AiliceHersheyの保管室
評価: 0+x

アイテム番号: SCP-1488-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1488-JPの収容を行っている領域、現在はインド西ベンガル州ミドナプール付近のジャングル一帯は、常に財団の監視下に置かれ、多数の機動部隊によって、いかなる状況であっても一般人が立ち入る事は禁じられています。SCP-1488-JPに曝露した人物には記憶処理が行われます。ステージⅡ以上の進行度である曝露者が発見された場合、その場で終了措置が行われます。また、SCP-1488-JPとコンタクトを取る際は、必ず財団指定の暗視ゴーグルを装着し、裸眼での対象の視認を行わないようにしてください。どのような状況であっても、財団の許可なしにSCP-1488-JPとのコンタクトを取る事はあってはなりません。

SCP-1488-JPには物理的な攻撃手段が有効であることが判明しています。当該オブジェクトがジャングル外への移動を行う素振りを見せた場合、暗視ゴーグルを装着した機動部隊によって制圧してください。また、機動部隊の制圧にも関わらず、SCP-1488-JPが突破を試みる場合、当該オブジェクトの周辺を覆うように設置している電気柵を起動し、鎮圧してください。

なお、カバーストーリー「オオカミに育てられた少女」の定着、及び流布は、現在も継続されています。詳しくは添付されている資料を参考にしてください。

SCP-1488-JP-A、及びBの死体はサイト-63に存在する霊安室に保存されています。月に1度程度、担当職員による死体の状態確認、及び必要であれば防腐処理を施してください。担当職員以外のSCP-1488-JP-A、及びBとの接触は禁止されています。

説明: SCP-1488-JPはインドオオカミ(Canis lupus pallipes)に外見的特徴が酷似した、体長3.5m、高さ4mほどの実体です。普段はインド西ベンガル州ミドナプール付近のジャングル内を移動しており、通常のインドオオカミと同様の生態を示します。

SCP-1488-JPは自身を裸眼で視認したヒトに対し、当該オブジェクトが"母親"であると認識させる異常性を保有しています。これは曝露したヒト(以下曝露者)の母親にあたる存在が存命していたとしてもです。被験者は曝露以降、SCP-1488-JPに対して親愛の情を抱くようになります。なお、この認識災害は記憶処理によって取り除く事が可能です。

また、SCP-1488-JPは曝露者に対して生育行動を取るようになります。これらの生育行動はインドオオカミにほぼ一致していますが、曝露者はそれに適応しているように見えます。曝露者の様子から、生育行動にはいくつかのステージが存在していると推測されています。以下はそのステージを段階的に表示したものです。

ステージⅠ 生育行動開始から1週間前後で曝露者は両手足を使用しての四足歩行を開始します。犬歯の発達や、インドオオカミの生態に適応した食生活の変化が見られるようになります。記憶処理により、身体的な発達以外の異常性の除去は可能である事が判明しています。
ステージⅡ ステージⅠの発症から更に1週間前後において、発声器官の変化が見られ、曝露者はオオカミに似た鳴き声のみを発するようになります。それに伴い、人語を解してのコミュニケーションが不可能となります。体毛に急速な発達が見られ、全身が体毛によって覆われます。このステージまで達した場合、記憶処理による異常性の除去は不可能となります。
ステージⅢ ステージⅡの発症から更に1カ月前後、臀部における未知の器官の発達による、尾の形成が行われます。この際、曝露者はSCP-1488-JPに酷似した形態となります。並びに、後述するような認識災害を獲得します。

ステージⅢに達した曝露者は、自身を視認した人物に対し、1日単位で恒久的に自身の存在の記憶を与える認識災害を得ます。例えば、1月1日に曝露者を視認した人間は、それからランダムな日付に曝露者を視認した、1月1日の記憶を想起します。これは曝露者が死亡していてもです。この異常性に対して、記憶処理による除去は全て失敗に終わっています。

発見経緯: 1920年、ミドナプール付近のジャングルにおいて自然環境保護団体による、木材の伐採の中止を訴えるドキュメンタリー映画の作成を目的とした、大規模な地元民との抗争が発生しました。当時このジャングルは地元民による封鎖区画とされており、事前に自然環境保護団体による無断の撮影が行われた事が問題視されていました。この抗争において、██名が死亡しました。その後に、映画における利益の一部を、地元民及びジャングルに対して還元するという協定が結ばれる事によって和解が行われました。

財団のエージェントである、エージェント・シングはその自然環境保護団体が、蛇の手との関わりがあるとして調査を行っていました。協定の締結後、自然環境保護団体による撮影の様子を調査していたところ、SCP-1488-JPを発見しました。ジャングルにおける調査であるとして支給されていた暗視ゴーグルを装着していたために、エージェント・シングは当該オブジェクトに曝露する事はありませんでした。

その後、エージェント・シングの報告により、機動部隊による自然環境保護団体の制圧、及びSCP-1488-JPの初期収容が行われました。その過程において、ステージⅢの曝露者であったSCP-1488-JP-A、及びBとそれらを撮影したフィルムの回収に成功しました。しかしながら、事前にSCP-1488-JP-A、及びBが撮影された映像の一部は既に、当国のマスメディアによって露出しており、回収が不可能であると判断されました。そのため、全世界を対象としたカバーストーリー「狼に育てられた少女」の策定、実施がなされました。



%E4%BB%AE%E3%83%AD%E3%82%B4.png

SCP財団公式文書
「オオカミに育てられた少女」

前書: 以下のカバーストーリーはエージェント・シング、並びにサイト-63に駐在する研究者たちの合同で策定されました。全職員に対し、このカバーストーリーの遵守が求められます。

カバーストーリーの情報: カバーストーリー「オオカミに育てられた少女」の流布は、捏造された23枚の写真とエージェント・シングによる直筆の日記により実施されます。 エージェント・シングの日記には財団直属の地方判事、主教による文面も含まれます。また、十分な知見を持った教授からの進言を受けて、日記を用意してください。

Kamala

23枚のうちの一枚。

当カバーストーリーの策定背景として、財団の所持している記憶処理技術の未発達、並びにオブジェクトの存在が全国区で広まってしまう可能性がある事が挙げられます。

従来のカバーストーリーと異なる点として、当該カバーストーリーは、近い将来一般人により「創作」である事が判明する事を前提に策定されています。そのため、真実性を欠く記述が文書内に散見されますが、それらは全て財団による意図的な物です。

以下は当カバーストーリーの簡易的な概要です。完全な内容については別紙63-エージェント・シングによる考察を参照してください。

  • 1920年10月17日、ミドナプールとモーバニの境にあるゴダムリ村付近のジャングルにて当該オブジェクトを発見。同年11月4日より財団直属の孤児院にて保護を開始する。個体Aを「カマラ」、個体Bを「アマラ」と名付ける。
  • 1921年9月21日、アマラ、腎臓炎で死去。
  • 1929年11月14日、カマラ、尿毒症で死去。
  • 同年内、日記の出版。
  • 実際のオブジェクトの無力化後、もしくは20年後、当カバーストーリーがエージェント・シングによる「創作」である事が判明予定。恐らくその頃には記憶処理技術の進化が見られ、関係者全てに対する記憶処理が可能になっていると推測される。
  • 以後、当カバーストーリーは俗説として扱い、アマラとカマラは脳機能に何らかの障害のある孤児であった、との定着を行う。

当カバーストーリーは1920年12月に仮決定が行われ、1921年11月より正式に当オブジェクトの収容手順として採用される事となりました。

以下は当時SCP-1488-JP-A、及びBの担当職員である、ドローミ博士の手記の一部分です。この日記はステージⅢ曝露者の異常性を知る上で非常に重要な資料となったため、現在も財団にて保管されています。

1920/10/24

あの曝露者二人が、我々に確保されてから一週間が経ちました。

最初は、あのシングが命がけで回収してきたという興味本位から担当になりましたが、今になってその選択を私は後悔しています。結局のところ、一週間の中であの二体が変わった反応を見せたのは、収容室内に犬用の玩具を放り込んだ時だけでした。それ以外は本当に犬と変わらないような生活を続けています。食べて、遊んで、寝て、食べて、遊んで、寝て。これを仮にあのオブジェクトの影響とするのであれば、人間としての意識の消失、もしくはそれに近しい現象があのオオカミの異常性という事になるでしょう。そこには恐らく外見の変化も含まれると推測されます。現に、実験の一環で彼女らの体毛の処理を行いましたが、次の日には元通り、毛むくじゃらの姿になっているのが確認されました。

ふと睡眠状態にある二体から目を離せば、テーブルの上の冷たく濁ったコーヒーと、昨日の日付が刻まれた新聞紙が目に入りました。見出しには大きく、「狼に育てられた少女」、と銘打たれています。恐らく、この少女達をつけ狙っていた自然保護団体、いいえ、蛇の手辺りが情報を流出させたのでしょう。しかし、あの団体は彼女らの情報を世間に流す事で、何をしたかったのか。それは未だにわかりません。

とりあえず、彼女達は遊んでいる間は、玩具等に非常に大きい興味を持ちます。そのため、次の実験からはまた違った刺激を与える玩具を用意するのが妥当でしょう。

1920/12/29

早いもので、既に財団はテレビジョンや新聞紙に使用されていたこの少女達の本物の映像、及び画像データの回収を完了したそうです。その上で、出回ってしまった情報の上書きのためのカバーストーリーの仮決定がつい昨日、行われました。

さて、前の手記から色々試してはみましたが、現在までに反応を示したのは、ウサギ、イノシシ、ウシ、ブタ等を模したぬいぐるみばかりであり、そのどれもを彼女達は破壊しました。結論から言えば、やはり彼女達はオオカミとしての特性、習性を会得しているらしく、定期健診を行った際に消化器官や、輝板の存在の有無といった通常のヒトとは違う点が多く記録されました。

そのため、今後の収容に関しては動物飼育の専門家を割り当てた上で行う事が決定されています。ただ、人間を動物のように扱うというのは私もいささか、やりすぎであるとは感じるのですが。

1921/10/17

彼女らに出会ってから、一年が過ぎました。

本日の定期検診においても、特に彼女に異常は見られなかったため、私は少し昔の事を思い出します。あの日、シングは自然保護団体の制圧の最中、両足に流れ弾が被弾した彼女らを救出しました。その際にシングは右腕に傷を負い、その傷が原因で今も不自由な生活を送っています。

何故そこまでして彼女らを助けたのかと私は彼に問いました。すると彼は、それが仕事であるからとだけ答えました。その時の私は、彼の気持ちを理解する事はできませんでした。しかし、この一年で彼女達の担当職員であり続け、今なら何となく、シングの気持ちがわかるような気がします。彼女達は、そこにいるだけで、何か、人を惹きつけてやまない魅力がある。動物によるリラクゼーション効果、というものに近いのでしょうか。シングは感受性が豊かですから、それをいち早く感じとったのでしょう。もちろん、財団においての業務に対して非常に真摯に取り組んでいるというのも、付け加えておきましょう。

今日までの彼女達と歩んできた日常を、私は目の前にあるかのように思い出す事ができます。この感情を職務に持ちだすわけにはいきませんが、それでも、この手記の中でぐらいであれば、構わないでしょう。

1922年6月8日、ドローミ博士はSCP-1488-JP-Aの管理中、突如としてパニック障害を引き起こしました。ドローミ博士はエージェント・シングらにより拘束され、記憶処理が行われました。しかし、その後も状態の改善が見込めなかったため、通常の人型収容ユニットにおいて保護されました。

1924/10/17

今日は彼女達に出会ってから、何年目の、春でしょうか。

部屋の外には桜が舞っています。ちょうどこの頃、彼女はよく窓の外を眺めていました。太陽が昇っているにも関わらず、雨が降っている現象を興味深く見ていました。その姿を今も鮮明に思い出せます。ただやはり、雪が降っています。

彼女達は初めて降る雪に興味を示しているようでした。それでも、ウサギのぬいぐるみを噛みちぎりながら、与えられた食事を食べていました。しかし、それも長くは続きませんでした。あの子が死んでしまったのです。原因は腎臓炎でした。彼女は悲しんでいました。私は手を握りました。するとその子は後ろにいました。もう一度、彼女の手を握ろうとすれば、今度はシングが邪魔をしてきました。私は怒りました。

それから。それから? 私はまたあの子の担当へと戻ったはずです。私は戻っていなければなりません。彼女が悲しみます。一人になってしまったあの子を守るのは誰でしょう。シングならば守れますか?

いいえ、彼女達は生きています。今も目の前で、仲良く遊んでいます。この冷たい部屋の中にも、温もりがあるように。

職員コード
パスワード