アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: その性質上、SCP-XXXX-JPは収容されていません。よって対象の収容は“商談イベント”および“提供アイテム”によるインシデントの対策に重点が置かれています。どのような状況での商談イベント発生も即座に記録され、本オブジェクトの担当職員へ報告されなければなりません。対象が提示したアイテムはインタビューおよび購入後の分析を総合して取り扱いを決定し収容して下さい。
説明: SCP-XXXX-JPは全世界の財団職員の周囲に不定期に出現する人型実体です。対象は財団標準装備の白衣を着用していますが、容姿・体格・性別は不定期に別人のものに変化します。現在まで対象の外見が既存の財団職員と一致した例は確認されていません。
SCP-XXXX-JPは財団職員(以外、被験者)に異常性を保有する実体(以下、アイテム)を提示し、金銭による購入を促します。この一連の手順は“商談イベント”と定義付けられています。
商談イベント中、対象はアイテムの異常性について公表しますが、同時に『被験者が即座に支払える金額未満の値段』を購入金額として提示します。その為SCP-XXXX-JPは被験者の所持金を予め分析した状態で出現している可能性が有ります。
被験者が購入を拒否した場合、SCP-XXXX-JPはアイテムと共に消失します。購入を了承した場合、商品を残して消失し、被験者が所有権を保持している金銭が商品の金額分だけ消失します。
回収記録XXXX-JP: 以下はSCP-XXXX-JPが提示したアイテムの一例です。
記録XXXX-1
** 内容:** 不明な地点からの信号を常に受信しているトランシーバー。信号は現在も継続中。金額: $30,000
公開時の情況: インタビュー記録XXXX-JP-1を参照。
現状: Safeクラスオブジェクトとして収容中。
記録XXXX-2
** 内容:** 破壊不可能な檻に収容されている有機物の球体。金額: $60,000
公開時の状況: 跳躍を繰り返し檻全体を盛んに振動させていた。購入を拒否した所、対象はアイテムと共に消失した。
現状: 再確認なし。
記録XXXX-6
内容: 2つ以上の個体を接着させた場合、両個体の断面図を癒着させるダクトテープ。癒着は個体の有機・無機性に関わらず発生するが、拒絶反応および科学変化は記録されていない。金額: $10,000
公開時の状況: 購入を了承。
現状: Anomalousアイテムとして保存中。
記録XXXX-12
内容: 3m×6m×3mの破壊不可能な玄武岩。3m圏内に接近した人間を破壊不可能な無機物に変化させる。無機物の成分はランダムに決定され、変化は64時間持続する。金額: ¥6,000,000
公開時の状況: 説明に反し異常性が発現していない旨を指摘した所、対象は当該アイテムを床に設置。手を離した所で[データ削除済み]。64時間後、対象の消失が確認された。
現状: 再確認なし。
記録XXXX-25
内容: 『L田うみ』と油性ネームペンで記述された[編集済]用のネームプレート。装着した人間の周囲65560kmは[削除済み]により晴天・無風の環境が維持される。金額: ¥[削除済]
公開時の状況: 対象は当該アイテムを手に乗せた状態で購入を提案。Dクラス職員に装着させた結果、問題なく当該の事象が発生。購入を承諾。対象はアイテムを残し消失。担当職員が衣服内部に所持していた金銭の一部が消失した。
現状: Keter[編集済]クラスオブジェクトに登録。
記録XXXX-60
内容: 様々な言語で「助けて」と発生する梯子。直立歩行を行う。人間が触れた場合、全長が3████km圏内にまで拡大し、先端に「円形に切り取られた」と表される空間が視認される。空間内は特徴的な発光を繰り返す宇宙空間と見られている。金額: $300,000,000
公開時の状況: 購入を承諾。対象は当該アイテムを残し消失。また本事案にて対象に購入拒否アイテムの現状を訊ねた所、対象は発言せず頭部を左右に振った。
現状: Safeクラスオブジェクトとして収容-購入から3日後、異空間が視認される異常性が消失。また対象の発声が啜り泣きと思われる呻き声に変化した為、Euclidクラスオブジェクトとして収容中。
このエセ職員が我々の便利な友人なのか、それともPOL紛いなのかは分からない。問題は商品の製造元というのは商人ではないという事。つまり誰がコレを利用してアイテムを売っているのか、だ。─ブレッド博士
インタビュー記録XXXX-JP-1
以下はSCP-XXXX-JPに対する最初のインタビュー記録です。インタビューは対象がサイト-4に出現した際に実行されました。財団日本支部以外の職員は対象のアイテム番号が便宜上-JPに指定されている事実を留意して下さい。
インタビュアー: ブレッド博士
インタビュー対象: SCP-XXXX-JP<SCP-XXXX-JPがブレッド博士の前方に出現する。ブレッド博士はサイト管理者に通報。協議により対象とのインタビューが開始される。>
ブレッド博士: お待たせ致しました。先ずは貴方様のお名前とご所属をご記入して……。
SCP-XXXX-JP: こんにちは!私は財団商会です!私は貴方に私の商品を売る事を望みます!それは救済です!
ブレッド博士: (溜息)……貴方のペースに同調するしか無いという事ですね?良いでしょう。貴方は財団職員なんですか?
SCP-XXXX-JP: 今回紹介するオブジェクトはこちら!
<SCP-XXXX-JPがSCPオブジェクトに該当する物体を出現させる。詳細は記録XXXX-1を参照>
SCP-XXXX-JP SCP-████は事象の地平線から救難信号を発するトランシーバーです!
ブレッド博士: この救難信号は何処から?必要に応じて機動部隊を送らなければなりません。貴方が財団職員であるならば。
SCP-XXXX-JP: さあ、ご購入のご意思をどうぞ!
ブレッド博士: (深い溜め息)最後に質問します。XXXX-JP。このトランシーバーは何ですか?
SCP-XXXX-JP SCP-████は事象の地平線から救難信号を発するトランシーバーです!
ブレッド博士: インタビューを終了します。
インタビュー記録XXXX-JP-2: 20██/08/15、SCP-XXXX-JPがサイト-██に出現した際、消失から3時間後にサイト内に設置されていたスクラントン現実錨の内█個が機能を停止しました。この事態を受け、担当職員ブレッド博士により当該サイトのライン博士にインタビューが行われました。
ブレッド博士: それではインタビューを開始します。ライン博士……そちらに出現したSCP-XXXX-JPに、何か異変は有りましたか?
ライン博士: いいえ。報告書の通りでした。……あの、そもそも今回の事例と現実錨の停止に関係は有るのでしょうか?
ブレッド博士: 勿論、私も疑念を抱いていましたよ。現実錨の機能停止は何ら異変とは言いがたい。ただヒューム値を吸い付くしただけなのですから。
ライン博士: その通りです。スクラントン現実錨は他世界のヒューム値を我々の世界へ送り込み、現実強度を安定させる。よって他世界のヒューム値が尽きた段階で現実錨は停止する。
ブレッド博士: その世界のヒューム値……すなわち現実強度が絞り尽くされた訳ですからね。
ライン博士: ええ。しかしサイト-██の現実錨とXXXX-JPが関係あるとは思えないのです。この現実錨はSCP-████収容の為に使われていたのですから……(目を見開く)もしや。
ブレッド博士 いえ。他の収容済みオブジェクトは関係ありません。しかし、この資料を御覧下さい。
(ブレッド博士がライン博士に1枚の資料を提示する。資料にはSCP-XXXX-JPが既に出現したサイトの内、スクラントン現実錨が設置されていた物と、対象が消失した後の現実錨の挙動について書かれている)
ライン博士: (資料に目を通す)……これは。
ブレッド博士: ええ。偶然ではありません。約70%のサイトにおいて、SCP-XXXX-JPが出現したサイトにスクラントン現実錨が設置されていた場合、最短で3時間、最長で72時間後に現実錨は停止しています。
ライン博士: しかし……それが何を意味するのでしょう?対象に現実錨を無力化する異常性が?現実錨を上回る改変能力者とでも?
ブレッド博士: どちらでもありません。対象と現実錨との関係は、此処まで来ればシンプルな物だったのです……現実錨の向こう側こそ、アレの起源だとしたならば。
ライン博士: ……SCP-XXXX-JPは、失われるヒューム値の世界から来たと?
ブレッド博士: ええ。現実錨の適用先として選ばれた世界からです。停止する現実錨が70%に留まっているのは、単に残り30%の事案において、サイト内に該当する現実錨が設置されていなかっただけでしょう。
ライン博士: 財団に滅ぼされる世界から来た“財団職員”ですか……なるほど。しかし、そうなると彼らの目的が不明ですね。
ブレッド博士: いえ。彼らが財団職員を模していて、かつ先の資料のように我々が見た事のないオブジェクトを提示している以上、二つの可能性が浮上します。
ライン博士: 何でしょう。
ブレッド博士: ヒュームを吸われた復讐か、それでも財団にオブジェクトを託したか、です。
上記のインタビューにより、SCP-XXXX-JPの起源に関して“平行世界における財団の職員が、スクラントン現実錨によるヒューム値吸引に呼応して基底世界に現れた存在”という仮説が浮上しています。現在も対象との有益なコミュニケーションは得られていません。