アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 本報告書を除き、SCP-XXX-JPを記録した媒体は全て破棄されます。SCP-XXX-JPに関連すると思われる物流情報を得た場合、直ちに現地調査を行います。SCP-XXX-JPを知る人間にはBクラス記憶処理が行われ、実験に関わったセキュリティクリアランス3以下の職員に対しても同様の措置が行われます。
確保したSCP-XXX-JP-2については標準人型収容室に収容され、日に3度の一般的な食事が与えられますが、一度の事件に対して確保したSCP-XXX-JP-2が多すぎる場合、十分な情報が得られる個体数を残して終了する事が許可されます。
説明:
SCP-XXX-JPは、SCP-XXX-JP-1及びパラフィン製の等身大人形を材料とした人型生体の製造法であり、SCP-XXX-JPによって製造された人型生体はSCP-XXX-JP-2に指定されます。
SCP-XXX-JP-2の製造には、材料として内部に空洞を持つパラフィン製の等身大人形の内部にSCP-XX-JP-1及び10グラム程度の銀を入れ、特定の場所にて保管する事で時間経過とともに目覚めます。
保管場所は神社等、古来より人々から霊的な特性を持つ場所と信じられている場所であり、保管場所とSCP-XXX-JPの質の高さ次第でSCP-XXX-JP-2の目覚めまでが短縮されると予測されており、最短42分間で自律行動を取り始めました。
これまで確認したSCP-XXX-JP-2は外見上人間との違いはほぼ見られず、その身体の質感も自律行動を取り始めた時点で人間と同質のものに変化しています。食事・排泄・睡眠も人間と同様に必要としており、行動のエネルギーも食事によるものだと予測されています。外傷を受けた時の出血は確認されていませんが、その断面組織は人間の物と近似しています。しかし、一定以上の外傷を負うと身体の材質は当初の材料の物へと変化し、また外傷がそれに達せずとも切り離された部位は同様の変化が発生します。
性格や知識量は材料となったSCP-XXX-JP-1に依存しており、知識的な部分を除く個人的記憶を最初から所有するSCP-XXX-JP-2は確認されていません。
SCP-XXX-JPは、███府███市内において19██年頃から出回り始めたとされる「ヨモツミの御守り」の調査において、その出所である████神社内にて目覚め前のSCP-XXX-JP-2が確認された事から発覚しました。
本来の調査対象である「ヨモツミの御守り」については数十個ほどの実在が確認されましたが、
・手に入れてから9日間は不幸を防ぐが、それを越えると不幸を呼び込む。その前に誰かに渡すか神社に返納しなければならない
・御守りの中身はヨモツミさまの身体の一部であり、ヨモツミさまへ祈る気持ちが強い程不幸を防ぐ力も呼び込む力も強くなる
という噂については効果が一切確認されず、中身は乾燥した豚肉でした。他にも異常な性質は見られませんでしたが、その噂の内容からSCP-XXX-JP-1として利用するために製造され、噂が流布された物であると推測されています。
SCP-XXX-JP-1に指定されるのは、人から人へ受け渡され強い感情に曝され続けた物品であり、それが何であるかは問われません。「ヨモツミの御守り」を製作した████神社の神主(事情聴取を行った後、財団監視下の元神社へ復帰済)はこのような物体を「信仰集積物」と呼称しています。多数の人間の感情集積を始点とした異常存在の生成は本件の他にも数例確認されていますが、関連性については明らかになっていません。
████神社では、19██年頃より社会の改善を目的としてSCP-XXX-JPを用いた実体を持つ神の製造を試みていたとする記録が発見されました。「ヨモツミの御守り」の様な物品を世間に流通させることでSCP-XXX-JP-1を調達し、それを用いてSCP-XXX-JP-2を製造しようとしていたもののその試みはこれまで成功せず、意識は曖昧で動作は緩慢な特別な性質を持たないSCP-XXX-JP-2に留まっていたと記録されています。
しかし、調査を行った半年前の時点において特別な能力は持たないものの外見上人間との区別が難しい程のSCP-XXX-JP-2の生産に成功しています。それらに使用されたSCP-XXX-JP-1は一般に流通する紙幣でした。
紙幣をSCP-XXX-JP-1として生産されたSCP-XXX-JP-2は10体程既に社会に解放しており、以降は当初の方法によるSCP-XXX-JP-2生産を試みていると████神社神主は口述しています。
SCP-XXX-JP-2を生産していた████神社神主の口述要約
私は先代から使命と技術を受け継ぎ、影から世の中の理不尽を減らし社会水準を向上させるためにこの研究を続けています。未だ世の護り手たる神の製造には成功していませんが、その過程で偶然にも優れた人材を生み出す事に成功しました。
彼らは豊富な知識と熟達した思考を持ち、神社に籠っていた私よりもずっと社会の構造について詳しいようでした。彼らが社会に出て活躍したならば、この世は少しでも良くなるでしょう。そう思い、人々の支えになると約束してもらった後に彼らを社会へと送り出しました。
補遺:
19██年██月█日、大手専門商社に対しSCP-XXX-JP-2の材料とされる物品の大量発注が確認された事から、発注者である█████有限会社に対し調査が行われました。
その結果、労働者の監禁を含む明らかな違法形態である事と、経営者から労働者までの█████有限会社に関わる全ての人物がSCP-XXX-JP-2であり、純粋な人間は存在しなかった事が明らかになりました。
収容プロトコルに基づき全てのSCP-XXX-JP-2は収容され、█████有限会社から他者に対して行われていた定期的な寄付契約については全て打ち切られました。
補遺2:
低コストで調達が可能であり、家族も戸籍も存在しない人間に極めて近い存在として、SCP-XXX-JP-2のDクラスとしての利用について適性を調査中です。異常存在が人間に及ぼす影響を調べる目的としては不適格である可能性が高いですが、異常な空間等に対する探索目的であれば十分に用件を達する適性を持っていると予想されています。
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アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが確認された場合、フロント企業およびNPO法人から派遣された調査員として同居する家族に支援・指示を行い現状維持を徹底します。発見されたSCP-XXX-JPに対して調査・記録を行いますが、対象の健康状態に影響を及ぼす可能性があるため、状況を鑑みて個別に頻度を調整してください。
説明: SCP-XXX-JPは、異常性を持っていると考えられる居室1です。SCP-XXX-JPは、一般的な居住家屋から発生するものであり、その発生プロセスは解明されていません。しかし、その居室を少なくとも寝室として使用している人間がいる事が発生の条件の一つであると推測されています。
SCP-XXX-JPが発生した場合、その居室を使用している人間(以下、居住者と表記)は一日のほぼ全てをSCP-XXX-JP内部で過ごすようになり、外部に出る事を極端に忌避します。食事や排泄等、どうしてもその必要があると居住者が判断した場合にのみ外部に出ます。確保済のSCP-XXX-JPの観察結果から、居住者の生活は起きている間2の活動に異常な点は確認されませんでした。
SCP-XXX-JP内に侵入しようとする人間がいた場合居住者はそれを妨害し、僅かでも侵入された場合、居住者は嫌悪感を示しながら侵入者を追い出します。また、居住者に対してインタビューを試みましたが、聞き取れる声での発言はほぼ得られず、親族が会話を試みた場合も同様でした。筆談等の方法に関しても居住者は非常に消極的であり、特筆すべき情報は得られませんでした。3
SCP-XXX-JPを構成している部屋材および家具・物品の内部には、居住者の同一の遺伝子を持つ神経・血管が通っており4、それにより物品は簡易的に固定されています。居住者はこれらと直接連続はしていませんが、SCP-XXX-JPに対する刺激を正確に感知します。SCP-XXX-JP内部の物品を居住者の同意なく強引に移動させるとその物品に通っていた血管が裂けて出血が発生し、露出した神経に対する刺激は居住者に強烈な苦痛として伝達されます。この神経等は居住者がよく使用する物品ほど濃密に通っており、その物品を移動・破壊した時の出血と苦痛も激しくなります。
最初のSCP-XXX-JPの報告事例は、██府██市で起きた変死事例です。事件を直接目撃した両親より聞き取りを行ったところ、3年半外に出て来なくなった長男の自室から無理にパソコンを撤去した際、パソコンからの激しい出血と同時に長男が痙攣して動かなくなり、やがて部屋全体が一気に朽ちてしまったと証言しました。現在14件のSCP-XXX-JPの事例5が確認されていますが、その発生はいずれも██府██市を中心とした半径30kmの範囲内であり、居住者の家族によれば居住者にその症状が始まった時期は20██年█月頃であるという話でほぼ一致しています。現在、20██年█月に██府██市でSCP-XXX-JPの発生に関わる事件があったと推測して調査を行っていますが、未だ有力な情報は得られていません。
最初の報告事例において死亡した居住者の両親には既に記憶処理が行われていますが、その前のインタビューにおいて「息子は社会を怖がり、現実から逃げていただけだと思っていた。機器から血が出て長男が倒れ、部屋が朽ちた瞬間にそれが根本的な間違いだったと気づいた」と述べています。
また、当該居住者の使用していたパソコンから、インターネット上の掲示板に自身の現状を相談したものとみられるログが発見されました。以下、その掲示板の抜粋文であり、249番および同IDの書き込みが居住者のものです。
これは現在、居住者がSCP-XXX-JPに関する事を外部に発信した唯一の記録です。
タイトル:『働き出して二ヶ月だけどもうやめたい』 ▼
▽249 NAME 20██/█/██ ID:FuD40005a
でも1は社会復帰してる分立派だよ。俺のが状況としてはやばいと思う。
親もなんか明らかに俺のせいで苛立ってるような雰囲気する。
早く自立しなきゃって決意したんだけど、やっぱり怖さも感じる
復帰できた奴ってその前の段階でやってた事ってある?▽250 NAME 20██/█/██ ID:█████████
とりあえず早起きして外出て日光浴びとけや
▽251 NAME 20██/█/██ ID:█████████
家の周りの散歩でもいいから外には出るべき
あと少しでも人と話すといいぞ 店員に注文するとかそんなんでも▽252 NAME 20██/█/██ ID:FuD40005a
外に出るのはまだちょっと無理
部屋から出ない範囲でできることない?▽253 NAME 20██/█/██ ID:█████████
一歩目踏み出せないなら永久に無理だぞ
1を立派だと思ってるなら見習えよ、有言不実行とか屑の極み▽254 NAME 20██/█/██ ID:RQu83217a
もしかして食い物の味が分からないのに食欲増したりしてない?
▽255 NAME 20██/█/██ ID:FuD40005a
»254
何で分かった?▽256 NAME 20██/█/██ ID:RQu83217a
そうか 来世に期待しような
▽257 NAME 20██/█/██ ID:█████████
無駄飯食らいは死ね
以降、居住者の書き込みはありません。
254番、及び同IDの書き込みについて調査を行った結果、██府██町に存在する家屋からの書き込みである事が判明しました。当該家屋の調査の結果、二階の一室を形成する部屋材が扉を含めて蝋のような質感の白く固い物質で塗り固められており、その物質には血管と神経が通っていることも確認されました。
透視検査によると内部は空洞ですが、溜まっている大量の液体の上に細胞の塊が浮かんでいる状態であると観測されています。これらは時間と共に、元から部屋内部にあったとされる物品と混ざるように変異し続けており、現在も経過観察中です。
当該家屋で生活していた居住者の家族は行方不明です。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの100m周辺は部外者の立ち入りを禁止し、18箇所に振動センサーを設置した高さ3mのフェンスによって隔離されます。侵入者を検知した場合、直ちに排除及び記憶処理を行ってください。
SCP-XXX-JPの境界の外側四隅には、直径・高さともに10cm程度の円錐型に形状を整えた塩を設置してください。また、14日間隔でSCP-XXX-JP内に塩300gの散布が行われます。
常時2箇所に設置された監視カメラによって状態が監視されますが、SCP-XXX-JPの範囲の増大が確認された場合、臨時に塩の散布を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは、██県██郡██村に存在する直径68mの円形の更地であり、その中央には一人分のものとみられる人間の白骨が半分地面に埋まる形で存在しています。
SCP-XXX-JP内部は一切の植物が自生せず、それにより目視によってSCP-XXX-JPの範囲を確認することが可能です。また、プロトコルが実施されなかった場合、SCP-XXX-JPの範囲が拡大し、その範囲に自生していた植物は同質量の土へ変化することが確認されています。
SCP-XXX-JP内に接近すると、範囲中央が震源であると思われる小さな地響きが繰り返し発生します。また範囲内に侵入した場合、前述の地響きは停止し約3秒後にSCP-XXX-JP中央方向から衝撃が発生します。実験によって、その際に侵入物体が受ける撃力は10kN・s前後であるという結果が算出されましたが、侵入した物体がSCP-XXX-JP内に留まっている限り衝撃は発生し続け、繰り返されるほどに大きくなります。その撃力の上限は判明していません。
十分な強度と重量を持った車両等で強引に侵入する事は可能ですが、中央付近に到達しても衝撃の増大以外に特筆すべき現象は発生しません。
SCP-XXX-JPは、蒐集院より委託されたオブジェクトの1つです。蒐集院がSCP-XXX-JPを発見した当時、SCP-XXX-JPは村内で『悪霊の縄張り』と呼ばれていました。その場所には基本的に住民が近寄ることはありませんでしたが、範囲拡大を防ぐために村内で独自に制定された対処法が村人たちによって実施されていました。神道に基づく一連の儀式を半年に一度行うというその手順は蒐集院にそのまま引き継がれましたが、財団がそれを継承した後、手順の一段階目を行った時点でも十分な効果が現れることが発見され、大幅に簡略化された現在の収容プロトコルに至りました。
現在██村は廃村となり、SCP-XXX-JPについて知る住民およびその子孫はいないものと考えられています。しかし、██村からは一部資料が発見され、当時の儀式内容と被害者の記録が確認できました。その中で、当初は現在よりも範囲が大幅に小さかった6という記述が残されていますが、蒐集院が発見した時点では現在とほぼ同等の範囲まで拡大していたと記録されています。範囲が拡大した時期・原因については明確な資料が発見されていません。
以下、Dクラスを用いた侵入実験記録です。
実験記録 :XXX-1
被験者 :D-40991 男性 31歳 長身
実験概要 :SCP-XXX-JPの性質を伝えず、範囲内に侵入するように指示。実験結果 :侵入の後、衝撃の発生により範囲外に吹き飛ばされる。外傷性ショックにより死亡。
実験記録 :XXX-2
被験者 :D-10847 女性 37歳 平均的体格
実験概要 :SCP-XXX-JPの性質を伝え、範囲内に侵入するように指示。実験結果 :D-10847は範囲内に侵入できないと主張。強制的に侵入させようと試みるも、不可視の壁により阻まれた。
実験記録 :XXX-3
被験者 :D-27850 男性 25歳 平均的体格 耐衝撃強化服を着用
実験概要 :SCP-XXX-JPの性質を伝えず、範囲内に侵入するように指示。実験結果 :侵入の後、衝撃の発生により範囲外に吹き飛ばされる。
D-27850はその瞬間、哮るような、幾重にも重なった声を聞いたと証言。
実験記録XXX-3においてD-27850が主張した声について、現場に居た他の職員は一切認識できませんでした。
しかし、強化服に内蔵された録画機器の映像にはその哮るような声と思われる音声が入っており、SCP-XXX-JP内部でのみ認識できる音声ではないかと推測されています。
以下、当該映像記録です。
映像記録:XXX-3
[映像開始]
[SCP-XXX-JPを範囲外から見ており、地響きの音が繰り返される]
D-27850: なんだよ、この巨人が歩いてるみたいな音は……。
D-27850: この先に進むのか? あの、骨の方まで?
[境界を見た後、離れた場所で待機している研究員の方へ振り向く]
D-27850: 分かったよ、行くよ。
[範囲内に足を踏み入れ、地響きが止む]
D-27850: クソ、この服重いな……。あ、ん?
不明: [不明な哮り声]
D-27850: んぐっ!
[衝撃音とともに空と地面が交互に映り、空を向いたまま停止する][映像終了]
その後、D-27850を用いて再度同様の実験が2度繰り返されましたが、いずれの場合もSCP-XXX-JPから弾き出される直前に不明な音声が記録されました。この音声は人間の男声に近いと考えられましたが、その瞬間に現場に居た他の職員は一切声を出していませんでした。また、その音声はおよそ十人以上の声が重なっており、ノイズに近いものとなっていました。
しかし、不明な音声データの精密な解析によって一つ一つの音声分離を行ったところ、それらはおそらく同一人物のものであり、また「どすこい」という声の連呼である事が明らかになりました。
.
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(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんおわんお!
(U^ω^): わんわんわんわんわんわんわんわんわんわん!! わんわんわんわんわんわんわん! わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん、わんわんわんわんわんわんわんわんわん、わんわん!! わんわんわんわんわんわんわんわん、わんわんわんわんわんわんわんわん、わんわん(わんわんわんわんわんわんわん)わんわんわんわんわんわんわんわんわん! わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん!
わんわんわんわんわんわん! わんわんわんわんわんわん、わんわんわんわんわんわんわん、わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん、わんわん、わんわん、わんわん、わんわん、わんわんわんわん! わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん! わんわんわんわんわんわんわんわんわんわん、わんわんわんわんわんわんわんわんわん!!
(U^ω^)わんわんお!
(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんわんお!
(U^ω^): わんわんおっつってんだろ!!!
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の標準的Safeクラス物品収容ロッカーへ、施錠された専用ケースに入れた状態で収容されます。
SCP-XXX-JPを用いた実験を行う際はその内容を担当博士に事前報告し、承認を得た上で行ってください。実験に使用されたDクラス職員に関しては、任期が終了するまで定期的な聞き取り調査が行われます。
説明: SCP-XXX-JPは、███████社製"██████████(カラー:ホワイト)"に酷似したLED机上照明であり、後述する異常性を除いた主な差異として、製品型番などの表記が一切為されていない事、アームの可動域が大幅に広くなっている事が挙げられます。
通常製品と同様に、プラグを電源に接続してスイッチを切り替えることでLEDが点灯します。基本的には通常製品と同様に白色の発光が見られますが、LEDの光が届く中の一定範囲(範囲角度150°・LEDを中心に約6m、以下効果範囲と呼称)の中に一人の人間がいた場合、その光はやや青みがかった色に変わります。
効果範囲内にいる人間(以下被験者と呼称)は外部からの刺激に対しての反応が鈍くなり、効果範囲から外されるか照明が切られるまで放心状態が続きます。その状態の被験者に対して、任意の人間の過去の体験(以下、SCP-XXX-JP-1と指定)について話す事で SCP-XXX-JPの異常性が発揮されます。SCP-XXX-JP-1について一定の詳細な情報が語られた時点で異常性が発揮されると考えられていますが、その正確な基準は不明です。
SCP-XXX-JPの異常性が発揮された後、被験者はSCP-XXX-JP-1が自分の記憶であると思い込むようになり、それに付随して語られていないはずの情報を認識します。
また、その後被験者の本来の過去の記憶は、SCP-XXX-JP-1の時期の前後から徐々に喪失します。記憶喪失の速度は遅く、一ヶ月が経過した被験者は自発的に記憶の喪失に気づく事はありませんでした。但し、SCP-XXX-JP-1に関して何らかの矛盾を指摘した場合、記憶の喪失は急速に行われ、二週間後にSCP-XXX-JP-1を除く自分の記憶を全て失いました。
この時、SCP-XXX-JP-1の本来の体験者、及びそれを被験者に語った人間に対する影響は確認されませんでした。
実験の結果、SCP-XXX-JPによって任意の人間に特定の技能を習得させることは難しく7、また、誰の体験にも基づかない架空の体験談をSCP-XXX-JP-1として伝えた場合はSCP-XXX-JPの異常性は発揮されない事、最終的に死亡した人間の記録をSCP-XXX-JP-1として伝えた場合は被験者は死亡すること8が判明しています。
SCP-XXX-JPは19██/██/██、██県警察███警察署に潜入していたエージェントが刑事部捜査第一課内で不審な噂を耳にしたことから、███警察署内第5取調室より回収しました。第5取調室のみ天井の蛍光灯が切れて交換されないまま放置されており、照明としてSCP-XXX-JPが使用されていたものと考えられます。
███警察署内の備品購入履歴を調査しましたが、記録が一部消失しており、SCP-XXX-JPの由来は不明です。
刑事部捜査第一課および留置場管理課を中心として、"第5取調室で取り調べを受けた容疑者は従順になり、自身の犯行を認める"という一定の認識が持たれており、使用される頻度は少なかったとされています。一部の署員の判断によって第5取調室が使用されることになっていたと見られていますが、SCP-XXX-JPの性質を知っている署員がどれだけいたのかは正確には判明していません。
また過去20年間に、捜査第一課および関係する部署の中で、記憶障害による退職者が█人発生しています。
回収後、SCP-XXX-JPの性質を十分に認識していたと見られる████課長補佐にインタビューを行いました。
インタビューログ - SCP-XXX-JP-001
対象: ████課長補佐
インタビュアー: 谷森研究員<録音開始, [19██/██/██]>
谷森研究員: 貴方がたは、SCP-XXX-JP……あの異常な卓上照明の性質について知っていたのですか?
████課長補佐: はい、私たちに必要な範囲の知識は、前任者から話を聞いていました。
谷森研究員: それで、容疑者に対して取り調べを行う時に使っていたのですね?████課長補佐: そうですね。あれがあると、手間が省けます。できるだけ面倒は無い方が良いので。
谷森研究員: 貴方は、それが無実の人間を陥れる事だと理解していますか?[4秒間沈黙]
[████課長補佐のため息]
████課長補佐: ええ、ええ。だから何ですか。無実であっても、皆無害ではなかった。しかるべき処置をしたまでです。
████課長補佐: 隔離すべき人間を隔離した。治安を保つとはそういう事です。
[11秒間沈黙]
████課長補佐: で、あの照明はもう戻ってこないわけですか。谷森研究員: 当然です。あのような存在を隔離するのが我々の任務です。
████課長補佐: では、今後はあの照明無しでやるしかないですね。あれ無しだと手間がかかりますが。
████課長補佐: そちらの任務は異常な物品の隔離でしたよね。もうこの場所にそのような物はありませんよ。
<記録終了>
実験中、一人のDクラスがSCP-XXX-JPを見た事があると発言しました。そのDクラス職員について逮捕経緯の調査が行われた結果、当該Dクラス職員は██県警察によって逮捕されていた事が判明しました。
当該Dクラス職員の犯行についての立証は自供を中心とした根拠によって行われていましたが、内容に不審な点は見当たりませんでした。しかし、捜査記録を調査した所、責任者として現████課長補佐の名前が表記されていました。
複数の署員に対して尋問を行った結果、以前より解決困難となった事件に対しSCP-XXX-JPを用いて容疑者の記憶に干渉したうえで自白させていた事は明らかになりましたが、オブジェクトの由来については退職済みの職員や外部の組織への言及もあり明確にはならず、現在も調査中です。
また、過去にSCP-XXX-JPの影響により逮捕へと至った人物を調査した結果、その中からDクラス職員として財団に雇用された人物が██名存在する事が判明しました。その内██名は既に終了しており、生存中の当該Dクラスに対しての処遇については保留とされています。
SCP-XXX-JP収容後も███警察署に対する潜入捜査を続行した結果、犯行を否認していた容疑者が大人しく犯行を認めた事例が引き続き確認された事からSCP-XXX-JPの他個体の存在が疑われました。しかし、これらは容疑者に対する長期的な監禁および高圧的な取り調べが行われた事による精神の摩耗によるものであり、他に異常なオブジェクトの存在は確認できませんでした。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の専用収容チャンバーに保存されています。収容チャンバーの壁に20枚の手のひらを模ったマークが印刷されている紙片を貼り、毎日一度それらのマークを確認してください。それらの内一枚にでも変化が発生した場合、Dクラスを用いて貼り換えおよび変化した紙片の処分処置が行われます。また、サイト-81██では、手の形を模ったシンボルマークの使用が禁止されており、またそれらが印刷された物品も持ち込みが禁止されています。
未収容のSCP-XXX-JPが発見された場合、直ちに同専用収容チャンバーに収容して下さい。
説明: SCP-XXX-JPは、高さ1.8mの中指だけを立てた手を模った像であり、その主な材質はパラフィンで特別な性質は確認されていません。また、台座の部分には小さく「EVERYBODY,FUCK YOU No.3」と刻まれています。
SCP-XXX-JPが存在する地点から一定の範囲の中(最大でSCP-XXX-JPから6.8km離れた地点での発生を確認)において、4日~38日の不定期間隔でSCP-XXX-JP-1が発生します。SCP-XXX-JP-1は中指を立てた手を模ったシンボルマークであり、その他の手の形を模ったシンボルマークから変化する形で発生します。近い距離に手の形を模ったシンボルマークが存在しない場合に何が起こるのかを検証する実験は行われていません。
任意の人間(以下、被検体と呼称)がSCP-XXX-JP-1を近距離(約4~5メートル以内)から視認すると、極めて強い怒りの感情と共に記憶の混乱が発生します。これらは一時的なものであり、視認から八週間が経過した頃には通常の人間と比較して目に見えるほどの差異は無くなります。また、被検体にAクラス記憶処理を施す事でも症状は完治します。また、被検体に影響を与えたSCP-XXX-JP-1はその時点で異常性を失い、他の人物が視認しても影響を受けなくなります。
2011年9月頃より急増した████市における傷害事件の調査の中で、SCP-XXX-JP-1が発見され、その後██駅前のSCP-XXX-JP本体の特定に至りました。近隣住民にはSCP-XXX-JPは気づいたら出現していた、という認識しかなく、その出現の瞬間についての情報は得られませんでした。
サイト-81██への収容後、一度のみ研究員がSCP-XXX-JP-1を視認してしまい、他の職員に対する暴力を振るう事故(インシデント-XXX)が発生し、拘束して記憶処理を受ける前にインタビューが行われました。
インシデント-XXXにおいてSCP-XXX=JP-1を視認した風間研究員へのインタビュー記録。
インタビューログ - SCP-XXX-JP-001
対象: 風間研究員
インタビュアー: 釘村博士
付記: 風間研究員は、車椅子に拘束されている状態でインタビューを受けています。<録音開始, [2012/4/11]>
[風間研究員が体を揺らしてもがき続ける]
風間研究員: クソ! 放せよ! そんなに俺が気に入らねえのか!釘村博士: 何をそんなに怒ってるんだ?
風間研究員: 何を、って。[声が大きくなる] この扱いだよ! 自分でやっておいて何を聞いてやがるんだ! ふざけやがって!風間研究員: 来る日も来る日も危ない事ばっかりやらせやがって! 俺が████一家の奴らを殺したからって、じゃあ俺に何させてもいいよなってか! お前らは安全なところでいい気なもんだな!
釘村博士: 君が何をしたって?
風間研究員: お前が話せつったんだろうが! 何で聞いてねえんだよ!
釘村博士: 落ち着いて、ゆっくり説明してくれ。
風間研究員: 俺は理不尽な目にあってばっかりだ! 俺を殺しやがって! なんで俺だけこんな目にあわなきゃなんねえんだ! 全員グルになって俺を馬鹿にしてるんだろ! 博士、アンタもだ!
釘村博士: 私は君を馬鹿にしているつもりはない。
風間研究員: 嘘を言うんじゃねえ、[激しい罵倒]!
釘村博士: ……インタビューはここで終了します。
風間研究員: [罵倒を繰り返す]
<記録終了>
風間研究員は勤務態度良好な職員であり、殺人に関わった経緯はありません。
調査により、サイト-81██にいる人間の中に指定暴力団███会直系二次団体████一家の構成員の殺人を行った経歴を持つD-40412の存在が明らかになりました。何らかの関連性があるとされてD-40412インタビューが行われましたが、自分の今の境遇に不満を持っていること以外は特に強い関連性のある事柄は確認されませんでした。これらの事からSCP-XXX-JP-1の目視による影響は、一定範囲内にいる人間の強い不満感を伴う記憶を取り込むものであると推測されています。
また、「俺を殺しやがって」という発言に関しては、誰の記憶であるかを特定することはできませんでした。記憶の混乱による言い間違いか、あるいはサイト内に霊的実体が存在していることが可能性として挙げられます。
この後風間研究員にはクラスA記憶処理が行われ、その後問題なく職務に復帰しました。
D-40412のものと思われる記憶の復活や暴力的な言動などはその後一切確認されていません。
風間研究員はSCP-XXX-JPの担当ではなく、専用収容チャンバーに立ち入ったこともありません。
しかし、風間研究員が資料を閲覧していたPCの録画記録を調査した結果、ハイパーリンクに重ねた際のマウスカーソルがSCP-XXX-JP-1に変化していた事が明らかになりました。以降、サイト-81██の全てのPCにおけるマウスカーソルの設定変更が収容プロトコルに加えられることになりました。
アイテム番号: SCP-730-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:SCP-730-JPはサイト81██の、20mm鉛板で内壁を補強した第8隔離収容室に保管されます。
SCP-730-JP群の動向は常に監視カメラによって監視し、画像認識による追跡で各個体を識別します。
各個体に何らかの変化が発生した場合はその記録を行ってください。
新たなSCP-730-JP個体が第8隔離収容室付近で確認された場合、直ちに管理職員への報告を行い、後に収容してください。
その他の場所で発見された場合、箱を被せて密閉することにより移送が可能となるので、その状態でサイト81██第8隔離収容室へ移送してください。
説明: SCP-730-JPは、あらゆる物体表面上に発生する、足跡の形をした黒色液体の出現及び消失現象です。
SCP-730-JPは、標準的な男性の大きさの右足跡の形と左足跡の形でそれぞれ一定距離内(最長1.22m)で交互に出現し、最後に出現した個体を除き数秒間(最短4秒、最長11秒)で消失します。
この特性のため、SCP-730-JPの物体的性質に関しては黒色の流動体である事、そして密度や粘性などのおおかまかな値しか判明していません。
流動体の出現量は不規則であり、厚みが確認できるだけの量が出現することもあれば、かろうじて足跡を淡く形成できるだけの量しか出現しないこともあります。
SCP-730-JPはその外見的特徴から、人型実体が歩行するに伴い発生した足跡であるように見えます。しかし、予想された人型実体は一切観測されていません。
また人間であれば入り込めないような狭い隙間にも移動する事が可能です。この事から、黒色液体の出現及び消失現象そのものをSCP-730-JPとして扱います。
以上、人型実体一個体の歩行に相当するSCP-730-JPを1組とし、現在財団は37組のSCP-730-JPを収容しています。(SCP-730-JP-1~SCP-730-JP-37)
最初の収容個体であるSCP-730-JP-1は、2013年2月7日、██府██市の廃マンションの中で学生によって発見され、関係者へ記憶処理を行った後に移送及び収容されました。
SCP-730-JP-2以降は全て、自ら同収容室へ近づいてきたところを収容されたものです。
どこから来たのかは正確に特定できていませんが、サイト外部で発見された個体がやってきた方向から、大部分は██府██市近辺に存在していたと予想されています。
SCP-730-JP-2以降の個体は収容までの間は明らかにサイト81██第8隔離収容室に向かって移動していましたが、収容以後はSCP-730-JP-1同様に収容室内をうろつくように移動するのみであり、
SCP-730-JP同士が接触しても特に何の反応も見られませんでした。
SCP-730-JP各個体は初期は全て同じ足形として見られていますが、不定期に形状変化が発生します。
形状については、撮影した画像から輪郭を抽出し、平均化したものを記録します。
記録01 SCP-730-JP-3 両足、第一指の肥大化
( 2013/7/11 AM10:09 SCP-730-JP収容個体数:7 )
記録02 SCP-730-JP-6 右足側のみ、第三指の消失
( 2013/9/25 AM 3:28 SCP-730-JP収容個体数:7 )
記録03 SCP-730-JP-4 両足、踵にあたる部位の消失
( 2014/1/6 PM 8:56 SCP-730-JP収容個体数:9 )
記録04 SCP-730-JP-8 両足、指の増加及び親指の尖り
( 2014/3/8 AM 11:53 SCP-730-JP収容個体数:11 )
記録05 SCP-730-JP-11 右足側と左足側が分散、別行動を取り始める。
以降、SCP-730-JP-11-A、SCP-730-JP-11-Bとして記録。
( 2014/7/10 PM 2:30 SCP-730-JP収容個体数:15 )
記録06 SCP-730-JP-7 両足、指の増加
( 2014/10/21 PM 4:12 SCP-730-JP収容個体数:16 )
記録07 SCP-730-JP-13 左足、踵部位の変形
( 2014/11/13 PM 10:49 SCP-730-JP収容個体数:16 )
記録08 SCP-730-JP-8 前述の変化に加え、さらなる指の増加、
踵の尖り、第三指~第四指の尖り
( 2015/2/1 AM 3:01 SCP-730-JP収容個体数:18 )
記録09 SCP-730-JP-10 両足、土踏まずの大幅な減少
( 2015/2/23 AM 7:48 SCP-730-JP収容個体数:18 )
記録10 SCP-730-JP-11-A 全ての指の消失
( 2015/6/9 AM 2:18 SCP-730-JP収容個体数:21 )
記録11 SCP-730-JP-20 全ての指の位置の変動及び微細な形状変化
( 2015/7/31 PM 5:25 SCP-730-JP収容個体数:22 )
記録12 SCP-730-JP-8 前述の変化に加え、さらなる指の増加、第二指~第五指の肥大化
( 2015/9/20 AM 11:47 SCP-730-JP収容個体数:26 )
記録13 SCP-730-JP-7 前述の変化に加え、さらなる指の増加
( 2015/10/3 PM 6:44 SCP-730-JP収容個体数:28 )
記録14 SCP-730-JP-29 両足、踵部位の大幅な縮小及び指の増加
( 2015/12/23 PM 10:31 SCP-730-JP収容個体数:31 )
記録15 SCP-730-JP-3 前述の変化に加え、第二指の肥大化、及び第一指からの副次的な器官の生成
( 2016/3/17 AM11:23 SCP-730-JP収容個体数:35 )
記録16 SCP-730-JP-22 両足、指の増加
( 2016/3/21 PM 7:10 SCP-730-JP収容個体数:35 )
記録17 SCP-730-JP-14 右足、前方半分の二股化
( 2016/5/4 PM 1:12 SCP-730-JP収容個体数:35 )
記録18 SCP-730-JP-32 両足、全ての指の消失
( 2016/7/26 PM 4:06 SCP-730-JP収容個体数:37 )
記録19 SCP-730-JP-24 手の形へと変化
( 2016/11/7 PM 10:38 SCP-730-JP収容個体数:37 )
SCP-730-JP-24が手の形へと変化し、そこに指紋らしき模様が確認された事から、接写画像をもとに指紋の鑑定を行う事が提案されました。
淡く形成されたSCP-730-JP-24から採取した指紋は警視庁の所有する指紋照合データベースにより照会され、
その結果、███刑務所に服役中の████████という名の34歳男性(以降、SCP-730-JP-αと呼称)の指紋と一致することが判明しました。
SCP-730-JP-αは、2012年9月より金銭トラブルを発端とした殺人の罪によって懲役12年の判決を受けています。
裁判の記録によると、SCP-730-JP-αは職場の同僚に頼まれて金10万を貸したものの、借用書で取り決めた期限の月に返済を求めた所「自筆した氏名は最初からよく似た別の漢字を使用した偽りの名であり、そもそも借用書が無効なものである」と主張され激昂、何度も殴打したと供述しています。
インタビューログ - SCP-730-JP-001
対象: SCP-730-JP-α
インタビュアー: 天崎研究員
付記: インタビューは███刑務所の面会室で行われました。
SCP-730-JP-αは受刑者制限区分において面会には刑務官立会が必要な第3種に指定されていますが、
財団からの要請により立会無しの面会を行いました。
オブジェクトとの関連性が不明であるため、オブジェクトの説明は行っておりません。<録音開始, [2017/1/9]>
天崎研究員: こんにちは、████████さん。
SCP-730-JP-α: あー……失礼ですが、貴方は誰だろう。申し訳ないが、名前を思い出せない。
天崎研究員: 初めまして、と言うべきでしたね。私は天崎と申します。詳しくはお伝えできませんが、最近起こった事に関連して貴方にはいくつかお伺いしたい事がありまして。
SCP-730-JP-α: そうですか。答えられる事なら答えますが、看守がいないのはどうしてでしょう?私はそういう扱いじゃないはずだ。
天崎研究員: それは答えられません。
SCP-730-JP-α: 構いませんが。
[4秒間沈黙]
天崎研究員: それでは████████さん、2013年頃。つまり貴方が事件を起こしてここに来たあたりの時期から……
SCP-730-JP-α: 違う。違う! [遮蔽板に顔を近づける] 俺じゃないんだ! ██████を殺したのは俺じゃ……
[5秒間沈黙]
天崎研究員: それは……ええ、貴方は事件を起こしていないという事ですか? 冤罪であると。
SCP-730-JP-α: あ、いや……
SCP-730-JP-α: すまない。……ああ、その……。殺したのは俺ですよ。間違いない。
天崎研究員: 大丈夫ですか?
SCP-730-JP-α: ええ、大丈夫です……。
[SCP-730-JP-αの状態を鑑みて、小休止を挟む]
天崎研究員: それでは、その。2013年頃から今までの間についてですが。身の回りに不自然な出来事や何らかの変化が起こったりはしていませんか?
SCP-730-JP-α: 不自然な事とは?
天崎研究員: 何でも構いません、そこに何もないのに体に触れた感覚があるとか、身体が勝手に動くとか。あるいはありえない物が見えるとか。
SCP-730-JP-α: ……ありませんね。
天崎研究員: …………
天崎研究員: 何もですか?
SCP-730-JP-α: ……何も、そのような事は。SCP-730-JP-α: 確かに私は一時期、精神的に良くない状態になっていた事はありますが、今は回復していますし、その時期の間にも幻覚や幻聴の類はありませんでした。
天崎研究員: 心療治療を受けていたという事ですか?
SCP-730-JP-α: ええ……まあ。
天崎研究員: では、その内容についてお願いします。
SCP-730-JP-α: ええ、あれからの私は、その……
[11秒間沈黙]
SCP-730-JP-α: ……事件の後からずっと、あの時の事が離れなかったんです。全ての実感は、我に返った後からやってきました。
SCP-730-JP-α: 掴んだ植木鉢で思い切り殴りつけた時の衝撃と、人間の骨が砕けて曲がる手ごたえ。今でもその感覚は覚えています。一人の人間として動いていた相手が、十秒にも満たない自分の動作で壊れた物体になってしまった。加害者の立場でこんな事を言うのは許されないとは分かっているのですが、自分のやったことを思い返す度に恐ろさに脅え続けました。
SCP-730-JP-α: 自分とは違う、常識の外にある何かが自分に憑りついて、それであんな凶行に走ったんだ……。いつの間にかそれが真実だと信じるようになっていました。惨めな事ですが、自分の行いの責任に耐えられなくて。いえ、今でもそう考えてしまう事があります。人間一人の人生を終わらせるなんて、同じ人間である自分がするはずないって。
天崎研究員: 今では、自分が行ったと認識しているのですね? 心療治療によって。
SCP-730-JP-α: ……はい、間違いありません。しかし、不意に事件の事について触れられると、その思いが蘇ってしまうんです。
[13秒間沈黙]
SCP-730-JP-α: 本当に何かが憑りついていたのが真実なら、どれだけ私は楽になれるか。……すいません、つい。
天崎研究員: ……服役中はずっとその事を考え続けていたという事ですか?
SCP-730-JP-α: はい。……もし、何かが私の中にいるのなら、どうにかしてそれを隔離して、絶対に出られないような場所に閉じ込めてしまいたい。人間を閉じ込めるための刑務所ではなく、もっと化け物でもなんでも閉じ込めてしまえるような強固で絶対的な施設に。そのうちどんどん凶暴化し、手に負えないようになる何かがいる気がするんです。それらをどうにかして封じ込めたい。……そんな所まで考えて、こんなのは全て私の逃避思考の上の妄想だって思い出すんです。
SCP-730-JP-α: 私は、一線を越えてしまいました。人一人の人生を終わらせてしまったのですから。一生穢れたままでしょう。相手がどんな性格だろうと、そこにどんな事情があろうと、人間一人殺してしまうと、もうまともじゃなくなってしまうんです。私はそう思います。どんな理由であれ、人を死に追いやった人間は何かのタガが外れてしまい、もう元には戻らないのでしょう。
SCP-730-JP-α: もう、何をしても元には戻りません……私の考えていた内容は以上です。
SCP-730-JP-α: …………
SCP-730-JP-α: 大丈夫ですか? 少し顔色が悪いようですが。
SCP-730-JP-α: 聞いていませんでしたが、そもそもあなたはどういう立場なのですか?
<録音終了>
補遺:
2017年1月20日、新たなSCP-730-JP個体が1体、収容室付近で発見されましたが、SCP-730-JP-1~SCP-730-JP-37の初期状態と異なる足形でした。
後にその個体は天崎研究員の足形と一致することが確認されました。
聞き取りの結果、この事を薄々予想していた事が判明し、天崎研究員は監視対象に指定されました。
記憶処理による治療が可能ではないかという検討もなされましたが、「取り返しのつかないことになるかもしれない」という天崎研究員のコメントから実施は延期されています。
天崎研究員に対する手紙:
貴方は財団の研究員です。貴方のこれまでの業務は全て、異常存在から人類を守るという使命に基づいています。
これまでに業務で行った事を、SCP-730-JP-αの行為と重ねないようにしてください。
貴方の前担当オブジェクト(SCP-███-JP)で行われた実験においては、確かに少なくない人数のDクラスが消費されました。
しかし、それはあくまで使命の為であり、Dクラスはそもそも死刑囚の集まりです。何も気にする必要はありません。
過去の業務に関して、余計な感情を持たないようにお願いします。 —████博士