アマミのノート

悪夢は海の底

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被験者によって描かれたSCP-XXX-JP-1の概観

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPから1km圏内の海域は環境災害区域に偽装認定され、当該海域の航路を閉鎖した上であらゆる船舶の航海を制限します。被験者を除き、各検証の担当職員は当該海域内で睡眠を行うことがないように注意を払ってください。

現在、SCP-XXX-JP直下の海底調査計画は無期限に凍結されています。計画凍結の経緯に関しては、追記の項目を参照ください。

説明: SCP-XXX-JPは日本海上の北緯██度██分、東経███度██分を中心とした半径1km範囲の海域です。後述する異常性を有する点を除けば、非異常性の周辺海域と比較しても特筆すべき差異は確認されていません。

上空を除く、SCP-XXX-JPの海域上で睡眠を行っている人物(以下、被験者)は、不定期に特定内容の夢を経験します。この時に認識される情景描写は各被験者の周辺環境と概ね一致し、夢の中の物品や構造物は、現実における相似物の位置・状態を反映します。それに加え、夢の中には複数の人物が登場する場合もあり、それらの人物は現実において同時期にSCP-XXX-JPの影響下へと置かれている他の被験者の容姿と完全に一致します。

また、上記の登場人物群とは別に、夢の中にはSCP-XXX-JP-1及びSCP-XXX-JP-2と指定される2種類の存在が登場します。SCP-XXX-JP-1は頭足類(Cephalopoda)と思わしき特徴を有する巨大な海生軟体動物であり、夢の中においては被験者を襲撃する存在として登場します。一方で、SCP-XXX-JP-2はシロナガスクジラ(Balaenoptera musculus)に酷似した生物であり、夢の中ではSCP-XXX-JP-1を襲撃する存在として登場します。

この夢の大まかな内容は、上記2種類の存在を中心として、常に以下のような共通する展開で進行します。

  1. 被験者が夢を見始めてから一定時間経過後、海からSCP-XXX-JP-1が出現する。
  2. SCP-XXX-JP-1は被験者を含む、全ての登場人物を襲撃し、触手を用いて捕縛を行う。
  3. しばらくしてからSCP-XXX-JP-2が出現し、SCP-XXX-JP-1の触手を食い千切り始める。
  4. 全ての登場人物が触手から解放された後、SCP-XXX-JP-2はSCP-XXX-JP-1に噛み付き、海底へと引きずり込む。
  5. 被験者の夢が、平常時の非異常性の内容に変化する。もしくは直後に覚醒する。

夢からの覚醒後、被験者から身体的・精神的な異常性が診断されたケースはありません。また、SCP-XXX-JP上で一度でも異常性が発揮された場合、一定の期間中は異常な夢の経験が新たに発生しなくなることも確認されています。

SCP-XXX-JPは19██/██/██に発生した、旅客船での集団ヒステリー事案を調査した際に発見されました。当該海域に関する更なる調査が行われたものの、周辺海域で発生した特筆すべき事象・現象の記録は存在しませんでした。同時に、水中ソナーを用いた調査も実施されましたが、同海域の海底に異常な生物・構造物等の存在は一切確認できませんでした。

付録: 以下の供述文は、上記の旅客船にてSCP-XXX-JPの影響下へと置かれた民間人による"悪夢"の報告の1例です。

気が付いた時、私は自室のベッドの上で横たわっていました。時計を確認しましたが、眠りに就いてからまだ数分程度しか時間は経っていませんでした。隣のベッドの方を見ると、先ほどまで眠ろうともせずに小説を読み続けていた夫の姿がありませんでした。私は夫を探すため、自室を出ました。

廊下には、私以外にも何人かの旅行客がうろついていました。そのほとんどはパジャマ姿など、着の身着のままでした。その時になって初めて、私は自分がパジャマ姿のまま自室から出てしまったことに気が付きましたが、不思議なことに恥ずかしさは気にはなりませんでした。そうしているうちに、私はデッキへと辿り着きました。

デッキに船員の姿はなく、船はまるで操縦者が不在のままで航海を続けているようでした。そんな時、デッキの反対側から男性の悲鳴が聞こえました。そこで私は、海の底から巨大なイカかタコらしき1本の腕が伸びてきているのを見ました。伸びた腕の1本はデッキのマストに巻き付き、船は海の底の方へと強く引っ張られ、大きく傾きました。海の底からは、ゆっくりと巨大なイカの怪物が浮かび上がって来ていました。

そこでようやく、私を含む、デッキにいた旅行客たちは怪物から逃げようと慌て始めました。それを見た怪物は、新たに腕を海から伸ばして逃げようとする者から優先して捕まえながら、意味不明な叫び声を上げ始めました。次に気が付いた時、私も他の旅行客と同じように怪物の腕に捕まり、宙にぶら下げられている状態でした。怪物の叫び声は続いていましたが、なぜか怪物は海面より上へと出ようとせず、マストに巻き付けた腕で船を繰り返し引っ張り続けるばかりで、私たちが海へと引きずりこまれることもありませんでした。

そんな時、怪物の悲鳴のような声が聞こえたかと思うと、私は捕まえられていた腕ごとデッキへと落下しました。見ると、大きなクジラが怪物の腕を次々と噛み千切っていて、捕まえられていた旅行客を助けていました。全ての旅行客が解放された後、怪物が吐いたスミで真っ黒に染まりながら、クジラは怪物の胴体に噛み付き、そのまま元来た海の底へと引きずって行きました。

この直後、私は自分が自室のベッドの上で横たわっていることに気が付きました。隣のベッドを見ると、そこには小説を読む夫の姿がありました。そこで初めて、自分が今まで夢を見ていたことに気が付きました。


追記: 19██/██/██、上記の水中ソナーによる調査とは別に、潜水による海底調査が試みられました。しかし、潜水が開始されてから5分後、全ての作業員が突如として恐慌状態に陥ったため、調査は一時的に中断されました。回復後、各作業員は恐慌状態の原因に関して、異常な白昼夢の経験を訴えました。以下は、作業員より提出された白昼夢に関する報告書の1例です。

作業中、突如として私は、全身が冷たい何かで覆われる感覚に襲われました。一瞬、何が起こったのか分かりませんでしたが、気付けば自分は潜水服を装備していない状態で、海の真っ只中を漂っている状態でした。

この直後、海底から何かの強い衝撃が届いたかと思うと、クジラが私の方に向かって、真っすぐに突進して来るのが見えました。事前にオブジェクトの概要は知らされていたため、SCP-XXX-JP-2の存在については知っていましたが、その様子は明らかに怒り狂っていて、私に襲い掛かろうとしているようで、報告書に書かれていたような「囚われた人々を助けるクジラ」と同じ存在だとは、その時は思いもしませんでした。

当然、私は海上へ逃げようと足掻きましたが、それよりも早く、クジラは私の身体に噛み付きました。痛みはありませんでしたが、噛み付かれたままの状態で私は海中を振り回され続け、ただ恐怖と吐き気を覚えることしかできませんでした。この状態はしばらく続きましたが、クジラが私を口に咥えたままの形で海上へと出た瞬間、私は白昼夢から醒めました。

後で知りましたが、私が白昼夢を見ていた時間は数秒程度だったようです。また、直前までの嫌に現実的過ぎる感覚も手伝い、私は自分の身に起こったことが理解できずパニックを起こし、後は記録にあるように同僚たちによって引き上げられました。

現在の心境を報告するなら、可能であるならば、再びあの海に潜水することがないことを願います。また意識を失って、夢の中でクジラに襲われるのが恐ろしい、という理由もあります。ですが、それ以上に私は、あの海の底にある何かが、ただ漠然と恐ろしく思えて仕方がないのです。そんなところからやって来るクジラなら尚更恐ろしいものですし、そんなところに連れ戻されるイカはむしろ不憫にも思えます。今、これ以上は考えたくもありません。

各報告より、全ての作業員が経験した白昼夢は上記報告と同様、海中に浮かんでいる場面から始まり、SCP-XXX-JP-2と酷似したクジラに襲撃されて目覚めるという、共通した内容であったことが判明しています。また、各作業員には軽度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の兆候が示され、全員が改めてSCP-XXX-JP内で潜水することを強く拒否しました。

後日、潜水による海底調査が改めて実施されましたが、初回と同様の結果に終わりました。それに加え、海底探査用のドローンを用いた調査も試みられましたが、ドローンより送信された映像のモニタリングを行っていた全てのスタッフが上記の白昼夢を経験するという事態に見舞われ、調査は即座に中止されました。以上の事態を受け、現時点でのSCP-XXX-JP直下の海底調査計画は、無期限に中止されています。


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参加者により撮影されたSCP-XXX-JPの様子

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 全てのSCP-XXX-JP-αはサイト-81██の地下格納室にて、コールドスリープ状態で収容されます。

新たなSCP-XXX-JP発生防止を目的に、日本国内で催される"睡眠"もしくは"夢見"に関するセミナー情報の監視が行われます。それに加え、精神診療科への受診者の内、特定内容を含む相談を行った人物に対する尋問・勾留が適宜実施されます。

説明: SCP-XXX-JPは、不特定多数の人員で構成された"ドリームズ・ゲート・カルト"(Dream's Gate Calt)を自称する集団によって執り行われる、集団心中を伴った一種の儀式的行為です。

多くの場合、SCP-XXX-JPは一般観衆向けに開放された公共施設や会場等で催され、初期段階では単なる"睡眠"や"夢見"に関するセミナーであるかのように見受けられます。その最終段階において参加者全員が死亡し、後述するSCP-XXX-JP-αが生成された時点でSCP-XXX-JPの全手順が完了します。以下は、開始から終了までに行われる儀式内容の一例です。

  1. 立食パーティ形式での参加者同士の挨拶や自己紹介
  2. 参加者同士で"最近見た夢"に関する談話
  3. "世界の終焉"及び"終末を生き延びる策"についての討論
  4. 致死量の睡眠薬が混ぜられたジュースが配られた後に全員で記念撮影
  5. 乾杯の音頭に合わせ、全員が同時に服毒を行う
  6. 参加者全員の死体から異なる身体部位が脱落・剥離し、それらが集合・結合してSCP-XXX-JP-αが1体生成される

服毒が行われる前にSCP-XXX-JPが中止された場合、参加者全員はその場で昏睡します。昏睡からの覚醒後、参加者全員は自分たちが置かれている状態や、SCP-XXX-JPに関する情報を明確に説明することができず、多くの場合は薬物やアルコール等に起因する記憶の喪失であると合理化を図ります。

SCP-XXX-JP-αは上記の通り、SCP-XXX-JPの最終段階で生じる死体を"基"にして生成された人型実体です。身体的には、"基"となった参加者の身体的特徴や持病を引き継ぐ以外の点で異常性は見受けられず、その正確な生成プロセスも依然未解明の状態です。また、基本的には"基"となった参加者の内の1人と概ね一致する記憶・自己同一性を保持していますが、多くの場合は非定型精神病や解離性同一性障害に類似した症状を示し、場合によっては意思疎通が不可能なケースも確認されています。

それに加え、生成から時間が経過するごとにSCP-XXX-JP-αの体温は急激に低下し続け、数時間足らずで意識を完全に喪失します。この最終的な結果として、SCP-XXX-JP-αは一種の冬眠状態となり、栄養補給なしに長期間延命可能となります。なお、財団内で実施された再現検証において、SCP-XXX-JP-αの生成には成功していません。

また、SCP-XXX-JPの主だった進行は、参加者から"主催者"と称される存在(以下、SCP-XXX-JP-β)によって行われると主張されています。しかし、SCP-XXX-JP-βの姿は参加者以外には認識されておらず、一種の限定的な反ミーム的実体であるのか、もしくは集団幻覚に基づいた実在しない存在であるのかは不明です。

SCP-XXX-JPは20██/██/██、京都府京都市████で初めて発生が確認されました。現在までに、"ドリームズ・ゲート・カルト"の結成は日本国内のみで12回発生し、そのうち7回でSCP-XXX-JPが最終段階まで執り行われています。なお、SCP-XXX-JP-αの性質のため、意識喪失までの間に聴取を行えたケースは3回のみに留まっています。このこともあり、当報告書の概要自体も3体のSCP-XXX-JP-αに対する聴取で得られた情報に基づく内容となっています。

更に、現在までに身元が判明しているカルト構成員・参加者の身辺調査において、その大半には特筆すべき異常な経歴やカルト活動に関与する一切の兆候が認められませんでした。それに加え、他の参加者と連絡を行った痕跡も発見されておらず、どのようにして参加者が集まり、SCP-XXX-JPが滞りなく実行されているのかは現時点でも不明です。その一方で、参加者の半数には睡眠障害を理由とした精神診療内科への通院歴が確認されており、医師に対しては共通して"終末的な事象に関する恐怖心"の相談を行っていたことが判明しています。

付録: 以下の記録は、20██/██/██の事象で生成されたSCP-XXX-JP-α-3に対するインタビューからの抜粋です。これら情報の成否に関しては、現在も議論が継続されています。

インタビューログXXX-JP - 日付 20██/██/██

対象: SCP-XXX-JP-α-3

インタビュアー: 阿久津博士

付記: SCP-XXX-JP-α-3はSCP-XXX-JP参加者の1人である、██ ██氏の記憶・自己同一性を有していると推測されます。その一方で、インタビュー中にも他のSCP-XXX-JP-αと同様の症状を示している点に留意してください。

<記録開始, 20██/██/██>

インタビュアー:

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<記録終了, 20██/██/██>

終了報告書:

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