スイッチ蜂
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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの群体および巣は中脅威クラス小型生物群体用収容室に収容されます。入り口の室内側には外部から隔離された電源に接続された対小型生物実体用の不快物質散布装置を常時稼働させた状態で設置し、入室および退室時に群体の一部が脱出する事を防ぎます。メンテナンスは半年に一度行って下さい。封じ込め室の中央部に設置された常時蜂蜜を供給する専用ポッドにより、対象による出入り口付近の飛行を抑制します。収容室内は常に監視室へ映像を送る当該群体の巣に向けられた可動式カメラにより監視されます。次世代による新しい巣が生じた場合は可動式カメラを新しい巣に向けて下さい。監視対象の誤認を防ぐため古い巣は撤去して下さい。出入り口付近にて巣の構築が観測された場合は収容室の中央または最奥へ移動させて下さい。給餌は1日に1回、巣の規模に応じた量の生きた芋虫を与えて下さい。蜂蜜供給ポッドが給餌装置を兼任します。ただし繁殖期のみ生きたDクラス職員1人および巣の規模に応じた量の朽ち木を与えて下さい。実験及び繁殖期に使用するDクラスを除き、職員は如何なる理由で入室する際にも対小型生物実体用の防護服を着用する事が義務付けられております。

説明: SCP-XXX-JPはヤマトアシナガバチ(Polistes japonicus japonicus)に類似する昆虫です。対象は生物学的な生態において通常のヤマトアシナガバチとして振る舞います。対象の1匹を隔離して行われた耐久実験でも生命力に特異な点は見つかりませんでした。例外として全ての個体が低温に高い耐性を持っている事が判明しておりますが、これは当該群体に蓄積された栄養価の高い養分による物と断定されています。1女王蜂に該当する個体は見つかっておりません。2

SCP-XXX-JPが人間(以下、犠牲者)に対し腹部先端の針を刺した場合、その部位に SCP-XXX-JP-1が発生します。 SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの攻撃で皮膚に発生したアレルギー症状による隆起です。発生と同時に、隆起の下では刺された部位に最も近い神経が変異を起こします。当該部位における神経は5分をかけて枝分かれを起こし、更に10分後に隆起の直下へと到達します。到達後、直下の神経は2分で放射状に広がって隆起と同じ直径の円を形成し、その後は変異を起こさなくなります。この隆起は治癒する事が無く、炎症により生じる痒みや痛みも軽減される事無く持続し続けます。薬品による治療も隆起及び変異した神経に全く効果を発揮しませんでした。唯一の治療は外科手術による隆起と神経の切除であり、この方法でのみ当該部位は除去され、また再生する事も有りません。

犠牲者が炎症による不快感からSCP-XXX-JP-1に指や爪で刺激を加えると、犠牲者は自らの意思に関わらずSCP-XXX-JPの巣の方向へ一時的に歩行します。この歩行は刺激と同時に未知の構造から発せられるビープ音により通常の歩行と区別でき、また対象の巣を犠牲者が把握または認識していなくとも正しく行われます。歩行時間はSCP-XXX-JP-1に加えられた刺激の強さに比例しており、時間が切れると犠牲者は再び自由意思での移動が可能となります。不快感は犠牲者がSCP-XXX-JPの巣に近付く程に強さを増し、結果的に犠牲者はSCP-XXX-JP-1へ与える刺激の量を増やす事に繋がります。巣から離れようと移動する行為は即座に強い痒みや痛みを発生させます。

SCP-XXX-JP-1が生じた犠牲者の接近を感知すると、SCP-XXX-JPは本来のアシナガバチとは異なる積極的な犠牲者への攻撃を行います。この時点での当該実体はSCP-XXX-JP-1を持たない人間が付近に居ても無視して犠牲者を集団により攻撃します。実験において犠牲者が巣から離れようとする行為は対象の執拗な追尾と追撃を生む結果となりました。

犠牲者の身体に生じたSCP-XXX-JP-1の数が30箇所を越えた場合、当該ヶ所に刺激を与える行為は犠牲者に一定時間のみ両足の機能停止を起こさせます。停止時間も前述の歩行時間と同様に刺激の強さに比例する一時的な症状ですが、この時点で犠牲者がSCP-XXX-JPの巣に接近し過ぎている事や複数ヶ所から発生する痒みや痛みに苛まれている点から本人の意思による安全な場所への退避はほぼ不可能です。

SCP-XXX-JP-1の数が70箇所を越えた場合、当該ヶ所を刺激する行為は即座に患部の急激な膨張、破裂を引き起こします。この間もSCP-XXX-JPは攻撃を停止しません。この膨張は周囲の皮下組織を“吸収”する形で発生しており、血管などは膨張に押し退けられず範囲内に取り込まれ破裂へと巻き込まれます。最終的に犠牲者は頸動脈等の重要な血管を巻き込んだ破裂、または破裂した箇所に対する追い討ちで更に身体の内側を破裂させられた事による出血により死亡します。 この段階では完全防備した第三者による救出以外による犠牲者の生存方法は確立されていません。犠牲者が死亡した場合、繁殖期を除いてSCP-XXX-JPは攻撃を停止し、代わりに破裂により露出した皮下組織へ群がり摂食を始めます。

SCP-XXX-JPが繁殖期を迎えた場合、SCP-XXX-JP-1は当該期間中のみ“孵化”の異常性が加わります。犠牲者に生じたSCP-XXX-JP-1が70箇所を越えた場合、それは破裂と同時に新たなSCP-XXX-JPを誕生させます。個体は全て成虫の形態であり、幼虫や蛹は見つかっていません。犠牲者を回収し解剖しても卵は発見されませんでした。この方法でのみ対象は繁殖を行い、1匹目の次世代誕生から6分後に前世代の群体は全て死滅します。

繁殖が終わると次世代は前世代の巣を放棄し、必要な材料が周囲に有るならば新たな巣を作ります。部屋の数を検証した所、巣の規模は当該時点におけるSCP-XXX-JP個体の総数と一致していましたが、部屋の大きさは一般的なアシナガバチの幼虫や蛹に合わせた大きさであり、対象が部屋に入っている様子が記録された事実は有りません。このような一見して無意味に判断される巣を設営する理由は、前述における犠牲者の自動歩行が巣に向けて行われる事、および群体が巣から5km離れて飛行するのが稀である事から、SCP-XXX-JP総員の活動範囲を表し、かつ犠牲者を誘因し追撃を用意にする“目印”として使用する為であると推測されています。巣の構築に必要な材料が周囲に無い場合は群体から複数体を噛み砕いて巣の材料とし、この場合は生きている群体分の部屋を持つ巣が構築されるまで同族を連続して加工し続けます。

SCP-XXX-JPは20██/11/█、████県立██████大学に所属する昆虫研究会の学生1名が「採集中に凶暴なアシナガバチに襲われた」と同県████市内の警察署に駆け込んだ際に財団の注意を引きました。署内に潜伏していた財団職員が証言された場所にて当該学生█名の遺体とヤマトアシナガバチの巣を発見し、同生物の遺体に対する攻撃および遺体から生じた新たなハチの個体を確認した事からSCP-XXX-JPに指定され収容されました。移送中に当該オブジェクトのうち██匹が死滅しましたが、これは後の研究で対象が前世代の群体だった為と結論付けられております。学生1名は証言を取った後にクラスB記憶処理を施して解放し、関係者全員にカバーストーリー“交通事故”が適用されました。現在の所、収容した群体以外のSCP-XXX-JPは確認されておりません。

補遺-XXX-01: 20██/11/██
████ ████博士がSCP-███から独自に抽出した対小型生物用不快物質を散布する装置の開発に成功し、当該オブジェクトが初の対象として選ばれ封じ込め室に設置されました。他の小型生物オブジェクト収容室への導入は金銭面におけるコスト削減が為されるまで保留中です。

補遺-XXX-02: 20██/12/█
担当研究主任である松山博士により不快物質散布装置の撤去および蜂蜜供給ポッド設置案が05評議会に申請されました。申請は受理され、████ ████博士ら開発チームにはコスト削減達成まで如何なるオブジェクトへの当該装置導入の申請も却下する旨が通達されました。

この蜂は一度でも人を刺さない限りは普通のアシナガバチと変わらん。そしてその一度目も積極的には行わない。入退室時の不幸な流出に備えて維持費の高い装置を使う位なら、蜜で部屋の中心に引き寄せた方が安上がりだ。財団に資金は山ほど有るが、それらは浪費されてはならない。――松山 ████博士

頑張りたまえ。またの機会に。――05-█

対人実験XXX-01: 以下の記録はSCP-XXX-JPの収容後に行われた最初の実験内容を文書化した物です。

被験者: D-16383
担当職員: 松山 ████博士
実施方法: 通信機器を携帯したD-16383をSCP-XXX-JP収容室に入室させる。  
目的: 異常性の確認および過程記録保存。

(松山博士は監視室からD-16383と通信しつつ実験を監視する。当該Dクラスの入室を確認した後、封じ込め室の扉は電子ロックにより封鎖された。可動式カメラはSCP-XXX-JPの巣の方向を向いており入室直後の被験者は見えない)

松山博士: 入室したな。では対象へ向かい進んでくれ。

D-16383: おい。予め説明は受けてたけどさ、マジでハチなんぞに近付かなきゃいけないのか?

松山博士: 心配は要らない。オブジェクトとはいえアシナガバチだ。スズメバチの対人実験に登用されなかっただけマシと思え。さあ進め。

D-16383: ……ああ。

(D-16383はSCP-XXX-JPの巣から3メートル以内に接近する。映像に当該Dクラスが映る。生物群体の挙動に変化は無し)

D-16383: おぉ怖っ。顔をかすめやがった。

松山博士: よし。今度は連中を刺激してみろ。

D-16383: アンタ正気か?虫ケラに喧嘩を売れって?それが実験?

松山博士: 早くしろ。この会話は録音されている。長引けば容量の無駄だ。従わないのなら……。

D-16383: 分かったよ!どうせ従わなきゃ出られないんだろ!?

D-16383は付近に飛んできたSCP-XXX-JPに向けて腕や脚を振り回す。対象群体は明らかに当該Dクラスの付近を飛び始め、一匹が首筋に止まる。

D-16383: 痛って、コラ![ビープ音]……ああっ?

松山博士: 今の音は何だ?

D-16383: 音だけじゃねぇ![ビープ音]ああっ!足が動きやがる!

松山博士: しきりに首を気にしているな。刺されたんだろう。患部に触れたか?

D-16383: ああそうだコイツのせいだ!足が勝手に……ロボになって稼働してる気分だ!痛くて痒い!

松山博士: 触れば触るだけ、足も勝手に動くんじゃないか?

D-16383: んなもん俺だっ……て、え?

SCP-XXX-JPが盛んにD-16383へ飛来し始める。この時点で映像内には20匹前後の群体が確認出来る。

D-16383: 何だこれ、何だこれ![悲鳴]

松山博士: 落ち着けD-16383。

D-16383: ふざけんな畜生動かねえ、足が動かねえ![床に倒れ込む]ここから出せ助けろ俺が俺の体が[不明瞭]

D-16383は床を転げ回る。無数のビープ音が連続して鳴り始める。

D-16383: 助けて出してくれ[不明瞭]嫌だ嫌だ!

松山博士: ビープ音で聞き取り辛い。D-16383、主観での情報を伝えろ。身体の感覚はどうだ?今は何処まで刺されていると感じる?

D-16383: [絶叫]虫が蜂が死にたくない死にたくない!

D-16383はSCP-XXX-JP群体に覆われ、映像では皮膚の状況が見えづらい。空気とも水ともつかない物質が噴出するような音が響き始める。

松山博士: 落ち着けDクラス。死にはしない。今度はソイツらから離れてみろ。

D-16383: 違う違うんだコイツらが……ああ……。

D-16383の動きが鈍くなる。ビープ音が途絶え、対象の肉体は視認出来る範囲内において[データ削除済]を起こしている。

松山博士: コイツらが、何だ?

D-16383: コイツらが、そう言ってるんだ。

(実験終了)

音声記録を分析した結果、松山博士とD-16383以外には如何なる第三者の発言も録音されていませんでした。当該音声は最新実験XXX-██に至るまで確認されておりません。