035-JPが未収容となっている限り、私は影も形もないSCP-1035-JPの収容に全力を尽くさなくてはならない。
今、少し恐ろしい考えが湧いた。
今の私のこの考えも、アイツの仕業だったりするのだろうか。
補遺6: 良い手記ですね。報告書に載せてしまいましょう。