9thPeriod

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの存在するマンションは工事に偽装し不透明なシートによって覆われます。SCP-XXX-JPの周囲20mは警備員3人によって監視され民間人の侵入を防ぎます。民間人が侵入した場合は確保後インタビューを行い、必要に応じてBクラス記憶処理を施してください。

2年に1度、SCP-XXX-JPの地表からの距離が測定されます。測定値と理論値との間に乖離が見られる場合はレベル4研究員に報告してください。

SCP-XXX-JP-1は書類-XXX-JP-Aに自動的に記録されます。記録されたデータのうち異常性を持たないものは1週間経過の後、自動プログラムによって破棄されます。異常性を持つと判断されたデータは書類-XXX-JP-Bにまとめられています。参照にはレベル4研究員の許可を得てください。

説明: SCP-XXX-JPは生物の思考を理解する能力を有していると自称していた2█歳の日本人男性です。生物は現在生きている種類だけではなく死亡した種類も対象となります。対象となる種類には少なくともヒト(Homo sapiens)を除く脊椎動物や昆虫、節足動物が含まれています。財団の調査にも関わらずSCP-XXX-JPの能力が働く条件やプロセス、起源は判明していません。

現在SCP-XXX-JPは足が上、頭が下を向いた状態で自宅ベランダ付近の空中██mに固定されています。SCP-XXX-JPに新たな異常性が発現したとみられていますが詳細は不明です。サンプル回収を含む財団によるあらゆる干渉の試みは失敗に終わりました。補遺2を参照してください。

SCP-XXX-JPは摂食を必要としておらず、呼吸や拍動といった生存に必要な身体的特徴を示していますが、外部からの刺激に反応することはありません。脳波の測定によってSCP-XXX-JPは大脳皮質や大脳辺縁系が高い活動水準を示していることが判明しています。

SCP-XXX-JPは████/██/██、██県███市にて「異臭がする」という通報により警察が現場に向かったところSCP-XXX-JPを発見、潜入していた財団エージェントによって確保されました。目撃者にはBクラス記憶処理が施されました。

以下はSCP-XXX-JPの自宅から発見された日記の抜粋です。

9月19日(木)
今日は最高の1日だ! 朝起きたら█████1の言葉がわかるようになっていた! それに████2も! 金魚たちは食事のことばっかり考えていて笑ってしまった。言葉が頭にすっと浮かんでくるのは不思議な感覚だ。俺の話を伝えられないのはもどかしいが愛情が伝わってるといいな。同僚に話したら苦笑されてしまったが親バカだと思われちゃっただろうか。まあ知らない方が幸せかな。

9月22日(日)
障害3の練習をした。████4の考えが手に取るようにわかって今までで一番上手に乗れた。先生も来月の大会で好成績を狙えると褒めてくれた。████はやる気で満ち満ちているようだったからあとは乗り手の問題だ。本番では████を信じて邪魔をしないように意識しよう。

9月26日(木)
不思議な生活にも馴染んで来たものだ。今では帰宅してみんなの話を聞くのが楽しみで仕方ない。ペットが日中の話を伝えようとしているなんて他の人たちは気付いてさえいないだろう。でも█████が他の犬に俺の話をしているのは少し恥ずかしい。幸せな悩みだ。

9月28日(土)
██ちゃん5家の███6が亡くなったらしい。あの子の泣き顔を見ると、███の思いが伝わってきた。「野良で弱っていた自分を迎え入れてくれたこと、夜はいつも同じ布団だったこと、みんな感謝している。最期の瞬間まで一緒にいられて幸せだったよ。」と教えると、あの子はきょとんとしたけどすぐに嬉しそうな表情を見せてくれた。今まで誰も信じてくれなかったがあの子のためになれたなら俺も嬉しい。まさか死んだ動物の話もわかるようになっていたとは。俺も█████たちが最期まで幸せでいられるように尽くそうと改めて考えさせられる一日だった。

10月1日(火)
█████████7に出ていた赤ちゃんの声が聞こえて来た。「お母さん、お母さん」とミルクをねだるチーターが一番可愛かった。また見に行ってみたい。しかしテレビの向こう側の声さえ聞こえてくるとは。

10月5日(土)
大会は散々。目に入った他の馬まで頭の中に入り込んできた。集中しようとすればするほど周りに意識が持っていかれてどうしようもなかった。きっとズルをしようとしたバチが当たったんだ。次は自分の力で勝負したい。でも……脳内の声をどうすれば止められる? もはや聞こえる前はどうしていたのか思い出せない。

10月7日(月)
病院の予約を取った。何か解決策が見つかるかもしれない。今も時々████の声が聞こえる。隣の部屋なのに。

10月11日(金)
落ち込んでる自分のために友人らが焼肉に連れて行ってくれた。だが肉が出て来た瞬間に牛の姿が思い浮かんで来た。少し食べたが気分が悪くなってすぐに戻してしまった。まだあの瞬間が忘れられない。鳥肌が立つ。

10月13日(日)
夢で███が生まれてから死ぬ瞬間まで見えた。夢?

10月18日(金)
見たこともない動物の声や風景まで浮かんでくる。

10月24日(木)
医者はどうして動物の話がわからないんだ? 病院内でもいろんな声が聞こえていただろうに。

10月29日(火)
楽しい話はもううんざりだ。今も。役に立たない薬を与えやがって。

11月1日(金)
最初からこうすればよかったんだ。少し静かになった。

11月2日(土)
なぜだ? おまえらの一生なんて関係ないだろう。

11月4日(月)
ハエにおれの何がわかる

11月7日(木)
ずっとながれこんでくる

████/11/08以降、SCP-XXX-JPの日記には新たなページ(以降SCP-XXX-JP-1と指定)が生成され続けています。SCP-XXX-JP-1には生物とみられる絵が鉛筆によって描かれていますが、過去に地球上に存在していた種類だけではなく、現在まで未特定の種類も含まれています。SCP-XXX-JP-1が生成する瞬間の撮影はノイズの発生によって失敗に終わりました。SCP-XXX-JP-1は██秒から██日の間隔で生成されています。SCP-XXX-JP-1の生成にも関わらず日記の重量や厚みは財団の収容以来変化していません。

以下はSCP-XXX-JP-1に描かれていた絵の一例です。

・イエネコ(Felis catus
・ハツカネズミ(Mus musculus
・クマゼミ(Cryptotympana facialis
・ナンキョクオキアミ(Euphausia superba
・ヒトに類似した脚部を持つクモの一種(Araneae sp.)と思われる未知の生物。
・.スズキ目の一種(Perciformes sp.)と思われる生物。閲覧すると同種の個体が閲覧者の付近に生成する。後にSCP-████-JPとして指定。

補遺1: SCP-XXX-JP-1に描かれた生物の寿命とSCP-XXX-JP-1の発生間隔との間に正の相関があると判明しました。この事実やSCP-XXX-JPの大脳の活動水準の高さ、SCP-XXX-JPの日記から、現在SCP-XXX-JPはパノラマ記憶8を体験しており、その断片がSCP-XXX-JP-1に描かれているとの仮説が立てられています。

補遺2: ████/██/██の定期検査によって、SCP-XXX-JPが収容当時から0.█cmだけ降下していることが判明しました。SCP-XXX-JPが現在のペースで降下した場合、地表に到達するのは█████年です。